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生まれ持つ枷 (side アイリス)

ネタバレは先に済ませるスタイルです。

どうなるかを妄想しながら待ちましょう。

 

「今日の本題はこれ」


 リュリュからピラリと差し出された一通の書状を見て、その蝋封に顔が綻ぶのが分かる。


 あたくしが今、住んでいるのはファルトゥナ家の所有する別邸の一つで、ユウトさんの屋敷に近いので、ユウトさんの引越しが決まった次の日にはあたくしも引越してきたのだ。


 特段厳しくもなかった両親ではあったけれど、やはり親の目がないと言うことで少々気が大きくなっているのは自覚しているが、これがなかなか楽しい。


 一介のメイドとこうして折に触れてお茶をしているなど、世間に知れたら大変なことになる。


 まぁ、それでもリュリュは動じない気がするけれど。


 手渡された書状の蝋封を指で撫でて、間違いが無いことを確認する。


 二つの菱形を重ねて横に並べ、その中に導きの極星を描いたこれがフタワ子爵家の紋章だ。


 本当はフタワという家名は輪っかが二つ、という意味らしいけれど、教会のシンボルにも使われる重なる二つの輪など使いたいと申請すれば、それはもう教会勢の一員と看做されても仕方の無いこと。


 その類似性にも何か意味を感じなくはないけれど、さすがに看過できないので、こういった形に収まった。


 横に突き出した手にさっと持たされたナイフで開封して中身を検めれば、拙いながらも人柄の伺える文にお茶会へのお誘いがあった。


「で、こちらのご友人などを連れてきても構わないとあるのは聖女ピエレを伴っても問題ないという事ね」

「そうなる」


 全く……分かってはいたが、メノは些かこちらを軽視しすぎではないだろうか。


 とはいえ、目の前にいるリュリュしかり、このあたくしにここまで無遠慮なのもまた新鮮で心地よい。


 あたくしがコレを問題視しないと見切った上でやっているんだから、大したものだ。


「イシュカ」

「はい、こちらに」


 便箋と筆をスっと並べて、コトリとインク壺を脇においたイシュカに目もくれず、さらさらとピエレ宛に他愛もない挨拶とあたくしの最近の楽しみをしたためる。

 特に三日後に弟子からちょっとしたお誘いがあった事などは、簡潔に。

 以前に聖女様にお世話になった事の感謝と、いずれ何かの形で礼をしたい旨をこれでもかと盛って書き連ねて、定型文を少し崩していつでも歓迎すると締めれば、察しの良いあの子なら気付いてくれるだろう。


 弟子が、誰か?

 いつなら、予定が空いているのか、いないのか。

 そして、あたくしが何かを頼まれたら断りづらい状況にあるというありもしない感謝。


 これで分からなければ、あんな場所で好き勝手をして許される立場につけていない。


「イシュカ、こちらを少しでも早く届けておいて」

「畏まりました、お嬢様」


 消える気配もいつもの事。

 ユウトさんへのお茶会の参加にまつわるあれやこれや。

 大丈夫だとは思うが格式に拘らない様にして欲しい旨、それと最近屋敷で話題に上るアイスなる氷菓子に興味が尽きない事、あたくしを仲介に使った事への苦言とお詫びを期待している事。


 さらさらと綴って、香水で香り付けだけしてこちらはリュリュへ。


「じゃあこちらはお願いね?」

「ちゃんと届ける」


 蝋封はしていない。

 本当はするべきだけど、これはあたくしからの親愛なる愛弟子への返信だから省略。

 胸元に仕舞うのを確認したら後は気楽な話題だけ。


「で、アイスは完成しそうなの?」

「難しい。私達は美味しいと思ってるけど、ユウト様の知ってる味にならない」

「バニラ、ねぇ。甘いミルクみたいな味でしたか」

「そんな植物があるのかと思ってた。けど、味を整えないとその味にならないと言ってたから、困ってる」

「あら、そうなの?」

「でも、前のよりは美味しくなったから、アイリス様もお茶会では期待していい」

「ふふ、それは楽しみね」

「あ……そういえばアイリス様は宝石は好き?」


 唐突に何だろうか。宝石?


