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103、船旅二日目、のんびり過ごす。

 



 朝起きて、のんびり外を眺める。

 昨日は子供達のお昼寝の間にバウンティがチョイ復活し、それからは大人しく過ごしてくれた。夜ご飯も楽しく食べて、お風呂は無し。寝る時に多少グズったが、まぁ概ね平和だった。


 ――――チュッ。


「おはよー。どお? 起きれそう?」

「…………ケチ」

「まだグズってたの!?」

「…………ケチ」

「二回も!?」


 寝間着を脱がなかっただけでこんなにもイジケられるとは。海の上だからなのか、ちょっと肌寒いので「やだよ」と言っただけなのに。


「復活まで禁止でしょ?」

「…………ケチ」

「まだ言うか!」


 グズグズ言うバウンティは無視して着替えてメインサロンに向かった。

 カリメアさん、ゴーゼルさん、子供達は既に起きていた。サロンではカリメアさんが優雅にコーヒーを飲んでいた。


「おはよう、貴女も温かいコーヒーでいいの?」

「はい、お砂糖とミルクたっぷりで!」

「まだブラックが飲めないの? 全く、お子ちゃまね!」

「むーっ。ゴーゼルさんと子供達は?」


 一旦、上に行ってくじらを探そうとしたが、流石に寒かったらしい。今は操舵室で遊んでいるそうだ。


「また船長さんの邪魔してるのかぁ」

「まぁ、朝食が出来たら飛んでくるわよ。ところで、バウンティは?」

「もうすぐ来ると思いますよー。ベッドでグズグズはしてましたけど、昨日よりはマシそうです」


 暫くカリメアさんとブロック開発の事で話しつつ、玩具屋さんで見た物でこちらで開発が出来そうな物も話したりしていた。


「ママー、おはよー!」

「おはよう。どうだった?」

「くじら、いなかったー」

「でもね! イルカいたよ! じゅっぴきくらいでね、ピョーンピョーンってとんでたの!」

「あとね、ピューイピューイってないてたよ!」

「マジか! 良かったねぇ」


 子供達は楽しそうにキャッキャ話している。ゴーゼルさんはあふあふと欠伸をしていたのでお礼を言った。


「いんやぁ、楽しかったんで、ええんじゃよ」

「この人が眠いのは夜中までブロックで遊んでたからよ」


 ブロックに布が掛けてあったので、昨日から何か作り途中なんだろうなと放置していた。


「何作ったんですか?」

「むふふふ。ジャーン」

「おぉっ」


 ゴーゼルさんが布を外すと、大きな船が現れた。かなりクオリティが高い。ちょっと感嘆の声が漏れてしまった。


「グランパすごーい!」

「グランパつくった? ……しゅごい」


 アステルは感動、イオは圧倒されたようだ。

 ブロックの船で遊んでいるうちにのったりとバウンティが現れ、少しすると朝食が出来たとメイドさんに言われた。


「シャラ、クラリッサに『そろそろ起きなさい。あと、アダムも起こしてきなさい』って伝えて頂戴」

「はーい、いってきます!」


 シャラちゃんに手を振って見送る。いや、すぐ側なんだけどね。歩くの面倒だったんだろうね。


「ただいまー。伝えて来たよ」

「そっ、御苦労様」


 ダイニングに移動して席に着くと、バタバタとアダムさんとクラリッサさんが入って来た。


「すんませーん。寝坊しました」

「申し訳ありません」

「いーのよ。一応夜警もしてたんでしょ。無理の無いようにね」

「はい!」


 アダムさんがキラッキラの笑顔で答えていた。クラリッサさんはシュンとしている。


 ――――スンスンスン。


 バウンティがなぜか鼻を鳴らしている。お風呂に入って無いから汗臭かったのだろうか。

 ちょっと不安になって衿ぐりから服の中に鼻を入れて匂いを嗅いでみる。が、自分の体臭って解らない。


「ごめん、汗臭かった?」


 小声でバウンティに聞くが無視された。そしてずっとアダムさんを見詰めている。真顔で。アダムさんはニヘラっと笑い返しているのが更に謎だ。


 ――――何だ? 新たな恋でも芽生えたのか!? BとL的な?




