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126、デート

 



 ――――チュンチュンチュンチュン。

 

 朝だ。朝だけど、全身怠い。怠い理由は知っている。覚えている。


「……禁酒しよう」

「駄目」

「却下します」

「却下を却下」


 まぁいいや、こっそり禁酒しよう。

 しかし、後ろの人のホールド感が凄い。ミシミシ言いそうなくらい締め付けられている。

 腕枕にしている右腕を肘から曲げて私の肩をしっかり握って、左手は腰に回して、足も絡められている。


「バウンティ、お風呂入りたい。あと、早めにシュトラウト邸に戻ってね」

「は? 俺はここにいる! カナタを可愛がる!」


 何か怒りだした。そして、胸をグニグニ揉んでくる。それは可愛がるで合っているのか? とか突き詰めたいけど、もれなく雪崩れ込まれそうなのでスルーが一番。


「違うよ! 子供達、放置しないでよ!」

「ん、大丈夫。師匠にお願いした。夜ご飯は一緒に食べるんだろ?」

「……うん」

「なら、それまでイチャイチャしたい。デート、しよ?」


 ――――チュッ。


 耳朶にキスをしてきたかと思うと、ハムハムまで始めてしまった。


「っあ……ん。ちょっとデートするならハムハムしたら駄目!」

「ケチ」


 あわよくば感満載のバウンティから逃げ出しお風呂に飛び込む。取り敢えず全身洗いたい。


「カナタ、俺も入る」


 ニヤニヤしながらスポンジを持ったバウンティに全身くまなく洗われ、髪の毛は乾かしてもらい、服も着せてもらった。毎年誕生日は甲斐甲斐しくお世話される。今年は喧嘩っぽくなっていたので、一人で過ごすんだろうなと覚悟していた。

 



 ゆったり朝ご飯を食べ、ケイナちゃんに今日の指示を出し、ダイニングで食後のお茶を飲みながらデートはどこに行こうかと話し合う。


「どこ行こうか!?」

「主寝室」

「……ビーチ、今日はちょっと寒いよね?」

「主寝室」

「公園でのんびりは?」

「主寝室」

「おうちデート?」

「ベッドの上で」

「しつこい! 嫌だってば!」


 あまりにもしつこかったので怒鳴ってしまった。バウンティがビクッと肩を揺らして泣きそうな顔になってしまった。


「…………ごめん。公園……行こう?」


 何か、私が悪いみたいになった。


「……うん」

「カナタ、嫌な気分にさせてごめん。怒った? デートしたくなくなった?」

「…………デートする」


 バウンティが泣きそうな顔のまま、とてとてと近付いて来てギューッとハグされた。そして、そのまま抱っこで二階に上がって行く。


「ちょ、何で! デートは!?」

「? カバンと財布は?」

「あ、はい。入ります」


 クローゼットに向かってるだけだった。バウンティのポシェットは主寝室に放置かな。




 公園に着いた。池の側のベンチに座って本を読む。バウンティは膝枕で本を読んでいる。が、こそこそ内太股を撫でたり揉んでいる。


「……バウンティ」

「ん?」

「揉まないでよ」

「…………嫌だ。ずっと寂しかった。カナタに触れていたい」

「くそぅ。ちょっとときめいちゃったじゃんか」

「もっとときめいて。蕩けた顔見せて。最後に見たカナタの顔…………怖くて……辛かった。大好きなのに……嫌悪されてるんだなって、側にいるの辛かった……」


 本で顔を隠して話しているので表情が見えないが、たぶん泣いている。ちょっと鼻声だし、膝が何か……しっとり冷たい。

 まだ毒の後遺症かな? 今日も時々だけど手をフルフル振って何かを散らしていたし。


「っ、ごめんね。まだ気分の上下が落ち着かない?」

「解んねぇ。カナタに怒られるの辛い。笑ってくれるとドキドキする。抱き締めてると安心する」

「頭撫でてあげるから今は我慢して。ね、痺れは?」

「…………無い」

「嘘は駄目だよ?」

「時々、背中ビリビリしたり、腕とか太股がビリビリする」

「痛い?」

「……太股は痛い。他は気持ち悪い感じ」


 今更だけど、痛いのを我慢してたのを知った。本を置いてバウンティ頭を撫でる。


「痛いとか、辛いとか、言って良いんだよ?」

「…………自業自得って言われそうだから言いたくなかった」

「いや、流石に……いや、言うかな?」

「機嫌悪かったら…………言うだろ?」

「…………言うだろうね、うん。否定はしない。けど、今は撫でてあげたい気分」


 更によしよしと撫でてあげると、本を口元にずらして潤んだ瞳でじっと見詰めてくる。


「カナタ、キスしたい」

「…………本、邪魔だよ」


 そろりと前屈みになると、バウンティが軽く起き上がって唇を重ねてきた。ピチャピチャと水音を立てながらキスを続ける。

 徐々にバウンティが起き上がり体勢を変えていく。気付けばバウンティはベンチに座り、私はバウンティにお姫様抱っこされていた。

 ふと我に返る。


「んっ……ハァハァ。公園で何やってんだか」

「……幸せだな」

「バウンティ……それはそうだね。と言いたいけど……あのね……」

「ん?」

「ちょっと落ち着こうか」

「何が?」


 何がと言われましても。気付いてるよね? 気付いてるはずだよね? だって自分の――――だし。


「バウンティさん、宝剣が飛び出してますが……」

「ん、そうだな!」

「鞘に納めなさい」

「っ……その誘い方は始めてだな。ん、良い。興奮する」


 ――――何でだよ!


「いや、誘ってないからね?」

「何で? カナタに納めてっ……んぐっ…………」


 そっちの意味に取られるとは。慌ててバウンティの口を両手で塞いでギロリと睨むとシュンとしてヘタレた犬耳が見えるようだった。




 公園で、イチャイチャするバカップル。


次話も明日0時に公開です。

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