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看板娘の日常 (side エルシー)

看板娘のエルシーちゃん12歳をよろしくお願いします!

 

「ハイ、お待ちどーさまっ!」

「待ってましたぁ!」


 おっもいジョッキを片手に二個ずつ、テーブルにドカッと置けばちょっとはエールの泡が飛びちろうものだけど、そこはアタシ。


 この看板娘のエルシーにとっては、慣れたものだからね!


「今日はお仕事どーだったの? 儲かったー?」

「おうよ! だっから、こうしてエルシーちゃんに毎日会いにこれんだろう?」

「え〜? 日帰りしかしないのはダメな冒険者じゃないのー?」

「チッチッチッ、俺らくらいになっと、普通は野宿するところをパパッと片付けて帰って来れんのよ!」

「だったらもっとステキなお店で食べなさいっての」

「そりゃあ、エルシーちゃんに会いたいからに決まってんだろう」

「エルシー、言ってやるなよー! そいつは見栄っ張りだからなぁ!」

「んだとぉ!」


 ま、分かってますケド?

 ウチは繁盛はしてるけど、お高く止まったお宿じゃないですし?

 食い詰め者がホイホイ入れる程ではないけど、成功してる人が多いわけでもないからね。


 でもそこはアタシも看板娘だからね!

 お客さんには楽しんでもらいたいから、おしゃべりくらいはするよね。

 ちょっと持ち上げてあげればみんな気分よく注文もしてくれるからね。


「こういうのと結婚すっと苦労するぜ! だから、俺っちとかどうよ!?」

「アタシのおとーさんに勝てたらね?」

「お前じゃ後三年経っても旦那にゃ勝てねえだろ」

「なにぉう! 後三年もすりゃあ、何とかなるかもしんねえだろ」

「んなこと言ってる奴は勝てねえっての」

「じゃあお前なら勝てるってのか!?」

「俺は、エルシーちゃんもエッツァさんも鑑賞しにきてるだけだから」

「タダ見は許しません! って事で注文ちょーだい?」

「あっちゃー、やられた! 肉オススメで大盛り!」

「はーい、ありがとー!」


 まぁ、アタシはまだ12歳だから結婚は15まで出来ないんだけど、おかーさんはおとーさんに10歳からアタックし続けて15で押しかけ嫁したんだからアタシだって今から頑張ってもいいし。

 とはいえ、今のところアタシにビビっと来る人はいないんだけどさ。

 どこにいるのかなぁ、アタシの旦那様。


 なんて思いながらあっちへこっちへ走ってた時に、カランコロンと音を鳴らして新しいお客さんがやってきた。


「いらっしゃーい! 空いてるとこにどーぞっ!」

「おう! ただいまだな」

「あれ? マジモさん、今日は帰って来ないんじゃなかったっけ?」


 今日は遠出するって言ってたと思うんだけど、誰か怪我でもしたのかと思ってみてもみんな元気そうだね?

