ルールノスキ
お待たせしましたー
バトルな描写は難しいデス
たくさんの恩恵を貰ってから十日、いくつかの恩恵を使う事に慣れてきた僕はボラからテストをされている。
「そんじゃ、この試験が合格したら、技術の方はひとまず半人前卒業ってことにするからな」
「はい!」
「そしたら、後は実地で鍛えてやるからな」
わっしゃわっしゃと頭を撫でられるのがくすぐったくて逃げる。
「で、アデーロはまぁ問題ないが、ペリオン、お前は下手な結果になったら俺が直々に鍛え直してやるから必死でやれよ?」
「分かってますよ! 大丈夫ですよ、まだ負けません」
「まだって、ペリオン……キミ、諦めるの早過ぎないかい?」
「ユウト君の魔力強度の強さのせいで力負けしちゃうんですよー!」
「そこを経験と技術で何とかすんのが年長者の務めだろうがよ」
「というか、ペリオンは魔力の操作をもっと慣らさないと駄目だよね」
「その訓練になる前にこっちに異動になったんですよー! 私は悪くありません!」
「ペリオン、ごめんね、僕のせいで」
「あ! 違いますよ!? 別にユウト君が悪いわけじゃないです。ちょっとタイミングが悪かっただけで、誰も悪くないですし、今はここにいるのも感謝しかないですから」
あわあわしながら焦るペリオンにみんなで少し笑ってから、ボラの指示で10メートルくらい離れて立つ。
丁度三角形になるみたいな感じ。
「んじゃ確認するぞ」
1対1でのやりとりはオッソに丁寧に教えて貰ってるけど、オッソが無口だから、連携付きのは、ペリオンアデーロのペア、もしくはベンドペリシーペアでやってる。
型にハマった人との方が今のペアで、実践向きというか、何でもありに近いのがもう一つのペア。
どっちが楽か?
って事は無い。
どっちも足りない僕にはきっちりと詰めてくる騎士のやり方も、何が出てくるか分からない傭兵のやり方も同じくらいやりにくい。
「魔法以外の恩恵は三つまで使って良し! 大人組は寸止め、ユウトは痛い目見せてやれ」
僕が、使えるのは、【身体強化】【空間把握】【観察眼】の三つ。
ボラからは、【既知情報閲覧】を使えれば、前にやられた事の対処は出来るだろうって言われてるけど、それで決め打ちみたいになると良くないから、使わないように言われてる。
今は反省会専用みたいになってるね。
後【隠れんぼ】が使えるようになると目くらましみたいに使えるって聞いたけど、あんまり上手く使えない。
今の僕の出来ることは、【空間把握】と【観察眼】で相手をよく見て、【身体強化】で力押ししてる感じ。
「ユウトは三回寸止めされた時点で負け。大人組は武器を無くすか、一撃貰うかしたら負け。もしも寸止めされたら俺のシゴキ追加な」
ボラに教わって、魔力強度任せに慣れた頃に一度、ペリオンとの打ち合いをしてる時に壊しちゃったんだよね。
魔力強度怖い!
「大人組は、同時にユウトに攻撃するのは禁止な。で、後は使う恩恵を教えろ。アデーロは【身体強化】禁止だぞ」
「分かってますよ。僕は【先読み】【体術】と……【舞台映え】」
「私は【身体強化】【棒術】と……【あやつり人形】です」
「……え?」
今まで使ったことない恩恵だよ!?
「ユウト、お前はよくやってる。それでだが、二人にはあえて少し普段のとは違うものを頼んだ。理由は、実戦では何が出てくるか分からないからだ。傭兵組はあえて変則的にして貰ってるが、これも一味違う騎士を体験出来る」
「えっと……傭兵ペアみたくなる、ってこと?」
「いや、違う。二人には騎士らしくやって貰う。ユウトの【観察眼】があれば何とか対処出来るはずだ。慎重に行けばいい」
「うん……」
それでも、先に何を使うのか教えて貰ってるんだから、その分も僕のハンデって事だよね。
【あやつり人形】は、なんだろう。ペリオンがあやつり人形みたいになるの?
