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人の上に立つという事

唐突な二話連日更新ですが、エニュハを待たせたらいかんと……!

(一週間くらい待たせたのは忘れて下さい)

 

 執務室、ということになってる僕用の部屋で、勉強。

 覚えないといけない事も沢山あるから、少しずつでも片付けていかないと変なことしちゃうし。

 まぁ、今は手紙の書き方なんだけど。

 全然わかんない。

 雑に言えばワビサビ的な感じなのは分かるんだけど、これ、やっぱりアイリスさんとかに聞かないと分かんないかなぁ。


 コンコン


 と、ノックの音がしたから返事をすれば、頭を下げて入ってきたのはリリさん。


「ユウト様、エニュハを休ませたい」

「エニュハ?」

「何か疲れているみたい。……もしかしたら寝不足、かも」

「寝不足……確か、キッチンの片付けとか、エニュハがやってたよね?」

「でも、そこまで遅くはなってない」

「どうだろ……朝も早いし、エニュハも僕と歳はちょっとしか違わないんだし、お休みさせてあげて」

「分かった。ありがとう」


 あーもう、もっと人が欲しいっ!

 いや、奴隷とかじゃなくて、普通の人。

 メイドの三人は頑張ってくれてるけど、やっぱり目が届かない。

 エニュハにも無理させちゃったなぁ。

 どーしよう、メノさんに相談はしないとだけど、普通に人を雇うのはなんか嫌っぽいんだよね……。

 でも、エニュハに無理させてたなら、やっぱりこのままじゃダメだし、僕のワガママで押し通そうかな。


「むー、奴隷の子にお見舞いって行ったらダメなのかな。呼び捨てにするのは慣れたけど……あんまり距離あるのイヤなんだけどなぁ」


 ご飯一緒に食べるのは、メイド達の前例も作ってあったし、それで押し通せたけど、線引きは絶対に必要だって、呼び捨てにするのは譲ってくれなかった。

 エニュハはまだ同じくらいだから、抵抗感も薄かったけど、コーリーとカノンは、なんか背中がむずむずする。


 ボラさんに聞いてみようかな。

 と思って庭に出てきたんだけど、こんな時に限っていないとか。


 カンコンカンコンと軽く音をさせながら棒で打ち合ってたのはペリオンさんとオッソさんだった。

 というか、音で気づくべきだった!

 ボラさんがやってたら、カンコンなんて軽い音になるわけないのに。


 んーと、これは、ペリオンさんが、相手してもらってる、のかな。

 四方八方から、手を変え、間を変え、くるんくるん棒を回しながら打ち込んでるのを、オッソさんが、払って弾いてスっと避けて、をしながら、たまに反撃で軽く突く。

 オッソさんが、軽い感じで突くと何故かペリオンさんは絶対に突かれてるのは、なんか動きが筒抜けなんだろうね……。


「フッ! ハッ! よっ、と、これで……っ! ぁぃたっ!」

「………………」

「あぁ、また! もうっ! 絶対、一発は当てますから、ねっ!」

「………………」

「あ! なんですか、その、まだまだ無理だって顔は!? 感じ悪いですよっ!」

「…………フッ」

「は、鼻で笑った……! この、この、このっ! あぅ! まだま、だっ! あ、ちょ……あだっ! いたっ、あぅっ、急になんで、っつ〜〜!! もう! なんですか、急に!」

「………………」


 クイッと顎を僕の方にやると、ペリオンさんもようやく気付いたみたいで、僕が来たからおしまいって事みたい。

 急にポコンポコン突かれて叩かれた涙目のペリオンさんを放置して僕のとこに来た。


「邪魔しちゃった?」

「………………」


 そろそろやめようと思ってたから、丁度良かったって顔で言われた。相変わらず地味に凄い。


「………………」

「うぅん、大丈夫。今度お願い。もう少ししたらまた挑戦するから」

「………………」


 オッソさんに一発当てるのが、ボラさんから僕に課せられた、とりあえず半人前卒業の条件で、それがクリア出来たら、冒険者になる為の刃物の扱いを許可してくれる、事になってる。


