エイプリルフールすぺしゃる
ちょっと頑張って書いてみましたw
間に合わせるためにちょっと短めですけど。
閑話になりますので
お正月すぺしゃると同じくで、本編との繋がりはありません。
視点はカノンになりますが、すぺしゃるなので特に記載しません。
(書いた後に気づいたともいう)
鮮度が命なので、誤字脱字がある可能性が高めです。
以上を踏まえましてどーぞ!
ある春先のこと、夕食の席で、ご主人様が、唐突に祝日とかはないの? と聞いた。
「建国記念日とかはありますね。後は、神霊慰撫は創世週に行いますが、それとは違うという事でしょうか?」
他にありましたか? と、メイド長が聞いてきました。
「生誕祭もありますが、お生まれになった時と、成人した時くらいですね。後は、成婚された時、お隠れになった時、くらいでしょうか。特別なお休みの日となりますと」
ふふふ
あのて癖は、随分となりを潜めたのですよ。
周りの方々がみんな、お優しいから、わたしも貯めに貯めた知識を遺憾無く発揮できるというものです。
「じゃあ、毎年ある祝日とかはないんだ?」
ご主人様が首を傾げながら聞いてくるのにハイと返事をする。
「そんなお休みいっぱいあっても、みんな困るしね」
「……困るの?」
「稼ぎが減る」
働かねばお金は貰えないのだ。
休みで喜ぶのは、子供か老人くらいなものだろう。
「それにしても急に祝日なんて、ユウト君は、なんでそんな事を考えたんですか?」
ご主人様が言うには、ご主人様の世界には沢山の祝日があったらしい。
年間で10も20もあるのだとか。
「そんなに祝日があっては、祝日の準備と片付けだけで一年が終わってしまいませんか?」
そうだそうだと、みんなで頷いているとご主人様は困ったご様子でしたが、ちゃんとした祝日は少ないらしい。
祝日という名の休日があるんだそうな。
なんですか、それは。
「随分と怠惰なんだな、ユウトの世界は」
「いや、僕のところは働きすぎだってよく言われてたよ」
「休みばっかなのにか?」
「休日でもお仕事してる人はいたし、寝てる時以外は、ずっと仕事で休みも取れないみたいな人も居たし」
「ユウト殿の世界には奴隷などは居なかったのでは?」
「いない……けど、過労死って言って、仕事のし過ぎで死んじゃう人も居たから……」
なんて酷い……!
わたし達奴隷だって、よほどの重犯罪者でもなければそんな生命をすり減らす様な仕事は与えられないのに……。
だから、ご主人様の世界では、何とか改善しようと休みを増やす取り組みなどがあるらしい。
休みを増やさないと死ぬ様な環境が国単位で蔓延していると言うことになる。恐ろしい!
まぁ、それなら、休日という名の祝日があってもいいのではないだろうか。
いや、結局休めないなら、あるだけ無駄にも思えますが。
戦々恐々としながらも話を聞けば、他にも毎日何かしらの記念日だかがあるらしい。
祝日ではないみたいだけど、死ぬほどに仕事をするくせにそんな日を作るなんて、随分と神経質というか、狂気すら感じますね。
子供の成長を祝う日
国を支えてきた老齢の方を労る日
などもあるらしいが、海の日、山の日とはなんだろうか。
空の日や川の日、谷の日なんかもあるのだろうか。
エニュハがなんかご満悦な感じだけど、アフォスさまが何かご機嫌なんだろう。大海の神様だから、海の日があって鼻高々といったところでしょうか。
「それでね、変な日もあるんだけど、春先の頃にエイプリルフールって日があってね」
何かイタズラを思いついたみたいな顔をしてらっしゃいますが、おそらく、ご主人様が言いたかったのはコレなのでしょう。
「エイプリルフールは嘘をついてもいい日なんだ」
「「「「…………?」」」」
どやーっと言ったにも関わらず、みんな揃って首を傾げた。
ご主人様も、空気が凍ったのが分かったのだろう。
あれ? と、首を傾げた。
「それで、ユウト様は最近、明日のお休みはみんなで休むからね! って言ってたの?」
「う、うん」
「ユウト様、嘘をつくのが楽しみ?」
「そ、そー言われると、なんか、違う気がするんだけど……」
もじもじとしながら困った感じになってますが……
嘘をついてもいい日
なんてあっていいのでしょうか?
いえ、周知されているなら、構わないのでしょうか?
ですけど、わざわざ嘘をつくのを楽しむ?
