直接接触する面積の問題 (要深読み)
さて、今夜はちょっとオトナの時間なので、更新時間をあえて変更しての投稿ですm(_ _)m
サティさんを見送って、それからサティさんと同居人さんの部屋を見る。
最初は、旦那さんとかと暮らしてるのかと思ってたけど、二段ベッドが二つもあるし、部屋の中は女の人の匂いとでも言えばいいのか、お化粧の匂いとでも言えばいいのか、そんな香りばかりで、ルームシェアしてるんだなと思った。
気にはなるけど、あんまり女の人の部屋は見たらダメだから、意識から外して、台所に立つ。
「あ、何人分作ればいいんだろ?」
早速困った。
申し訳なく思いながら部屋を見させてもらう。
部屋の中はそんなに広くはない。
ここに四人? で生活してるとなると合宿でもしてるみたいな感じになりそう。
でも楽しそうだなぁ。
真ん中のテーブルには椅子が四脚あるから四人でいいのかな。
多分使われてなかったら仕舞ってあると思うし。
という事は、僕入れて五人。
人数的には叔□さんのとこと同じだけど、ここは大人の人だけだと思うから、大人四人子供一人と。
台所に戻って、サティさんから預かった袋を覗けば、あの丸パンと人参がいくつも入ってた。
それと調味料は壺に入ってる塩。
いくつかある壺も順番に覗いてみる。
塩と……塩と……?
塩なんだね。
あ、最後のは油……脂?
えっと、どうしよう?
なんで塩ばっかりなのかな。
とそこで台所の脇にチェストみたいなものが置いてあるのが見えてそれを開けてみる。
「豆と、お芋と、豆と、玉ねぎと、豆と、小麦粉っぽいの……後、唐辛子? っぽい何か」
豆も多いね!?
いや、これは、多分僕が知らないだけで、豆のスープ的なものが普通の食事、ってことなんだろう。
それに野菜と塩とで味を出して食べる、感じだと思う。
それと丸パン。
野菜は玉ねぎ、お芋、人参、以上。
調理器具は、包丁、まな板、フライパン、お鍋、やかん? 以上。
コンロ、というかかまど一つ。
お皿とかは、大皿が一つ、取り皿っぽいのが四枚、お椀だかボウルだかが四つ、サイズ的にコップ兼ジョッキが四つ。
後はフォークとナイフとスプーンね。
で、塩と唐辛子っぽいの。
唐辛子はなんか貴重っぽいから使わないで。
もういいや、お芋蒸かして潰して焼いたのと、丸ごと玉ねぎ焼きして、後は豆と人参入れてスープにしよ。
まず、灰から火を貰って火をつけて、その間にお芋洗って、やかんにスプーン投入して、その上にお芋。
お水入れて、注ぎ口に人参の先をちょこちょこ詰めて、なんちゃって蒸かし器。
失敗したらごめんなさいで。
とりあえず蒸かしてる間に、お鍋に生活魔法万歳でお湯作って、人参を短冊に切って豆と一緒に投入。
柔らかくなってね。
でもって、フライパンにナイフ並べてその上に玉ねぎ五つをそのまま敷き詰めて、油だけちょっとかけてお鍋の蓋で閉じる。
アルミホイル欲しい。
人参の隙間から湯気の出てきたやかんを退けてフライパン用意。
焼きます。ひたすら焼きます。
後は玉ねぎがじゅぐじゅぐになったらお鍋に入れて、完成。
コンソメとかブイヨンとか欲しい。
冷めないように蓋だけして、放置。
まぁ、冷めちゃったら生活魔法とかいう万能選手に活躍してもらうし。
やかんを戻して、ちょっとフォークでぷすり。
まだ時間かかるぽいから、待機と。
後は蒸かしたお芋をフォークで潰して、丸めて玉ねぎ出汁で焼けば何とか、お芋の団子のような何かに、なるといいなぁ。
多分食べられるものにはなるから、最悪僕が食べればいいよね。
ふう、とひと息吐いて、ぼんやりと考える。
結局、サティさんに迷惑掛けちゃったな。
有難かったけど。
そのまま思考の渦にぐるぐるハマりそうになった時、ガチョと鍵が開く音がした。
「あ、おかえりなさ……い?」
「たっだいま〜……あ?」
サティさんじゃない。