【舞台映え】って役者、みたいな?
よく分かんない。なんで役者?
「んじゃ、始め!」
ボラの掛け声で、集中集中と改めて二人を見る。
僕達は今みんな棒を使ってる。
突いてヨシ、薙ぎ払ってヨシ。
体術の延長にちょっと近いのと、後、刃物じゃないのが、怖くなくていい。
棒は身体より少し長くてアデーロのが2メートルくらい。
僕のは1,5メートルくらいでペリオンのがその間くらい。
これを両手で持って、突いたり振り回す。
「行きますよー」
「はい、お願いします!」
最初はペリオンが前なんだ。
いつもはアデーロが先なんだけど、そこらへんも違うね。
【身体強化】を全力の半分くらいに【観察眼】は全力。
トットッと軽い調子で僕の方に来るペリオンが、まずは小手調べと右の肩に突いてくるのを棒で払って、お返しに踏み込んだ右足に突き込んだのは、くるりと回したペリオンの棒で弾かれる。
そのまま更に回した棒で僕に当てようとするのを、一歩二歩下がってやり過ごして、ペリオンが追ってこないのを確認したら、アデーロが左側の何処にいるかを横目に見る。
【空間把握】出来る範囲内にいないから、ちゃんと目視しないと分からない。
僕の【空間把握】は視界の隅にさえ入っていれば、5メートルくらいなら詳細に位置が分かる。後ろからだと全然だからまだまだだけど、ちゃんと見ないと分からないって事はまだそれほど近づいて来ていない。
構えてはいるけど、まだペリオンが続けて来る感じ?
僕の方を見据えながら、すり足でジリジリと動きながら距離を保ってる。
腰を落としていつでも前に出れるようにしてる。
棒の先端を少し落とし気味にして───
「よそ見してて大丈夫ですか?」
「……え!?」
ペリオンの声に意識をペリオンに戻したら、もう距離が詰められてて、右側から横薙ぎにされた棒が僕に迫って───
ガッ
と縦にした棒で慌てて防ぐ。
振り回されない様にセーブしてた【身体強化】を全力にしちゃったけど、同じく【身体強化】してるペリオンの横薙ぎに身体が滑る。
アデーロの方に。
二人同時はないから、ペリオンが追撃に来てたらアデーロの方はまだ大丈夫。
でも、ペリオンは僕を滑らせた後に一歩引いて見せたから、ここでアデーロになる。
押されて崩れた体勢を何とかしようとしたところに、イヤなタイミングで刺し込まれた棒を払う。
「そんなに分かりやすく慌てない」
払おうとした棒がスっと引かれて空振る。
的確に、僕が振り抜いた棒が通った場所の、ほんの少し前まで引き戻された棒が、そのままもう一度突き込まれて、ピタリと胸元で止められた。
「一回目、だよ」
パチリとウィンクして僕から距離を取るアデーロに少し呆然とする。
今のは【先読み】だよね。
アデーロには【身体強化】がない状態なんだから、僕の方が絶対に速いのに!