 というか、大して汚れてもないし。何かあったのかな。


「予定変更だ。それと持ち込みで悪ぃがコレ頼むわ」

「わわっ! これウサギ肉? どしたの? マジモさん、ウサギ虐めてきたの?」

「人聞きの悪ぃこと言うな! 品定めの礼だ。だから一匹だけこっちで後は好きにしてくれ」

「あ、そゆこと。分かったーありがとね。どーする?」

「焼きで」

「煮込みの方が美味しいのにー」

「時間かかんだろ?」

「その間はウチの頼んどけばいーじゃん? 頂き物を美味しく食べないのは悪いでしょ? どうせ、ウサギだけにならないんだし」

「分かった分かった。ったく誰に似たんだかなぁ」

「ウチの美人女将以外いないでしょ! とりあえずエールだよね?」

「おうよ」


 という事で、こんなもの持って回れないからキッチンに避難。


「おとーさーん! これ、マジモさんからー」

「なんだ? アイツもう帰ってきやがったのか?」

「うん、なんか品定めだって」

「そうか……じゃあ丁度いいから休憩しとけ」

「あれ? いーの?」

「お前をマジモなんぞにやるつもりはないが、冒険者の話聞きたいんだろう?」

「うん!」

「じゃあ遠慮するな、エールだけ頼む」

「はーい!」


 そういってポンと頭を撫でてくれたおとーさんを見上げて笑う。


 おとーさんはもう40歳だから結構おじさんだけど、未だに筋肉ムキムキでもうほんとに男の人って感じ。

 アタシも絶対おとーさんみたいなかっこいい旦那さんが欲しい。


 そういう意味ではマジモさんはかなりいいんだけど、さすがに20以上離れてるのはなぁ。

 どこかにいい筋肉してるかっこいい人いないかなぁ。


 おかーさん言ってたもんね。

 壊れるくらい激しく愛してくれるには筋肉必須だって。


『いい? エルシー。いい男って言うのはね、もうだめってくらい愛してくれる人じゃないといけないのよ? だから、瞬発力しかないヘタレ筋肉は問題外。持久力のあるみっちり詰まった筋肉じゃないとだめよ? 後は見た目が少し地味なくらいがいいわ。イケメンはチヤホヤされやすいんだから浮気しやすいのよ。だから筋肉があって、少し地味で、女の子にデレデレしない男を捕まえるのよ!』


 それで、おとーさんみたいなむっつりスケベだとなおいいって。

 惚気けまくりだったけど。


 おかーさんはおとーさん一筋だけど、美人さんだから結婚してからもモテモテで今でもファンがいるから、声掛けられたりして、そんな日の夜はすごい。

 なんでアタシには弟妹がいないんだろう。


「じゃあ、アタシ休憩入りまーす」

「はーい。って、またマジモさんのとこなの?」

「そーだけど?」

「マジモさんおじさんじゃない」

「だって、マジモさん以上の素敵な筋肉がいないんだもん」

「男は顔でしょう? もしくは金」

「筋肉だから」

「「いやいやいや……」」


 全くもう。

 分かり合えないね。

 まぁ、その方が競争率低くていいけどさ。


 おかーさん譲りの金髪をちょちょいと撫で付けて、エプロンだけ外して、ジョッキ抱えてマジモさんのところに行く。


「おまたせー」

「おう! ってまたここで休憩かぁ?」

「そーだそーだ! たまにはこっち来いよー!」

「筋肉付けてから出直してきてね?」

「クソ、マジモのと俺のと何が違うってんだ!」

「そもそもマジモさんとか、もういい歳じゃねえかよ、ぜってえ俺の方がいいのに……」

「相変わらず人気ですねぇ」

「ガキにゃ興味ねぇんだがなぁ……」

「後何年かしたらおかーさんみたくなるもん」


 その瞬間アタシの胸にみんなの視線が集中してくるけど、何故か無言で視線を逸らされた。

 酷いっ!


「今に見てなさいよね!」

「おうおう、がんばれよー」

「ぶぅ……ところで、品定めって何してたの?」

「あん? あぁ、それか」


 マジモさんがジョッキを傾ける時に躍動する腕の筋肉にうっとりしながら聞きかじったところ、新しく貴族の人が冒険者になるみたいで、どんな人か見に行ってたんだって。

 貴族の人とか、絶対にひょろひょろだよね。

 もしくは見せ筋肉。興味ないなぁ。


 まぁ、貴族の人の機嫌損ねたりしたら後々が怖い事も少なくないし、どんな人か気になるのは当然だよね。

 さすがマジモさんは真面目だよね。


 と、そんな話をしてたからか、他のテーブルからもマジモさんの見解を聞きたがる人が出てきた。

 もっとマジモさんの筋肉を敬うといいよ!


