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恩恵リザルト

ページの中ほどに恩恵についての説明がたばーっと書かれてますが、流し読みでも問題ありません。


珍しく同日更新の1回目

 

 カタコトカタコトと微かな振動に揺られて目を覚ませば、僕の頭をゆるゆると撫でるモクさんとバッチリ目が合った。


「あ、気分はどうですか?」

「えっと……」


 なんで膝枕して貰ってるんだろう、と視線を横に向ければ、ちょっと窮屈そうに横並びに座る男の人が三人。

 左からゼシンさん、殿下、アデーロと並んでて僕の事をニヤニヤしながら見ていた。


「おや、寝坊助が起きたよ。どうだい、女性に膝枕をされてる気分は」


 そうからかい混じりに声を掛けられたけど、殿下の瞳の奥には憂慮が浮かんでいた。


 ゼシンさんは無関心な素振りだけど耳を傾けているし、アデーロもおどけてるけど、心配そうにはしてる。


「大丈夫です。モクさんもすみませんでした」

「いいのよ、起きて大丈夫なの?」

「はい。なんか頭の中はスッキリしてますし」


 そう、寝起きは悪い方じゃないけど、あんな風に気を失ったにしては、とても頭の中がクリアな感じがする。


 それになんか視界が開けた、と言うか、見えてなかったものが見える、みたいな感じ。


 僕が大丈夫そうなのを見て、殿下がアデーロをこっちの席に移動させた。

 寝転がってたから、邪魔にならないようにしてたのかな。


「さて、子爵はロロの聖堂に入った後に何があったか覚えているかい?」

「向こうで何か恩恵をたくさん貰って、気持ち悪くなって、倒れた、と思います」

「ふむ……こちらでは祭壇の前に行った途端崩れ落ちるように意識を飛ばしていたから、どうしてしまったのかと慌てていたが、何か不調はあるかな」

「大丈夫です。むしろ元気な気がします」


 そうか、と呟いた殿下はそれで? と僕に問いかけてきた。


「えっと、恩恵は四つで、【因果調律】【観察眼】【考古学】【古代種語マスタリー】【簡易魔術適性】ですね……あれ? 五つでした、すみません」

「これはまた、変なものを貰ったね……少し待ちたまえ」


 そういうと組み立て式の小さなテーブルを出して、紙にさらさらと何かを書き付けた。


「……【観察眼】【考古学】【簡易魔術適性】は分かる。【古代種語マスタリー】もおそらくという範囲で記しておくよ。【因果調律】は僕にも分からないから後で自分で確かめておいて欲しい」

「はい。ありがとうございます」

「いや、司祭役としては分からないものがあると言わねばならないのは忸怩たる思いがあるよ。機会があれば聖女にでも聞いておくといい。僕よりは詳しいはずだからね」

「でも、恩恵はなんかこれが知りたいって思ったら、どんな感じか分かる、んじゃないかなって思ってました」


 そう、感覚で何となくどうすればいいのかは、分かる、ぽい。


「表面的な事はそれでいいよ。でも、恩恵にも色々と使い方次第なところもあるからね、分かる範囲のものはこちらで書き出しておくよ。と言うか、ユウト君は愛されてるねぇ。魔法系統の適性がほとんど貰えてないのはなんか意図的な感じを受けるけど」

「あれ? そういえばそうですね」


 僕だって魔法を使いたい、使ってみたいって思ってたから、ファイアボール! みたいな感じの魔法使えるようになるのかと思ってたんだけど、何も無い気がする。


 いつの間にか貰ってた【簡易魔術適性】が、そうなのかと思ってたけど、魔法じゃなくて魔術だしなんなんだろう。


 後は、ワープするっぽいのくらい、かな?


