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狂い咲き (side ボラ)

エイプリルフールは一日で書けたのにね(ぁ


とゆーことで、ユウトの知らないところで物事はちゃくちゃくと進んでおります

 

 ユウトの帰りの護衛をウチの奴に頼んで送り出した後、俺はコルモの部屋にまだ居た。


 俺にとってはこっちが本命だ。


「お前はいつまでアイス食ってんだ」

「いや、そうは言ってもね。僕の甘味好きは知ってるだろう?」


 そう言いながら、渋々スプーンを置いたコルモに呆れなくもないが、まぁ、いい。


 最初に玉子アイスだと出てきた時もそこそこ美味いと思ったもんだが、メノはこれではダメだとか抜かしやがった。

 まぁ、商売にするにはちーとばかし足りなくはあった。


 でも、これがお試しだと思えば、悪くはない。


 そのくらいの出来だった。


 でも、メノから言わせると、もっと時間をかけずに出来なければ商品足りえない。だとか、現状では、材料その他、すぐに真似られてしまうと言われりゃ、否定も出来ねえ。


 ユウトも悔しがるかと思いきや、笑ってた。


 これは、小さな子供でも作ろうと思えば作れるんだから、これで合格してたら困ったってな。


 ただ、方向性がいいか、悪いか、それを見てもらう為に作ったんだそうだ。


「ちなみに、今食ってた奴もまだ試作みたいだぞ」

「なんで完成したのを持ってきてないのさ」

「叙爵の話がなかったら、もうちょい時間取れたんだよ。こっちのせいじゃねえっての」

「あぁ……父上、恨みますよ……」

「また持ってこさせるから心配すんな」

「当たり前だろう? 僕のお墨付きになるんだから。僕が知らない訳にはいかないよ?」


 そう言ってふんぞり返る。


 その前にどっかと座って、ケリッヂに渡された書類に目を通していく。


「へぇ……コレの確度は?」

「裏付けはほぼ取れています。が、物的証拠がありません」

「そこまでバカじゃねえか」

「ただ、このまま放置は出来ないよね?」

「たりめえだろが」


 狂い咲き


 あのアイリスさえも欺いて狂わせた、馬鹿げた代物の名前にしちゃ、言い得て妙で、だからこそ、それが癇に障る。


「分かってるとは思うけど、騎士団は動かせないよ」

「裏の仕事に騎士が役に立つかよ」

「それもそうだけどね」


 腕を組んで冷徹に俺を見るコルモは、とてもさっきまでの緩みきった男と同じには見えないが、これが普段のコイツだ。


 どうしたもんかと、頭を悩ませながら改めて書類に目を通す。




 ─狂い咲き─


 理性を溶かす術式と、強迫観念を植え付ける術式の二つをもって強力な不信感を芽生えさせて、互いに殺し合わせる呪具。


 他にも術式が仕込まれていた可能性あり。

 少なくとも、複数の隠蔽術式。


 製造には、闇ギルド《ヴェリム》の関与を確認。




 胸糞悪い。

 製造方法は……およそ人の所業じゃねえな。


「こんなもんに城ん中まで覗かせてたたぁ、随分と腑抜けたんじゃねえか?」

「耳が痛いね。兄上が仕出かした身勝手の尻拭いのせいだから、早く何か手を打たないといけないんだよ」


 マジであの筋肉バカはろくな事しねえな。

 いっそどっかで野垂れ死んでくんねえかなぁ。


「ま、そっちはお前らの仕事だ。俺にゃ関係ねえから、国が荒れる前に何とかしろ」

「そういうキミも国の一員なんだけどね」

「俺の領分じゃねえ」

「はぁ……分かってるよ。戦上手は戦場に居ればいいさ」


 分かってんじゃねえか。

 とはいえ


「今は勇者の子守りだからな。その分の仕事はするさ」

「上手く巻き込んだら手を貸してくれるって事でいい?」

「殺すぞ、ボケが」


 ドっと殺気を当ててやれば、身体を硬直させて喘ぐ。


「〜〜〜っ! っは! は、はぁ……止めてよね、そういうの」

「わりぃナァ、見過ごせねえジョーク聞いた気がしたからよ」

「今のは殿下が悪かったですが、あんまり虐めないで下さい。心臓止まったらどうされるんですか」

「ばーか、俺がそんな調整ミスるかよ」

「でしたら、ええ、程々でお願いしますね」

「キミら、僕が王子だって知ってるよね?」

「存じておりますとも、殿下」

「親の七光りって意味でいいならな」

「それは兄上に譲るよ」