多分、同居人の人だ。
なんか、モデルさんって感じ。それも一流の。
銀髪の長い髪がちょっとピエレっぽいね。ピエレの紫色の瞳と違ってお姉さんの瞳は紅いけど。
切れ長の瞳は、銀髪と紅いのと相まってキツい印象になりそうだけど、ぽかんとした表情は愛嬌があって綺麗な人なのに可愛い感じがする。
「およ?? あれ? アタシ部屋間違えた? 酔ってないんだけどなぁ〜」
首をこてりと傾げて外を見て、間違ってないのを確認したお姉さんが、視線を戻して僕をじーっと見る。
「誰の子?」
「あ、いえ、えと、僕はそのサティさんにお世話に──」
「サティちゃんの子〜!? え、ウソ〜? サティちゃん処女じゃなかったの!?」
「ぶっ! や、ち、違います!」
「違うの!? じゃあボクがぶち抜いたの〜!? いつ!?」
「そ、そうじゃなくて、えっと、あ、僕家出をしてまして!」
「家出〜?」
「はい! それで、サティさんに偶然会って、それで」
「それで、宿代は身体で払うよ! って〜?」
「違いますよ!?」
「あ〜、うん、分かった分かった〜♪ サティちゃんのお節介だよね〜」
「お節介……はなんか違うような、でも、今はそれでいいです」
「おっとな〜! ね、ね、名前は〜? アタシはアリンだよ〜」
「ユウト、です。あの……」
「ユウトちゃんね。分かった分かった〜。ん〜? な〜に?」
「えっと、なんでにじり寄って来てるんでしょうか……?」
「どしてかな〜? どしてだと思う〜?」
「え……」
アリンさんが、手をワキワキさせながらジリジリ近寄ってくる!
笑顔全開で。
アリンさんが一歩近寄る。
僕が一歩下がる。
アリンさんが一歩近寄る。
僕が一歩下がる。
「ん〜? なんでユウトちゃんは逃げるのかな〜?」
「アリンさんはなんで、そんな手を構えて近寄って来てるんでしょうか?」
「可愛いものはギュッとしたくなるの」
「えと……あ、僕今料理してるので、危ないからダメです!」
「そっかぁ……それは残念〜」
見るからにしょんぼりしたアリンさんだけど、僕知ってるから。
ここで抱き着かれたら、きっととても良くない事が起きるって。
ギュッとされてる間にサティさんじゃない他の人が更に帰ってきたりして、サティさんがされた誤解再び! とか。
しかもアリンさんのあの調子からしてすぐに否定してくれなそう!
とりあえずは、抱きつくのは止めてくれたみたいでホッとした。
料理してるのもウソじゃないし。
お芋、そういえば、そろそろ大丈夫かな?
やかんを開けてフォーク刺してみれば、やらかくなってたから、残ったお湯を注ぎ口から出してお芋とスプーンはひっくり返して出す。
そうすれば、お芋のいい匂いと、香水の甘い香りが……ん?
「な〜にしてるの〜?」
「わっ!」
来てる! と思ったらもうアリンさんがのしっと僕に覆いかぶさってきて、僕の頭の上から覗き込んできた。
アリンさんはやかんから転がり出てきたお芋をじっと見つめたかと思ったら盛大に笑った。
「あっはははは! なんでやかん〜! やかんでお芋茹でたの〜? お鍋あったでしょ〜??」
「お鍋はスープ作ってるので」
「ん〜? あ、ほんとだ〜! ならお芋も一緒にしちゃえば良かったのに〜って、玉ねぎ丸ごと〜!?」
「はい、とろとろになるまで焼けてると思うので甘くて美味しいと思いますよ」
「ほうほう〜。じゃあ味見していい〜?」
「そ、その前に着替えなくていいんですか?」
「んん? あ、そっか〜、うん。汁付いたらめんどいもんね〜。ユウトちゃん気が利く〜! んふ、脱がすの手伝って〜」
「手伝いませんよ!」
「そじゃなくて〜、後ろのボタン外して欲しいな〜って、ギリギリ届かなくって〜」
「あ、そういう、ってうわぁぁぁっ!」
困ってそうだからボタンだけ手伝おうと思ったのに!
困ってそうだからボタンだけ手伝おうと思ったのに!
