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シアワセのカタチ

怒涛の神様ラッシュが始まりますw

 

「わっ!」


 突然、太陽を直視したみたいな光の奔流にぎゅっと目をつぶって、腕を顔の前に上げた。


 でも、周りのみんなは何も言わないし、何かされそうな感じもないから、これが普通なの?

 と言うか、僕の事を驚かしすぎだと思う。


 恐る恐る目を開ければ、さっきの凄い光は収まってて、大丈夫そうだけど、ちょっと僕で遊びすぎだと思う。


「こーゆーのは先に教えて───あれ?」


 後ろを振り返って文句を言おうと思ったら、誰もいない。


「というか、ここ、どこ……?」


 さっき、聖堂の小部屋に入った、よね?


 それで、祭壇の前に押されて行って、眩しくなって、僕は今、見渡す限りの原っぱに居た。


 意味が分かんなくて、キョロキョロと周りを見ても、どこもかしこも地平線まで原っぱで、雲一つない真っ青な空と、さわさわと吹き抜けてく風だけ。


「え……?」


 エランシアに初めて召喚された時よりも意味が分からない。

 あの時も怖かったけど、他の人がいて、ダスランさんが来て、大丈夫だって言ってくれた……けど、ここには誰もいない。


「お待たせしました」


 と、背中から肩にポンと手を置かれて慌てて振り向けば


「えっと、どなた、ですか?」


 黒い髪に妖しく光る金色の瞳、白いワンピースをふんわりと揺らす、女の人。

 金色の瞳が、僕の事をじっと、じーっと見詰めてて吸い込まれそう。


 振り向いた僕の肩に残した手で僕のほっぺたをすりすりと撫でてニコリと笑った。


「うふふ……お待ちしてましたわ、ユウト」

「……あの、誰ですか? 後、ここどこですか?」


 なんだろう、凄く怪しいのに、警戒心が全然湧かない。

 知らない人、そのはずなのに、凄く懐かしい気がする。


「わたしは、アフェル。貴方に侍る事を赦された過ぎ去りし女神」

「アフェル、さん……?」

「それで、あたしが、サフェル。貴方に寄り添う事を認められた在りし女神」

「へ?」

「でもって、ボクが、ラフェル。キミの手を引く誉れを賜った先往く女神」

「えぇ……??」


 僕の前でアフェルさんと名乗った女の人が、次はサフェルさん、ラフェルさんと、三回も似てるけど違う自己紹介をしてくる。


「えっ……と? 僕は、なんて、呼べば??」

「わたしの事はアフェル、あたしの事はサフェル、ボクの事はラフェルって呼んでくれればいーよ?」


 ニコニコしながら朗らかに言ってくれるんだけど、この人達は、多重人格、の人なのかな?


 どうしよう?


 どの名前で呼んだらセーフなんだろう?


 アフェルさんって呼んで、あたしはサフェルですけど?


 とか言われたら……でも、多重人格の人って、違う人だよって言っても大丈夫なんだっけ?

 と言うか、四人目とか、ないよね?


「「「あ!」」」


 ぐるんぐるん考えてたら、急に驚いた! みたいな感じで、飛び上がるから、僕もビックリした。


「な、なに……?」


 心臓がばっくんばっくんしてる。

 というか誰か助けて。


「すみませんでした。わたし達、区別つきませんよね?」

「えっと、はい……ごめんなさい」


 他の人の区別は付いてる系?

 それだと、話しても、大丈夫? 大丈夫って事でいいの?


 ぺこりと謝りながら頭を下げて、そっと戻したら、三つ子になってた。


「これで問題ないですね」

「これなら分かりますね」

「みーんな別々だからね」


 いえーい♪ とハイタッチする“全く同じ格好の女の人”がなんか自慢げな感じで僕に同意を求めてくる。


「見た目は、その、同じ、なんですね……」

「「「そーお?」」」


 何か変かな? ってこてんと首を傾げる姿も同じだし、錯覚かもしれないけど、サラリと流れる髪も同じ動きしてた気がする。


「見た目同じだとユウト分からないって」

「それだとどうすればいいでしょうか」

「それではユウトに決めてもらいましょう」

「どうしたら区別付きますか?」

「ユウトが分かるようにしていーよ」

「えぇ!?」


 僕が何とかするの!?