何回もやられてるから分かってたけど、本当に意味が分からないよ。
アデーロは、身体はどう動くかがある程度決まってるからそこを邪魔してるだけだって言うけど、それにしたって、僕の方が速いんだから、間に合わせるのも大変なはずなのに、いつも僕の先に棒を置きにくる。
騎士の戦いのメインは、相手を殺す事じゃない。
無力化する事に特化してる。
ボラが言うには、戦争とかでなければ、わざわざ相手を殺す為には力を奮わないんだそう。
凶悪犯みたいなのはまた別だそうだけど。
騎士道精神的な感じみたいだね。
だから、狙う場所は、基本的に両肩、両腿の四か所で、アデーロが胸元で寸止めしたのは、本当にトドメ。
後は頭の寸止めもだけど、そういうとこを狙ってきたら、チェックメイトな感じ。
基本的に突きなのも、致命的な怪我を負わせにくいからなんだそう。
剣とかでスパーっと切り落としたりすると治すのが大変らしい。
大変、で済むのは魔法ならでは、なのかな。
あんまりそういうのは、見たくないなぁ。
さてと、ちょっと脱線したけど、ボラが騎士らしくって言ってた以上、狙われるのは肩と腿なのはいい。分かってた事だもん。
【先読み】も、憎たらしいけど、僕の動きが悪いって事だから今は頑張るしかないよね。
問題は、さっき負けるきっかけになったペリオンの動きだよ。
絶対に【空間把握】出来る範囲内に居た。
アデーロに意識向けてたけど、それくらいは出来るのに、いきなりって言っていいくらいに急にペリオンに接近されちゃった。
となると、僕の【空間把握】が使えなくされた?
なんか、それも変だよね。【舞台映え】と【あやつり人形】だもん。
そんな効果は名前からしても無さそうだよね。
だから【空間把握】はちゃんと出来てた、と思う。
「ユウトー! はじめていいかー?」
「ちょ、ちょっと待って!」
「あと一分だけな」
じゃあ【観察眼】の方?
二人がかりだから、見落としが無いように全力で使ってたけど、もしかして【舞台映え】に魅せられてた、のかな。
でも、使わないって選択肢は取れない、よね。
【観察眼】がないと、経験の少ない僕だとそれだけで対応出来なくなっちゃう。
だから、使う、けど、全力は止めておこう。
それと、新しく見せてもらった恩恵だから警戒してたけど、受け身になってると自由に攻撃役を切り替えられちゃうから、僕から仕掛けて離されないようにしないとダメだよね。
「二回目、いくぞ!」
「はい!」
今度もペリオンが前なんだ。
でも、今度は僕も前に出るよ。
最初と同じように、でも逆の左肩を狙って突かれた棒を、今度は払うんじゃなくて身体をズラして回避して、僕からペリオンの右肩を狙う。
そうして、開始の位置からズラしてアデーロ、ペリオン、僕、と一列とまでは行かなくても、二人をちゃんと視界の中に入れつつ、牽制になればいいやと軽い突きを繰り返す。
(やっぱり! 【観察眼】の方だ!)
僕の突きをいなして躱して、と対峙してるペリオンよりもアデーロの方に視線が吸い寄せられる感じ。
ペリオンが肩の辺りを狙う様にしてくる突きを躱して、払ってしてるのに、そのペリオンと同じくらいにアデーロに視線が向かっちゃう。
「ふふ、アデーロさんが、気になりますか?」
「目立つんだよ、アデーロは」
スっと、身体を横に滑らせて、ペリオンの後ろに隠れない様にしてくるアデーロがニヤリと笑ったのが見えた。
あぁ、もう! ペリオンの方に集中したいのに!
肩を狙ってたペリオンが腿の方に変えてきたのをちょっと慌てながら払って、続け様に突き出された棒から距離を取るようにバックステップで回避、した時に【空間把握】で、アデーロの接近に気付く。
それに気付いてると棒を向ければ、構わないとばかりに近距離での打ち合いになる。
「このっ! なんで、アデーロは強化してないのに、そんな早いの!?」
「いやいや、早くはないですよ? ユウトはまだまだ分かりやすいですからね、恩恵が無くても先読みしやすくて助かります」
「アデーロに絶対当てる!」
あんな、僕に分かりやすい様に少し大振りに棒を振り回してくるのなんか、強化してる僕ならもっと簡単に払ったり、避けたり出来そうなのに、どうしてもアデーロよりも遅れてる。
防御に回ったらダメだって思うのに、攻撃しようとするとそれに待ったがかけられる感じで、とてもストレスが溜まる。
「っ! ここっ!」
だから、振るわれた棒を弾くようにして【身体強化】で強引にスキを作って、アデーロでも避けにくい様に横薙ぎに振ったのに、振ったその前にもうアデーロが後ろに逃げてた。
「おっと危ない」
「まだだよっ」
追う僕から更に距離を取ろうと下がるアデーロの視線がチラリとわざとらしく横に逸らされる。
そこで、ペリオンの事をすっかり忘れてた事に気付いた。
(あ、まずい。引いたら、攻撃交代の合図なのに、アデーロばっかりでペリオンの事忘れてた!)