 情けなくもそう言うと、お手上げだ、と手を振った。


「話を戻すけど、つまりそういう訳で、日常的には平穏無事に、水面下ではちょっと忙しくなるね」

「期間は?」

「ウチの見積もりだと半年くらいはかかるだろうってさ」

「なりふり構わず、までは行かねえか」

「そこまでしたら騎士が動くよ」


 騎士が動くって事は国が動くって事だ。

 王城にまで侵入を許したって言っても、詳細を知ってんのは極一部、マナリスの暴走が上手く作用したって言っていいのかね。


 だから、表立っては動かない。

 向こうもそれが分かってるから無茶はしない、と。


 めんどくせえ事この上ない。


「あぁ、それと、これはまだ内密にお願いしたいんだけど、ユウト殿にも貴族って地位も出来たからね、二ヶ月後くらいになると思うけど、勇者のお披露目やるみたいだから」


 茶をすすりながら、しれっと零した事に眉間にシワが寄る。


「悪いけど、これは決定事項だからね。それまでに見せられるくらいにはしてくれ」

「……分かった」


 本当はもっと早くしたいんだってのは、分かってる。

 召喚で呼ばれるのは、もう少し大人の予定だったからな。


 ユウトの身形じゃ、逆に不安を抱かせちまう。

 でも、あまり悠長にも構えていられない。


 ガキにどんだけの重石を積むつもりか知らねえが、やるしかねえならやるさ、あぁ。


 それで話は終わりだ。


 蹴り飛ばす様にして席を立って、むしゃくしゃした気持ちをどうにかしようと、練武場に足を向ける。

 こういう時は、身体を動かすに限る。

 屋敷の奴らに八つ当たりする訳にもいかなねえからな。


「……で、なんでお前がまだここに居る」

「勇者様にお願いされちゃ仕方ないでしょうや」


 頭を掻きながら軽く下げる頭の軽い事ったらねえなぁ。

 ま、これも仕方ないっちゃ仕方ないのかね。


 視線を練武場に戻せば、ユウトが他の奴らに混じって木剣を振り回していた。

 オッソ相手に培った体格差のある相手への対処に下へ下へと潜る様に剣を振るう様は、まぁ、なかなか様になってきたんじゃねえかな。


 魔力総量が多いからか、身体の動かし方の練磨が早い。

 これなら、二ヶ月あれば、まぁ、見栄えはする、か?


 そろそろ制限付けたオッソに一発当てられるだろうしな。


 次はアデーロにするか、ペリオンにするか。


 いや、ペリオンも、もうちょい鍛えねえとな。

 アイツ、雑魚な癖に最近弛み過ぎじゃね?

 真剣に打ち込んでるユウトに比べて、諦めてる感じがすんだよなぁ。


 私じゃ勝てません。みたいな。


 それが腐るとユウトの努力も腐るかもしんねえからな。

 今の内に根性叩き直しとく方がいいか。


「ベンド。お前さ、ちょっとウチの屋敷に来いよ」

「は? 嫌ですけど」

「アァ!? てめ、俺に歯向かうってのか?」


 そうじゃないです。と首を振ってるが、この面倒くさがりめ。

 サボんの大好きだからってあからさまに嫌そうな顔しやがって。


「時間ねえんだよ。ガキじゃねえんだからユウトの為に漢を見せろ」

「お嬢が居なくなってようやくゆとり持てるようになったのに、なんでまたお嬢の世話になんなきゃいけないんですか。嫌です」

「分かったって言うまでボコるぞ」

「じゃあ死にます」


 あっさり言いやがる。

 そーかそーか、それでいいなら、死んでもらおうか。


「まず、お前の性癖を幼女趣味に……いや、少年愛好家にして、罵られると悦ぶ豚野郎の変態だって事にするか……」

「いやいやいやいや!? 待ってください! なんで社会的に殺そうとしてんですか!?」

「誰が物理的にボコるっつったよ? お前が嫌がることしねえと嫌がらせになんねえだろ。後、サボり癖は、仕事しすぎると興奮しちまうから、隠そうとしてたって事にして、俺にバレたからこき使われる方で楽しむことにしたって実家に連絡しといてやるよ。死ぬほど働かせてやるぞ」

「悪魔かアンタ!?」


 褒めんなよ。

 戦争なんて相手の嫌がることをどんだけ出来るかが重要なんだ。

 戦上手ってのは、どいつもこいつも嫌がらせが得意に決まってんだろ。


 俺の趣味はそりゃ、ガンガンやり合う方だが、それで勝てんなら苦労はしねえんだ。

 それに死人は少ない方がいい。

 無駄に死ぬ事ほど無駄な事は無い。


 命は大切にしねえとな?