「まぁ、美しいものは宝石に限らず好きですわよ?」

「そう。なら良かった」

「……お茶会の話題からなんで宝石の話題に移ったのかが疑問なのですけど」

「ないしょ」


 ふぅん?


 前にユウトさんがお出かけした時は、イシュカと揃いで櫛と、あたくし達に合わせたとユウトさんの見立てした髪紐のセット。

 今日結わえているのもその内の一つ。

 羨ましくもユウトさんに手取り足取りであたくしの髪を弄り回して腕を磨いたイシュカ作だ。


 リュリュ達にはイヤリングだった。


 あの日から、急に揃いも揃ってイヤリングを付け始めたら何を贈られたかなんて分かろうものだ。


 そこにきての宝石。


 まさか、あたくしが羨んでいたのをユウトさんに気づかれていたのだろうか?

 それはちょっと、いや、かなり恥ずかしい。

 というか、オネダリしたいわけでもない。

 むしろあたくしの所為とも言える。


 一公爵家の娘として、いつも同じ装いで外出など許されないからだ。


 そうすると、普段使いのアクセサリーは合わない事が多くなる。


 だから、ユウトさんが初めてのお小遣いで買える範囲では宝石類は手が届かなかったんだそう。


『下手な宝石だとアイリスさんに負けちゃうから』


 だなんて、もー、ユウトさんったら、あたくしが宝石よりも美しいって言いたいの?


 それに、他の男共と違って、あたくしを口説く為に言ってたんじゃなくて、あたくしに似合うアクセサリーを見繕えなかった事が悔しいなって感じでゆーんだもん、可愛いなぁもぅっ!


 そこに来て、リュリュからの宝石話って事は、ユウトさん、あたくしに感謝の気持ちとか言って、何かアクセサリーでも用意してくれてるのかしら。


「まぁ、楽しみは当日まで取っておきましょう。お茶会の時には分かるのでしょう?」

「分かる」

「ふふ、ならそれまではナイショでいいわ」




 巡り迎えた当日、ユウトさんのお茶会だからと着飾るのは程々に、お姫様っぽく少し可愛らしさを優先したドレスに袖を通して鏡台に腰掛け、化粧をしてもらう。


「お嬢様、本当にこちらで宜しいのですか?」

「えぇ、いいのよ。夜会に出る訳でもないのですから」

「そうですか?」

「それとも、あたくしには似合っていないかしら」

「そんなことは御座いませんよ! 大変お可愛らしくていらっしゃいます」


 鏡を見れば、そこにはいつもの整った顔に、言われた通りに可愛さ重視に化粧されたあたくしがいた。


 いつもの人形だか彫刻だかみたいに綺麗さを全面に押し出すような化粧ではない、少し、いえ、かなり、痛いかもしれない化粧。


 この化粧をしていい年齢からは少々、ほんのちょっとだけ過ぎているから、あたくしも恥ずかしくはあるのだけど、ユウトさんはあたくしの事、妖精のお姫様みたいだって仰られるんだもの。


 前にお姫様ってどんな印象なのかと聞いた時は、可愛くて綺麗みたいな事を言われていた事を考えると、綺麗さに寄ったあたくしの顔には可愛さが足りない。

 それなら服装と化粧はそっちに寄せないと駄目だろうと、そう思ったのだ。


 いつもは教師役として接しているのでそんな服装には出来ないけれど、今日はお茶会ですし?

