113、白米美味し。
バウンティがラルフさんに色々と運んでもらっている間に、玩具店で購入した物の紹介に入る。
木のブロックを出す。
「む? ワシのブロックを落として消すゲームの形にそっくりじゃの?」
「そうなんですよ。でも、これはみんなで色々出来るし、レベルの設定もあるんですよ」
ベースの木枠に仕切り板を付けて遊ぶのだが、仕切る場所によって難しさが変わって行くのだ。
ルールブックが付いており、指定されたブロックで木枠を綺麗に埋めなければいけない。
「む、こうか…………いや、こうか! 出来たぞ!」
「はい、それはレベル二です」
二箱買って来ていたので、皆で順々にチャレンジした。
ゴーゼルさんは、結構に悩んでレベル二をクリアした。そして、レベル低さにかなり凹んでしまった。
カリメアさんはサクサクとレベル十までクリアしていた。
私はレベル五で諦めた。バウンティはまさかの全クリア。
「記憶力と空間認識力だけは良いもんね。だけは!」
「ふっ。負け犬の遠吠えか?」
バウンティのしたり顔が憎たらしい。ものっそい、憎たらしい。カリメアさんはかなり気に入ったようだ。複製も楽なので、以前リバーシーでお世話になった木材工房に早急に作るように手配していた。
「カナタ様! スイハンキサンがピーヒョロと鳴いてます!」
シエナちゃんとケイナちゃんが慌てて走って来た。
「おー。炊けたんだね」
確認の為、またもや全員でキッチンへ移動してきた。
小皿に一口分ずつご飯を盛って渡す。パクッと一口食べてみると、ビックリした。ローレンツで食べていたお米と全然違った。
「何か懐かしい味がする! 白米ってやっぱり最高だなぁ」
モスモスと白米のみを食べる集団。シュールだ。
「美味っ! 白米ってこんなに味あったっけ? ってか匂いも凄いね」
「何これ……物凄く甘いわよ? しっとり? いえ、ねっとりかしら? それに、とてもふっくらと丸くて艶々しているわね。どこ産のお米なの? それともスイハンキサンの力なの?」
確かに、こちらのお米は少しパサッとしていて細い。普通に美味しいと思っていたのは土鍋で炊いていたからなのかとも思ったけど、朝は炊飯器で炊いたし。慣れだろうか?
そう言えば味の強い新米よりも、少し古くなって風味の落ちたお米の方がおかずには合うとか聞いた気がする。
そして、料理人のジュドさんはともかく、相変わらずカリメアさんは細かい所に良く気付く。
「私の国のお米なんです。ほぼ毎食お米の家庭も多いので、昔から品質改良が盛んなんです。これはブレンド米って書いてあるので、どこ産かまでは……」
ブレンド米の説明はいつも通りスマホで調べて。そして、これを買って来たのはいつも家で使ってたのと……ぶっちゃけると安かったから! 美味しさも安さも大切なのだ。
「貴女、お米ばっかり食べてるものね」
うん。パンはほとんど出してない気がする。
「あの、カナタ様、お昼はどうされますか?」
「ご飯炊いちゃったし、何か合いそうなおかずがいいなぁ」
「ちんじゃおろぉすぅ!」
「あ、うん。それで一品決定ね。メインは肉々しいのがいいよね? …………あ、生姜焼き食べたい!」
「急に!?」
ご飯をモリモリたべたいのだ。魚の塩焼きも捨てがたいが、ここではウケ無かったのでナシだろう。
味噌汁とサラダもシエナちゃんとケイナちゃんで作ってくれるそうなので、今日はお任せした。
リビングに戻り、渡し忘れは無いか確認する。
「よし、大体大丈夫かなぁ」
「それにしても、貴女の世界には本当に脱帽するわ。良くこんなに色んな物を思い付くわね」
「こういうのって、『楽したい』、『便利にしたい』、『もっと簡単に』って思いが根底にあるんだと思います」
「ハァ。そうね。その思いが発展に繋がるんでしょうね」
なぜかカリメアさんが憂鬱そうだ。
「……ごめんなさい。色々丸投げしたり、事件起こしたりして。疲れますよね…………」
「何よ急に?」
「え、何か……憂鬱そうだから。私のせいなんだろうなって」
「あぁ、違うわよ。イーナがまだ戻らないから、執事に色々手配させてたら……ハァ」
「イーナ程の能力を求めるでない」
「それにしたって…………船の執事達の方が優秀だったわよ」
「まぁ確かにのぉ。カナタの方の執事の名前はなんだったかのぉ?」
「セルジオさん?」
「そうそう。あの者は中々に胆が据わっておったな。支払いはバウンティに一括でと言ったらサクッと処理しとったのぉ」
――――ん?
「何の支払いですか?」
「む? 謝罪で配った菓子とワイン代じゃよ」
じゃよって。あれバウンティ払いだったんだ。バウンティもビックリしてるし。ジュドさんは子供達からマジックショーでの話を聞き出して爆笑していた。
何でバウンティ払いなんだろうと思ったら、船での追加料金はバウンティのプレートで登録していたのでゴーゼルさんのプレート登録するのが面倒だったから、らしい。なんてしょうも無い理由なんだろうか。
「で、スムーズにいかないから、カリメアさんは疲労困憊って事?」
「そうなのよ。明後日にはイーナは戻るからそれまでの我慢なのだけどね」
明後日に戻るんなら、戻ってから色々すればいいのにと思ったが、どうやらイーナさんは数年内に引退したいので後続を育てたいそうだ。で、今回任せてみたものの……らしい。
「ふぅん。執事さんを二人体制とかにしないんですか?」
「…………無駄でしょ?」
「えー。一人で全部って大変ですよ? 役割分担、大切!」
「まぁ、いつもはイーナと執事で二交代制にはしてるから……まぁ、今は負担は大きいでしょうけど。でも、イーナは元々一人でも出来てたし…………」
「……カリメアさんがイーナさん大好きなのは解りました。あと、イーナさんは長年? 仕えてるから慣れてるってのもあるんじゃないですか?」
「……そりゃ、シュトラウト家に四十年仕えてくれてるけどぉ」
――――おっふ。思いの外長かった。
「執事さんは?」
「十年はいるわよ!」
「まぁ、はい」
そう言われると、何とも言い難いけども。
「……口出しはここまでにします! この話、お仕舞い!」
「投げたな」
「投げましたわね」
アダムさんとクラリッサさんのガヤが煩い。
イーナさんに残ってとも言えないし、今の執事さんが使えないって訳でもないと思う。だって、カリメアさんの元で十年続いてるんだから。
カリメアさんの求めるものが多すぎる。でも、イーナさんは答えれてる。ってのが問題なのだ。
どこかで折り合いを付けないといけないけど、そこは私の口出す所でも無い。なのでこの話はお仕舞いなのだ。
家でもお米を食べていたが、『手料理美味し!』としか思って無かったカナタさん。
次話も明日0時の公開です。