 騎士であるペリオンさんとオッソさんが棒を使ってるのも、言ってみれば僕のせいになる。

 護衛として必要な時は剣を使うんだけど、その練習というか訓練は、僕に見えないところでやってるみたい。

 僕に剣とか使いたいって言わせないように、こうやって身体を動かす時はみんな棒を使う事がルールになってる。


「剣とかユウトには早いから。得物無しってのも締まらねえから棍棒とかでもいいんだが、怪我しない様にすんなら棒術の方がなんぼかマシだからな」


 との事で、ウチでは今棒術ブームです。強制だけど。

 というか、ボラさんはなんであんなに強いんだろうね。

 今まさにペリオンさんを圧倒してた感じのオッソさんに素手で勝てるって何なんだろう……。

 オッソさん、アデーロさんペアになってギリギリ勝てるくらい。

 棒持ち二人に素手で。


 あの人、おかしいと思う。


 そもそも、ボラさんは相手してる人の棒を絶対に掴まない。

 実戦だとそんなことはないみたいだけど、それじゃ鍛錬にならないんだとか。

 だから、手で打ち払ったり避けたりするだけなんだけど、それってつまり、手加減ありでやってるってことなんだよね。

 足も使わないし……。


 やっぱりおかしい。


 まぁ、そんなおかしいボラさんに当てるのは不可能なので、僕の半人前卒業試験の相手はオッソさんになってる。


 条件は、オッソさんに棒を当てる事。

 なんだけど、今見た通りペリオンさんでも中々当たらない。

 なので、僕用のルールで


 ・オッソさんは素手だけ、僕は棒だけ

 ・オッソさんは上半身への攻撃はすり足以外での回避禁止

 ・双方、身体強化系以外の魔力の使用禁止

 ・挑戦出来るのは一日一回


 の四つがある。

 すり足ってとこは、足を地面から離したらダメって事だから、思ったよりもスルスルと動くんだよね。


 この前はちょっと惜しかった。

 後一週間くらい、10日以内には当てたい。


「それで、ユウト君はどうしたんです?」

「ボラさんならここに居るかなって思ったんだけど」

「あぁ、今日は、珍しく門のとこに居ますから」

「珍しい……」

「この前、カードで負けた罰なんですよ」

「へぇー。……ところで、ペリオンさんはエニュハの体調が良くないのって知ってた?」

「ありゃ、ユウト君が聞いたって事はなんかありましたか?」

「リリさんがお休みさせて欲しいって」

「そっかー、じゃあ、エニュハちゃんを心配して?」

「うん、メノさんに奴隷との距離感とか、ちゃんとしないと、奴隷の子達が怒られるからちゃんとしなさいって、言われてて、お見舞い行っても大丈夫かなと思って……」

「あぁ、そーゆー事ですか。主人が奴隷の体調気にして、自ら行くのは正しいのかって、それで仮にも貴族のボラ様にどんな感じか聞いてみたくなっちゃったと」


 全部見通されてて恥ずかしいけど、そういう事だから、うん。

 メノさんに聞いたらダメかもだから、先に他の人に聞いてみたい。


「今回は構わないと思いますよ。病気だったりするならダメですけ、ど……」

「そっか、じゃあ、メノさんにお願いしようかな」

「構いませんが、今は寝てるみたいですから、後にしてあげて下さいね、ユウト様」

「………………えっと……」


 恐る恐る振り返れば、にこにこしたメノさん。

 だけど、僕は知ってるよ、メノさんはにこにこしながらでも怒れるって事を。


「なんで、ここにいるの?」

「いえ、ユウト様の事ですから、エニュハを見舞いたいと仰るかと思いまして、大丈夫ですよ、とお伝えしようと思いまして探しておりました」

「それはありがとう……? うん、後で行ってみるよ」

「ところで、わたくし、ユウト様にはなるべく配慮しつつお過ごし頂けるようにいつでもご相談お待ちしておりますが、ご相談のご相談をされてるとなると、手間が煩雑だと思いませんか?」

「そうだね……うん、そう思うよ」

「でしたら、なるべく早くにわたくし達を使う、という事を覚えて下さい。わたくし達は全て、ユウト様を優先すべく働いておりますから」

「だから、その、人を使うって表現がなんかイヤなんだけど……」


 そう、それが凄く嫌なんだ、僕。

 僕は子供だから、大人に命令するのは変だと思う。

 僕は勇者だけど、人に命令するのは違うと思う。

 僕はこのお屋敷の主だけど、主だからって人を好きにしていいわけじゃないと思う。


 少し前まではもう少し違ったけど、奴隷の子達が来てから、上下関係みたいなものを意識するように言われてる。


 でも、僕は本当に上でいいのかな?


 聖痕もいっぱいある。

 おかげで魔力強度も凄いことになってる。

 でも、本当にそれだけなんだよ?