【空間把握】で、捉え切れない場所から、振るわれるのを強引に感覚だけで迎えて、打ち上げるように払えば、仰け反るようにされて目を見開くペリオンがいて。
「わわっ!?」
「もらったー!」
がら空きになったペリオンの胸元にトドメと突き込んだら、倒れる様に無理矢理な回避をした。
まるでリンボーダンスしてるみたいなどうしようもない体勢、そこに打ち据えるように振り下ろせば、横にして構えたペリオンが苦し紛れに一手稼ごうとしてるけど、ここまで体勢が崩れたら、もう立て直せない。
防御してる棒ごと、ペリオンを倒せば僕の勝ち!
そう思って、振り下ろした僕の前で、グネリとペリオンの身体が動いた。
「え……ナニソレ」
重力とか、慣性とか、そういうのを全く無視したみたいな異常な挙動。
振り下ろした僕の棒を、無理な体勢から打ち払って、バネじかけみたいに立て直した。
「はい、アウトですよー」
「えぇー?」
ポンと頭に手を置かれてにこにこ笑うペリオンに、脱力して呆然とした。
「今のが【あやつり人形】ですよー。ああいう有り得ない感じの動きを可能にするんです」
「有り得ないってゆーか……ちょっと、キモい」
「ちょ! キモいは酷くないですか!?」
「だって、あんな体勢からぐんにゃ〜って身体が起きるなんて思わないし変だもん」
「うぅ……私のとっておきが、キモい……」
「す、凄いのは凄かったよ!?」
「でも、キモいんですよね?」
「うっ……」
どんよりしたペリオンにどうしようと思ってアデーロを見たら、なんか髪をかきあげて遠くを見てた。
あ、助けてくれない感じだね、ってすぐに分かった。
「ユウト、お前は戦闘中にビックリしたからって動きを止めんな」
「はーい……」
「後、勝った! とか思っただろ? そーゆー色気を出した時が一番危ないんだからな。ちゃんと終わりまで気ぃ抜くなよ?」
そうして、ペリオン放置でボラから注意点をいくつか指摘されていく。
二人を視界に入れようと動いたところが良かった、恩恵に頼りすぎてるところを直していけ、視線誘導されてるのに気付いたなら攻めっけよりも慎重さにすべきだとか。
一番重要なところとして、訓練だからルールを設けてるけど、こういうルールだからと決めてかかるのは致命的なミスに繋がるから気をつけろと言われた。
「ホントならな、選択肢はもっと色々ある。でも、ルールがあってやってるとそこに甘えが出る。ルールのスキをつこうとしちまうんだ。こっちも無意味に怪我はさせたくねえから気をつけてはいるが、そこにお前が甘えちゃダメだ。実戦だと思ってやっておかねえと、いつか取り返しのつかないやらかしをしちまう」
今のルールだと、攻撃は一人ずつってなってるけど、一人ずつだから片方に集中し過ぎてるのは甘え? って事になるのかな。
他にもあるかもだけど。
それに思い返してみれば、前後で挟み撃ち! みたいな事もされた事ない気がする。
迎えた三回目、考えすぎた僕がアッサリ捕まって今日の訓練は終わった。
負けとるやんけー!
チートはどーした!?
とゆーところですが、すみませんorz
アッサリやり込めるユウトがどうしても浮かびませんでした!