「まぁ、そうだな……根性の座ってなさそうなガキだったが、保護者がアレだからな、何日か様子見はするつもりだ」

「アレか、そうだよなぁ」

「スローターだろ?」

「俺、そんときはギルドにいたんだけどよ、無礼があったら殺すって目で見られたぜ」

「でも、スローターっていやぁ、根っからの戦姫信者だろ? なんだってそんなガキのお守りなんかしてんだ?」

「いや、マジモの旦那から見たらってだけかもしれねえぞ」

「いや、エルシーよりも小さかったと思うぞ」


 そこで一斉にアタシの方を見られても……。

 というか、アタシは女の子ですけど!?

 それも将来はおかーさん似の美人になる予定の。

 今でも美少女だけどね。


 貴族の人なのに冒険者になるくらいなんだから男の子だと思うけど、アタシと比べられるくらいとか、やめた方がいいんじゃないかな。


 重要なのは、何日かはマジモさんは毎日帰ってくるっぽいこと。

 やる気出てきたぁ!


 と思ってたのに、次の日はいきなり帰ってこなかった。

 なんで!?


「なんで!?」

「いや、なんでも何も、様子見ついでに余計なもんが寄らねえ様に間引きすんのも役目なんだよ」

「なにそれー。そんな甘やかされていーの?」

「貴族だからな。慣れん内に余計な騒動は避けてえんだよ」


 とは言ってもウチに来てくれるのは嬉しいんだけど。

 むぅ。乙女心分かってない。

 モテたらヤだけど、そんなんじゃモテないんだよ?


 今日の持ち込みはその貴族の子が捌いたウサギみたい。

 へったくそー!

 こんなの売り物にならないんだからね。


 とか思ってた次の日のウサギはもう駆け出しの子より余程上手くなっててびっくりした。


「これがまぁ、物覚えの良さがすげぇんだ。それに素直だしな。明日にはもう終わるって事らしいから顔見せしてねえ奴らは余裕あれば行っとけよ? 今回のは当たりと思っていいぜ」

「はぁ!? まだ今日で四日目だろ?」

「いや、俺も見てきたが、ありゃ化けるぞ。野草の知識はもう一端のもんだったしな。何せあのスローターがなぁ……」

「そんなに厳しかったのか?」

「いや、主様主様って、超甘やかしてた。俺は夢でも見てるのかと思ったな」

「「「は?」」」

「あのスローターも丸くなったもんだと思ってたんだがな。ウチの若いのが、ちょっとデートに誘ったんだ。そうしたら首を締め上げながら目ん玉にナイフチラつかせて一言「死にますか?」とか言ってな、泡吹いてたわ」

「「「ヒェッ」」」

「すげえのはこの後さ。こっちは誰も迂闊に動けねえってヒヤヒヤしてたんだがな。坊主が戻ってきた瞬間、ウチのをヤブに投げ捨てて甲斐甲斐しく世話を始めたんだ」


 なんでもその若いのは腕の骨を折ったらしい。

 が、

 怪我人がいると主様とやらが心配するとの事で高価な回復薬で治されたらしい。


 やっぱり貴族の人なんかと関わらない方がいい気がするけど、なんだかんだと明日はそれなりに人が行くらしい。


 冒険者のみんなってほんとにばかだよねー。


 もちろん、おとーさんとかマジモさんとかすごい人がいないわけじゃないのは分かるんだけど。




 この二日後、マジモさんがその素敵過ぎる肉体美を惜しげも無く晒したと聞いてアタシは泣いた。










という事で、可愛い可愛いエルシーちゃんからのヘイトがユウト君に向いた気がしますが、筋肉があればきっと大丈夫!


雌犬になりたい聖女様に続いて、筋肉至上主義なファザコン看板娘という業の深いロリ枠が増えてしまいましたが、困った事に


予定通りです!


やっと出せたよ!お・ま・た・せ☆

ユウト君と絡むのはもーちょっと待っててください。

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