板挟み
馬車から降りる前に自分の格好を見下ろして、ふうと軽くため息をつく。
なんか慣れちゃったなぁ。
相変わらず舞台で役者さんが着る衣装みたいで慣れない感じはするんだけど、周りの人も似たような格好してる人が普通にいるから、見慣れるし、着慣れるよね。
Tシャツ短パンみたいなのないのかな。
Tシャツはまぁ、それっぽいのありそうなんだけど、短パンがね、なんか無いんだよね、全然。
なんだろうね、足を晒すのはハシタナイみたいなのがあるのかな。
男はいい気がするんだけど。
御者さんにタラップみたいな足場を用意してもらって降りてから、ペリオンに手を貸す。
前もドレスは着てたけど、前と違って今日はヒールが高いからか、足元を気にしながら慎重に降りてくる。
「ありがとう」
「どういたしまして」
少し恥ずかしそうにはにかみながら僕に笑いかけるペリオンにちょっとドキドキする。
さてと、ここから劇場に入って個室まではそんなに長くないとは思うけど、エスコートしないでいいわけないもんね。
すぐに歩き出さない僕にどうしたのって顔を向けるペリオンに、右手を腰に当てて、ん! とアピールする。
「くすくす、じゃあ、お願いします」
「もう、なんで笑うのさ」
「少しくすぐったくて」
「いいから、行くよ」
「はい」
ペリオンの方が背が高いしヒールもあるから、なんか少し格好悪いけど、でも、ちゃんと着飾った女の人にはしないといけない事もあるのだ。
ちょんと僕の上腕辺りに手をかけたペリオンを連れて劇場の入口にたどり着けば、さっきも対応した受付さんが、微笑ましそうな生暖かい視線で迎えてくれた。
「いらっしゃいませ、坊っちゃま、お嬢様。招待券をお預かりしても宜しいですか?」
「はい……あ」
せっかくエスコートしてるのに!
招待券を左の胸裏のポケットに入れてあるから、ペリオンに掴まって貰ってる右手じゃないと出せないじゃん。
それに気づいたっぽいペリオンがそっと手を外してドレスのシワを直すみたいにしてくれてるけど、あぁ、もう全然ダメじゃないか。
「……はい、これです」
「……はい、お預かりしました」
「………………」
「……えっと、では、案内をさせますから少々お待ち下さい」
「はい、よろしくお願いします」
あれ?
どこで待てばいいのかなこれ。
受付さんが、チラッと左の方に目を向けてくれたのでそっちを見れば、ラウンジみたいなところにソファとかがあって、他にもそこでくつろぐ人がいた。
あそこで待てばいいんだ。
と思って歩き出そうとして、ペリオンを置いてっちゃう事に気づいて、慌ててペリオンの手を掴んだ。
「あ」
と、少し強引に手を引かれたペリオンがよろけてしまった! と思ったけど、そこは騎士、なんとか立て直してそのまま僕に付いてきてくれた。
「ご、ごめんね」
「何がですか?」
「だって、慣れてなくて、ペリオンに恥かかせちゃった」
「何言ってるんですか、ユウト君の歳で女性のエスコートに慣れてる方が怖いですよ」
「むー、そう言われるとそうだけど……」
でも、なんかやっぱりちゃんとしたかったなぁ。
それに、僕が慣れてないのと、それでペリオンに恥をかかせるのは別だと思うし。
グイグイと手を引っ張っちゃったのも子供っぽ過ぎる気もするし、でも今更取り繕うのもそれはそれで恥ずかしい気もするし、仕方ないからソファまで、そのまま。
ようやくソファまでたどり着いてペリオンと座った、それだけでどっと疲れた気がした。
これが気疲れってやつかなぁ。
そう思っていたら、くすくすと笑う声が聞こえて慌てて背筋を伸ばして座り直した。
「あぁ、済まないね。楽にしてくれていいよ、何事も経験だ、慣れないうちは失敗もするものさ。ほら、お前が笑うから気を抜けなくなってしまったじゃないか」
「ふふ、ごめんなさいね、微笑ましくてつい。坊やがあんまり可愛らしいから」
ご一緒しても?
