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119、明日は。

 



 バウンティの希望で餃子を作る事になった。

 皮は力の有り余っているであろうバウンティとアダムさんにお願いした。

 餡は女性四人で作る。今日はノーマル、鮭ミックス、カレー風味の三種類を作る事になった。

 ジュドさんが冷蔵庫を充実させてくれていたお陰で足りないものは無さそうだ。


「ごめんね、また微塵切りオンパレードだね」

「あはは。そうですね。あ、キャベツはバウンティ様に搾ってもらっていいですか?」

「ん、捏ね終わったらする」

「よろしくお願いします」

「よろー」


 ケイナちゃんが小声で「えっ、バウンティ様を使うんですか!?」と慌てふためいていた。力があり余っているんだから使っちゃえば良いのだよとケイナちゃんを丸め込む。


「ってか、ケイナちゃんは昔『バウンティ』って呼び捨てにしてたけど、いつの間に『様』になっちゃったの?」

「えっ……私、呼び捨てにしてたんですか!? ……覚えて無いです」

「えー。バウンティの手からおやつ食べたり、肩車して走らせたりしてたのは?」

「……あ…………覚えて……ます。そうだ! クリフが呼び捨てにしてたから私もつられてたんだ!」


 産後、暫く会わない時期が続いたから、そこら辺でリセットされたのかもしれない。


「呼び捨てで良いぞ?」

「え、無理です」


 バウンティがビックリした顔をしていたが、なぜにビックリしているだか。

 謎なバウンティは放置でサクサクと餃子を作っていく。

 途中で子供達が起きて来たので、おやつの間に生地を寝かせる事になった。


「ブルーベリー、んーまい!」

「アステルはねー、イチゴソース!」

「私はマーマレードにしますわ」


 皆でヨーグルトムースを食べる。それぞれ好きなソースをかけた。私はクラリッサさんと一緒でマーマレードにした。甘酸っぱさがヨーグルトムースに良く合うのだ。




 おやつを食べたら餃子作り再開。子供達も包みたいとの事なので、時間は掛かるがオーケーした。

 皆でワイワイ作るのって凄く楽しい。妙に挙動不審のバウンティも今は普通に楽しそうにしている。

 包み終わって時計を見ると五時過ぎていた。


「あ、シエナちゃん、ケイナちゃん終業だよー。ケイナちゃんは家に帰るんだよね?」

「はい」

「んじゃ、おみやげねー。少ないけど」


 お昼に作ったムース四個と作りたての生の餃子を種類毎に十個ずつ包んで渡したが、ケイナちゃんがポカーンとしている。反対にシエナちゃんはクスクスと笑っている。


「カナタ様はおみやげ攻撃があるって言ったでしょ?」

「えっ、でもシエナさんは?」


 シエナちゃんはシュトラウト家でご飯が用意されているし、キッチンはシェフさんの領域なのであんまり使わないようにしているらしいのだ。

 なのでムースだけ渡す。


「うふふ。カリメア様とゴーゼル様のもですね?」

「うん、よろしくー」


 いつものごとく、大量に作っているのだ。横でアダムさんがまだ余ってるのかと冷蔵庫を確認していた。煩いので無視でいいだろう。

 ちなみにあと二個ある。子供達が寝た後のこっそりおやつなのだ。もし食べなければ、明日の朝お皿に分けてフルーツか何かと一緒に食べる。




 フライパン二枚稼働で、バウンティと手分けして焼いて、皆でモリモリ食べた。お昼もモリモリしたのに。この調子では下っ腹がプニプニしだす予感。やっぱりおやつは止めておこうかな。

 ご飯の後は、子供達をお風呂に入らせて、歯磨きまで終わらせる。リビングで遊びながらリズさんのお迎えを待った。


「お待たせー! あら、お風呂も入ったのね!」

「うん。はもみがいたよ!」


 リズさんが小声で『ありがとう、助かるわ』と言っていた。二人を送り出し、バウンティにアステルとイオを寝かし付けてもらう。その間にアダムさんとクラリッサさんは戸締まりの確認をしてくれた。


「私達も帰るわね」

「はい! 今日もありがとうございます!」

「んじゃ、玄関の戸締まりもちゃんとしなよー」

「はーい」


 二人を見送って主寝室に行くと、バウンティがベッドではなくテーブルの方に座っていた。

 妙にソワソワしている? いや、ウキウキ? 何となくお花が飛んでるって感じだ。

 仕方ないので向かい側に座ると、ズイッと上半身を乗り出して鼻息荒く話し始めた。


「明日、アステルとイオが寝たら殲滅しに行ってくる!」


 何を言っているのか良く解らない。脳ミソに届かなかった。バウンティの言葉を反芻する。


 ――――殲滅しに行く? 明日? 夜?


「……えと、来週にって話、だったよね? 明日? から? いつまで? あ、どこに行くの?」

「早い方がいい! 取り敢えず、ローレンツにある組織二つ潰す! アダムと手分けしてアジトを全部破壊してくる! 朝には戻るから、ちゃんと俺の飯も用意してて?」

「あ、はい。朝ご飯はいるんですね…………え? アジトって何ヵ所?」

「五ヵ所!」


 なぜかバウンティは誇らしそうで、誉めて欲しいと顔に油性ペンで書いてるくらいに解りやすく、フンフンと鼻息荒くしていた。


「二人で?」

「ん! 俺三ヵ所、アダム二ヵ所!」

「それ、一晩でやるの? 少しずつじゃ…………駄目だから作戦か何か決めてたのか……。大丈夫? ゴーゼルさんとか、カリメアさんとか、クラリッサさんとか、一緒に……」

「……カナタは俺が信用できないのか?」


 バウンティが途端に不機嫌になってしまった。信用してないとかじゃ無い。騎士団に無双出来るくらいなんだから、怪しい組織の人達くらい簡単に捻り潰せるんだろう。


「…………怖いだけ。爆発の時も、毒の時も……私は間に合わなかったから。私は……いつも助けてあげれてないから」


 心臓がギリギリと締め付けられるような感覚がする。立ち上がり、バウンティの隣に移動する。袖を引いてベッドに向かった。

 バウンティはただ黙ってついて来た。ボスンとベッドに押し倒しバウンティの腕の中に入る。


「…………カナタ?」


 困惑の滲み出るような声で呼ばれたが無視。バウンティの胸板に顔を埋め左右に振る。バウンティの匂いをめいいっぱい吸い込み、吐く。


「はぁ。バウンティの匂い」

「? 一緒のボディソープだが?」

「ん。でも、何か、バウンティの匂いで満たされたい」

「っ……ぁ…………そ、か」


 チョロンティさんはどんなタイミングでもチョロい。太股辺りにナニかがグイグイ来ている。これも無視だ。


「怪我、一つしたら駄目だからね? ちゃんと朝までに帰って来るんだよ? 殲滅作業より自分を一番に考えてね?」

「ん! ちゃんと無傷で帰って来る!」

「おねがいね。……じゃ、おやすみ」


 そっと目を瞑ったがユサユサと揺らされて起こしてくるが、私は眠りたいのだ。何か言うバウンティをまるっと無視して寝落ちした。




 ちょっと不安になったカナタさん。


次話も明日0時に公開です。

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