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響け、産声 (side ペリシー)

とゆーことで、新キャラですよ


ちょっと難産でした。

 

「ペリシー!」

「…………」

「おーい、ペリシーさーん?」

「…………」


 恐らく、私を呼ぶ声を無視していると、前に回り込まれた。


「なんで無視するかね」

「私の名は、ペリスイテス・メサだからだが、何用か、ベンド・バローズ」

「親しみを込めて呼んでるだけでしょうに」

「親しくはなかろう。同僚である事を認めるのは吝かではないが」

「いや、同僚を十年も続けてたら親しさあっても良くないでしょうかね? 後それなのに、まだ吝かでもないくらいの認識な事に驚愕を隠せないな」

「十年ではない。まだ九年と十月、二週と六日だ。貴様のその雑な所はどうにかならんものか?」

「そこは誤差で良くないですかねー」

「貴様は預かった兵の数が一人二人と増えてても気にせんのか。それで情報漏洩でもしたらどうするつもりだ」


 俺は隊長なんて柄じゃないですし。

 などと腑抜けた事を抜かすこやつは、いつまで経っても危機意識が足りないと言わざるを得ない。

 そんな事で、我らが戦女神の下僕の一員が務まると思っているのだろうか?

 まぁ、その戦女神であらせられるボラ様は別任務でしばらく同道できない訳だが。

 主上に具申すれば良いだろうか?


「ちょいと話があるんだが、メシついでにどうかなと、思いまして」

「何故?」

「いや、だから、話があるんだって」

「それとメシとなんの関係がある? 話があるならばここでしろ」


 全く関連が分からん。

 話をすることと、飯を食う事を何故同列にするのか。

 話は話。飯は飯だ。


「それともメシを食いながらでないと出来ぬ話なのか」

「そうでもない、けど、な、そりゃ。でも、立ち話ってのも味気ないだろ?」

「貴様の価値観で私に話をされてもな。それにこちらには貴様と話さねばならぬ事など何もない」


 言いたい事はそれだけか、と脇をすり抜けて先を急げば、微かにベンド・バローズの呟きが聞こえた。


「お嬢からのお願いなんだけどなぁ……」


 私の足が止まる。


「それならそうと早く言え」

「メシ食いながら話したいと思ってたんですけど、ペリスイテスさん、お忙しいみたいですし」

「何を他人行儀な、ペリシーで構わん。さぁ行くぞ」


 襟首を掴んで引きずるように歩けば、またこれか!? と嘆くような声が聞こえなくもないが、私にとって戦女神ボラ様からの御言葉は神からの啓示に等しく、なればこそ疾く聞き出さねばなるまい。