 どうしよう?

 髪型弄れば、大丈夫かな?


「じゃ、じゃあ、髪型変えてもいいですか?」

「いーよ、やってー」

「お願いします」

「頼みます」


 ぺこりと頭を下げる三つ子さんに紐を貰って、一人をポニテにする。

 うん、どこから紐を出したのか全然分かんないけど、なんかこの人達は、こういう人達なんだろう。

 考えたら負けな気がする。


 もう一人をお団子にでもすれば、三人の区別はつくから、それでいいやと、思った。


「……なんでみんなポニテになってるの」

「ユウトがやったんだよ?」

「ユウトがしてくれたではないですか」

「ユウトが結ってくれましたよね」

「えっと、ごめんなさい?」


 あれ?

 僕が悪いのかな。

 というか、これ、どうしたらいいんだろう?


 誰か一人の髪型弄ったらみんな弄った事になっちゃう。


「三人いるとユウトが混乱するので、貴女達は帰っていいですよ」

「みんないるとユウトが困惑するので二人はお引き取り下さい」

「ユウトはボクが面倒見るから」


 やいのやいのと話してるけど、僕はどうしたらいいのかなぁ。


「あの! 僕、クシァンテって神様のとこに恩恵っていうのを貰いに来たんだけど!」


「「「ちょっと待ってて下さい。案内役が必要なので」」」


 えぇー?

