100、取り敢えず、一旦終結。
全部ぶちまけてスッキリした。
ゴーゼルさんにもアダムさんにも謝る。
「そーいえば、アダムさんとバウンティって何の対決してるの? バウンティが一回負けたって言ってたけど――――」
「あー…………しょうもないんだよねぇ、知りたいの?」
「うん! 知りたい!」
しょうもないのなら余計に知りたい。一体どんな対決をしたんだ。そしてバウンティはどうやって負けたんだ。何かワクワクする。
「ええっと――――」
第一戦、腕相撲大会。決勝戦で、アダムさんの負け。三十秒の激戦だったとか。
第二戦、水泳二キロ対決。バウンティに三分差でアダムさんの負け。
第三戦、ナンパ対決。一時間でどれだけ誘えるか。バウンティの圧勝。
第四戦、十キロマラソン大会。バウンティ一位、アダムさん二位、ゴーゼルさん三位。
第五戦、逆ナンパ対決。アダムさんの圧勝。バウンティは一人として声をかけられなかった。
「待って! ソレ、何戦までやってるんですか?」
「え、この前、第二十戦したぜ?」
――――いつの間に!? ってか、やってる内容が物凄くショボい!
取り敢えずバウンティが負けた回だけ聞いた。
「バウンティが負けたのは、第十八戦の第二回逆ナンパ対決だったなぁ。『最近は声掛けられる!』って言うからやったら、やっぱりボロ負けでさぁ! ばぁさん二人に声は掛けられてたけど、ぶひゃひゃひゃ!」
「二十戦目がこの前なら…………十八戦って最近? だよね?」
「え……あっ。まー、その。逆ナンパっつっても、話し掛けられるかどうかだけだから! やましい事とか無いから、な?」
「ん? 何の話だ?」
アダムさんが視線をさ迷わせながら対決の内容を話したと言った瞬間、バウンティがあからさまに私の機嫌を取り出した。
「……まぁ、詳しくは今度聞くよ、今度ね。ところで、明日乗る船ってどれですか?」
「あー、貴方達が予約してたのを予約し直したのよ」
「おぉっ、ありがとうございます」
「でも、知らなかったわ、王都から乗れるようになってたのね」
「ですよね、ビックリでした……値段も」
だけど、子供達は嬉しそうだし、まぁ良いか。
今日の夜ご飯はフリードさんにお任せして荷物の準備をする事にした。
「あの……カナタ」
「はいはい?」
「私、どうしたら良いかしら?」
「はい? 何が?」
どうやら、元々はローレンツについて来て、暫く私達の護衛をする予定だったようだ。なので同じ船に乗るつもりだが、嫌では無いかの確認をしたいようだ。
「うん、ありがとうございます。あっちでの滞在はどうするんですか?」
「えっ、一応シュトラウト邸にお世話になるつもりだけど……」
「おぉ、了解です。んじゃ、ご飯の用意はお昼と夕ご飯くらいかなぁ?」
「あ! 俺の分も!」
どうやらアダムさんも暫くローレンツにいてくれるらしい。
「了解でーす」
「待って! カナタ! 本当にさっきので全部水に流すつもりなの!?」
「……うん」
そりゃ、ちょっとはまだ納得出来なかったり、モヤモヤする事はあるけど、クラリッサさんの言い分も行動も、実は理解出来ている。ただ私が嫌な方法だったってだけだ。それを理由にクラリッサさんに当たるのは間違ってた。
「さ、夕飯の支度が終わったわよ。ダイニングに行きましょ?」
「「はーい!」」
夕ご飯やお風呂を済ませ、子供達を寝かせた。カリメアさんにリビングに来るように言われていたのでバウンティと向かった。
「取り敢えずね、色々調べはしたんだけど、各国の主要な役職や地位の者が出した裏の依頼については解決しそうよ」
「えっ、それは……何かの犠牲を払ったり、お金を払ったり、してません?」
「んー。大丈夫だと思うぜ?」
アダムさんがニヤニヤしている。意味不明だ。
「各国に今回、というか今後もだけどな――――」
バウンティやその家族に危害を加えるような依頼を出した者の国が判明した場合、その国に私が無償で教えていた情報の情報料を請求する。今後、新に判明した情報があっても開示は行わない。また、その旨を各国にも通達する。
「って、送る事になったんだよ」
「むーっ…………むむむぅぅぅ」
「貴女の事を守ろうと思って、ハチミツとかの情報は貴女の名前を伏せて各国に通達していたのよ。今回、それを開示して各国のお偉いさん達を脅す事にしたわ。そうすればお偉いさん同士で見張っててくれるわ。貴女が有料にしたくないのは解ってるのだけどね、今回は折れて頂戴?」
「うぅ……。はい。仕方ないですよね。先ずは自分達を守らなきゃ……」
バウンティが横で頭を撫でてくれた。
「それから、どこぞの組織的な所から出た依頼については、追々潰しに行かせるわ」
「……それ、俺にっすよね?」
「ええ。アダムとバウンティのペアが一番安全よ。クラリッサはその間はカナタ達の護衛よ」
「はい、承知しました」
なんだか着々と話がまとまりつつある。
「ありがとうございます。私達は、外出禁止?」
「そこなのよね…………流石に、数日は大人しくしておいて欲しいけど、公園で子供達から目を離さずにいれるなら良いんだけれど?」
バウンティの目がふよふよさ迷っているって事は、だ。無理なのだろう。
「まぁ、暫くは室内でハッスルさせます。新しい玩具もあるし
、大丈夫かなぁ」
「なるべく室内で遊んでちょうだい。頼むわね?」
「はい!」
中古だけどテレビも手に入れたし。ブロックにはまだまだ熱中しているし、暫くは大丈夫だろう。
船は明日の十時に出発なので今日はゆっくり寝ておくようにとカリメアさんに言われ解散になった。
部屋に戻り、ベッドに座りボーッとする。
バウンティの胡座の中に座らされ、後ろ抱きにされていて動けないってのもあるが。まぁ、ボーッとしたいのだ。
「ハァー」
「カナタ?」
ボーッとしていたら溜め息が漏れてしまった。何だかどっと疲れた。けれど、夕方まで寝ていたせいで全く眠たく無い。
「カナタ!」
「ん? なーに?」
「集中して?」
何にだろうかと思ったら、どうやらバウンティは甘い時間のつもりだったようだ。状況を考えて欲しい。そもそも、バウンティはまだフラフラしているくせに。
「全快しないと禁止!」
「なっ……! 禁止って……医者が何ヵ月も後遺症、残るって……何ヵ月も!」
えらく強調してくる。仕方無いのでふらつきや目眩が治ったら解禁すると約束した。
「……約束だからな。お前が『何でもする』って言ったんだからな!」
「はいはーい、約束ね。ほら、布団に入ろう?」
「ん!」
何か墓穴掘った気もしなくないが、こんなんで言う事聞いてくれるのならいくらでも約束しよう。
わっほい、100話です。
キリ良く一旦終結。明日からは船旅!
次話も明日0時に公開です。