 残念だけど、仕方ないよね。

 それにその代わりみたいにいっぱい貰えたんだし。


「さてと、こんなものかな。はい」

「ありがとうございます」


 いま書いてもらったもの、それと僕が寝てる間に書いてあったものも含めて何枚かの紙の束を貰った。


「アデーロの方は僕が言うことじゃないから置いておくけど、恩恵については信頼出来る人にしか教えてはいけないよ」

「えっと……はい……」

「ゼシンとモクには今日の事の口外を禁じてるから、心配しなくていいけどね。恩恵と言うのは結構色々と出来ることの幅が大きい。だから、有用な恩恵があると、下手をすると犯罪に巻き込まれてしまうかもしれない。よく知られているものならまぁ構わないかな。でも、恩恵は自分の心を晒す様な事でもあるからね、みんな分かってると思うから問題はないと思うけど、まずは一人で確認をする様にね」

「分かりました」

「勿論、何か危険があるかもしれない。扱いの難しいものとかね。そういったものは誰かに着いていて貰った方がいいから、相談するなって事じゃないよ。とりあえず【座標転移陣】はアイリス嬢に指導して貰うといい」

「アイリスさんも持ってるんですか?」

「いや、僕が知る限りではないね。その代わり【時空間支配】に準ずる恩恵は持っているはずだから、感覚は教えて貰えるはずだよ」

「分かりました。今度聞いてみます」


 そうして、いくつか恩恵についての話を聞いている間に、お屋敷に着いた。

 玄関のところにはメイドのみんなが揃っていて、おかえりなさいませと迎えられた。


 そして、殿下に言われた通りにみんなは僕が何か言うまでもなく、部屋に一人残されて、ごゆっくりどうぞとばかりに仕事に戻って行った。


 なんかちょっと寂しい。


「でも、僕の為、なんだよね」


 よし、と気合いを入れて殿下から貰った紙の束に取り掛かった。



【空間把握】

 周囲の情報を詳細に理解する時空間系統の恩恵。

 視界に入れる事でより精度が高くなる。

 扱いに慣れれば背後の事もある程度は分かる。

 同じく、習熟する程に範囲も広がる。

 但し、広さとしてはそれ程でもない。

 部屋一つ分程度の空間まで。


【収納棚】

 異空間に物を保管する事の出来る時空間系統の恩恵。

 収納棚の場合、簡単に手に持てる程度の物しか置いておく事が出来ないが、収納数はそれなりに多い。

 魔力強度の一割程度。但し、50は下回らないとされる。

 お金などは袋に入れる事でまとめておける。

 同様に小物も袋に仕舞う事でまとめておける。

 但し、同種の物に限る。


【装備召喚】

 所有者指定された装備を収納系の恩恵から引き出すことが出来る時空間系統の恩恵。

 所有者指定されている物がない場合は使う事が出来ない。

 戻す場合は手ずからやらなくてはならない。


【無病息災】

 病気などにかかりにくくする肉体系統の恩恵。

 あくまでかかりにくくするだけなので、全くかからない訳ではない。

 過信は厳禁。

 また、毒物にも多少の抵抗力を持つがこちらも過信は厳禁。


【座標転移陣】

 あらかじめ決められた場所に転移する事が可能な時空間系統の恩恵。

 但し、戻れるのは一人だけ。

 事前に戻る場所に印を付けておく必要がある。

 移動距離、荷重に応じて消耗が増える。

 また発動には多少の時間がかかる。

(他の人も荷物扱いすれば転移可能。背負う、など密着する必要有り。但し、荷重は当然増えるので消耗も増大する)


