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107、船旅終了、ただいま!

 



 お昼ご飯を食べ終えて、アステルとイオはお昼寝をしている。今の内にと荷物をラルフさんに運んでもらった。


「これで最後だ」

「うむ、承知した」


 相変わらず格好良いラルフさん。荷物をくわえたラルフさんに手を振ると、フッと消えてしまった。

 あと一時間ほどで港に到着らしい。

 そろそろ子供達を起こしておこうと子供達の部屋に向かうとアステルは既に起きていた。


「イオー、起きて? もうすぐ到着だよー?」

「うにゅ…………うん、おきりゅ……」


 コシコシと目を擦って起き上がってくれたが、頭をフラフラさせている。大丈夫かと見ていたら、二分ほどでハッキリ目が覚めたらしい。ベッドから飛び下りて、シュタッと着地していた。


「もーすぐ、おうち?」

「うん。もーすぐだよ」


 イオがニコニコしながらメインサロンに走って行った。

 ゆったりと後を追っていると、曲がり角からアダムさんがチラ見えしたので何してるのかなと覗き込んだら、クラリッサさんの腰をギッチリと抱き寄せて、どえらく激しいキスをしていた。


 ――――うほぉう!


 声を出さなかった事を褒めてもらいたい。ただ、アダムさんとは一瞬目が合ったので覗き見はバレただろうけど。

 シャカシャカと歩いてメインサロンで冷たい紅茶をもらってがぶ飲みした。


「ぷへぇぇ……」

「どうしたのよ?」

「へ? いへ、ノドカワイテタ」


 挙動不審なのはスルーして欲しい。

 数分後、アダムさんとクラリッサさんが飄々として現れて、なぜか私が物凄く焦った。何で私がこんなにアワアワしているのかわからない。


「全く、帰ったら怒られるからってそんなに慌てないのよ」


 ――――ほぉぉう! ソレ忘れてた!


「……何よ? 違うの?」

「いえ……バレバレ?」


 カリメアさんから当たり前だと溜め息を吐かれた。セーフ! セーフだ。勘違いしてもらえてた。ただ、アダムさんがニヤニヤしているのは腹立たしい。何かどエラい嫌がらせがしたくなった。




「皆様、お疲れ様でした。ローレンツに到着でございます」

「「とーちゃーく!」」


 子供達はキャッキャと船外に走って行った。


「船長さん、皆さん、三日目ありがとうございました。帰り道? 気を付けて下さいね」

「はい、承知しました」


 船長さん達に挨拶をして下船した。

 バウンティはニッコニコしている。反対に私はちょっと陸酔い。地上なのに揺れる感覚が治まらない。


「ぬぁー、目が回るぅ……」

「ふぅ……地上、良いな!」


 二人で見詰め合い、笑ってしまった。相変わらず合わない感じが、いつも通りだと感じる。


「ママ! パパ! はーやーくー」


 アステルとイオがタクシーから顔を出して呼んでいる。運転手はニールさんのようだ。いつの間に呼び付けていたんだか。

 タクシーに乗り家に向かう。ゴーゼルさんとカリメアさんは明日の朝顔を出してくれるそうだ。アダムさんとクラリッサさんは一旦家に来て、夜はシュトラウト邸に戻るそうだ。

 後部座席でアステルやイオともうすぐ家だと話していたが、バウンティは助手席でニールさんと話し込んでいる。バックミラーから見える二人の顔が険しいので裏の依頼の事でも話しているのだろう。




 一時間ほどして、玄関前に到着した。相変わらずルール無視の自由走行だ。いっその事、道路法とかちゃんと制定して車道を作れば良いのに。それはそれで危険も増すのか……など、あちらの世界の道路や標識を思い出してボーッとしていた。


「カナタ!」


 名前を叫ばれてビクッとして、声がした方を勢い良く振り向くと『ブチギレ』と言って良いほどの形相をしたリズさんが玄関から出て来ていた。

 

「た、ただいま帰りました」

「…………どこも、怪我は無い?」

「っ、はい! 無いです。元気モリモリです!」


 ニヘラっと笑って返事をしたら、リズさんにギッチリと抱き締められた。そして、少し涙声で「怒ろうと思ってたのに、そんな顔を見せられたら怒れないじゃないの」と小言を言われた。


「心配かけてごめんなさい。あ、ケーキどうでした!?」

「っ、はぁ……美味しかったし、色々と発奮させられたわ」

「いひひっ。お土産、他にもいっぱーいありますからね!」


 ――――チュッ。


「ほぁっ」

「あら、ごめんね。ついついしちゃったわ」


 リズさんにおでこにキスされた。更に、丁度良い高さにあるとまで言われて複雑な気分だ。

 家に入ると皆に出迎えられた。ジュドさんから始まり、皆にハグされつつ謝り倒した。

 アステルとイオはマシューくんの頬にムッチュムッチュしていた。マシューくんが嬉しそうなので止めはしないが、ジュドさんの顔がニヤニヤ煩い。


「アステル、彼氏出来ちゃいましたよ?」

「はぁぁぁ!? ちょ、俺の計画! なんでぇぇ!?」

「ハッ、馬鹿ね。……何でバウンティも凹んでるのよ?」


 リズさんがジュドさんを蔑みつつ、バウンティを見てビックリしていた。未だに受け止めれていないと話していると皆がクスクスと笑い出していた。どうやら全員に聞こえていたようだ。

 はたと、未だに玄関にいた事を思い出して、皆とダイニングに移動を始めたところで一人ハグしてないと思い出した。


「クリフくん!」

「あ……その、俺、場違いだったよね?」


 両手を広げて抱き着こうとしたら、後退りされてしまった。


「えっ、何で?」

「何か、アダム様とかもだし、有名な人達ばっかりで……ジュドさんには入って良いって言われたけど、勝手に入っちゃったし……」


 既に声変わりを迎えて、甲高い可愛い声じゃ無くなったけれど、クリフくんはやっぱり可愛くて、ちょっと特別な存在。私達が子供の事をリアルに意識するきっかけになってくれた子なのだ。それにアステルとイオの良いお兄ちゃんもしてくれている。

 ギュギュッと抱き締めてただいまと言うと、はにかんでおかえりと言ってくれた。

 

「クリフ、心配かけてすまなかったな」


 バウンティが穏やかに微笑んでクリフくんの頭を撫でていた。バウンティにとってもクリフくんは特別な存在なのだ。


「クリフはその弱腰な所をどーにかしないとな」

「ジョシュ師匠……」

「……ブフッ」

「カナタちゃん……ソレでまだ笑ってるの?」


 笑いが漏れてしまい、ジョシュくんにゲンナリした目で見られた。仕方ないじゃないか『助手』で『師匠』なんだもの。謎の役職じゃないか。


「ハァ。また『焦げ茶色』のくだりか」

「えぇ。『焦げ茶色』のくだりです」


 バウンティが呆れながら言う『焦げ茶色』は、いわゆる日本語的な親父ギャグや異口同音で笑う私をディスる単語になっている。麦茶を煎る度に笑うので説明したら失笑された。『理解は出来たが何も面白くない』とまで言われた。そして、皆にも広まった。

 別にゲラでは無いと思う。…………と、思う!

 サッサカと歩いてダイニングに向かった。皆に軽く説明や謝罪もしないといけないが、皆で楽しくご飯を食べたい。




 クリフくんは、ジョシュくんに弟子入りしました。


次話も明日0時に公開です。

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