 肩肘張らずに、いえ、むしろちょっとくらい肩肘出したくらいでも良いのではないかしら。


「お嬢様、それでは化粧の意味がありません」

「そ、そうね、えぇ、わかっていてよ?」


 娼婦じゃあるまいし、肌を晒して気を引こうとするなんてあたくしらしくもない。

 そもそも、今日のコンセプトはお姫様だからして、色気を出すのは間違っているのだ。


 でも、日常的に傍に居られない分、どこかでこう、焼き付けておかないといけないんじゃないかしら。


「お嬢様、お嬢様はお嬢様らしい方が宜しいかと」

「分かってる、分かってるから。それにピエレの方が、歳も近いですものね。あたくしなんて目にもかけて下さらないわ」

「妖精のお姫様になられるのでしょう?」

「そうだけど……やっぱり、いつもみたいな方が……」

「お時間がありません。諦めてふわふわふりふりを見て頂けば宜しいんですよ」


 パンパンと手を叩かれて、引き摺られるようにして表に出れば、仕方ない、仕方ないけれど、茶番開始だ。


 背筋を伸ばして、玄関口に回された馬車に乗り込もうとしたところで、今気づきました、と驚いて見せながら、ピエレに声をかける。


「あら? 聖女様、本日はどうされましたか? あたくしに何か御用がありましたでしょうか?」


 門のところで“予定通り”足止めをされていたピエレがあたくしを見つけたとばかりに笑顔になって手を振る。


「アイリス様! 突然、先触れもなく訪問致しまして申し訳ありません。少しお時間を頂きたく思って、視察の帰りに立ち寄らせて貰ったのですけど……お出掛けなされるのですね」


 しかし、どう見ても明らかに出かける用意をしていたあたくしを見て、しょんぼりと肩を落とした。


 そんな気の毒そうなピエレに、何はともあれと馬車を待たせてピエレのところへ足を向けた。


「確かに予定はございますけれど、さして迫るものでもありませんので、少しくらいでしたらお時間をお取りできますけれど」


 まぁ、貴族なんてものは、はしたなくもギリギリにお茶会に出席するような真似はしないので、余裕があるのは当然とも言える。

 が、早すぎてもいけない。面倒くさい事。


 ともあれ、問題はないとピエレを門から通して秘密の話でもするかの様に顔を寄せて、こそりと話す。

 “もちろん、聞かれている”けれど、聞こえていないていで話を進めるので問題などあろうわけもなく。


「本当に少しだけお時間が欲しくて……でも、お姉様のお邪魔はしたくありませんわ。今日お会い出来た事で一先ず良しとしておきますわ」

「そんな寂しいことを仰らないで、聖女様。あたくしで心を軽く出来るのなら、そのお手伝いをさせて下さいませ」

「アイリス様、他に聞かれていない時まで聖女様はおやめになって下さるって仰ってましたのに、意地悪なさらないで?」

「ふふ、そうでしたね、では、ピエレ? あたくしの事もちゃんとアイリス、とお呼びくださいませね」

「分かりましたわ、アイリス」


 ふふっとお互い笑いながらも、瞳の中は冷めたもので、立場ゆえの煩わしさに辟易していた。

 さっさと羽を伸ばしたいから、早く来なさい、イシュカ。

 貴女が来てくれないと終わらないのよ?


「(はぁ)……お嬢様、そろそろ先方もお待ちかねかと」

「あら、そんな事で気を悪くされる方ではなくてよ?」

「それはそうですが、だからといって無闇に遅れて良いものでもないのではないですか?」

「とはいえ、聖女様も蔑ろには出来ませんし」

「いえ、急に顔を見せたのはこちらですから」

「そんな……いつでも歓迎しますと言ったのはあたくしでしてよ?」


 ほら、さっさとなさい。


「……それでしたら、いっそ同道されますか? 恐らく先方も聖女殿が来られることを歓迎されますよ」


 イシュカはもっと、こう……役者魂が、足りませんわね。


「ですが、ご迷惑では……?」


 そこに来てピエレと来たら、普段から聖女の仮面を被ってるからか、なんとまぁ自然に瞳を潤ませられる事。


「他にあたくしのお連れしたい方がいれば是非、と伺っておりますから、ご迷惑など。ちなみに聖女様はこの後は何か……?」

「いえ、視察は終わりましたので、後は教会で日々に感謝を捧げようと思っておりましたが……そうですよね、キーガー司祭?」


 イシュカに伴われてこちらに来ていた変質者も問題ないと言った。


「でしたら───」

「困りますなぁ、聖女様を何処ともしれぬ場所へ誘われては」


 その変質者の更に後ろから、ねっとりとした口調で割り込んできたのは、神官とは思えぬ肥えた豚。


「ハーセブ司祭、あたくしが、信用ならないとでも?」

「そんな事を言ってはおりませんがぁ、しかし、尊い聖女様を簡単に連れ出せるとなっては、教会の威信にも傷がつきましょうぞ」


 そういうのなら、あたくしの身体を舐め回す様に見るのをどうにかすべきでは?