 こんなとこで、案内役の人がいてくれるのはありがたいんだけど、僕はどうすればいいのかな。

 途方に暮れて、案内するにしてもどこに行くんだろう? と周りを見てみたら、なんかおじいちゃんが手招きしてた。


「ほれ、坊主、こっちで茶でも飲まんか?」


 さっきは絶対なかったのに、木のテーブルに切り株の椅子があって、そこでお茶を淹れてるおじいちゃん。


 仕方なくおじいちゃんの方に行くと、そこに座れと指で示されたから、とりあえず、座る。


「あやつらはいつもああでな。疲れたじゃろ」

「疲れたとゆーか、意味がわかんなくて……」

「ほっほ……じゃろうな」

「おじいちゃんも、神様?」

「そうじゃの、まぁ、ワシがクシァンテじゃ、よう来たの」


 うん。

 ここでクシァンテ様じゃなかったら変だもんね。


 改めてクシァンテ様を見れば、なんか隠居した賢者みたいなイメージのある、ぞろっとしたローブを着たおじいちゃん。

 背はすごく高そうで、座ってるのに立ってた時の僕よりも頭が上の方にあった。

 髪の毛みたいに伸ばした白い髭が凄い。


「あの……僕、恩恵っていうのを貰いに来たんだけど、えっと、クシァンテ様から、貰えますか?」

「もちろんじゃ。それと、クシァンテ様なんぞと呼ばんでええ。ワシはおじいちゃんの方がええのぅ」

「え、でも、神様、ですし……」

「童が大人に気を遣わんでええ。礼儀も過ぎれば無礼なもんじゃ。童は元気にしとるのが一番じゃ」


 そういって、ぽんぽんと頭を撫でてくれたクシァンテ様。

 うぅん、おじいちゃんに緊張してたのが無くなるのが分かった。

 それを見て、おじいちゃんは、それでええと頷き、僕にカップを渡して、自分も一口飲んだ。


「ところで、坊主は恩恵は何がええかのぅ?」

「えと、僕が選んでいいの?」

「構わぬ。とは言ってもワシの権能の及ぶ限りにおいて、手始めに一つ、と言ったところじゃがな」


 選んでいい、って言われても、おじいちゃんがくれるものだし、何があるかも分からないし。


 えぇっと、クシァンテ様は、物質的な事に強い神様、なんだっけ。

 安寧と、時空の神様。

 時空って物質的なのかな。

 安寧も違う様な気がするんだけど。


「とは言っても、どんなものか分からんかの」

「うん。初めてだし、何があるかも分かんないもん」

「そうさな……【空間把握】はどうじゃろうか」

「空間把握って、何ですか?」


 おじいちゃんが言うには、周りのことがよく分かるようになる恩恵なんだそう。


 ボラが後ろにいる僕のこととか分かってたのもこれなのかな。


 と思ったらそれはそれで別のものらしい。

 こっちの方が良い恩恵だとおじいちゃんが自慢してた。


「それと、これは無いと困るからな。【収納棚】はおまけしてやろう。後、便利だからな、【座標転移陣】と、【装備召喚】もあるとええじゃろ。いや、それなら───」

「まってまって! おじいちゃん、一個って言ってたのに、おまけが凄いことになってるよ!?」

「いや、しかし、備えあれば憂いなしと言うじゃろ? あっても困らんのだから、持っていくのがええじゃろ」


 そう言いながら僕の頭をぽんぽんする度になんか、恩恵が僕の中に入ってきて、勝手に使い方も分かってくる。


 思わず顔を仰け反らせてぽんぽん攻撃を回避したら止まったけど、おじいちゃんが凄く残念そうな顔をするから、なんか僕が悪いことしてるみたいな気分になる。


「だ、大丈夫だから! ほら……えぇっと、子供に贅沢させたらそれが普通に考えちゃうとか、あるし!」

「そんなこと言う童がそんな事するかのぅ」

「それに、えっと、また今度にすればまたおじいちゃんに会いに来る理由にもなるし!」

「その時は、もう少しええものを用意するから大丈夫じゃ。と言うか、【収納棚】だと、ちと容量が不安じゃな。【収納部屋】か、いや、やはり【隔離倉庫】辺りにしておいた方が……」

「大丈夫! 大丈夫だから! こんなにいっぱい貰えて凄く嬉しいなっ!」

「そうか……?」

「うん! ありがとうおじいちゃん!」


 内心冷や汗だらだらでも全力笑顔で乗り切るんだ!

 このおじいちゃん、ダメだ。

 孫とかを甘やかして親になった子供に怒られるタイプの。


「「「あー!」」」


 とかやってたら三つ子な女神様達がようやく僕達の事に気づいたみたいでこっちに来た。


「クシァンテ様、わたし達が連れていくと言いましたよね」

「クシァンテ様、あたし達がご案内すると申しましたよね」

「おじいちゃん、ボク達がナビするって言ってたよね」

「ならば、ケンカなどせずに仲良く連れてくればよかろ」


 さっきまでの落ち着いた感じから一転、拗ねたみたいな感じで三つ子にブー垂れるおじいちゃん。


「話し合った結果、一人ずつ順番に案内役をすると決まりましたので」

「協議した結果、案内役は交代で行うと決まりましたゆえ」

「仕方ないからローテーションするって決まったし」

「なら、一回余る分をワシが埋めたって事じゃろ。感謝してええんじゃぞ」

「耄碌爺のくせに生意気です」

「老害如きが欲張りです」

「ジジイは引っ込んでろし」

「ええのんか? 坊主の前でそんな口汚くして」

「「「!?」」」

「あ、はは……」

「ほれ、ここはええから次で待っとれ」


 おじいちゃんにシッシッとされると仕方なさそうに揃って肩を落とすと、それぞれ僕に挨拶をしてからどこかに消えていった。


「すまんのぅ、坊主。あやつらも悪い子じゃないんじゃがなぁ。まだ幼いゆえ、自制が効かなくてのぅ」

「おさない……?」


 幼いってあの三つ子が?