 そんなものがあっても、僕の頭が良くなるわけじゃない。


 体はなんか、魔力が馴染んできたってボラさんに言われてから凄く動かしやすくなってきたけど、僕のしたいこと、やりたい事の正しさには、何も関係ないんだよ。


 なのに、僕が勇者で、沢山の聖痕を持ってるからって人の上に立つのは、いい事なんだろうか?


「ユウト君、メノさんはね、ユウト君のことを自慢したいんだよ」

「自慢……?」

「そう、ユウト君はこんなに頑張り屋さんで、みんなの事を大切に出来るいい子なんだって、言いたいの。でもね、貴族って凄くめんどくさいから、今は言える場所が全然ないの。だから、言える場所を増やしたいんだよね。それには、貴族らしさも身につけないといけないの。あの勇者は、こんなことも分からないのかーって、馬鹿にされちゃう。だから、そんな風に言われない様に、みんなにちゃんとユウト君のいいところを見て貰えるように、厳しくしてるのを分かってあげて?」

「……うん……でも、やっぱり、なんか嫌だよ……」

「じゃあ、これから立派な勇者様になって、勇者様の味方になろうって思う人を増やして、ユウト君の思うみんなが笑顔になれる場所を作っていこうよ、実感ないかもだけど、ユウト君にはそれを叶えられるだけの力はあるんだよ?」

「これは、これで怖いんだけどなぁ……」

「そうだねー。だから、悪いことしたら私たちみんなで怒ってあげるから、覚悟するようにっ!」

「うん、お願いします。……後、メノさんも、ごめんなさい」

「……いえ、わたくしも焦りすぎておりましたね。ペリオン様、ありがとうございます」


 そっか……僕がちゃんとしないと、僕の味方になってくれてる人も馬鹿にされちゃうんだ。

 つまり、アグレシオ殿下が前に言ってた事がもっと他でも起きるってことだ。


 僕の味方になったら馬鹿を見る、なんて、言わせない。


 それなら、僕は、そんな事言われても大丈夫なくらい凄くならないといけないんだ。

 だから、メノさんも、厳しくしてくれてるんだ。

 あの場に、メノさんもいた。

 全部は聞こえてなかったと思うけど、それでも、僕が泣きながら怒ってたのは見てたはずだ。


 人の上に立ってるからって、あんな風に偉そうになんかならない。


 僕は、えーっと……

 まず、どこから直そうかな。


 僕に出来そうなこと……


「メノさん」

「はい、何でしょうか」

「僕が呼び捨てにしたら、嫌、かな?」

「いえ、むしろそう為さってください」

「みんなも、嫌にならないかな?」

「おそらくは。ですが、アイリス様、ボラ様にはなさらない方がよろしいかと。ボラ様はお話されれば問題ないかと思われますが、アイリス様ですと、他方からお咎めを受けるかもしれません」

「ペリオンさんも、呼び捨てにしても大丈夫?」

「はい、大丈夫ですよ。でも、それだと私は君付けから様付けに変えないといけませんね」

「え!? それはそのままでいーよ、ペリオンさんに様付けされるのはなんかヤダ」

「ふふ、呼び捨てにするんじゃないんですか?」

「ちょ、ちょっとまって、なんか、凄い緊張するっ」


 なんかドキドキしてきた!


 でも、ちゃんとするって、あんな人にはならないって決めたんだから、呼ぶよ、呼び捨てで。


 チラっとメノさんを観たら、なんかすっごい期待してそうな感じでキラキラしてるし、今更、やめたなんて言わないよ。


「……えっと……メノ……」(さん)

「ユウト様、やり直しです」

「えぇっ!?」

「呼吸でわかるのですからね。今、心の中でさんと付けたでしょう」

「うっ」

「ユウト君、頑張れー」


 ぐって拳作って応援してくれてるけど、次はペリオン、さんだからね!?

 よし。


「メノ! これでいい!?」

「は、はい」

「ペリオンも、これから呼び捨てにするからね!」

「はい、よく出来ました!」

「じゃ、じゃあ、僕もう行くから!」


 ぜ、絶対顔真っ赤だ、僕!


 お屋敷の中に駆け込んで脇目も振らずに寝室にダッシュして、ベッドに突撃して、ダンゴムシになった。


 どーしよう。

 テリアさんもリリさんもアデーロさんもオッソさんもいるのに!



まぁ、エニュハの事を知っただけなのと……最後のせーでユウトのキャパを越えたのでまだ先に進みませんがっ!!


人の上に立つとはつまり呼び捨てって事です

( ー`дー´)キリッ


うん、違うね、多分

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