【海藻繁茂】

 自然系統の恩恵、と思われる。

【繁茂】という恩恵の海藻に特化したものと類推される。

 以下、【繁茂】からの推測による。

 海藻を育成促進する事が出来る。

 また、海藻の収穫量を増やす事が出来ると思われる。


【生活魔法適性】

 小手先のちょっとした魔法に対する適性を持つ無系統の恩恵。

 かまどの火を起こす、そよ風を起こす、飲み水程度の水を出す、明かりをつける、などの小器用かつ些細な事を魔力で行使する事が出来る。

 魔法適性がなくても使う事が出来るが、あった方が疲れにくい。

 下働きや主婦、冒険者など幅広く重宝される。


【観衆の内緒話】

 神秘系統の恩恵と思われる。

 神気を遮断する事が出来る模様。

 見たところ、常時発動していると思われるが、意識的に恩恵を解除も出来ると思われる。

 ユウト君自身で色々試してみるといい。

 但し、普段は遮断している方が良い。


【ハチミツ探知】

 ハチミツを見つけやすくする自然系統の恩恵。

 ハチミツを探す以外では役に立たない可能性が高い。

 蜂の巣を見つけられるはず。

 もしくは、蜂の巣がありそうな場所に当たりが付けられる、かもしれない。

 ハチミツ自体はとても重宝されるので、僕としては頑張って活用して欲しい。


【野草図鑑】【キノコ全集】

 食用、薬用、毒物、などの目利きが出来る知識系統の恩恵。

 部分ごとの有用性などが記されているが、採取法などは書かれていないので、自身で勉強する必要がある。

 また、図鑑は認知されていないものなどは雑草扱いになり、全集は未知のものでもある程度判別可能。

 認知、未知、の判定は恩恵を授かった時点での当該知識に加えて、その場所の植生による。

 認知の範囲を増やすためには土地の者に教えを乞う事などで可能。書物のみでは不可。


【不屈】

 挫けぬ心を宿す精神系統の恩恵。

 これはそのまま。

 強い意志を持てるようになる。


【身体強化】

 身体の反応、強靭性を高める肉体系統の恩恵。

 身体を動かすこと全般に対して補正を受ける。

 補正はあまり大きくないが、必須とされるいくつかの恩恵の一つ。

【無病息災】ほどではないが病気などに対する抵抗力もあると言われている。


【既知情報閲覧】

 おそらく知識系統の恩恵。

 情報を整理できる、との事だから、ユウト君が見た事、聞いた事があれば、客観的に頭の中で見る事が出来るようになるものだと思われる。

 不用意に使うことはオススメしない。


【暗視】

 暗い中でも見ることが出来る肉体系統の恩恵。

 月明かりでもあれば昼間と変わらないくらいに周りが見える様になる。

 全く光がなければ見えない点に注意が必要。

 自然の中で生きる者たちは自然と身に付ける恩恵でもある。


【隠れんぼ】

 おそらく隠形の下位に当たる自然系統の恩恵。

 名前からすると、分かりにくいけど、何かに隠れる、何かから隠れるというのは、溶け込むという事。

 それは人は元より自然なんかと一体になるという事でもある。

 とはいえ、存在を消すとまでは行かないと思われる。


【活性化 夜間】

 一定の条件下で身体能力を向上させる肉体系統の恩恵。

 この場合、日が落ちてから日が昇るまでの間に向上する。

 これらは条件が厳しければ厳しいほどに効果が大きい傾向にあるから、一日の半分くらいが合致する以上、そこまで大きな効果はないと思われる。


【因果調律】

 おそらく系統外の恩恵。

 因果などと記されている以上、偶然を必然とする様な恩恵だと思われる。

 注意しなければならないのは、系統外の恩恵は、良い事、悪い事の振り幅が大きい事。

 幸運に恵まれる事も、不運に見舞われる事も、どちらも同じくらいだと思っておいた方がいい。

 ただ、これのおかげて上手く事が運んだ、これのせいで上手くいかなかった、などと考えると悪性化する事もあるから、あまり考えずに居ることが重要。


【観察眼】

 物事の本質を捉えやすくする知識系統の恩恵。

 鑑定士、警邏職や盗賊職などには必須とされる恩恵。

 活かす為には別に知識系統の恩恵が必要な事も多い。

 単独ではあまり役には立たないが、野草、キノコの方はこれがあれば随分楽になる。

 人の嘘が分かる、罠など隠されたものを見つけやすくなる、などの効果もある。勿論、それに類する知識系統の恩恵がある方が望ましい。


【考古学】

 古代など、古い時代に関する知識系統の恩恵。

 何故、これを取得出来たのかは全く分からない。

 ユウト君は、別の世界から来たのだしね。考古学的な知見などないはずだけど。

 本来は古い時代の物事への造詣が深まる、とかなど。

 だけど、元となる知識がないから、役に立たない、と思われる。