 どう見ても、二十歳くらいのお姉さんって感じだったけど。

 神様だと年齢が違うのかな。


「そんなこと言われても分からんよなぁ。あの子らは神としては若くての、見た目はボインボインな姉ちゃんだがのぅ、精神年齢というと坊主よりも下かの」


 ほっほっと笑いながら、こう……ね、おっぱいを持ち上げるみたいな仕草をしてるんだけど、賢者みたいな格好でそういうことするのやめてほしい。


「じゃからな、この後も、あの子らに振り回されると思うが、坊主の方がお兄ちゃんだと思ってくれると助かるんじゃが」

「分かりました」

「すまんの。それと、ワシに何か聞きたいことがあれば聞いてくれて構わんよ」

「えっと……」


 聞きたいこと……いっぱいある。


 なんで僕がここに来たのか。

 勇者が何をするのか。

 そもそも僕なんかでいいのか。

 神様に愛されてるのは何でなのか。


 僕が今幸せなのは、本物なのか。

 それとも、神様の力によるものなのか。


 何を聞こう。

 どこまで聞いていいのか、分からない。

 けど、チラッと見れば、おじいちゃんは何でも聞きなさいと言わんばかりに優しく頷いてて、それに押されて口を開いた。


「僕じゃなきゃ、ダメだったのかな……とか」

「駄目じゃな」


 一番怖い事、それを聞いて、答えを貰って、恐ろしくて震える。


「坊主は、良い子じゃな」

「ち、ちが……」

「何が違うものか。誰でも良い中から選ばれたなら、例え失敗しても代わりはおるものな」

「っ!」

「代わりのない中で、自分が取り返しのつかん失敗をしたら周りに迷惑がかかると思うてるんじゃろ?」


 ……こくり。


 情けなくて、恥ずかしくて、顔が上げられない。


「坊主は、周りをもっと頼る事を覚えないといかんなぁ」

「たよる……?」

「そうじゃ。怖かったら怖いと言うてみい。娘っ子らはちゃんと待っとるぞ。坊主が怖がってるのも分かってて、言うてくれるのをずっと待っててくれとる」


 テリアが、前に言ってくれたのは、そういう事なんだろうか。


「でも……迷惑、かけちゃう……」

「迷惑かけたらええ。坊主は……致し方ないところもあるが、迷惑かけるのを悪い事だと思うてるじゃろ」

「うん……」

「迷惑をかけられるって言うのはじゃな。信じてもらってるという事じゃ」


 そう、なのかな。

 迷惑かけるって、負担をかけるって事で、それは、無責任な事なんじゃないのかな。


「のう、坊主。お前さん、勇者だなんだと言われて、必要だと言われて嬉しく思ったじゃろ?」

「……うん」

「それと同じじゃ。誰にも頼られなければ、自分が必要だと思えんのじゃ。迷惑をかけると言うことは、必要にされてると言うことじゃ。それの何が悪いことか。坊主の世界には、人という字は人と人が支え合う形を模した物じゃという話がなかったかの。どちらかに偏ることなく、頼り頼られるというのはとても尊い事なんじゃ」


 いいのかな。

 本当に、そんなことして。


 僕は頑張るって、言ったのに、情けないこと言って。


「坊主がそんなじゃから、ワシらは愛しくて仕方ないんじゃ」

「え?」

「ワシらは、坊主が幸せになってもいいと思うておる。小さき身でよう頑張った。じゃから、(しるし)を授けておる。聖痕と言うんじゃったか? それは、幸せになってくれというワシらの願いじゃ」

「しあわせに、なってくれ……」

「これからの長い人生、辛い事も苦しい事も嫌な事もあるじゃろ。それでも、良い人生だった、幸せだった、と言える様に(ねが)っておる。こんなに幸せになれと想われてるんじゃ、それだけで幸せな事だと思わんかの」

「思い、ます」


 僕は、馬鹿だなぁ。

 怖い怖いって、神様の意思とか気にしてて、それで逃げてたんだ。

 幸せ、がよく分からないから、怖かったんだ。


 幸せになりなさい。


 って、怖いことだったんだ。


「それでええ。後な」

「……はい」


「魔王じゃが、坊主が見てから決めるがええ」


「え……だって、僕、魔王を倒すために、喚ばれたんですよね?」


「そりゃあ、人の理屈よな。ワシらには関係ないんじゃ。坊主の思うようにしてええ。ワシらのお墨付きじゃ」


 それは、一体、どういう事なんだろう?

 魔王は、悪くないの?


「魔王は悪いぞ。でもなぁ……悪い事が悪いんか、と言うことじゃな」

「悪いことは悪い、ですよね?」

「それも間違っておらん。が、物事には色々あるんじゃ。まだ時間はたっぷりある、ようく考えるんじゃ。ワシからの宿題じゃの」

「宿題……分かりました」


 随分と待たせたから、これでしまいじゃ。


 と、おじいちゃんが言うと、視界がぼやけた。


 今度は、分かる。

 元の場所に戻るんだろうなって。


 また来ます。






1話1柱のペースで行く訳では無いですが、先はちょっと長いので、なるべく間を開けずに投げていきます。

取り急ぎ、2日に1回ペースで行ける所まで……


後、恩恵の詳細は後でまとめて書きます。

字面から何となく読み取れると思うので、神様のターンが終わるまでお待ちください。

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