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ネガイゴト (side リアン)

名前は間違えていませんw

 

 静かな寝息が一つ。

 小さなその寝息にゾクゾクとしたものを感じる。


「か〜わいい〜」


 泣いて腫れぼったくなった顔が庇護欲をくすぐる。

 ハァと思わず熱い吐息が漏れる。


「襲うなよ? リアン先生」

「我慢するわよ〜」

「我慢しないとダメなのか」

「だって〜、こんなドロドロに澄みきった粘つくほどに清涼な香りがするんだもの。味見したくなっても仕方ないわよね〜?」

「いやいや、全然分かんねえし」

「爽やかなのか濁ってるのかハッキリしろよ」

「ハッキリなんて、こんなに混ざりあってるのに無粋ね」


 全く二人にはガッカリ。

 こんなにいびつなのに、捻れ捩れてそれでも真っ直ぐに育つには何が必要なのかしらね?


 縄は捩れば強くなるのに、この子はこんなにも壊れやすくて繊細でガラス細工のよう。


「んで、ヤバそうだからってわざわざ呼び戻してみたはいいけど、さっきの騎士が来たくらいか?」

「監視くらいはしてるんじゃないかと思ってんだけどどうよ?」

「四人ね〜。随分と警戒しちゃってそんなにユウトちゃんが可愛いのかしらね」

「はぁ? 四人で囲んでんの?」

「そっちじゃねえだろ、何に警戒してんのか? だろ」

「さっきの騎士の感じからしたら、見守ってるだけだと思うわよ?」

「つーか、サティ。お前はなんつーもんを拾ってきてんだよ」

「仕方ねえだろ。ウサギの神様の導きだろ」

「なんでウサギの神様なのかしら」

「いや、ウサギ肉無くなって残念だなと思ってたらユウトが来たからよ」

「お前バカだろ?」

「あぁ、ユウトちゃんがウサギの子なのね」


 ケシェラちゃんは文句を言っているけど、運命を感じるなんて人それぞれだから、今のこれはサティちゃんにとっては何かの啓示に思えたのでしょうね。


 ウサギに神様がいるかは分からないけれど、少し前に知己を得たのも、ここに繋がってるのかと思うと何かの意味を感じるのは良くあることね。


 それは運命、(えにし)、巡り合わせ、惹かれた、と言葉はいくつもあるけれど、人の出会いや別れに何かを思うのはとても人間的ね。


 愛は歴史を育むし、憎は歴史を掻き回す。

 勿論、愛が狂う事もあるし、憎が闇を晴らすこともあるけれど。


「貴女達は知っているかしら? 過去、勇者と呼ばれた方々は黒髪黒瞳な方がとても多いのよ?」

「……は? それってユウトが勇者だってことか?」

「勇者なんて酒場で話されてただけじゃねえか。話はゴチャゴチャだったけど」

「ふふ、これはね、教会だと神秘色(しんぴしょく)というのよ、貴い尊い色なのですって」

「はぁ? 黒が良い色だってんなら、黒髪なり黒瞳なりした奴はいるだろ?」

「だな。義妹のマイだって黒髪だぞ」

「どっちも揃わないとダメなのよ〜。片方だけじゃダメ。貴女達だってユウトちゃんの事を好ましく思っているのではないかしら?」


 そうして問えば、戸惑いつつも頷く二人ににんまりと笑う。


 そう、勇者というのはとかく好まれる。

 ユウトちゃんからは神気は感じられないが、それでもいい子なのは分かる、分かってしまう。

 そして、ワタシが、ユウトちゃんを知った上でサティちゃんと同じ様な出会いをしたら、同じ様にするだろう。

 サティちゃんに馬鹿な事をしたと言っていたケシェラちゃんも同じ様にするはず。


 まるで、勇者という存在が神であるかのように、ワタシ達が敬虔な信者であるかのように、敬い慈しみ愛すだろう。


 実際にユウトちゃんに出会ってみれば分かる。

 ワタシ達は、ユウトちゃんに逆らえない、逆らわない。


 ユウトちゃんはいい子だけど

 そう例えば……


 熱心な信者にユウトちゃんが誰かを殺せと言ったら、何とかして殺そうとするだろう。


 そのくらい疑いなく、躊躇なく踏み切る事を良しと考えるまでになったら、全ては言いなりだろう。


 だけど、そう、ユウトちゃんは家出をしたのですってね?


