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114、行きたい。

 



 カリメアさんのグチを聞いていたらお昼ご飯が出来上がったとケイナちゃんから報告があった。


「いただきます!」

「あら、お米美味しいじゃない。あれから二時間は経ってるわよね?」

「保温機能、最高です! いつでもホカホカ! 冷えたら、チン! むふふ」

「貴女、本当に食べ物への執着が凄いわよね」

「だって、ずっと当たり前だったのに、急に食べれませんってなったんですよ!? フラストレーション溜まりまくりですよ!」


 バウンティがウンウンと頷いている。


「何よ、バウンティまで」

「いやな、凄いんだ――――」


 バウンティがコンビニや薬局、玩具屋さん、食事したお店の話を楽しそうにカリメアさん達にしている。珍しく饒舌だ。


「……何を堪能して来とるんじゃ! 狡いぞ!」

「「パパ、ずるいー」」

「ち、治療もしてたっ! 退院出来たお祝いだって、カナタが連れてってくれたんだっ!」


 子供達にまで責められてアワアワと私のせいにしだした。お馬鹿さんだ。まぁ、可愛いから許してやろう。

 カリメアさんがジットリと見てくる。


「何ですか?」

「後で話すわ」

「へい……」


 またこってりと怒られるのだろうか。




 昼食が終わり、カリメアさんが私だけダイニングに残るように言い、皆をリビングに追いやった。

 カリメアさんから出る雰囲気が何か物凄く重たい。


「…………行きたいわ」

「へ?」

「私も、行きたいのよ! カナタの国に連れていきなさい!」

「へっ? えっ…………私はいいですけど。でも、数日寝込むらしいですよ? ……髭の人、ガチで泡吹いてたし。バウンティはゲロゲロでしたけど……大丈夫かなぁ?」

「……さっきのバウンティの話を聞いて、覚悟したのよ。恥を晒してでもって!」


 ――――えぇぇ。そっちの覚悟!?


「えっと。了解です。いつがいいですか? 数日は寝込む方で日程の確保しなきゃですよね?」

「……来週、バウンティとアダムを()()に向かわせるのよ。それで、いっその事、子供達もあっちに連れて行ってれば安心じゃないかしらとも思うのよ……だけど、バウンティがあんな風になるのに子供達は耐えられるのかしらって……」


 って事で、私とだけ話したかったのか。

 

「本人達が行きたがるならいいんじゃないですかね。でも……バウンティが危険な目にあってるのに私…………」

「アダムも行かせるし、大丈夫よ。そもそもバウンティ一人でも大丈夫よ。それに、私達があっちに行くのならクラリッサもバウンティ達に同行させれるし」


 ――――護衛対象がいないなら、って事か。


「……バウンティとも相談します」

「えぇ、よろしくね」


 カリメアさんとリビングに向かうと、バウンティが走ってきて心配そうに顔を覗き込んでくる。


「っ、ちゃんと夜話すからな?」

「? あー、そっちもあったね。はいはい」

「……カリメアに何か言われたのか?」

「んーん。日本観光計画しただけー」

「ん、行くのか。俺も!」


 ――――でしょうね。


「来週、アダムさんとバウンティはカチ込みだって」

「ん?」

「その間にあっちに避難しといたらって話でね」

「……来週。来週は駄目だ。直ぐ行って、直ぐ帰って来るならいい……俺も一緒に行く!」


 イジイジバウンティになってしまった。軽く無視して子供達を呼ぶ。


「アステル、イオ――――」


 転移するとどんな事になりそうか、ゆっくりと説明し、理解できているか確認する。

 二人ともバウンティが戻って来た時の惨状を見ていたのでウンウンと頷いている。ちゃんと理解出来ているようだ。


「で、行ってみたい? 怖いならシュトラウト家の方にお泊まりとか、そもそも私も行かないとか、色々選択肢はあるんだけど――――」

「「いーくー! いくいく! いーくーのー!」」


 二人にギャーギャーと叫ばれた。


「ゲロゲロ、オエオエ、グッタリになるかもなんだよ?」

「わかってる! グランパとグランマにあいたいの!」

「イオも?」

「うん! ぼくもあいたいっ! がんばってゲロゲロする!」


 いや、ゲロゲロを頑張らなくてはいいんだけどね。それよりも後ろで魔王になっているバウンティをどうにかすべきだよね。


「カリメアさん、バウンティは却下だそうです。来週のお仕事落ち着いてからとかはどう――――」

「来週以降も駄目だ!」

「え? 何で?」

「……」


 色々片付いてからのんびり行くのも良いだろうと思ったけど、それも駄目らしい。理由を聞いたが何故か押し黙られた。


「バウンティ?」

「ら、来週以降はまだどうなるか解らないから駄目…………」

「あら、じゃあ暫く待つわよ?」

「…………ん、二年くらいは待って」

「「は?」」


 なぜに二年も寝かせようとしてるんだ。


「いやいや、長すぎですよ」

「アステルとイオ! 体力が心配だ!」

「いや、さっきは事件的な方の心配だったよね!?」


 何を隠してるのか言えと詰め寄るがグリングリンと視線をずらされる。ゴーゼルさんをふと見たら、オロオロした様子なので何か知ってそうだ。


「ゴーゼルさーん? 言え!」

「ちょ、カナタ? 何か怖いぞ!?」

「そーゆーのいいから、言え!」

「バウンティが夜話すからな? それまではちょっと保留にしといてくれんかの?」

「え? 全部繋がってるんですか?」

「いや、まぁ、その…………バウンティと話し合ったほうがええ。うむ、ワシ等は帰ろうかの!?」

「えっ? なぜですの? まだ――――」

「カリメア! 帰るぞ!」

「え、えぇ……解りましたわ」


 なぜかゴーゼルさんがカリメアさんを引き連れて帰ってしまった。

 それにつられてジュドさん達も帰る事になった。


「何か、ごめんなさい。追い返すみたいな事になっちゃった」

「いいのよ」

「マシューくん、また明日ね?」

「うん! カナタ、バイバーイ。イオとアステルもバイバーイ」

「「バイバーイ」」

「え、明日預けてもいいの?」


 未だに色々と狙われている。それでも良いならと確認すると、構わないと言ってもらえた。

 玄関で三人を見送った。


「ママー、ねむい……」


 イオがお昼寝したいようなので、アステルも一緒に子供部屋へ連れて行った。

 



 お昼寝中も何度かバウンティに突撃したが、夜話すの一点張り。

 夜ご飯を済ませても話してくれない。

 アダムさんとクラリッサさんにまた明日と挨拶して、子供達とお風呂に行こうとした。


「お風呂は俺入れるから。カナタは荷物の片付けとかあるだろ?」

「あ、うん。じゃ、よろしくね」

「ん」


 何だか良く解らないが気は利いてる。確かに旅行の荷物は手付かずで放置したままだった。有り難く荷物を片付けたりした。

 話しは子供達が寝た後にでもしてくれるのだろう。




 魅惑の地へ……。

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