表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
59/104

神の声を聞く場所

誤字などの報告ありがとうございます(^^)

気をつけててもやはりあるものですね

より一層気をつけていきます!(でもきっとあるんだ……知ってる!)

 

 馬車から降りて、まず思ったのは、凄く開放的だなって事。


 人がたくさん行き交ってて、それでいてごちゃごちゃとした印象があまりないのは、人の流れがスムーズだからかな。


 お城の正面にある広場の方がもっと広いはずなのに混んでた気さえする。


「不思議そうだね」

「うん……なんか、人が多いのに、スッキリしてる、みたいななんか変な感じがするよ」

「あぁ、卿のところでは違ったのかな。ここは神の座とも言えるからね。向かう場所が決まってる人が多いし、入る時は、クシァンテのいる左側から入るのが通例だからね」

「へぇ……あれ? クシァンテの聖堂って大聖堂の右の方じゃなかったですっけ?」

「そうだね。合ってるよ。でも、それは神の世界での並びになって、人の世界とは違うから、んー、人と神の世界を分けてるんだよ。本当は違うんだけどね、境界でひっくり返すことで人の世界とは別の場所だって分かりやすくしてるんだ。まぁ神学の話になってしまうから、そういうものだって覚えておけば良いよ」


 鏡の中と外、みたいな?


 それだと、同じ位置になっちゃうけど。


「お待たせしました」


 そこに馬車を預かってもらう場所を確認してたモクさんが帰ってきて、じゃあ行こうかと、教会に向かってみんなで歩き出した。

 敷地にはとっくに馬車で入ってたけどね。


 他のところと違って教会前の地面には、白っぽい砂、というか、玉砂利みたいなのが敷き詰められてて、歩いていくとシャリシャリと軽い音がする。


 教会の建物と同じ、乳白色とでも言えばいいのかな。目に痛くない白で埋め尽くされてて、小気味いい音が溢れてて、なんか気分が落ち着く感じがする。


 ほどなく、入口に着いて、顔を上げると、開放されてる門の脇に、丸なシンボルが描かれていた。

 縁が濃い灰色で、中心の方に向かって白になるようなグラデーションになってる。


「それがクシァンテのシンボルだね。時の守護者たるクシァンテを象徴してる。そして、反対側の、編み込まれた輪が輪廻を司るロロのシンボルだよ」


 殿下に言われて向こうを見れば、遺伝子の螺旋みたいな感じの線で輪っかを作ってるシンボルがあった。


 単なる丸と輪っか、言ってみればそれだけなんだけど、それでも、通る人みんなに敬意を払われてるのを見れば、なんかやっぱり凄いものだって感じるのは、なんでだろう。


「さ、ここに止まってると邪魔になってしまうから、中に入ろう」


 そう背中を押されて、入口を潜り、目の前に意識を向ければ


「すごい……」


 大きな大きな、二つの重なり合った輪が、ゆっくりと回転して、その中心には水晶玉みたいな透明な玉が浮かんでる。


 そして、天井の方々から、そこに光が射し込んで、辺りを柔らかく照らしてる。


 お城の神殿でも、同じものは見た。


 見たけど、圧倒的な存在感がそこにはあった。


 それにアレはどうやって浮かんでるんだろう。

 何も支えるものがないのに、同じ場所に浮かんでる。


 その周りには、何人もの人が居て、膝をついてお祈りをしている。


 どの人もそんなに長くはしていないけど、入ってくる人の多くが、そこでお祈りをして、そのまま外に出ていく人、奥に向かう人、色んな人がいた。


「………………あ、ごめんなさい、見とれてました」


 ボケっとしてたと思ってみたら、知らないうちにちょっと横に移動してて……されてて、僕が戻ってくるのを待ってて貰っちゃってた。


「いや、いいよ。そこまで感動してくれればこちらも表から入って良かったと言えるからね。ね、ゼシン」

「別に自分はこちらから入る事を否定していたわけではないですが」

「まぁまぁ、良いではありませんか。無粋ですよ」

「ウチの坊ちゃんに喜んでもらえてよかったと、それだけで充分です」

「も、もういいから、奥に行こ? 本命はそっちでしょ、ほら」


 ちょっと恥ずかしくて、アデーロの背中をグイグイ押して、参拝の場所から奥に行こうとすれば、大人なみんなは、それもそうだと、わざとらしく顔を引きしめて、さあ行かん、いざ行かんと歩き出した。


 絶対に、心の中で笑ってる!