【古代種語マスタリー】

 古い言語に関する知識系統の恩恵。

 これも何故貰えたのか分からない。

【考古学】と並んで意味が分からない恩恵だけど、古代種、と呼称される、龍、妖精、原種巨人、ハイエルフ、などの長命種の言語理解が出来る。

 とはいえ、長命種は押し並べて知能が高いから、わざわざ使わなくても話は出来る。

 相手に敬意を払える、という点以外では現状あまり役には立たない。

 勿論、彼らと交渉を持つ場合にはとても有難い恩恵。


【簡易魔術適性】

 魔法系統の恩恵の一つ。

 魔法適性にはいくつかのランクと属性がある。

 魔術適性はその中でも一番低いものになる。

 更に簡易と付いてる以上、最低限の適性になるね。

 但し、普通は何かしらの属性があるものだけど、何も書いていないから、大体の魔法は使えると思う。

 どの様な魔法でも、それなりに使えるという事になるね。

 とはいえ、特化してない以上、苦手な人よりは使える、くらいになってしまうかもしれない。

 ユウト君の魔力強度は尋常ではないから、結果としてどうなるかは判断が難しいけれど、魔力を垂れ流して凄い魔法を使えるかもしれない。



 恩恵自体の説明は以上だよ。



 これらの恩恵は、進化も退化もする。

【古代種語マスタリー】などは進化して統合した恩恵のはずだよ。

 でも、使わない技が廃れる様に、恩恵も長く使わないでいると使えなくなったりもする。

 もちろん、使い込めばより良い恩恵にもなるし、関連する恩恵は新たに増えたりもする。


 恩恵は教会に行かねば覚えられない。


 けれど、これは最初だけだよ。

 一度恩恵を貰ってしまえば、後は研鑽でも変わる。

 ただ、変わったことを知らねば、変わったことに気づけやしない。

 学者などは、何かを提言したとして、これらの知識系統の恩恵が無ければ、価値のない妄言と受け取られる事もある。

【不屈】のない盾役の冒険者は、信頼出来ない可能性がある。

 とかね。

 そういったものの考え方もある。


 ユウト君は聖痕もいきなり増えたりしたそうだし、【考古学】みたいなよく分からない恩恵も勝手に増やされるかもしれないから気をつけて。

 神の寵愛があると言う事はそういう事もある、ということでもある。


 いくつかの恩恵を見てみれば、ユウト君に直接的な関係の無い恩恵があると思う。

 これらは寵愛の結果として授かったものだよ、おそらく。

【ハチミツ探知】とかはもう聖獣サヌカの我儘みたいな感じもあるしね。


 何にせよ、今回、各教会を巡って、ちゃんとした繋がりが出来たからこそではあるけど、頑張ればその分恩恵の形で返ってくる。


 勇者として立つ事は、苦しいこともあると思うけど、僕に出来る範囲で応援するよ。

 アイスの販売でもね。

 ゼリーも今度持ってきてくれれば、吟味しよう。

 後、ハチミツは僕も好きだから、採りに行くなら僕の分も余分に採って来てくれると有難いね。




「いっぱいあるけど、うん。ちょっとずつ覚えていこう」


 頭がパンクしそうだけど、【既知情報閲覧】があれば、思い出すのは出来ると思うし。

 あ、でも、あんまり使わない方がいいんだっけ?


 そしたら、どこで使えばいいのか分かんないよ。


 えっと、それと、みんなには隠しちゃったけど。

【神気交信】と【秘密の箱】だよね。

 神様とやり取り出来る恩恵と、恩恵とかも隠したいものを隠せる恩恵。


 何個あるの、これ。


 いーち、にー、さーん……24個?


 後、なんだっけ、統合とか言うので合体しちゃう前のがあったから、それも入れたら30個……?


 とりあえず、僕が使えそうのが【空間把握】【収納棚】【生活魔法適性】【不屈】【身体強化】【観察眼】【簡易魔術適性】


 使い道の分からなそうのが【海藻繁茂】【考古学】【古代種語マスタリー】【因果調律】


 あると役に立つっぽいのが、【既知情報閲覧】【野草図鑑】【キノコ全集】【無病息災】【暗視】


【ハチミツ探知】はお礼した後はお菓子作りに使うかな。


 後は良くわかんないや。

【隠れんぼ】とか、意味分かんないし。

 どこで使うんだろう。お屋敷で隠れんぼ大会とかするの?


 そういえば、魔法使えないのかと思ってたけど、どれでも使えるみたいだから、アイリスさんに頼もう。


 後、生活魔法使えるようになったら流石にお風呂は一人で入れるよね。

 一番嬉しいのこれかもしれないなぁ。


 なんか変な気がするけど、いっぱい恩恵も貰えたんだし、頑張らなきゃだよね。


系統とか何それ、は、アイリスさんがきっと説明してくれます(丸投げ)

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