 飯を食った。酒も嗜んだ。さぁ、話を聞かせろ。


「……いや……いやぁ? そうじゃなくないですかね?」

「何が不満だ。メシは食べただろう。さぁ、我が主君の勅を言え、ベンド・バローズ」

「主君て、お嬢は雇い主の娘でしょうに」

「貴様は馬鹿か? あの方はせいぜい主君の父君であるという栄誉を授かった種馬だろう。仕える我らに施しを出来る事を誇るべきだと思うがな」

「オマエはどんだけ上からなのかね……」

「ボラ様の下くらいだ」


 つまりそれは、神々、ボラ様、私、だから階位で言うなら三番手くらいではなかろうか。


「あー……もういいや。お前、お嬢が死ねって言ったら死ねるよな?」


 つ……と、視線をあげれば、見たこともないくらいに真剣な顔つきで私を見ていた。

 凡夫、ベンド・バローズ。

 締りのない顔をこれでもかと締めて……いや、締まらん顔だが。

 だが、その糸目はギラリと光り……は、していないが。


 うむ、総じて、ゆるい腑抜けた顔だが、言葉は重い。


「まずは貴様が死ね。少なくとも私はその後だ」

「そりゃまぁ、お嬢が死ねって言うなら死ぬが」

「よし」

「よし、じゃねえから」

「後で、嘆願しておいてやろう。なるべく生きてきた事を悔いながら安らかに滅する様にな」

「いや、まだ死なねえから。まだ、まだだろ、俺らが受けたもん返しきんのはよ」


 そうだ。我らが受けた恩はこの程度では返せはしない。

 誰も彼もが私達を切り捨てた。

 戦争とは、そういうものだ。

 そういう事もある。

 鄙びた村の為に国が血を流すのは間違っている。

 まだ火も回っていないなら話は別だろうが、回りきった火の消火に鉄火場で人手を割く余裕などありはしない。


 だが、あの方は、ボラ様は来られた。


 私達の村は、生贄にされた。

 戦線維持の時間稼ぎに使われた。


 そこに、他国への援軍であっただけのボラ様が来られた。


 死んだ方がマシな環境に粉々になった心を、ボラ様は、時に殴り、時に蹴り、慈しみを持って癒して下さった。


 暴力といえばそうだろうが、そうでなければ私達は今でも壊れたままだったろう。

 きっと、ボラ様も心を鬼にして私達に叱咤激励をされていたのだ。

 誰にも出来ないだろう。

 生々しい悪夢に泣いて飛び起きる子供を殴りつけて寝かしつけるなんて芸当は。


 最近は、騎士の訓練でも、随分と生ぬるい訓練らしいから、もっと腕とか切り飛ばせばいいのに。

 どうせ治る程度なのに、何故やらないのか。

 戦場で使い物にならない育て方をするのは甘さではなかろうか。


「それで? ボラ様はどこと戦争をされるんだ」

「しねえから」

「貴様が、死ぬ覚悟があるのかと聞いたのだろう」

「いざって時の話だからな!? 今のお嬢のシゴトは知ってんだろ?」

「勿論だとも。勇者とかいう子供を躾ているんだろう?」

「間違ってねえけど、絶対に間違ってるからな? 暴力禁止だからな?」

「ははっ、この私が暴力など、愛のムチだとも」

「だから、それを止めろと」

「何故だ。勇者ともなれば前線に立つのだろう? 生ぬるいことをしてして困るのは勇者だぞ」

「その勇者様の盾になれる奴を寄越せってお嬢が言ってんだよ。鍛えるのはお嬢とか他の騎士がやってる。俺らの役回りじゃないさ」

「そうなのか……そうか……」

「嫌なら他に持ってくが? お前に話通さねえと後が怖いから先に持ってきてんだ」

「いや、行くぞ」


 まぁ、一度くらい腕の一本でも切り飛ばしてみて根性は見てみるが、そのくらいなら構わんだろう。




 そうして次の日、ボラ様のお役目を支えんとやって来てみれば、そこには、女でももう少し筋肉があると思わせるほどに細い子供がいた。


「貴様がユウト・フタワ子爵か。ボラ様のお手を煩わせるまでもない。この私が貴様を鍛えてやろう」


 ふ、子供など、我儘なものだ。

 先にガツンと言っておかねば後で増長するのだから、これでいいだろう。ふふん。


「良く来たな、ペリシー」

「ボラ様! お久しゅうございます!」

「帰っていいぞ」

「……は?」


 ボラ様がとてもイイ笑顔で、帰れと仰られた。

 私は何か間違えただろうか?


「おうこら、ベンド。お前、俺の注文ちゃんと聞いてたのか? アァ? こんなキチガイ連れてくるバカがいるか! ハノンとかもうちょいマシな奴いたろうが!」

「痛い痛い痛い! お嬢痛いですって!」

「痛くしてんだから痛くていいんだよ。お前こんなのをユウトに近ずけるつもりか?」


「こんなのとは……私は狂戦士ボラ様の愛弟子にして凶戦士の二つ名を戴いたペリスイテス・メサですよ」


「狂戦士?」


 ふむ、どうやらユウト・フタワ子爵は、ボラ様の事をあまり知らないと見えますね。


「そうですよ。他にも、血濡れ蛮族(ブラッディアマゾネス)、首狩り姫、など悪名高い二つ名は多くありますが、気高いボラ様にはやはり、戦女神、トスキアの戦姫、などがお似合いかと思います」


