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姦しいとは、女×3

諸般の都合です

 

 俺以外にも慣れておけ。

 とのダスランさんの言葉によって、帰り道はアデーロさんに送ってもらう事になった。

 来る時と同じ様に他愛ないおしゃべりをしつつ夜も遅いので回り道もせず用意された部屋まで戻ると、メイドさんが三人とも残ってた。


「あれ? なんでみんなまだいるの?」


 だってもう夜だよ?

 寝られるかは分かんないけど、普通は寝る時間だし、お昼寝をした僕とテリアさんは大丈夫かもしれないけど、メノさん、リリさんの二人はそんなことないよね?


 何かお仕事が残ってたのかな?


「わたくしどもはユウト様付きのメイドですから」


 メノさんが首を傾げながら聞き返してくるけど──


「え!? まさかずーっとここにいるの!?」

「何か不満?」

「ち、違うけど、そうじゃなくて、そうしたらみんなはいつお休み貰うの?」

「ユウト様やっさしいー」

「わたくしどもはユウト様がお休みになられた後に休ませて頂きますから、お気になさらず」


 えぇー!?

 これは普通なの?


「あ、アデーロさんはとりあえず、送ってもらってありがとうございました」

「いや、これも仕事さ。ユウト殿、お休み。みんなもお休み」

「さっさとお帰り下さいませ」

「外出てくんないと閉められないんですけどー」

「いっそ挟んでもいい」


 えぇー!?

 なんでそんな塩対応にっ!

 アデーロさん、なんかごめんなさい。

 苦笑をこぼしながら、ひらりと手を振って来た道を戻っていくアデーロさんはどう見てもイケメンなんだけど、なんでみんな害虫駆除でもしたみたいな顔してるんだろう。


 パタン


「ユウト様、まさかアデーロに何か吹き込まれていませんよね」

「何かって何!? アデーロさんはいい人だよ?」

「あちゃあ、騙されたらダメなんだからね!」

「アイツは女の敵」

「そう! ユウト様はあんな風になったらダメだよっ」

「そうですよ、泣かした女の数を勲章にする様な殿方になってはいけませんからね」


 凄い言われようだ。

 そんなことないと、思うんだけどなぁ。

 でもまぁ


「うん。わかった。女の子を泣かすなんてダメだよね。そんな風にならない様にするよ」

「それでいい」

「絶対だよ?」

「一先ずは安心ですね」


 うんうんと頷くみんなを見てると、やっぱりアデーロさんも何もしてないって事はないのかな、とも思うけど、自分で見てもいないのに悪くいうのはなんか違うし、少なくとも今日のアデーロさんには何も悪いところなんかなかったんだから、ちゃんと自分で判断出来るようにしないとね。


「ところで、湯浴みはどうされますか?」

「ユアミって、お風呂?」

「はい」

「あるなら入りたいなぁ……あ、でも、今から用意するとかならいらないよ」

「心配いらない、用意してある」

「じゃあ、入る!」

「じゃあ、誰とがいーい?」

「ナニソレ?」


 お風呂に入ろうとしたら、オプションでメイドさんをセレクトする様に言われました。

 うん、ちょっと何言ってるか分からないね。


「そんな子供じゃないし、使い方教えてくれたら一人で入れるから大丈夫だよ」

「あの……でも、ユウト様、まだ魔法使えませんよね?」

「え……」

「だからー、私達の誰かと入んないと、ね?」

「それなら──」

「みんなまとめてだとさすがに狭い」

「そんなこと考えてないよ!」


 どうしよう?

 すでにやる気満々で腕まくりしてるテリアさん、多分慈愛の表情でドヤ顔のメノさん、一切視線を逸らさないリリさん。

 やっぱり入るのやーめた!

 とか言ったら、どうなるんだろう。

 なんかよく分かんないけど、ご飯に行く前の状況がまた来る気しかしない。

 つまり、逃げ場は多分ない。

 それに、これはスキンシップだよね。

 お昼寝してた時の事を気にしてるんだろうし、あんまり心配かけたくないもんね。


「じゃあ、えと……リリさんで」

「えー」

「テリアさんとはお昼寝したし、メノさんには恥ずかしいとこ見られちゃったし」

「そんなことは……」

「じゃあ行こう。早く」


 グイグイと引っ張られて、部屋の中のドアを開けたらすぐに脱衣所みたいな簡素な部屋になってて、その先がお風呂になってるのが分かった。

 リリさんが後ろ手にカチャリとドアを閉めてから僕の所まで来ると、さっと手を上げた。


「では、脱がします」

「だ、大丈夫だからっ」


 首をこてんとされてもダメなものはダメです。

 渋々手を下ろしたリリさんだけど、今度はメイド服のスカートをチョンとつまんで


「では、脱がします?」

「そんな可愛く言ってもダメ! 自分で出来ることは自分で!」

「可愛い……」


 もう! みんな子供扱いして!