「脱げてるじゃないですか!?」
「そのままでも脱げるよ〜! 届かないのはホントだけど〜」
「じゃあなんで呼んだんですか!?」
「ユウトちゃんが慌ててて可愛い! もっとじっくり見てもいいんだけどな〜」
「見 ま せ ん !」
「ちぇ〜! まぁ、揶揄うのはこのくらいにしとこっか〜」
「最初からしなくていいんですよ……もう……」
くすくす笑いながらアリンさんが着替えるのを背中で聞く。
今度は絶対にみない。
そしてせっかく蒸かしたお芋が固くなったら嫌だからお芋に取り掛かる。
皮だけ剥いてから、フォークでお芋を粗めに潰していく。
食感無くなるのも僕は嫌だし。
マヨでポテトサラダにしたい感じもするけど、残念ながらお酢も玉子もここには見当たらないので、断念。いや、手作りマヨとか、新鮮玉子じゃないとダメなんだっけ? 玉子の菌だっけ? まぁ、今は出来ないからいいけど。
「ゆーうとちゃん! 玉ねぎ食べていい〜?」
「味見だけですからね?」
「ん〜! あまぁい! 全然辛くないね〜。焼くとこんなに甘くなるんだ〜。ほうほう。それで、お芋はなんで潰しちゃってるの〜?」
「丸めて、団子にして焼こうかなって」
「お〜! 焼き芋だね〜!」
「焼き芋、うん、焼き芋ですね、ふふ……」
「な〜に? アタシなんか変なこと言った〜?」
「いえ、なんでもないです」
そうか、僕の中でお芋と言ったらジャガイモ的なものだし、焼き芋だとサツマイモだけど、知らなければ焼き芋もジャガイモになるよね。
まぁ、サツマってどこだ? ってなるからここでは別の名前だろうけど。
それとも、僕の耳にはサツマイモって聞こえるのかな?
言葉の違いとか、全然意識したことないけど、ピエレの時以外。
「考え事してると危ないよ〜?」
「あ、すみません」
「いいけど〜。お姉さんが見ててあげる〜」
「そんなに楽しいものじゃないと思いますけど……」
「いーのいーの。アタシが気になるだけだから〜」
「それなら、はい。ところで」
「ん〜?」
「服はもう着てるんですよね?」
「着てるよ〜! パジャマ〜」
「それはよかっ」
「スケスケだけど」
「なんでですか!?」
「な〜に? 照れてるの〜?」
「アリンさん恥ずかしくないんですかっ!」
「え〜? あ、恥ずかしいからユウトちゃん隠して〜!」
「わぁ!? な、なんで抱きつくの!? なんで!?」
「これなら見えなくなるし〜。アタシもユウトちゃんいーこいーこ出来て嬉しいし〜」
そういってぎゅうぎゅう抱きついて来てるアリンさんはとても楽しそうだけど、僕はもういっぱいいっぱいで───
「悪い! 待たせたか?」
「あ!? サティさん! た、助けて!」
「サティちゃんおかえり〜」
サティさんが、救世主が、帰ってきた!
「あ! ユウトちゃん〜」
さっとサティさんの後ろに隠れて保護してもらう。
チラッと見たら、アリンさんは宣言通りに何も隠れてなさそうなキャミソールみたいな服だった。
パジャマってなんだっけ?