と、そう声をかけてきたのは老夫婦といえばいいのか、にこやかに笑うおじいさんとおばあさん。
どちらも僕でも分かるくらいに品のいい仕立ての服を着た、貴族の方だと思う。
基本的には社交を大事にしている貴族の付き合いでは、特別な事情でもない限りは、お断りは早々しないし、そうでなくても目上の方を蔑ろには出来ない。
勿論、僕にもそんなつもりはないし、人当たりの良さそうなこの人たちを遠ざけるなんて、するつもりも無い。
「どうぞ」
「ありがとう」
「失礼しますわ」
「済まなかったね。儂はトランゼア・クラウスハルム。隣は妻のスエナだ。宜しく頼むよ」
そういって差し出された手を握り返しながら僕も挨拶を返す。
えっと、爵位とか言われてないから僕も爵位は言わなくていいんだよね。
「ユウト・フタワと言います。こちらはペリオン・エントです。先程は不慣れなところを見せました」
「いやなんのなんの、儂も昔は色々失敗もしたもの。紳士たらんと振る舞うことの何が恥なものか」
「そうよ、年上のお嬢さん相手だもの。すぐに相手を気遣えるフタワ卿は不慣れであってもひと角の紳士だったわ。そうよね?」
「はい。よく気遣って頂いております。フタワ卿は紳士でいらっしゃいますから」
「うむうむ。相手を立てる良いお嬢さんじゃないか。フタワ卿も良い付き合いを持ったな」
「はい。ペリオンはよく尽くしてくれますから」
「あ」
「え?」
そこで、ペリオンが慌てたように僕の袖を引っ張った。
な、何か不味いことしちゃった?
そう思ってみれば、ペリオンが困ったように微笑んでいて、気まずそうに老夫婦に訂正をした。
「も、申し訳ありません。私とフタワ卿は、そういった関係ではございません。今日は共通の友人から招待を受けまして、それでこのような形に」
「あら、そうなの? お似合いだと思ったのですけど……」
「いや、それはこちらも早合点でしたな。いや失礼した」
「でも、招待ね……それは、可能性はあるのかしらね」
「いえ、滅相もないです」
あれ、なんか凄い勘違いをされてる気が。
(ユウト君、相手の女性を呼び捨てにするのは、貴族同士だと、その、婚約者、とか、そういった関係に……)
(あ! 僕がペリオンって呼んだから……)
(はい、そういう事です。申し訳ありませんが今はペリオン嬢と呼んでください)
つまり、あれかな。
さっきの僕の発言は「婚約者がよく尽くしてくれてる」とかいう発言になってたって事!?
「すみません! いつもは呼び捨てにしてるので、そんな意味になるとは思ってなくて……」
「あら、いつもは呼び捨てに……?」
「あわわわわ」
「はい、えと、僕とペリオン嬢は、その、ペリオン嬢が、屋敷の護衛役なので」
「あらあらまぁ、そうなの、それは大変ね。それで今日はお友達にセッティングして頂いたの?」
「そんな感じです。ペリオン嬢は観劇が好きみたいなので」
「ゆ、ユウト君、そのくらいに……」
「ほぅ……そうか、それは儂たちはお邪魔した形になってしまったかな」
「そうね、わたくし達はもう行くけれど、他の方の目のないところではいつものようにしてちょうだいね、わたくしは応援していますよ」
「はい、ありがとうございます」
「あぁぁぁ……」
「わたくしは吹聴したりしないから、お友達に感謝しなさいね」
「うむ。では、機会があればまたどこかで話を聞かせておくれ」
そういって立ち上がった老夫婦は案内の人に連れられて奥に消えていった。
うん。
ああいうのっていいなぁ。歳をとっても仲良しとか。
何故か項垂れたペリオンだけど、話を聞く前に僕達にも案内をしてくれるジェントルマンなおじいちゃんが来てソファから立ち上がった。
さっきは失敗しちゃったけど、今度は間違えないように左手側に立ってもらって、連れ立って歩く。
なんか、抓るみたいにギューッと掴まれてたけど。
僕なんか失敗したかな。
ちゃんと誤解は解けたと思うんだけど。
個室に入ったらちゃんと聞こう。
ところで、なんか歩いていると案内役のおじいちゃんは偉い人なのか、周りのスタッフの人から道を譲られてる。
気がするけど、もしかして僕達なのかな。
一応、招待券はアイリスさん経由のだから、アイリスさんの実家のファルトゥナ家の後光が差してるのかもしれない。
屋敷で気さくにしてくれてるアイリスさんからはそんな感じは受けないけど、一番偉い公爵家なんだし、そのツテで来た僕達も雑に出来ないのかな。
歩いてても足音のしないふかふかの絨毯を先導されながら歩いていくと、いくつかの扉の前には護衛してるらしき人が立っていて、歩いていく僕達に少し首を傾げていた。
なんだろ?