 そこまで子供じゃないよ、まったく。

 と、上着を脱いだまでは良かったけど、靴紐がギューッと結ばれててなんか解けない。


「リリさん、ごめん、この靴紐だけお願い」

「まかせて」

「リリさん? なんでハサミなの?」

「こういうのはもう解けない」

「なんで!?」


 靴紐を結ってくれたのリリさんだよね?

 なんで解けない結び方をしたの?

 ともあれ、靴紐をバッサリ切り落としたリリさんはやり遂げた感じで僕を見てくるからありがとうと言ってはおいたけど。


 そんなこんなはあったけど、お風呂はどんな感じかな?

 映画とかである足のついたバスタブだったりしてね。


 《検閲コード(見ちゃダメ)に抵触しました(なんだからね!)


 お風呂はやっぱり気持ちいいなぁ。

 でも、やっぱり元の世界とは違うんだ。

 シャワーみたいなのはあったけど、魔法石って言うのに魔力をいれないと動かないとか、他にもちょこちょこ魔法が使えないと困る作りになってた。

 僕も魔法使えるようになりたいなぁ。

 そうしないとみんなと一緒にじゃないとお風呂入れないもん。


 で、お風呂も上がったから、テリアさんとメノさんにもお風呂入ってもらおうと思ってたんだけど、備え付けの鏡台の前に座らせられてます。


「ユウト様の髪は指通りがいい」

「そうなの?」

「伸ばしたらきっと綺麗になる」

「僕、男なんだけど」

「大丈夫、問題ない」


 何が問題ないんだろう?

 アレかな、王子様みたいな……金髪なびかせて白い歯キラーンみたいな。

 ソレを僕がやるの? 気持ち悪い感じにしかならないよね。


 と言うか、髪の毛乾かすのはいつ終わるんだろう。

 魔法って凄いけどね!

 リリさんの手から暖かい風が出てきて、手櫛しながら乾かしてくれてる。

 ちらっと鏡越しにリリさんを見ると、無表情っぽいのにやたらと満足そうな感じで鼻歌歌いながら髪の毛をいじくってる。


「リリさん、なんでまたメイド服なの?」

「ユウト様が寝るまではお仕事」

「別にいいのに……他の人もいないし」

「来客時に私達が寛いでたら、叱責じゃ済まない」

「窮屈なんだね……」

「そんなことはない、ユウト様は優しい」

「そんなこともないと思うけどなぁ」


 僕のは優しさじゃなくて、打算だから。

 勇者を期待されて喚ばれた僕は、その期待を裏切る形になってしまった時が怖くてたまらないんだ。


「リリさーん、もう乾いたよ。テリアさんとメノさんにもお風呂入ってもらおうよ、お湯が冷めちゃう」

「仕方ない、戻る」


 渋々ながら納得せざるを得ないのか、ようやく解放されて部屋に戻ると、二人にもお風呂に入ってもらった。

 結局またリリさんと二人になることに、テリアさんはなんかズルいと言うし、メノさんはすぐに戻りますと素早くお風呂に駆け込んで行った。


 僕はいつの間にか増えていたソファに座ってる。

 これはどうやって持ち込んだんだろう。

 魔法だよね? これ。

 ソファを小さくしたのか、魔法の鞄とかに入れて持ち運んできたのか、ワープみたいな魔法のでポンっと取り寄せたのか。

 それもそのうちに教えて貰えるのかな?