 全く、神のおわす教会に、何故このような愚物が居るのか。

 そして、何故、この所業が許されているのか。


「神の寵児たる聖女様のご意志を尊重する事の何がご不満でしょうか。更に申し上げれば、聖女様の行いを軽視するばかりか、末席とはいえ大貴族であるあたくしをも軽んじるおつもりがおありなら、教会との付き合い方もよく考えねばなりませんね」


 お前の出る幕などないと、なぜ分からないのか。


「まさかまさか、そのような考えは欠片も持ち合わせておりません。が、それでも、こうも気軽に出掛けられては、引いては教会を軽く見る不逞の輩が出ないとも限りませんからなぁ」

「もちろん、あたくしは教会を軽んじるつもりはありません。次に礼拝に赴く時には、“より一層の敬意”を払うつもりですが」

「ファルトゥナ家の寵姫が敬虔な信徒であれば良いのです。それが分かればえぇ、聖女様をお預けするに足ると。それでは、多忙の身ゆえ、先に教会へ戻らせて頂きますよ。キーガー司祭。後は頼みますね。キミと違って忙しいものでね」

「畏まりました、ハーセブ司祭」


 そう言うや、ピエレの馬車に畏れ多くも一人乗り込んで去っていった。

 はぁ……教会は、神は、いつまであの金の亡者をお許しになられるのでしょうか。


「ご迷惑を」

「聖女様は何も」


 それだけ、短くお互いを慰めて、家の馬車に乗り込んだ。


 元々、四人乗り用のものだったくらいは許して欲しいものですね。


 そうして茶番で待たせた御者に走らせるように指示をすると、ようやく息をついた。


「ピエレはよくもあんな豚を傍で飼えますね」

「あたしも飼いたくないんだけど、豚だから言葉が通じなくて困ってるの。教会は養豚場じゃないのにね」

「聖女様の豚は一匹で充分ですからね」

「豚は黙ってて?」

「黙ってたら罵って貰えなくなってしまうではないですか」

「キーガー殿、椅子は椅子らしく椅子に座るべきではないのではないですか?」

「そうですね、では」


 それを待っていたとばかりに、馬車の床になって大の字になる変質者にもう誰も注意を向けなかった。


「アイリス、ほんとにごめんね? 一々めんどくさいったら」

「まぁ仕方ないでしょう。ユウトさんも近くお披露目もあるみたいですし、それが終われば、もう少し付き合いもしやすくなります」

「そうは言っても、そうなったらユウトにも、迷惑掛けちゃう」

「歴代でも屈指の聖痕保有者にして勇者ですからね。そこはある程度、我慢するところですね」


 ユウトさんに会えば嫌でもわかる。

 あの神威ともいうべきものに。

 神の存在に近いほどに、畏れ、敬い、崇めるように奉る。

 そしてそれに忌避感など欠片もないだろう。


 ユウトさんを嫌うのは、欲に塗れた愚物ばかりになるでしょう。


 綺麗すぎる水には魚がいない様に、強すぎる神気は否応なく人を選別する。


 今はまだ、神の息吹に触れていないから、神気も僅かでしょうが、神に触れて、感じて、そして理解すれば、芽吹く花が開くように、溢れる事でしょう。


 聖痕があると、ただそれだけで推定魔力強度6800。

 あたくしの魔力強度も相当だけれど、それは頭打ちになるまで鍛えた結果としての数値。

 覚えている限り、あたくしの最初の魔力強度は2000に届いて居なかった。それさえ、桁違いに多い。それから頭打ちになるまで鍛えて2830。

 それを考えれば、仮にあたくしと同じ程度の成長をすれば、測定不能となる1万も見えてくる。見えてきてしまう。

 それほどに濃密な魔力強度。


 魔力強度の測定は、巨大化すればするほど、細かく見ることが出来なくなる傾向にある。

 マグダレン導師の3600もおよそ。

 あたくしですら、辛うじて10刻みまでしか分からない。

 3000を超えれば100刻みがやっと、ユウトさんの魔力強度なんて数値にはしているけれど、実際のところと200程度ズレていても判別出来ないだろう。


 7000はなさそうだ。


 という目安で割と雑に6800と決められただけ。100刻みですら分からないから、200刻みだった事にしての当て推量な数値。