「サティちゃん、ズルい〜!」
「遺言はそれでいいんだな?」
「あ、あれ? サティちゃん、なんかおこ?」
「おう、おこおこ。なんだ、飢えてるならそこらへんハダカで歩いてくりゃいいんだぞ?」
「い、いや〜、それはお金にならないし」
「だよな? いいからとっとと服を着ろ! バカリン!」
「あ〜! バカって言ったバカって言った〜! バカって言った方がバカなんぁぃたっ!」
そこから、涙目になったアリンさんに時に口で、時に拳で説教をしたサティさん。
僕はサティさんから、お肉を渡されて焼いてくれ、との言葉に逆らえずにお肉を焼きました。
アリンさんが縋るような眼差しでうるうると僕を見てたけど、少し反省した方がいいから、見なかったことにした。
あ、玉ねぎ出汁が、お肉に吸われちゃた。
もう、お芋は塩振ってマッシュポテト風でいいや。
肉汁はお肉にそのままかけた。
途中、ケシェラさんというお姉さんも帰ってきて、説教するサティさん、しょんぼりしてるアリンさん、料理してる僕、をみてなるほど、と呟くと、説教してる横にあるテーブルにお鍋をドンと置いた。
そして、焼きあがったお肉をナイフでパワフルにブツ切りにして大皿にマッシュポテトと一緒に盛って、それも説教してる横にドン。
ボケっとしてた僕をちょいちょいと手招きしたら、隣をぽんぽんして座るように促すと、食べようと言って、早速食べ始めた。
まだすぐ隣ではサティさんが熱弁を奮ってて、アリンさんが捨てられた子犬みたいな顔してるんだけど。
「食事は早い者勝ちだからね」
「えと……いいんですか?」
「いつもの事だから、ほら」
「おぉ……」
サティさんが説教しながら椅子に座りお肉をむしゃりと食べた。
アリンさんも説教されながら椅子に座り玉ねぎをつつく。
サティさんがスープをぐいと飲んでから説教をした。
アリンさんがこくこく頷きながらポテトをもぐもぐした。
「ほらな」
「すごい絵面です」
「あ、ノノは今日帰ってこないらしいから、全部食べていいよ」
「マジで? やりぃ!」
「アタシ玉ねぎもーらいー!」
「あ!? てめ、ズルいぞ! 肉取れサティ!」
「任せな!」
「お肉も食べるー!」
「じゃあ玉ねぎ半分寄越せ!」
「やーだー!」
「ケシェラ! 豆入れてやれ! 豆!」
「よしきた! ほーら、アリンの大好きな豆だぞー」
「豆は要らないから〜! ユウトちゃんあげるっ!」
「あ、はい」
「あ、何してんだアリン! ガキに豆押し付けんな!」
「豆は栄養たっぷりだもん! アタシやっさしー!」
「あ、僕、豆も好きですから」
「マジか、あたいのもやるよ」
「あたしのもやろう」
「い〜けないんだ〜」
「「お前が最初にやったんだよ!」」
おお、一瞬で僕のところに豆が……。
好きだからいいけどね、豆。
そんなこんなで騒がしかった食事も終わり、改めて自己紹介的な何かをして、僕はアリンさんに抱っこされてる。
あれ?
「クソ! ソアマーじゃアリンに勝てないのを忘れてた!」
「あたしは気づいてたけど、サティと寝たらユウトくんが絞めて落とされるし」
「ケシェラと寝たら蹴り落とされるし」
「「アリンは危険だけど、寝相はいい」」
「あの、僕は床で寝ても……」
「「「却下」」」
「あの、じゃあ一つ空いてるベッドは……」
「「「…………」」」
サティさんとケシェラさんからは生暖かい視線が、アリンさんからはニヤニヤした気配が。
「例えばだね、ユウト」
「そう自分が乙女になったと思いねえ」
「少年とはいえ男の子が」
「自分の留守の間に自分のベッドに寝てたとか」
「恥ずかしさに倒れてしまうんだ」
「ノノはそういう子なんだよ、ユウトくん」
女の子が、自分のいない間に男が寝てたベッド……
うん、ダメだね。
「分かりました。それはだめですね」
「というか、ユウトちゃんはアタシと寝るのがそんなに嫌なの〜?」
「え!?」
「いや、ヤだろ」
「そうだな。口には出せないけど、嫌に決まってるよな」
「なんで〜!?」
「いつ襲われるか分からないもんな、怖いよな」
「襲われたら叫ぶんだぞユウト」
「えと……はい……」
「ひど〜い! アタシそんなことしないもん! アタシ襲って欲しい側だから〜えへへ」
「アリン、お前……本当にダメだからな?」
「そうだぞ。マジだからな?」
「分かってるってば〜。後二年くらいしたらだもんね?」
「早いし」
「そんな未来ねえし」
コンコン
と、そこにドアをノックする音が聞こえてみんなで顔を見合せた。
エランシアでは、向こうと違って電気とかないから、日が暮れると途端に人出が減る。
まぁ、酒場とかはあるし、なんなら魔法の明かりとかもあるけど、それでも、そこまでは明るくないから、暗くなる前に帰るというのは普通の事。
だから、こんな時間にヒトが訪ねてくるなんて、それだけでちょっと珍しいことになる。
だけど、今日は僕というイレギュラーがいるから、多分、それ絡みなんじゃないかと、集中する視線に申し訳なくなる。
「あたいが出るよ。ユウト、んな不安そうな顔すんな」
サティさんがドアに向かって歩きながら声を出す。
「こんな時間に誰だー? 夜這いなら間に合ってんだけど?」
「すみません、ノノさんの知り合いです」
「……分かった。アンタの名前は?」
「ペリオン・エントと申します」
ペリオン!?