「お茶、どうぞ」

「ありがとう、リリさんも座って?」

「メイドだから」

「じゃあ、僕からの命令だと思って座って欲しいな」

「……畏まりました」


 なんだ、こうすれば良かったんだ。

 服装とかは、無理だけど、こういうのは、一人だと寂しいし、後で二人にも言っておこう。


 外では、メイドさんなのは仕方ないかもしれない。

 でも、ここなら、いいよね。


 遠慮がちにぼくの向かいに座ったリリさんはなんか居心地わるそうだけど、慣れてくれるまで我慢だからね。


「ユウト様は、どうして平気?」

「? 何が?」

「知らない場所で独り」

「……んー。慣れてるからね。それにダスランさんも、他のみんなも優しくしてくれるし。最初は怖かったけどね」


 嘘だ。今だって怖い。

 でも、みんなが怖くないよって教えてくれるから。


「あー! 二人だけでお茶してズルいですよっ」

「ユウト様は、そんなにリュリュがお気に召しましたか?」

「そんなんじゃないよ、もう!」


 ホントにすぐにお風呂から上がってきた二人もメイドさんのままだった。

 お風呂あがりなんてゆったりしたいと思うんだけど、みんなそれを普通の事だと思ってるんだ。


「わたくし達もご一緒してよろしいですか?」

「うん、そうして欲しいな」

「じゃあ……私、ユウト様の隣りー」

「もうっ! では、わたくしはあとでユウト様の添い寝を頂きますからね!」

「えぇ!? なんでそーなるの!」

「おいやですか?」

「おいやじゃないです」

「では、ベッドに行きましょうか」

「こらこら、まだ明日からのこと話してないでしょー?」


 明日のこと??

 何だろう?

 と思ってると、テリアさんが色々と説明してくれた。

 今日は召喚日だったから、調整が間に合わなかったけど、明日からは、予定が詰まってくるらしい。


「まずは、明日の朝議の後に陛下への謁見が予定されてます。なので、それまでに謁見に適う衣装をご用意しますので、袖を通して頂いて、最後の手直しをさせて貰います」


「手直しはテリアが受け持ちますので、違和感などありましたら些細なことでも遠慮なさらずにお伝えくださいませ。それまでの間に簡単ではありますが、謁見の作法を覚えてもらいます」


「で、お昼は会食ですね。マナーとかは厳しくないから、今日のお食事会の凄いやつだと思っておけば大丈夫ですよ」


「その後に魔法適正を測りまして、聖女様とのお茶会が予定されております。そこまでの予定はありますが、他にも組まれる可能性がありますので、大変かと思いますが、辛抱して下さいませ」


「大丈夫。私は明日はユウト様のスケジュール管理をするから、予定は忘れても平気」


 急に言われても覚えきれてないよ。

 と思ったけど、分からなくなったらリリさんが教えてくれるみたいだし、とりあえず、謁見だけ何とかすればいいって事だよね。


 口にはしてないけど、きっと何日かは忙しくなるんだろうなというのがみんなの心配そうな表情で分かった。


「謁見だけ、頑張ればいいんだよね? 後は、分からなくなったらリリさんに聞くよ。それで大丈夫だよね?」

「はい、それでよろしくお願いいたします」

「ユウト様、ごめんね? 私達でお断り出来るところは何とかしてみるから」

「いーよ、無理しなくて。ただでさえ、僕じゃ期待に応えられないかもしれないのに、イメージ悪くしたら後が怖いもん」


 そうだ。

 勇者を召喚したというのに僕は子どもでしかない。

 いきなりダメなガキんちょだと思われたら、それこそ、取り返しがつかなくなっちゃう。

 出来ることはとても少ないけど、それでも、だからこそ、少しでも良く思われる様にしないと……


「ユウト様、今はおやすみください。たったの一日にも満たない短いお付き合いですが、わたくしどもはお優しいユウト様の御心に添いたいと思っております」

「そーですよ。私達がお支えしますから」

「だから、無理しないで」

「うん、ありがと」

「そうと決まれば、明日に備えてゆっくり寝て頂かなくてはなりませんね」

「メノが添い寝したいだけじゃない」

「次は私」


 うん。なるようにしかならないもんね。

 明日からの事を聞いたらなんかどっと疲れたよ。


 片付けを済ませたテリアさんとリリさんがおやすみなさいの挨拶をして、隣の部屋に行くと、メノさんにおいでおいでされてベッドに横になった。

 なんて言うか、部屋の中なのに色んなところに繋がってるんだ。

 続き部屋っていうんだっけ。


「ユウト様」

「何?」

「少しだけ、魔法を使わせて頂いても宜しいでしょうか?」

「魔法? どんな魔法なの?」

「ユウト様がゆっくり寝られますようにリラックス出来る魔法なのですが」

「うん、じゃあお願い」

「ありがとうございます」


 にこりと笑ったメノさんが、僕の額にそっと手を当てて、小さく魔法を唱えると、急に眠気が、強く……


「おやすみなさいませ」

「ぅん……おや、すみ、なさ……ぃ……」

「…………」


 夢の中に落ちていく中で、何か暖かいものに包まれた気がした。


10歳の少年が、頑張るお話なのでとても健全。

お風呂回なんてなかった。

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