なんで子供が、って感じの視線じゃなくて、値踏みされてるみたいな感じがする。
チラッと自分の格好を見ても、よくは分からないけど、そんなに浮いてるわけじゃないと思うし、それはペリオンだってそう。
「お待たせ致しました。こちらのお部屋になっております」
「案内ありがとうございました」
「とんでもありません。途中、不躾な視線に晒してしまい申し訳ございません」
「あの……さっきはなんで変なものを見るような感じだったんでしょうか? ドレスコードが間違ってましたか?」
「いえいえ、服装については何も問題ありません。ただ、この場所に来られる人は限られておりますから、彼らの記憶にない方が珍しかったのでしょう」
「そういう事ですか」
「さぁ、これ以上の騒ぎになる前に中へどうぞ」
コンコンとノックをしてから、重厚そうな扉を引いて開け、綺麗な所作で一礼するおじいちゃんにコクリと頷いて部屋の中に入る。
「では、私はこれで。ごゆっくりお楽しみください」
「あ、ありがとうございました」
「ありがとう」
やっと落ち着けると二人で息をついてから部屋を見れば、部屋の中は少し暗くなっていて、劇場内が見える前面が手すりだけあって、他は開放的に広がっていて、そこにテーブルとソファがどっしりと置かれていた。
あそこに座ってゆったり見る感じなのかな、凄い贅沢。
そして、そのテーブルの横で僕達に礼をしているのは、一人のメイドさん……ん? 侍女さん?
あれ?
「お待ちしておりました。ユウト様、ペリオン様。本日お傍で控えさせて頂きますソランと申します。御用の際は遠慮なくお申し付けくださいませ」
「わ、専用のお付きが控えているんですね。ユウト君、とりあえず、ソファに座りましょう!」
「え、うん。そうだね」
これから劇が見られるとあってはしゃぐペリオンに手を引かれて、とりあえずソファに座る。
前の手すりから少し離れていて、ソファが一段どころか二段か三段高く置いてあるから、座ったままでも劇場内がよく見える。
まだ開演前だからか、さわさわとざわめく音が少し聞こえるけど、下を覗き込めば、下の席の上にに少し被せるように何か覆いがしてあって、それで、雑音がこっちに来ないようになってるみたいだった。
本当に至れり尽くせりだね。
「失礼します。何かお飲み物は如何でしょうか?」
そこにさっきの侍女さんだと思われる女の人が近寄って来て僕達に声をかけた。
何があるかは分からないけど、多分大抵のものはあるんだろうなと、入口から横にひっそりと置かれていたバーカウンターみたいな場所を見て思う。
どうしようか? とペリオンに尋ねれば、任せてくださいと笑って対応してくれた。
「少し喉が渇いたのでサッパリしたジュースをお願い出来ますか?」
「かしこまりました」
と、一礼して下がって行った。
それを見ながら、ペリオンの肩をちょんちょんとつついて、劇場に目を輝かせるペリオンの注意を引く。
「どうかしましたか?」
「ねぇ、あのソランって人、変じゃない?」
「?? 何がですか?」
「だって、あの服、アイリスさんのとこの侍女服じゃなかった?」
「んん……?」
カウンターの中でジュースを作ってるソランさんの服は今は見えないけど、なんかこう……さっきも僕がカウンターの方を見たらチラチラ気にしてたし、なんか、違和感が。
僕に倣ってソランさんを見るペリオンも、ここで初めて視線をキツくした。
「少し暗くて分かりづらいですが、確かに少し挙動不審ですね……?」
「だよね……?」
何が変かと聞かれると答えづらいけど、ジュースを作りながら何故かチラリチラリと視線がカウンターの中の方に向けられている気がする。
そうやってしっかりとソランさんを見ていたからか、こちらに気づいたソランさんが、声を上げた。
「どうかされましたか?」
「いえ」
「なんでもないです」
「あ、先に何か果物でもお召し上がりになりますか?」
「大丈夫です」
「気にしないでください」
「そう……ですか? ふふ、こうじっと見られておりますと、さすがに緊張してしまいますね」
チラッとペリオンと視線を交わしてどう? と問えばこくりと頷いてくれたから、ちょっとカマをかけてみようか。
「いえいえそんな、ファルトゥナ家の侍女さんはみなさん優秀ですから、いつものようにしてくれれば大丈夫ですよ」
カラーン……
と、かき混ぜていたマドラーが一際大きな音を立てた。
「……あはは、よく、お気づきに、なられましたね? ですが、私はファルトゥナ家の侍女ではありませんよ? この服はそうですけどね」
「へぇ、そうだったんですか」