「ベンドが嫌だって言うなら仕方ねえなぁ。俺も涙を飲んで辛いことしねえと」

「あぁもう! 分かりました! 分かったよコンチクショウ! 地獄に落ちろ!」

「明日からと言わずに今日から来てもいーぞ」

「明日からで」

「よし、分かった」

「あ、そこはいいんですね?」

「おう、俺も無理強いはしたくねえからな」

「どの口が言うんですか……」

「いや、親父に連絡するのも手間だしな。お前がやってくれんならそれはそれで構わねえさ」

「はぁ!?」

「いや、今日からならユウトのお守りの後そのまま屋敷に居りゃいいだろうし、それなら俺から親父に言うけどな。お前が実家に一回帰んなら、俺が行くのは無駄な手間だろが」


 何言ってんだこの人!?

 みたいな驚愕したみたいな顔してるが、なるべく無駄な事をしねえ様にしてるお前の意志を尊重してやってんのに、何が不満なんだろうナァ?


「あ、後、明日までに後一人勧誘済ませとけよ? 一人じゃ足りねえから」

「なんで俺がそんなめんどくさい事しなきゃなんないんですか!」

「嫌なのか?」

「いや──」

「少年愛好家の仕事大好きな変態豚野郎じゃなきゃ嫌なわけないよな」

「──じゃないかもしれませんね」


 血反吐はくほど喜んで貰えるたぁ、景気いいなぁ。


「ちなみに、条件だが」

「更に条件付きとかバカなんですか!?」

「条件だが……まず、勇者であるユウトの為になら死んでもいい奴が第一条件で、勿論、実力のない奴は許さねえ。後、男で女が好きな問題児は要らねえな。当たり前だが男好きもダメだ。男に尽くして棄てられる系の女はいいぞ。包丁振り回す様なゴミは要らねえが。お前が嫁に欲しいと思う様な女は良いが、口説くのは禁止な。まぁ、高望みするだろうから女の方から拒否されるとは思うが。……まぁ、こんなもんか?」

「俺、女好きなんでダメですね、残念ですが」

「明日までに治しとけよ?」

「無理じゃないですかねー」

「出来てなかったらちょん切るから、ぜってぇ治せよ?」

「いっそ死んだ方がマシじゃないですかね、俺」

「飯は上手いし、何事もなければ暇なもんだぞ」

「明日までに何とかしておきます」

「うし、じゃあ、今から実家行くぞ」


「アンタ来ないっつったじゃんか!?」


「よくよく考えたら俺が行かねえと話通らねえし」


「じゃあ、俺はこのまま勇者の護衛で良くないですか!?」


「そしたら足がなくなんじゃねえか。後、やっぱ今日そのまま来られても部屋の用意出来ねえからダメだろ、常識的に」


「アンタが常識とか気にするタチか!?」


 一々うるさい口を塞いで、黙らせる。

 コイツ、俺が貴族だって忘れてんじゃねえだろうな。

 貴族扱いしたらボコるけど。


「おーい、ユウトー!」


 試合の最中だが、まぁ、遊んで貰ってるだけだしな。

 スっと手を引いた相手にユウトも止まって、こっちを見る。


「……あれ? ボラの話は終わったの?」

「終わったんだけどな、ちょっと追加で用事出来たから、もうしばらく遊んでもらっててくれ。後ですぐに迎えに来る」

「分かったー」


 よし、と頷いて、ベンドを引きずりながら馬車に行く。


 二ヶ月なんてあっという間だからな。

 さっさと進めねえと、後でキツい。


「オラ、自分で歩け」

「勇者と俺との扱いの差が酷いですね!」

「社会に貢献してから文句言えよ、お前は」


頑張れ、ベンド!




私も頑張れっ!

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