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122、頑張った!

 



 バウンティが無事に帰って来てくれた。怪我もしていない。

 抱っこされたまま主寝室に連れて来られて、ベッドの上にポフリと下ろされ、今は向かい合って座っている。


「カナタ、撫でて!」

「よしよし、頑張ったね。何か凄い音してたけどバウンティだよね?」

「ん」

「何したの?」

「ん、家とか倉庫とか店とか壊してた」


 おぉん。そんなに色々壊したのか。明日怒られないかな……怒られてから考えようかな。何か、バウンティがソワソワしてるし、こっちの相手が先だよね?


「どうしたの?」

「もうな、ローレンツ内は安全だからな? 滅茶滅茶に心折って来たからな」

「そうなんだ。うん、ありがとう。また誰にも邪魔されず、心配せずに楽しくのんびり出来るんだよね?」

「ん! 楽しい事、いっぱいしよ?」


 目を潤ませて首をコテンと傾げて見詰めないで欲しい。心臓が潰れそうですよ、バウンティさん。


 ――――チュッ。


「カナタ、可愛い……愛してる。カナタ、好き」

「んっ……どうしたの?」

「カナタも言って?」

「…………あー、愛してるよ」


 バウンティにギュウギュウに抱き締められた。そっとお尻を持ち上げられ、バウンティの膝の上に座らされる。


「ちょ、この体勢は……」

「イヤ?」

「隣にいんじゃん! アダムさんとクラリッサさん!」


 小声で訴えると、またウルウル攻撃をされた。止めろと言うに。


「アイツ等も盛り上がってる頃だろ……」

「いや、想像させんな! お馬鹿! 変態!」


 バウンティがムッとして首筋をガブガブと噛みだした。地味に痛い。ペチペチと頭を叩いてギブアップする。


「ごめんごめん。流石に人ん家でシないでしょ……」

「……絶対シてる!」

「はぁ。それよりバウンティ、お風呂入って来て」

「一緒に入ろ?」

「やだよ。バウンティ、臭い!」

「へっ? 血?」

「えっ? 怪我してたの!?」

「してないぞ。俺、臭いのか? …………オヤジ臭?」

「違う違う。タバコ臭い! 布団に移っちゃう」


 バウンティが慌ててベッドから飛び降りた。そして自分の服をスンスンしている。


「バウンティ、吸ったんでしょ?」

「うん。でも時間経ってたから……バレないと思ってた」


 いや、何で隠そうとしてるんだ。吸った事に対しては別に怒った事無いよね? あれ? うん、怒った事は無かったよ。たしか。

 謎だなとバウンティを見詰めていると、モジモジしながら言われた。


「カナタな、吸ってる時、睨むから。吸い殻を始末するまで見てるし……」

「あ、ソレ、ポイ捨て監視してただけです……。個人的にタバコ吸ってるバウンティはダンディで好きです、はい。ただ、苦いからキスはちょっと嫌だけど。あと、吸い殻とかポイ捨てされるの何か嫌いなだけです、はい」


 無駄なカミングアウト。いやね、バウンティがタバコの煙をフーッとか吐き出してるの、凄く格好良いんですけどね。キスは苦いしちょっと臭いからなぁ。


「あ、子供の側では吸わないでね?」

「ごめんなさい。二度と吸わない」

「え、吸いたかったから吸ったんでしょ? 別にそこは責めて無いってば!」

「二度と吸わない!」

「まぁ、どうでもいいけども。取り敢えずお風呂入って来なよ」

「寝るなよ!」

「ハイハイ。いってらっしゃーい」


 バウンティをお風呂に追いやった。布団の匂いを嗅いでみたが、タバコの臭いは移っていなかったので、バウンティの口臭からか服に付いた残り香だったのだろう。




 お風呂から素っ裸で上がって来たバウンティは、お風呂に入る前よりも興奮していて、止めようが無かった。

 嫌がられると余計に燃えるとか訳の解らない事を言っていた。だから流されたのは仕方無いと思う。うん、仕方無い。


「ちょっと……もう七時じゃん…………眠いのにぃ」

「ん、カナタは寝てろ。子供達は俺が起こして飯食わせとくから」

「グラノーラ?」

「ご飯、覚えたから炊く!」

「……ん、お願い…………ねー」


 目蓋が重すぎてそのまま眠ってしまった。

 



 あふあふと欠伸をしながら時計を見たら十時過ぎていた。慌てて軽くシャワーを浴びて一階に下りた。


「おはよう、起きたのね。じゃあ、子供達はリビングにお願いね」

「「かしこまりました」」


 シエナちゃんとケイナちゃんが子供達を連れてそそくさとリビングに行ってしまった。訳が解らずバウンティを見るとなぜか不機嫌だ。アダムさんは……飄々としてて解らない。クラリッサさんは申し訳なさそうな顔をしている。

 そして、カリメアさんは、超ナナメだった。笑顔が怖い。


「遅くなりました、すみません……」

「……座りなさい」

「はい」


 たぶん昨日の事なんだろうけど。大まかな計画はカリメアさんと立ててたはずだし。やっぱ、建物の壊し方が酷かったのかな? と、そんな事を思いながらバウンティの隣に座る。


「さて――――」


 昨日の事について淡々と説明を受けた。

 死者三十二名、重傷者二十九名、建物の倒壊六棟、半壊八棟。


「建物の倒壊……は、聞いたよ? そんなに死んだの? え? 何で?」

「俺、頑張った!」

「やり過ぎよ! 他の建物まで壊してどうするのよ」


 理解出来ない。良く考えても理解出来ない。バウンティが頑張ったら人が死ぬの?

 バウンティが、人を……殺したの?




 平和が当たり前のカナタさんには衝撃。


次話も明日0時に公開です。

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