 へぇ……と気のない返事をするユウト・フタワ子爵ですが、分かってらっしゃるのですか。

 そんな方をいくら勇者とはいえ占有するなどと、畏れ多い事だと分からないのでしょうか。


「いいですか? つまりですね」

「黙れ、ペリシー」

「はい、黙ります!」


 はぁ、と溜息をついたボラ様が、ベンド・バローズを睨むやこちらを指差して言い募りました。


「こーゆー奴だって分かってんだろ。こんなのをユウトに見せたら穢れると思わなかったのか」


 酷い仰りようです。

 私はボラ様を見て育ったのに。


「ですけど、俺も後で拷問されたくないですし」


 拷問なんかしませんけど。

 ちょっと素直になっては貰いますが。


「いーかー? お前とユウトの命の重さは羽毛と金塊くらい違うんだ。どっちが重要か、考えるまでもないんだ。分かれ」


 その通りですが、ユウト・フタワ子爵が金塊は言い過ぎだと思います。


「ボラ、いーよ」

「いや、ユウト、コイツは昔の俺よりやべぇんだぞ。多分、お前の腕くらい落としてみて我慢出来るか根性見てやろうくらいの事を考えてるぞ」

「……えぇ? そーなの? ペリスイテスさん」

「勇者なら、そのくらい問題ないでしょう」

「こーゆー奴だ」

「………………」


 止めとけ、というボラ様を無視して私をじっと見るユウト・フタワ子爵には、恐れも、畏れも、感じられない。

 なんだ、この子供は。


 こんな子供に負けるはずない。


 そうとしか思えないのに、サワリと背筋を冷たいものが撫ぜる。


「ペリスイテスさん」

「なんだ」

「人を殺すのは良い事だと、思いますか?」

「悪いことだろうな、罪人でなければ」


 何を言うかと思えば、人を傷つける事は良くないとでも言うのだろうか。

 それで、どうやって守れるというのか。


「じゃあ、敵国の人を殺すのは、良い事?」

「当たり前だろう。奴らは侵略者だ」

「復讐するのは、良い事?」

「良い悪いではない。止めてはならない」

「親が殺されたら、子供は、復讐した方がいい?」

「仇をとる事の何が悪い」

「じゃあ、普通、親は子供に死んで欲しいって思う?」

「そんなわけあるか」


 なんだ、この意味の無い質問は……。


「それなら、親は子供に復讐して欲しいなんて思ってないよね?」


 …………なんだ、なんで、そうなる……?

 

 違うと、声高に言いたいのに、喉が貼り付いたみたいに固まって、声が出ない。


「復讐、したいって思った子供が、簡単に復讐出来るかな?」

「……出来ぬ。多くが、道半ばで息果てるだろう」

「そんな道に進む事を親が喜ぶと思うかな?」

「……思わぬ。だが、それでは怨嗟の声は消えぬ」

「本当に?」

「私がそうだ! 十年、十年だ! 今も恨めしく嘆く声が止まない! わたしが晴らさず誰が晴らす!」


「ペリスイテスさんの親は、ペリスイテスさんがそんなに苦しむのを見て、それでも止めるなって言う様な親なの?」


 あぁ、そんなわけはない。

 優しい母だった。

 穏やかな父だった。

 小さな村で、貧しくとも、日々精一杯の糧の為に働く場所だった。

 私が子供ながらに手伝わねばひもじい思いをしてしまう様な、そんな村だった。


 それが一夜にして無くなった。


 今も、耳に残った声が、消えない。


「親なら、子供が笑顔で幸せになる事を祈ってると思うな」


 あぁ、そうだろう。

 そうだろうとも。


 つ、と、ほほを伝う感触に、泣いていることに気付いた。


 ボラ様に言われて剣を握ったあの日から、一度として流したことのない涙が、止めどなく溢れる。


 あぁ、誰だ、情けなくも、大声を上げて泣き喚くバカは。


 泣いて何が変わる。


 私の知ってる大きな手が、私の頭を乱暴に撫でた。


「やっと泣いたな、バカ野郎」


 誰が、野郎だ。

 私は女だぞ。

 

この時のユウトの心情を考えるととても切ないですね。


親が子を慈しむのは当然なのに、ユウトはそうではなかったですから。


そんな新キャラなペリシーさん、と、ちょっと前からお目見えのベンド君をよろしくお願いします(^^)

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