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105、船旅三日目、自称元気。

 



 朝起きて、バンザイをして、グググッと伸びる。


「んあー! よしっ」


 ――――グイッ、ドサッ。


 なぜかバウンティにベッドに引き戻された。


「もー! なーに?」

「元気になった!」


 バウンティの股間を見るが特段元気なようには見えない。


「ソコじゃねぇよ! 俺が元気になった!」

「……しょうもない嘘吐かないの」

「嘘じゃないっ!」


 じっと見詰めると一瞬瞳がフルッとぶれた。怪しすぎる。

 だけど、元気だと言い張っているし、この数日ずっと無下にし続けているので、チャンス的な物をあげてみよう。


「夜ご飯まで元気だったらいいよ?」

「言ったな?」

「言ったよ?」

「何でもするんだよな?」

「何でもしてあげるよ?」

「もう、取り消させないからな?」

「うん、取り消さない。約束する」


 バウンティがふんふん言いながら颯爽と着替え始めた。そんなに元気なら子供達を起こして遊んであげてとお願いすると「ん!」っと返事して消えて行った。

 私はゆっくり着替えて、下船の準備をする。ローレンツの港には十六時に到着らしい。シエナちゃんにホーネストさん飛ばして夜ご飯の準備をしててもらおう。


「ホーネストさん、シエナちゃんに『十七時過ぎには着くと思うんだぁ、夕飯の準備お願いしてもいい?』ってお願いします」

「はーい、いってきます!」


 シエナちゃんからの返事は予想外だった。

 私達が今日帰って来ると解ったので皆が家で待っているらしい。夜は皆とパーティーにするか、家族だけでご飯にするか聞かれた。それはちょっと直ぐに返事出来ない。

 慌ててメインサロンに向かうと、カリメアさんは今朝も優雅にコーヒーを飲んでいた。

 

「――――って事なんですけど、どーしましょ?」

「皆って誰よ?」


 リズさん、ジュドさん、マシューくん、テッサちゃん、ノランくん、ユーリちゃん、ジョシュくんが今の所はリビングでくつろいでいるらしい。


「はぁ、犯人はジュドね」

「まぁ、でしょうね」


 勝手に集合させて、勝手にくつろぐんなら犯人は間違いなくジュドさんだろう。

 子供達を連れて来たバウンティにも報告する。

 

「…………解散! ……させたくは無いんだな?」


 解散と言った瞬間に顔が曇ったのがモロバレだったらしい。バウンティがホーネストさんを貸してくれと言うので呼び出した。


「ジュドに『それ以上、招待客を増やすなよ』で頼む」

「はいはーい」


 すぐさまホーネストさんが帰って来た。


「ジュドさんから『りょーかーい。って言うか、他に何か無いの? あ、帰って来てから感動の再会、若しくは謝罪会見してくれるパターン? じゃ、楽しみにしとくー』だってよ」

「……何で謝罪?」

「一連の件はバウンティ策略だと思われてるんでしょ」


 カリメアさんの興味無さが酷い。


「何で俺が……」

「謝罪会見するんならバウンティでしょ。ちゃんとやりなよ?」

「あ? お前が元凶だ……ろ……」


 ――――そうだね、私のせいだね。


「いや、その……ごめん」


 ――――ズビッ。


「あー、パパがなかせた!」

「あーぁ、ママないちゃった。シャザイカイケン!」

「っ……お前達、意味解ってないだろ!」

「アステルしってるもん! みんなのまえで『もうしません、ごめんなさい』っていうやつでしょ!?」


 何か違う気がするけど、大まかには合っている。


「カナタ?」

「……だ、いじょうぶ。……トイレ、いってくる」


 パタパタ走ってトイレに籠る。

 次から次に涙が零れてくる。拭っても、押さえても、叩いても、止まってくれない。ふとした拍子に溢れ返る感情を何とかしたい。


 ――――コンコンコン。


「っ、ごめんなさい! すぐ出ます!」

「私よ。カナタ、大丈夫? ごめんなさいね。本当に、ごめんなさい。私のせいでケンカになるのよね!?」

「……違います」

 

 これは自分の問題だ。未だに受け止めきれていないんだと思う。『大丈夫』と小声で言い聞かせる。大丈夫、もう二度とこんな事は起こらないのだから。大丈夫。


 ――――ガチャッ。


「すみません! 帰れるからか妙に感情が昂っちゃって」

「……そう?」


 カリメアさんはわざと聞かないでくれる。有り難い。バウンティは子供達と遊びながらもチラチラこちらを見てくる。


「さ、朝食にしましょう」

「「はーい!」」


 子供達がパタパタとダイニングに走って行った。ゆったりダイニングに移動していると後ろから引っ張られた。

 壁に押し付けられ、顔の横にバウンティがズダァァンと突っ張りをした。掌底打ちでもいい。決して壁ドンでは無い。音からして、完全に攻撃だった。


「カナタ」


 私の名前を囁きながら、突っ張りとは反対の手でそっと頬を撫でてくる。ビクッと肩が縮こまってしまった。その瞬間、バウンティの顔が何とも言えないほど悲しそうになった。


「……」


 ――――チュッ。


 バウンティがおでこに優しくキスだけして、ダイニングに行ってしまった。訳が解らない。

 のったりバウンティの後ろを歩いてダイニングに行く。


「パパ、ママ、おそーい」

「ん、すまん。キスしてた」

「なかなおり?」

「ん」

「アステルのいったとおりでしょ? キスすればママごきげんになるの!」


 そういうことか。それならソレに付き合ってあげないとね。


「うん。もうごきげんだよー。ありがとアステル」


 アステルを抱き締めて頬にキスした。癒される。そういえばバウンティも良くキスしたり抱き着いたりして来ては癒されたいとか言ってたっけ。私がアステルやイオに抱き着いて癒されているのと同じなのかもしれない。

 どうでもいい分析をしながら朝ご飯をモソモソと食べた。




 口が滑っちゃったバウンティ。

ポロリと漏らされた本音は結構痛いなと凹むカナタさん。


次話も明日0時に公開です。

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