という文化は、何が起源なのでしょうか。
「それで、ユウト様のとこだと、どーゆー嘘があったの?」
「え?」
言われて悩む姿は、ご主人様の素直さを表してますけど、そういった事が世間に浸透しているならそこには悪意ある嘘をつく人もいそうでなかなか悩ましい催事ですね。
「えっと……確か、新聞に香りのついたインクを使ってみたから香りも楽しんで下さい。みたいなのとか、日付を一日ずらしたりとか、かな? あんまり人が困る事するのはマナー違反だけど、ちょっとしたジョークで済む範囲なら結構色々あるんじゃないかな」
「それをユウト殿はやってみたいと」
「うん。……だめ?」
「いいんじゃないかな? ね、メノ。お屋敷の中だけなら他に迷惑もかかんないしさ」
「そうですね、たまにはそれもいいでしょう」
「! じゃあ、明日はみんなそれでいい?」
にこにこしたご主人様にみんなそれぞれ返事をしながら、まぁやるならやるで楽しんでみようという事になった。
いつも頑張ってらっしゃるご主人様の、たまの子供の遊びだと思えば可愛いものですから。
とはいえ、いくつかは禁止事項は設けられました。
一つ、お屋敷の中だけで済ませる。
一つ、人を傷つける様な嘘はつかない。
一つ、無理強いはしない。
そして、何とも根回しのいい事に、ご主人様は明日は警備の人を頼んでいるらしく、護衛の皆さんも全員お休みにするんだとか。
更にわたし達も休みにする為に、ご飯も朝は作り置きだそうですが、お昼と夜は用意して貰うそうで、本当にやることが無くなるみたい。
わたしは、お料理出来なくなるのはなんか手持ち無沙汰になりそうですけど、ご好意ですし。
そうして、解散した夜。
「明日は、どう、なるんでしょう?」
「まぁ、ご主人様のお茶目ですし、フリでも驚いて差し上げないといけないかもしれませんね。わざとらしくならない様に気をつけないと」
「嘘をついてもいい。というところが、問題では?」
「あぁ……ついているか、ついていないか、分からないと、わちし達は問題かもですね」
「ええー! わたし、そんなの、むり、ですよ!」
ご主人様からは、無礼講だとお伺いしてますけど、そうはいっても奴隷ですから。
大人しく過ごしましょう。
明くる日、今日は朝から妙な緊張感が漂っていました。
みんな、分かってるんです。
誰が嘘をつくのかと。
どんな嘘をつくのかと。
「みんな、おはよー」
「「「おはようございます」」」
「じゃあ、みんな、騙されないように騙すように頑張ってこーね! 僕も絶対みんなをびっくりさせるからね!」
気合いの入った様子のご主人様です。
それを生暖かく見守りながら
嘘の日、開始、ですね。
……………………
なんか、今日はとても静かです。
みんな、探り探りしていて、慎重になってるんだと思います。
「おい、ユウト」
「何? ボラ」
「お前が変なことすっから、葬式みてえになってんじゃねえか」
「えー? 僕のせい?」
「だから、景気づけにこのワイン飲んでやれ」
「何言ってんのさ。僕子供だからお酒ダメなんだよ?」
ボラ様が差し出したのは、マルローゼルという甘口のワインですが、酒精の強いワインで、女の人を酔わせる為のお酒として有名です。
何を考えてるんですか。
「いやいや、コレはジュースみたいなもんだから大丈夫だっての」
「えー?」
とっぽとっぽと、ご主人様のグラスに注いでますけど、あれを飲ませたらダメな気がします。
皆さんも注視してますが、流石に実際に飲ませるところまで行ったらルール違反ですから、大丈夫でしょう。
飲んでみ、と渡されたグラスを困った感じで見てたご主人様ですが、くんくんと匂いを嗅いで顔を顰めました。
「ボラー! 匂いは甘いけどお酒の匂いも凄いよ! こーゆー嘘はダメだからね!」
「あんだよー、どーせ飲まねーと思ったからいいだろー? それにユウトが間違って飲みそうになったら誰か止めただろ?」
「当たり前です。何してらっしゃるんですか!」
「怒んなって。空気が重いからちっと軽くしてやろうとしただけじゃんか」
肩を竦めて悪い悪いと悪びれずに言う様は、こう不安なものですが、まぁ、事なきを得た、というところでしょうか。
「皆さんも、今のようなウソはダメですからね!」
「はーい! とゆーか、ボラ様以外には出来ないと思う」
「言えてる」
「うわー、私、今ので手汗凄いことになっちゃいました」
「いくら何でも実際に飲ませるとは思ってなかったですけど、ユウト殿が口をつけたらどうするつもりだったんですかね?」
「そりゃあ、お前、サッと奪い取ったに決まってんじゃねえか」
おかげで、と言っていいかは分かりませんが、その後は多少穏やかになった空気が流れたので、結果としては良かったのでしょう。
結果としては、ですけど。
それからは、多少ぎこちなくも会話をしつつ、和やかに進みました。
「ごちそー様!」
ぐいっ!