バッと立ち上がりそうになった僕をアリンさんがギュッと抱きしめる。
(知ってる人? 声に聞き覚えはある?)
(は、はい。僕の、その、護衛です……)
(分かった〜)
ボソボソと小声でやり取りをしたアリンさんが、腕をぐるっと回した。
それを見たサティさんがドア越しに声をかける。
「ペリオンさん。まぁ、ノノのダチってんなら話は聞くが、何しに来た? 生憎と今日ノノは出かけてていないんだ。時間も時間だし出直してくれよ」
「……分かりました。ただ、ウサギの様子を聞きたかったんです。ウサギは元気ですか?」
「おう、元気にしてるぜ」
「そうですか……それなら、良かったです。では、明日また様子を見に来ます。それと、ノノ、さんのベッドに寝かせていいそうです」
「分かった。そうするよ」
「ウサギに、心配要らないと教えてあげてください。では」
「おう、帰り、気をつけてな」
「はい」
遠ざかる足音に胸の中が痛くて苦しくなる。
みんなに迷惑かけて、それでもみんなが僕の事を心配してくれて、それでも僕を連れ戻そうともしないで、帰らせて、声をかけたいのに喉が詰まって声が出ない。
「ぅ……ぅぁ……ぅっ、ぅぅ〜……」
「よく頑張ったね〜。辛かったね、苦しかったね、ユウトちゃんは偉いね」
「ぢがう! ぼぐ、わるい、ごど、しだっ!」
「それがちゃんと分かるユウトちゃんはいい子だよ。よーしよーし、今夜はお姉さんがずっと一緒にいてあげるからね〜」
「いやまて、ノノのベッド使っていいって許可出ただろ」
「えぇ〜!? いいじゃん! 使って良くても使わなくてもいいんだよ? だから、お姉さんと寝ようね〜」
「お前がユウトくんを抱き枕にしたいだけだろ……」
「古来より〜! 男の人を慰めるのは女の仕事だし! つまりこれは合法で〜す」
「違法だよ」
「というかアリンの存在が違法だよな」
「女の嫉妬は賞賛だって知ってる!」
「うわ、うぜぇ!」
「料理も出来ない癖にっ!」
「ぐす……ふふっ」
「お、ユウト、笑えるとかお前余裕だなぁ」
「なんだよ、アリンのおっぱいに甘えなくていいのか?」
「おいでおいで! いーよ! さぁこい〜!」
さっきまでと何も変わらない感じのみんなにホッとする。
というか、僕、泣きすぎじゃないかなぁ?
あぁでも、ちょっと泣いてスッキリしたし、そんなの何でもないってみんなの優しさが分かるから。
アリンさんの腕をそっと退けたら、今度は何も抵抗されなかった。
「あぁ、ユウトちゃんがイッちゃう〜!」
「変な発音すんなばか」
「ユウトくんは一人で寝れる大人だから」
「みんなありがとね」
「お、なんだか分かんねえけど感謝されたぞ」
「礼なら明日の朝飯も頼む」
「ふふ、はい、承りました」
「アタシはおはようのちゅーで起こしてね」
「え?」
「ちゅーだよちゅー! ちゅーしたい!」
「無視していいからな」
「そうだぞ、ユウトおやすみ」
「おやすみなさい」
「おやすみ〜。あれ? ちゅーは?」
「あるわけないだろ」
「いいからさっさと、寝るぞ。油がもったいない」
部屋の上に取り付けられてた明かりが、ふっと消えて暗くなる。
途端にさっきまで騒がしくしてたのにみんなすぐ寝ちゃって、僕もすぐに眠くなってきた。
ノノさんのベッドはなんかほんのりお花の香りがする。
おやすみなさい。
アリンのターン!
アリンの服をドロー!
アリンは服が無くなった!
(ドローした服はそこらへんに置かれる)
ちなみに家出ターンはまだそれなりに続くので、次のターンをお待ち下さい。