「え、えぇ、劇場内で外を歩く時に、どこの者か分かりやすくする為に、衣装が用意されているんですよ」
「確かに、みんな劇場のスタッフさんですしね」
「そうなんですよ。人が多いと混乱してしまうので……あ」
チャリンと、スプーンか何かを落としたような音が響いて、ソランさんが、さっとしゃがむ。
「し、失礼しましたー」
顔が見えなくなったソランさんの方に注意しつつペリオンと意識を擦り合わせる。
「大丈夫ですかー?」
「は、はーい。あれー? どこに行ったかなぁ。無くすと怒られてしまうんですよねー」
「それは大変ですねー。お手伝いしましょうかー?」
「いえ! それには及びません! お客様のお手を煩わせる程ではありませんから」
怪しい……。
怪しく見てるから怪しく見えるのかもしれないけど、どうしても僕達にそっちに近づいて欲しくなさそう。
(僕さ、バーカウンターがあるんだから、バーテンダーさんがいないと変だと思うんだよね)
(同感です。血の匂いはしませんから、まだカウンターの裏に転がされてるかもしれません)
(というか、わざわざ侍女服用意するとか、用意周到過ぎて、怪しい)
(ユウト君。頼りないですが、これ、武器の代わりにしてください)
(ありがと。何も無いよりはいいよね)
(ヒールの高い靴履いてて良かったです)
「あ、ありましたー! すみません、気を揉ませてしまって」
「いえ、見つかって良かったです」
「本当に」
「あ、あの……?」
「ところで、バーテンダーさんはいらっしゃらないんですか?」
「え……」
ギクリと僕の発言で止まったその瞬間にスカートをたくしあげながらペリオンが飛びかかり、ソランさんを真っ向から押さえつけた。
なんか、動きが素人さんっぽいけど、今はバーテンダーさんの確保が重要!
僕もカウンターに駆け寄って───
「はい、おしまい!」
「え?」
「は?」
「お嬢様ぁ〜!」
バッとカウンターの中から立ち上がったアイリスさんが両手を上げて僕達は動きを止めた。
なんで、アイリスさんがここに?
なんで、アイリスさんは隠れて?
じゃあ、ソランさんは本物の侍女さん?
「ソラン、怖い思いさせてごめんなさいね」
「お、お嬢様ぁ〜!」
「あ、あれ? アイリス様? なんで?」
「……ちょっと、驚かそうと思って、隠れてたんですのよ。そうしたら、ちょっとバレてしまいそうだったから、もうバラしてしまおうと思ってたのだけど……間に合わなかったわね」
テヘペロってゆーんだっけ?
そんなどうでもいい事が頭に浮かんだけど、流石にちょっと恥ずかしそうにしながらカウンターの中から出てきたアイリスさんに続いて、バーテンダーさんも立ち上がり、やれやれとため息をついた。
「ファルトゥナ令嬢、これっきりですからね」
「分かっていますよ。もう、台無しですわね」
「はい? え? 何が……」
目を白黒させるペリオンの手を引いて、とりあえず押さえつけてるソランさんを離してもらう。
「アイリスさんが多分、僕達を驚かそうとしたんだよ……」
「…………へぇ」
「ソランさんも怖がらせてごめんなさい」
「いえ! 悪いのはこちらですので!」
「ソランの演技力が足りなかったわね」
「侍女に演技力は要らなくない?」
「何を言うの。主人の為にある侍女が、主人の為に動けなくてどうするの」
「えぇー?」
「それに、お詫びとはいえペリオンばかりユウトさんを独り占めするのも癪だもの」
「独り占めだなんてそんな……」
わたわたと手を振るペリオンとそれに詰め寄るアイリスさんだけど、その時、ワッと歓声が上がった。
「さぁ、そろそろ開演ですよ、お嬢様方にお坊ちゃま。淑女らしからぬヤンチャはお控えになって、若き貴公子にエスコートされては?」
「……それもそうね。ユウトさん、そこまでですけど、エスコートして下さる?」
「はぁ……うん、いいよ」
「え!? ちょ、ちょっと待ってください。いくらアイリス様でも横入りはダメですよ!」
「あら、バレちゃった」
「ユウト君!」
「わ、ごめん! でも、ペリオン忘れてたとかじゃないからね!?」
ち、近いし!
アイリスさんソファまでエスコートしたら、すぐに戻ってこなきゃなって思ってたんだけど、ペリオンからしたら、自分を後回しにされたみたいになるよね、それはうん、嫌な気分になるね。
「今日はわたしのエスコートしてくれるんじゃないんですか?」
そういって僕の右腕に手を添えるペリオン。
「両手に花ですわね、ユウトさん」
そう言いながら僕の左腕に手を絡めるアイリスさん。
二人に挟まれて、歩き出した僕達に後ろから呆れたみたいな溜め息が聞こえた。
黙ってないで助けて!?