 人一人分では収まらない魔力を誤差にするそんな魔力。

 それがユウトさんなのだ。


 下手をすると、ユウトさんが言葉を発しただけで、それが世界の理のように感じられてしまうかもしれないと、そう思うと、言いようのない震えが走る。


「大丈夫だよ、アイリス」

「……そうかしら」

「ユウトは、そんな事望んでないから、そんな事にはならないの。それこそ、ユウトが望んでないから、ね? 安心でしょ?」

「ふふ、えぇ、そうですね」


 もしも、望むままにそれを叶える事が出来るなら、それを否定するユウトさん自身によって、望むままに出来なくなる。


 卵が先か、鶏が先か。


 それでも、結果は変わらない。


 なら、それでいいのだろう。


「ねぇ、そんなことより、あたし、アイス食べたことないの!」

「あら、そうなの?」

「どうなの? 美味しい?」

「そうね、ユウトさん曰く、決定的な材料が足りなくて、上手く作れないって事らしいわ」

「そうなの?」

「ええ、でも、とても美味しいわ。あたくしは好きよ。冷たくて甘くて……なんで、あたくしが後ろ盾になれないのかしら」

「貴族も大変ね」

「寄り親もオルトレート卿の方で都合つけるみたいですし、アイスの事もコルモ殿下に頼まれたみたいですし、あたくしには教師の顔しかないなんて酷い話だと思わない?」

「あたしは普段から会えないから、それでも羨ましいよ」

「しがらみが多くて邪魔よね」

「あたし、最初に捨てるしがらみは、変態にするって誓ってるわ」

「早く捨ててきなさいよ、そんなもの」

「ありがとうございます! やはり一度他と比べて見るのも一興ですよ。すぐにこのキーガーの優秀さを痛感されるでしょうからね」

「……ほんとね、能力だけは凄いのよね、貴方。変態性さえなければほんと、ほんとに、良かったのに」

「そこが無くなると、死んでしまいますから諦めてください」

「とりあえず黙ってて」


 そういって遠慮なく足蹴にされた変質者は、顔を踏みつけられながら、恍惚とした表情で床に這いつくばっていた。


「イシュカは、こういうの、どうするべきだと思う?」

「……本人が嫌がるので、徹底的に甘やかしてみては?」

「止めて下さいっ! 甘やかすなんて!」

「黙って。イシュカ、もっと言ってやって」

「いっそ接待でもするように、接してやれば、態度を改めるのではないですか? 嫌がってますし」


 嫌ですよね?

 と聞いたイシュカにがくがくと青ざめた顔で頷く変質者。

 でも


「例え振りでも、キーガーに媚びを売るなんて死んでも嫌」


 と、ピエレが吐き捨てる様に言えば、どうだとばかりにドヤ顔をする変質者。

 いや、本当に、なんでそこで勝ち誇れるのか、意味が分かりませんね。


 今、ピエレが言ったのは、生理的に無理、ってことですよ?


「ふ……なんでしたら、イシュカさんがやってみますか?」

「遠慮します」

「そうですか、いや、残念ですね」


 蔑む視線を隠しもせずに言ったイシュカに、ご褒美頂きました! みたいな顔で応える変質者、だけど、甘い。


「──が、これでもハーフですからね。嫌だと思っててもやらねばならないのでしたら、いくらでも心を偽れるのですよ。お試しになられますか?」

「遠慮します」

「そうですか、いや、残念ですね」


 腹黒さでイシュカに勝てる人なんていないのだ。


「お嬢様、何か言いたいことでも?」

「何も無いわ。イシュカだなって思ってただけだから」

「そうですか」


 そうして間もなく、馬車はユウトさんの屋敷に着いた。



最後に変態が全部持ってった気しかしないです。


魔力強度の話とかは飛ばしても特に問題ないと思われます。


ユウトの魔力強度はなんとなく。

数値がなんか雑っぽかったのはそーゆー理由です。

イシュカさんくらいだとちゃんと1まで分かる。

1500を超えたくらいから、徐々にちゃんと分からなくなります。


神気に触れるだのなんだのは教会に行くと分かりますw



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