 朝ご飯を終わらせて、メインサロンで各々寛ぐ。バウンティは未だにアダムさんを見詰めたままだ。時々クラリッサさんも見ているが話し掛けはしない。何なんだ。


「カナタ、膝枕」


 急にソファに連れて行かれ強制膝枕。謎すぎる。

 バウンティの頭を撫でながら聞いてみた。


「どーしたの? 何か…………不機嫌? て程でも無さそうだけど」

「ん」


 それだけ返事すると、ぐるりと寝返りをうって顔を私の体の方に向けて、またスンスンスンと鼻を鳴らしだした。


「えっ、臭いの!?」

「んーん。カナタの匂い好き」

「カナタ臭……何か嫌だなぁ。あと、バウンティが変態くさいし」

「……うるせぇ」


 なぜかキレられた。グロッキーバウンティ中はワガママちゃんだから放置しとこう。

 暫くバウンティの頭を撫でていると子供達がバウンティの上に乗ったりして遊び出した。


「これこれ、ゲロゲロ出ちゃうよ!?」

「パパ、まだげんきない?」

「ん、ちょっと元気だ」

「いっしょに、おそといける?」

「…………いく」


 決死の覚悟のような顔をしていた。止めておけば良いものを。大型船と違って外は揺れが酷いし磯臭い。余計に酔うような気がする。


「バウンティ?」

「行く!」

「はいはい。いってらっしゃい」


 ゴーゼルさんもついて行ってくれるらしいので任せた。

 メインサロンでのんびり紅茶を飲む。最近色々頑張りすぎてちょっと疲れが取れない。何もせずにボーッと外を眺めたりして過ごした。




「ただいまー。おそと、あつい!」

「あついけど、さむい!」


 ――――どっちだ。


 どうやら日差しが強くて肌はヒリヒリするが、風は冷たいと言いたいらしい。そういえば赤ちゃん用の日焼け止めを買っていた気がする。

 荷物を探したが見つからないのでローレンツの自宅に置いてきたのだろう。


「ちょっと、いってきます」







******

******







 家のリビングにお尻で着地。トランクを開けてゴソゴソしていたらシエナちゃんに見付かってしまった。


「もー、怖いから止めてくださいよ!」

「もー、またホウキで撃退しようとして! 危ないよ!」

「あ、カナタ様、ご報告してませんでしたが、新しい使用人が決まりました。ご帰宅の翌日から勤務して、一週間ほどで引き継ごうと思っております」

「りょーかーい! どんな人?」

「ふふっ、秘密です!」


 シエナちゃんにしては珍しく焦らして来た。脇腹ツンツンしたりしたが口を割らないので諦めた。


「あと、ケーキはラセット亭で皆さんと一口ずつ分けながらいただきました。ジュド様がとても懐かしそうにしてらっしゃいましたよ。テッサは放心してました。リズ様は帰ってきたらシバくと息巻いていらっしゃいます」

「むあー。あと、一日半で着いちゃうよ……取り敢えず、あっちに戻るね。また明後日!」

「はい、お気をつけて」







******

******







 トスンとバウンティの膝の上に着地。


「ふいー。やっぱり膝の上が一番痛くない」


 日焼け止めをアステルとイオに塗りたくる。甘い匂い付きだったので二人ともとても喜んでいた。


「おなかへったー」

「ちょっと早いから、フルーツでも食べてたら?」

「「うん!」」


 カリメアさんにも日焼け止めを渡しつつあっちで買っておいた物の話しをする。

 

「あぁ! 流石ソウコね。私の好きなものが良く解っているわ!」

「へいへい。すんませんねー。食べ物ばっかりで!」

「あら、でもドライヤーは好きよ? ほんと、貴女の国は素晴らしいわね。行ってみたいけど、私達が飛ぶとどのくらい大変な事になるかしら?」

「…………ヤバい」


 バウンティがボソリと呟いた。


「へ?」

「アレ、ヤバい。確実に二日は寝込みたいくらいにキツい」

「え? 貴方、誕生日パーティーの間、平気そうにしてたじゃない」

「やせ我慢してた……」

「歩くのやっとって感じだったもんね?」

「ん。髭、泡吹いてただろ? たぶん、普通の人間はそうなるんだと思う」

「あー、誘拐された時のやつ? 人間が泡吹くかぁ?」


 アダムさんは怪訝そうに眉を寄せていたが、マジで泡吹いていた。バウンティがザックリ剣を刺したらチョイ覚醒してたけど。


「怖ぇ。倒れてる人間を刺すとか……」

「……だって。苛ついてたし」

「うはは。苛ついてたら、クラリッサも刺されてたんじゃね!?」

「ちょっ! もぅ! そういう弄り方しないで頂戴よ!」


 クラリッサさんがアダムさんをポカポカ叩いている。うむ、何だか仲良さそうで良かった。以前は二人ともそんなに関わらない感じだったけど、仲が悪い訳でも無いし、サラッと話しをしているのは見かけていた。端から見てて不思議な感じだった。

 もしかしたら、今回の事で打ち解けたのかもしれない。

 自分の事が暇になると、いや、問題は山積みだけど。今、頭を悩ませる事が特に無いので、ついついよそ様の事情に首を突っ込みたくなってしまう。

 仲睦まじく話す二人をニヤニヤと見ながら温かい紅茶を飲み干した。




 イルカって可愛いけど、わりと歯が尖ってるんだよなと、少し怖くも感じるカナタさん。


次話も明日0時に公開です。

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