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七瀬葵
僕には好きな人がいる。
その人とは高校生になって出会った。
綺麗な長い黒髪、女性にしては少し高めの身長、細身の彼女が立っている姿は、モデルのようで、男の僕から見てもカッコよかった。
要は、僕の一目惚れだ。
だけど、僕とは釣り合うはずがない。身長が低く、運動が苦手で男らしくないし、勉強だってそこまで得意なわけじゃない。そんな僕とは違い彼女は何でもできた。勉強、スポーツ、何でもそつなくこなす彼女はすぐにクラス中からの人気者になり、いつも友達に囲まれていた。
始めは諦めようと思った。相手にされないだろう。僕が勝手に好きになって見ているだけで、ほとんど話をしたこともない、相手にしてもらえるとは思えなかった。
だけど、
僕とは正反対の彼女。僕にはない物を持っている彼女。見つめているだけの日々で少しずつ、気持ちが大きく、抑えられなくなってくる。
高校一年生の冬
遂に僕は告白をすることにした。
自分でも、そんな度胸があったのかと驚いたが、この気持ちは伝えずにはいられなかった。