 大きなシンボルを横目にグルっと回り込んで奥に向かうと、また門があってそこで入場整理みたいなのがされてた。


「一応ね、不届き者が入らないようにって事になってるけど、ここから先は喜捨が必要だからね、今度来る時は忘れないようにね」

「いくらくらい必要なの?」

「坊ちゃま、心付けにいくら、というのは無いんですよ」

「建前だけは、ね?」

「そこらへんは帰ってから勉強ですね」


 うわ、また覚えること増えたよ!


「良くおいでになられました。本日はどのようなご用向きでしょうか?」

「こちらを」

「拝見致します」


 ゼシンさんが渡した書状にさっと目を通した神官さんが、チラリと僕に目線をくれて、軽く頭を下げられた。


「こちらはお返しします。善き邂逅が在らんことを」

「有難う」


 喜捨ってどれくらいなんだろうと思ってたら、手のひらサイズの袋を渡してるのが見えたけど、中身! 知りたいのは中身だからっ!


 コルモ殿下は王子様なんだし、きっと金貨とかだよね?

 まさかミスリル貨とかじゃないよね?


 あんまりお金の方をチラチラ見るのも変だからちゃんと見れないのもあるけど、あぁ……。


 後ろ髪引かれるけど、仕方なく前を行くゼシンさんに着いていけば、大聖堂にまずは入るのかと思ってたけど、そのままクシァンテの聖堂の方に向かってるみたい。


 そういえば、ここにあるのは、聖堂って事だけど、お城にあったのは神殿って言われてたと思うんだけど、何が違うんだろう。


 教会は教会で同じみたいなんだけどなぁ。

 それに、教会って、何教会なんだろう。


 キリスト教、みたく、何か名前があるとは思うんだけど、みんな教会としか言わないのは、名もなき至高の神の教会だからとか?


 名前のない神様の教会だから、ないとかならなんか納得だけど、ここには他に宗教ないのかな。


 あ、なんか色々聞いてみたくなってきたけど、ここで聞くのは、やっぱり不味いかなぁ。


「坊ちゃん、人に酔いましたか?」

「え? うぅん、大丈夫だよ」

「そうですか? それにしては悩ましげな感じでしたが」

「後で聞くよ」


 人に酔うって程に人が多いわけじゃない。

 けど、神官ぽい人が近くを通る度に、僕達の……うぅん、僕の方を見ては何か、簡単なお祈りみたいな事をする。

 それを見た他の人達もこっちを見る。

 だから、人にもまれてるわけでもないし、囲まれたりもしてないのに、なんか疲れちゃう。


 ピエレは、いつもこんな目立つのをしてるんだろうね。

 ピエレは大丈夫なのかな。

 ちょっとだけ、ピエレの力を借りたくて、服の上から、そっと御守りに触れる。


 ポッ


 と、意識の片隅で、光が灯った。

 あぁ、これがピエレのGPSのかー。

 ほんとにあったんだね。

 あって欲しくなかった様な気もするけど、今はちょっとありがたいなって思ってるんだから現金なものだよね。

 なんだろう。お城の方だから、神殿にいるのかな。

 うん。ピエレだってお仕事してるんだもんね。

 僕なんかまだ仕事する前のとこでしり込みしてる場合じゃないよね。


「大丈夫。いこ」

「分かりました。あまり無理はしないでくださいね。なにかあったら僕が怒られますから」


 ウチの女の人達にはアデーロのイケメンスマイルが効かないもんね。

 くすくす笑った僕に憮然とした感じで笑い事じゃないんですから、というアデーロ。


「……坊やは、凄いね」

「そうですか?」


 何が凄いのか分からなくて首を傾げたら、モクさんに苦笑された。


(こんな注目されて緊張してたのに、もう大丈夫そうね)

(聖女様に御守りを貰ったから、それのお陰です)

(あら、妬けちゃうわね)


 モクさんに耳元で囁かれたから、僕も同じようにして、それからこそこそと話しながら歩いていたら、クシァンテの聖堂にたどり着いたみたい。


 そこでボクは目をぱちくりとした。


 聖堂って言われてたから、宗教的な建物だし、荘厳とか、そんな言葉が似合いそうな凄そうな建物かと思ってたら、結構ちっちゃい?


 なんだったら僕のお屋敷の方が大きいかもしれない。


「ここ?」

「はい、そうですよ」


 建物に反して大きな入口は解放されてるし、神官の人もいるから、ちゃんと重要な為だとは分かるんだけど、なんか拍子抜け?


 大聖堂の方もこんな感じなのかな。


「子爵、大聖堂は名に恥じぬ建物だから安心していいよ?」

「えっ!?」


 なんで考えてる事が分かったの!?