と、ワイン入りのグラスをご主人様が飲んでしまわれるまでは。
「「「あ!?」」」
そのままにしてあったワインをご主人様が飲んでしまわれました。
「ふぇ……あ……」
ご主人様も、それがワインだったと思い出したのか、目を丸くしてグラスを見てますが───
「ユウト様! 吐いてください!」
焦ったテリア様がご主人様を掴まえて、必死の形相で訴えてますが、一度飲み込んだ飲み物を戻させるのは至難の業です。
一気に騒然とした中、ボラ様が、こんな嘘をつくから!
と思って睨みつけるように見ると、ニヤニヤした顔で皆さんを眺めて……
「なーんてね! コレはジュースだよっ!」
というご主人様の声にシーンとしました。
「マジで綺麗に騙されたなぁ! ユウトやるじゃんかよ」
「ボラとやればいけるって思ってたんだよね!」
いえーい!
と、ハイタッチする二人に、気づいた。
ここまで全部が仕込みだったのだと。
「び、びっくりしたぁ! ユウト様! ほんとに、ほんとのほんとにジュースなんですよね!?」
「うん、もちろん」
ほれ、と、ボラ様に渡されたボトルから、グラスに注いで匂いを嗅げば、納得したみたいに脱力した。
「ほんとにブドウのジュースだー。さっきは心臓が止まるかと思いましたよー」
「ユウト君、やりすぎですよー」
「でも、みんな、僕が嘘ついたら騙されたフリしてあげようっておもってたでしょ? そーゆーのは楽しくないもん。全力でやるから遊ぶのは楽しいんだよ? だから、今のは僕からの本気って事だから! 騙されてあげよう、なんて甘い考えしてたらダメなんだからね!」
そう言われれば、皆さんも言い返しづらくなるというもの。
「じゃあ、ここからは、全力でユウト様を騙す」
「僕以外でもいいんだからね?」
「でもまずは、心配させたお礼をしないと」
「そうですね、まずはわたくし達の本気も見せないと失礼になりますよね」
そうして、時に笑って、時に怒って、今日という一日は、総じて笑顔で過ぎていったのでした。
わたしも、頑張って嘘を付いてみようとしましたけど、緊張するとて癖が出るので、わたしには出来ませんでした。
「やってみれば、何やら楽しかったでありんすね」
「そうですね……。わたしも一度くらいやり返したかったです」
「カノンは、まぁ、ご愁傷さまでありんす」
「私、ホントに、ここで、やっていけるの、かなぁ」
ポツリと呟いたエニュハにびっくりする。
楽しんでいたように見えたのですが。
コーリーと目を合わせても、首を振るばかりで、コーリーも気づいていなかった、という事でしょうか。
「ど、どーしました、エニュハ。それも嘘ですか?」
「あ、バレちゃったー」
「エニュハ、もう終わったでありんすよ!」
「えー? だって、今日は、まだ、です!」
減らず口をいうのはこの口かー!
と、コーリーが襲いかかったので、わたしも混ざってもみくちゃになりながら、団子のままに三人で寝ました。
「こ、コーリーさん! くすぐるのダメ!」
「嘘かもしれませんしね!」
「う、嘘じゃな……きゃははははっ!」
「その笑いは本当でありんすか?」
「ほ、ほん、ほんと! だから! カノンさ、ん、助けてっ!」
「その救援に行ったら、わたしを二人でくすぐる、という罠ですね」
「ひぃーん! あははははっ!ひぃー!ゆるしてぇっ!」
「……ふ……まぁこのくらいで許すでありんす」
「も、もぉ……だめー」
本当に楽しい一日でした。
また、こうやってみんなで笑いながら一日を遊び倒したいものですね。
もうちょっと長くしたかった……
けど、時間なくて出来なかったー
こんなんいいから本編はよっ!(ノシ 'ω')ノシ バンバン
とゆー方、すみません!
頑張りますー!!