 それは信者の行動に不満を感じたという事だわ。

 つまり


『自分の為という免罪符で暴走したものを安易に許さない』


 という事でもある。

 きっと、今、家出の原因になった子はこの世の終わりのような絶望感に包まれているのでしょう。


 まぁ、反省しなさい。

 誰かの為と言い訳をして勝手をするのは回り回って自分の為だと、近くの誰かが気づかせてくれるでしょう。


「ユウトちゃんはいい子だから、それが分かっていればいいわ」

「いや、そりゃ分かるが……」

「何? 人に好かれる才能、みたいな?」

「才能、えぇ、それはいい表現ね〜! ユウトちゃんは好かれる天才なのかもしれないわね」

「いや、そりゃあユウトが勇者だったらって事だろ?」

「今はリアン先生がそう言ってるだけだからな」

「そうね、確認したわけじゃないもの。違うかもしれないわね。でも、ワタシの学者の勘がそうだと言ってるわ」

「リアン先生の事は信頼してるが、なぁ?」

「だな、アリンを見てるとなぁ」

「どっちもワタシよ? アタシが性に奔放なのだってワタシにもあるもの。まぁ二年は早いけれど」

「そこは違うのかよ」

「三年ね」

「大差ねえし」

「違うわよ〜」


 二年だと丁度そうね、オトナになるくらいよね、でもそれだと青すぎるわよね。

 もっと興味津々になって我慢するのか辛くなるには更に一年くらい寝かせないと。

 アタシは我慢が出来なすぎだと思うのよね。


 と、ワタシの拘りを語ったら引かれた。


「あたいは頼りがいのある男じゃねえと」

「あたしは金がねえと。顔はいいけど」

「「でも、ガキはねえだろ?」」

「二人とも処女のくせに〜」

「今は関係ねえだろ!?」

「そうだ! つか、よくよく考えて男とか要らなくね?」

「だよな!? アイツら女を抱くことしか考えてねえし!」

「そーゆーセリフは〜、一度でも男を体験してからにしたらどうかしら〜?」

「それは、アレだ、結婚してからだろ……」

「サティ夢見すぎ。つか、どこのお姫様だよお前」

「ケシェラはそんな夢もないくせにまだ処女なわけ?」

「二人とも、処女とかね、貞操守ってる〜とか言うと聞こえはいいけど、男からしたら痛がるし面倒臭いんだよ〜?」

「そんな男ばっかじゃねえだろ」

「そもそも膜無くなったら次から気持ちいいと思ってるなら勘違いだからね〜」

「いや、そりゃそうだろうけど、血が出るんだから治るまでは痛いだろうな、まぁ」

「それもあるけど、処女じゃないってだけで男は遠慮しなくなるからね〜」


 じゃあやっぱり男とか要らないんじゃ……と、二人がひよったところで、両手で箱を持ち上げて退かすように動かす。


「まぁ、その話は置いといて〜」

「「お前が煽ったんだけど!?」」

「置いといて〜、ユウトちゃんの事情に裏は無いとワタシは思うよ〜」

「単に家出と」

「貴族がビビらせやがって」

「とゆか、サティちゃんはおチビちゃん達の面倒見てたんだから、分からなかったの〜?」

「いや、そうだとは思ったさ。ただ確証はねえし……オマエらの目でも見た方がいいだろ?」

「つか、ノノは何でいないかね」

「顔合わせらんねえんだと」

「マジであいつ何しやがったんだよ……」

「まぁ、ノノちゃんはいいんだよ〜。ユウトちゃんに義理立て? してるんだし……いや、ノノちゃんいたら、ワタシがユウトちゃんと一緒に寝れたからやっぱり良くないね?」


 そうだ、ノノちゃんが居れば、男の子に慣れてないノノちゃんは同衾はしないでしょう?

 すると、ワタシがユウトちゃんと一緒に寝れたんじゃないかしら。


「で、明日来るペリオンって奴はそのままでいいのか?」

「いーよー。とゆか、反抗する意味ないもん」


 ハテナと首を傾げる二人に説明。


「ユウトちゃんが優先だからね〜。あんなに反省してるんだもん。ペリオンちゃんはだいじょぶだよ。多分、明日の朝一番に来ると思うよ〜」

「朝一番っていつだよ?」

「え? 多分、日の出……?」

「はぁ!? んなもん起きてなかったらどーすんだよ?」

「騎士だもん。起きてるかどうかくらい分かるよ〜」

「変態だな、騎士」

「そゆのが分かるくらいじゃないと騎士になれないんだよ」

「つまり、朝、起き出したらすかさずやってくるって事か?」

「うん」

「そんなわけで〜、ワタシは寝たい。寝てい? お肌荒れちゃうよ」

「まぁ、これ以上考えることねえしな」

「んだな」

「はい、じゃあおやすみ〜」


 ちゃんと睡眠取らないとアリンは起きてくれないからね。

 ワタシが管理しないとね〜。


 ゴソゴソとベッドに潜り込んで……


「まてこら」

「なに〜?」

「何、何食わぬ顔でユウトと一緒に寝ようとしてんだこら」

「ダメ?」

「ダメだっつってんだろ」

「じゃあちゅーだけいいでしょ?」

「何がじゃあなんだ」

「なんでそうなるんだよ」

「だって、アリンだけちゅーズルい」

「しねえから安心しろ」

「嘘だったらサティのおっぱい揉むからね」

「いいぞ」

「良くねえから」


 横暴だ!


 とは思ったけど、ワタシは筋肉が無いから二人に力で勝てないし、諦めるしかないか。


 すごすごと自分のベッドに戻って、寝た。









 と、見せかけてそろり。

 ワタシは好奇心が抑えられないよ。

 朝起きてワタシ、じゃないや、アタシが一緒に寝てたらビックリしておっぱいくらい揉んじゃうかもしれない!


 だから


「寝ろよ? 次やったら問答無用でサティけしかけるからな?」

「けちー!」


 二段ベッドの上からほのかに光る瞳が見てた。

 寝なよー。

 ちぇっ。


 まぁいいや。

 ユウトちゃんがちゅーしてくれますように。

 ユウトちゃんがちゅーしてくれますように。


 あ、そだ。

 ちょっと寝てる間の事だから分かんないけど、寝返り打ったら脱げちゃったかもしれないなぁ。


 寝てたから分かんないけど!!


 寝てる時のことだから不可抗力だよねー。


 おやすみ、おやすみ〜。

 明日が楽しみー!!


アリン、リアンは互いに認識し合ってる別人格です。

ノノはまだ知りません。


大体の目安として、アリンが昼間、リアンが夜間の担当です。

睡眠時間は共有されるのでちゃんと寝ておかないと起きれなくなったりします。


意思管理はリアンの方がしっかりしてます。

アリンは……まぁ、アリンなので。

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