 って思ったら、またみんなニヤニヤして!

 僕が、こうなるって予想してたんだー!


「うん、そう。まぁ、ちょっと説明はするから、端っこに寄ろうか」


 おいでおいでされて、仕方なくそっちに行くと、殿下の説明が始まった。


「子爵は、神を祀るところだから、もっと立派な建物があると、そう思ってただろう?」

「はい、そうですけど……」

「うん。勿論、神を信奉してない訳じゃないし、なんならもっと大きな建物も建てる事は出来る。でも、それは神にとっては煩わしい事なんだそうだ」

「煩わしい……?」


 神様って、そうやって大事にされるものなんじゃないのかな。


 どこでだって、神様はそういうものだって思ってたんだけど。


「うん。僕達、人の声を届かせることが出来る場所が、こうやって聖別された聖堂や神殿になるんだ。神は11人しかいないけど、祈る僕らはごまんといる。祈りたい人が押し寄せて祈っても、聞く神は少ないんだ。だから、聖堂は小さくしてある。神に配慮した結果がこのくらいの大きさなんだよ」


 何でも、大昔に、半裸の女性に描かれるホロゥ神に心酔した人がそれはもう立派な聖堂を建てたらしい。


 そびえ立つ、見上げんばかりのホロゥ神を模した神像を奉納する為の大聖堂。


 その人は一つじゃ足りないと、何個も何個も作り上げた。


 それに心を打たれたチラリズムの虜になった人達は、煩悩のままに突っ走り続け、ついにホロゥ神のお怒りを買った。


『信仰は人に見せびらかす物じゃありません! 己と向き合う事が大切な事なのです!』


 とかなんとか。


 虎の威を借る狐、じゃないけど、神の威光をひけらかすようなのは良くないって事みたいで、それから、神の声を聞くことの出来る巫女さんみたいな事が得意な、当時の聖女様が色々話した結果、これくらいのサイズになったんだそう。


 自分の半裸像を量産されるのは、良いんだ。


「じゃあなんで、名もなき至高の神の大聖堂は大きいの?」

「それはねー、名もなき至高の神は、他の神よりも偉いのが分かるから大きくてもいい、というか、大きくしなさい。と聞いたらしくてね、例外的に大きいんだよ」


 だから、大聖堂だけは、大聖堂らしく大きくて開放的な造りになってるんだそう。


 至高の神は、(私の事はね、)煩わしくないんだ(もっと敬いなさい)


 そういうわけで、聖堂は割とこじんまりとしてる。

 という事らしい。


「あ、ついでになんですけど、聖堂と神殿って何か違うんですか?」

「ん? それは、神により近い方が、神殿だね。聖堂でも声を届ける事は出来るし、恩恵を賜る事も出来る。でも、神殿の方が、その距離感がとても近いんだ。子爵は、城の神殿は見たんだったか」

「はい、お城の地下にある神殿ですよね?」

「そう。他の雑音が入りにくいように地下に造るんだ。僕達には神の声は明瞭に聞こえないからね。なるべく静謐な場所が必要なんだ。それに神にも言葉を送りやすい。聖女は聖痕のおかげで神の声を聞きやすいけどね。なるべく神の声の聞きやすい場所にいて貰ってるんだ」


 だから、ピエレはお城の神殿、もしくは、大聖堂の地下で寝起きしてるんだって。

 大聖堂の地下にも、神殿はあるんだって。

 一般の人はそこまではなかなか入れないそうだけど。


「若旦那に坊ちゃま、そろそろいいですか?」

「おっと、そうだね、じゃあ行こうか」


 僕と殿下が話をしてる間に、聖堂の人払いを頼んでたらしくて、ゼシンさんに促されて、足早に聖堂に入った。


 王子様だからってあんまり無茶は出来ないから、手短に済ませるよとの事。


 聖堂の中に居た何人かの神官さんが跪く中、外観通りにさほど広くないお祈りの場所を通り抜けて、奥の小さな個室に入ると、そこには、小さな部屋に見合った小さな祭壇があって、みんなに押されるようにして前に行く。


 後は、クシァンテにお祈りを捧げるだけ。


 そう思った瞬間


 光が溢れた。




スローテンポとは言っても、まさか、勇者召喚系で60話までほぼ何もせずにのんびりな進行だとは誰も思うまい!

私もビックリですw


魔王のマの字も無ければ、モンスターがいるのかすらユウトには分からないとゆー酷い有様です。

頑張って進めねばっ!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