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111、新しいお手伝いさんと、持ち込んだ物。

 



 夜中から謎の言動を繰り返すバウンティに子供達を向かわせたが、なぜか子供達までも挙動不審になっている。


「……ご飯、食べますよー?」

「「はい!」」


 全員が無言でソワソワしながらご飯を食べる。耐えられない。


「今日のお米、何か違うとか、ある?」

「んーん? ないよ? おいしー」


 土鍋で炊いた方が美味しいと良く聞くけど、最近の炊飯器は高性能なので、そんなに違和感は無いようだ。

 まぁ、たとえいつもの方が美味しいと言われようとも炊飯器を使うけど。


「あ! そうそう、今日から新しいお手伝いさんが来るって。一週間くらいで引き継ぎして、シエナちゃんはシュトラウト家に戻るって」

「えー。シエナちゃんがいいっ!」

「わたしもー」

「これこれ君達、誰が来るかも解ってないのにソレは酷いんでないかい?」

「「むー」」


 二人とも頬を膨らませてイジケている。可愛いので頬を人差し指で刺す。


 ――――プヒュー。ブヒュッ。


「「ママ!」」

「うひょひょひょ。可愛いねぇ。ちゃんとよろしくお願いしますって出来る?」

「アステルできるー」

「ぼくもする!」


 ならば良しと頭を撫でると、バウンティが羨ましそうに見てくる。


「秘密を話すんなら撫でてあげるよ?」

「っ…………」

「「いったら、だめ!」」


 子供達がバウンティを必死に止めている。一体何なんだ。


「ハァ、もういいよ。さ、お皿洗いしよ?」




 お皿を洗い、洗濯機を回していたら八時になった。


「おはようございます、カナタ様」

「シエナちゃん、おっはよー」

「カナタさん、おはようございます」

「ん? ケイナちゃんどーしたの? あ、クリフくんの忘れ物か何か? 代理で取りに来た?」


 昨日、忘れ物とか特に無かった気がするけど。


「違いますよ! 今日からお世話になります!」

「……」

「……」

「カナタ様?」

「ふばぁ! ケイナちゃんが新人さん!?」

「はい!」


 なんと。本気でビックリした。


「あれ? でも、ケイナちゃんってどっかのお屋敷のメイドさんの見習いに行きだしたばっかりだったよね?」

「はい。そこの御主人から言い寄られてて、嫌気が差してたんです。そんな時にカナタさんがお手伝い募集してるって噂を聞いて応募しました!」


 ――――いや、私は募集してないけどね?


「くそう、クリフくん昨日何も言って無かったから、ケイナちゃんの可能性に思い至らなかった!」

「え? クリフ昨日ここに来てたんですか?」

「うん。ご飯食べてったよ?」


 ――――あと、貢ぎ物も持ってったなぁ。


「へぇ。あ、あとクリフには教えて無かったので、普通に知らないんだと思いますよ?」

「え? 何で? 教えてないの?」

「え? 別にクリフに教えても何もありませんし」


 ――――うむ。

 眼中に無さすぎて泣けてきた。お母さん、応援してる! クリフくん頑張れ!


「ま、いいか。アステルー、イオー!」


 大きめの声で呼んだらパタパタ走って来た。


「ケイナねぇねだー!」

「ねぇね! あそぶ?」

「私、今日からここで働くんだよー?」

「「えー!」」


 どうやら子供達もビックリしたらしい。目をパチクリ開いて、叫んで、なぜかケイナちゃんの足にしがみついている。


「え? 何?」

「ルイスは、いっしょ、くる?」

「来ないよ?」

「よかったー!」

「えー、ぼくはあそびたいー」

「アステルはヤなの!」


 ケイナちゃんの弟、ルイスくんとアステルは仲が悪い。だけど、イオとは仲良しなのだ。


「おてつだいさんは、ねぇね?」

「うん。ケイナちゃんに決定なんだってー」

「ゆるーす!」

「ねぇねなら、ゆるーす!」


 シエナちゃんとケイナちゃんがポカーンとしていたので、新しいお手伝いさんが来るのに少し緊張と抵抗をしていたと話した。二人とも納得で、二人とも嬉しそうだった。


「私、ちゃんと学んで戻って来ます。待ってて頂けますか?」

「「うん! まってる!」」


 ――――約束したしね!


「ケイナ、バウンティ様に挨拶しに行きましょう」

「あー、バウンティはいいよ。今、拗らせてるから」

「またケンカされたんですか?」

「パパね、ママからにげてるの! ひみつ、はなしたくないから!」

「うん。で、アステルは教えてくれる?」


 アステルがお口にチャックをしてしまった。イオも慌ててチャックをした。開けなさいと言うが、口の前で人差し指をバツにして話そうとしない。本当に謎だ。




 シエナちゃん達から少し遅れて、ゴーゼルさん、カリメアさん、アダムさん、クラリッサさんが来た。


「おはよーございます!」

「おはよう。さ、持ち込んだ物を見せなさい」

「情緒!」


 カリメアさんのサクサク具合が酷い。

 チラリとバウンティを見るとアダムさんとゴーゼルさんと小声でコソコソ話していた。ゴーゼルさんはなぜかバウンティの頭を撫でている。


「何でゴーゼルさんには話すのに私には教えないの?」

「は? カナタには言っとらんのか!?」

「ん……だって嫌って言われたら……」

「馬鹿かよ! 大変なのはカナタちゃんなんだぞ! ちゃんと言っとけよ!」


 なぜかゴーゼルさんとアダムさんに怒られている。じっとバウンティを見詰めると、キョドキョドしながら「夜、夜! 必ず話す!」と言われた。まぁ、良しとしよう。


「あ、今日からケイナちゃんの研修ですけど、持ち込んだ物は出してもいいですか?」

「あら、今日からだったのね。良いわよ」


 カリメアさんのオーケーが出たので、ケイナちゃんのリビングの出入りを許可した。

 アダムさんとクラリッサさんを紹介して、みんなのお茶の準備をお願いした。


「さて、先ずは――――」


 化粧品やマニキュア、ネイルシール、歯磨き粉など、薬局で買った物を渡す。

 カリメアさんはホックホクしている。ゴーゼルさんは羨ましそうにじっと歯磨き粉を見ている。


「歯磨き粉は、ちゃーんとゴーゼルさんの分もありますよ?」


 色んなフレーバー歯磨き粉を渡す。

 チョコ、オレンジ、パイン、ハチミツ、キャラメル。子供用では無いのだ。大人用で売ってあった。


「ふおぉぉー!」


 ゴーゼルさん、超感激のようだ。バウンティが「師匠チョロい」と言っていた。君もだよと突っ込むのは止めてあげた。

 ついでにお菓子の補充分も渡す。スーパーの袋ごと渡したら直ぐさま肘に掛けて、オバサンのような感じになっていた。


「誰も盗らないから置きなさい!」

「むっ……アダムの目付きが怪しい」

「盗りませんって!」


 ゴーゼルさんが渋々と袋を手放した。その瞬間、後ろからキャッキャと子供達に奪われていた。

 

「グランパ、おもちゃであそばせてくれないから、おかしはオアズケ!」

「あのおもちゃはカナタが駄目って言ったんじゃよ! ワシじゃない!」

「ママとコーショーしっぱいしたの、グランパだもん!」

「だもーん。あ、サクサクのチョコだぁ」

「あぁっ! そのサクサクは止めてくれぇぇ……」


 子供達とゴーゼルさんのドタバタをのんびり眺めて、子供達の興奮が落ち着くのを待った。




 お久し振りのケイナちゃん。


次話も明日0時に公開です。

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