そこからの時間は、もう、なんと言えばいいのか。
なんか、自分の子供だって言い張る二人のお母さんに両手を引っ張られる子供のような感じとでもいえばいいのか。
あの話だと我が子が痛がるのに手を離した方が本物のお母さんだって結末になってたけど───
「ユウト君、このオレンジ甘酸っぱくて美味しいですよ、はい、あーん」
「あ、あー……んむ……」
「ユウトさん、こちらのリンゴも瑞々しくて美味しいですわよ、はい、あーん」
「あ、あー……んぐ……」
「ユウト君」
「ユウトさん」
ね、劇観よう!?
ガッチリと両脇を固められて、代わる代わる世話を焼こうとする二人は、周りで拍手したり喝采したりする音なんか聞こえてないみたいな感じで、僕のことばっかり見てる。
「ふ、二人とも、劇観よう? せっかく素敵な席から観れるんだし」
「そうですね!」
「そうですわね!」
「ちなみに、ここまでで何かわからないところはありましたか? 導入は少し難解なので、理解が追いつかないところもあるんじゃないでしょうか」
「え? あれ? 観てたの??」
「ふふ、なんでしたら、ここからはあたくしが解説しながらで楽しみましょうか?」
「あれ? なんで!?」
「定期公演ですから」
「定期公演ですもの」
「二人とも内容知ってるって事!?」
「そうですね。有名な舞台演劇ですから」
「でも、役者によって色が出るのよ。だから、少し解釈が変わったりしてそれを楽しむのが定期公演の醍醐味ね」
「今回は主役が少し強気ですから、異色作と言えるかもしれませんね」
「そうね、憂騎士としては意欲的といっていいのかしら。妹役ははまり役だと思うのだけど、はまり役過ぎて面白みがないかしら」
「その分、姫役は強気な主役に引っ張られて勝気な感じが出ているので、悲壮感よりも爽快感によった感じになっているでしょうか」
「………………」
うん、二人が詳し過ぎて僕にはよく分からないね。
話は、国を追われた騎士とその妹が両親の不名誉を払拭するために奮闘する、って感じみたい。
騎士のことを慕っていたお姫様が、これは変だと真相を探る手助けをして、途中、罠にかけられて妹はお姫様の身代わりになって散り、その哀しみを跳ね除けて国家の陰謀を暴く。
って、エランシアは王政なのに、こんな国を悪者にしていいのかな。
と思っていたら、主役の騎士は実は王族の血が流れていて王位を簒奪していたのは今の国王なんだそう。
真の王の力の前に偽物の王様が敵う訳もなく、王家は正統な血によって治められた。
つまり、お姫様は本当のお姫様じゃなかった訳だけど、血で血を洗う事に意味は無いと、騎士の両親が本当の親でなかったとしても家族になれたように、手を取り合おう。
という感じでハッピーエンドになる。
のが、基本的なシナリオらしいんだけど、今回は騎士もお姫様もやたらと強気で、血筋が分かっても、妹が亡くなっても、本当のお姫様じゃなかったとしても、だからどうしたとばかりに悪即斬! と、悪いヤツは粛清しまくり、大義の前に小さな犠牲(妹とか)があっても正義は負けない! と血みどろの抗争をし続け、勝ったやつが偉いとばかりに玉座についた。
ハッピーエンド……?
「……斬新でしたね」
「そうね、荒っぽくはありましたが、勢いはありましたわね」
「これはハッピーエンドでいい、のかな?」
「そこは割れそうですね」
「そうね、せめて妹君はもう少し立ててあげないとダメだと思いますわ」
「そうですけど、そうすると今回の解釈には至れなかった気もします」
「そこよね。品評はまた後日にしましょうか」
「そうですね。アイリス様とも良い話が出来そうです」
「ペリオンも趣味と言うだけあって中々良く観てるわね」
……うん。
二人が仲良くなったなら僕はそれでいいよ。
「じゃあ、ユウト君、そろそろ帰りましょうか」
「では、ユウトさん、そろそろ帰りましょうか」
「……あれ?」
「アイリス様、今日ユウト君にエスコートされるのはわたしですよ?」
「行きはペリオンだったのだから帰りはあたくしで良いのではないかしら」
「あれ!?」
ご令嬢達のおしゃべりは基本的にお茶会で行われますので、感想などの話は主に後日になります。
(という設定ですw)
後、突っ込まれてませんが、ペリオンがユウト君などとポロッと零したのが誤解を助長させたのは気づいてません。
あ
誤解は解けてましたね!
忘れてくださいw
と、糖分がベッタリ盛られたところで、次はお待ちかねのメノになります♪




