女々赤裸々紀行 (side:テリア)
書き終わって、首を傾げて破棄
のエンドレスリピートで死にそうです
何とか納得行く感じになりましたが、それと読者様の反応は何も比例しないところが悩ましいです。
早くしようと思ったのにお待たせしてすみませんでしたー!m(_ _)m
「ホントに行っちゃった……」
笑顔で。
「テリアは今日はどうするんですか?」
くっ、メノの笑顔が眩しいっ!
「まさか、こんな急にお休み貰えるなんて思ってなかったからなぁ」
「ユウト様とデートだとばかり思ってましたもんね、ご愁傷さまです」
「メーノー! 分かってて言うの止めようよ!」
「勘違い恥ずかしい」
「言わないでっ!」
失敗したなぁ。
ちゃんと、私が着いて行くって言えばよかった。
ユウト様の事だから、お休みにまで付き合わせたら悪いなとかなんとか気を回してくれたんだろうけど、私の乙女心は男性からのお誘いを待ってしまった。
「さぁ、ここに居たら仕事に目が向いてしまいますからさっさと出かけてください」
「一人で」
「いーよ、行けばいーんでしょ!?」
まぁ、お休みなのはとても嬉しいから、行くけど。
オッソさんに挨拶しながら外に出る。
もういないかぁ。
仕方ない、下町の方でお菓子でも食べよう。
とぼとぼと歩きだそうとしたところで私を呼ぶ声に振り返った。残念ながらユウト様のお声ではない。
「あれ? ペリオン様、どうなさったんですか?」
「いや、私も今日お休みなんですよ、なので、良ければご一緒したいなと、如何でしょう?」
「わ、ありがたいです。こちらこそよろしくお願いします」
神は私を見捨ててなかったー!
ペリオン様ありがとう!
ユウト様とじゃないのは残念だけど、一人で行くのも寂しかったし、それじゃあと、私が行くつもりだった喫茶店に二人で向かった。
まだ開店直後で人も少ない喫茶店で、焼き菓子と紅茶をそれぞれ頼んで話をしてみると、ペリオンはあまり裏表がなくて気が楽だ。
腹黒のメノとか、無表情のリュリュとか、そういうのと違って、まぁ気安くていい事。
「じゃあ、ユウト君に誘われるのを待ってる間にアデーロさんにかっさらわれたの?」
「そーなのー。それとなーく、一人はやめましょうって言っておいたのに、護衛も付きますって言っちゃったからさ」
「護衛がいればいーじゃない、みたいな?」
「多分ねー。ユウト様に乙女心は早かったよ」
「残念だったねえ、テリア」
「だから、今日はやけ食いするから付き合って、ペリオン」
「いーですよ」
「あ、敬語無しでしょ?」
「なんか慣れないんだよね、たまに出るのは許して」
「仕方ないなぁ」
それからお昼になるまで、二人でお互いの事を話しまくった。
メノの腹黒伝説とか、ボラ様の鍛錬の鬼畜さとか、わたしの趣味の裁縫の事とか、テリアの趣味の観劇の事とか。
「ちなみに、私からするとここの紅茶はかなりいいんだけど、メイドしてるテリアから見てどうなの?」
「んー、まぁ、普通? 茶葉はそれなりだけど、丁寧に淹れてあるから、紅茶を好きな人が頑張ってるんだろうなって感じ」
「そんな事までわかるの?」
「想像だよー。紅茶はなんか淹れるの好きだし、その経験からするとそーゆー努力が見える味わいなんだよね」
「さすが、って言っておこうかなぁ」
「いやいや、剣とかあれだけ振り回してケロリとしてるペリオンほどじゃないから」
「あれも慣れだし、とゆーか、慣れないとボラ様に何されるかと思うと気合い入るよ」
「あの人が疲れるところが見えない」
「私も見たことないね」
さてと、ちょうどいい時間なんだけど、お昼、入るかなぁ。
いや、やけ食いするんだから食べないって選択肢はないんだけど。
「ペリオン、お昼どーする?」
「あー、そんな時間かぁ……じゃあ、行こうか」
「しょーじき私はそんなにおなか空いてない」
「え?」
「……まさか、ペリオン、普通に食べられるの?」
「身体動かしてるとおなか空くから、食欲は旺盛です」
「それでその体型とか、羨ましい」
「筋肉ついてるから……重いけどね。後、ボラ様の鍛錬で絞られる覚悟があるならテリアも食べられるようになるよ?」
「私、乙女だから」
「どーゆーことかなっ!?」
「後、ただでさえない胸が減りそうでイヤ」
「いやそれ以上減ったらえぐれるから」
無闇に人の心を抉るのは止めて欲しい。
いや、ペリオンが乙女じゃないみたいな言い方したのは私だけども。
とりあえず、ここで一日過ごすのは流石に乙女としてダメだと思うので、店を出ながら、さてどこに行こうかと頭を悩ませる。
「ユウト様、何してるかなぁ」
「露店を見てみたいって言ってたからそっちじゃないかな?」
「そうすると、ご飯は屋台かな?」
「どうかな? アデーロさんが着いてるから変なお店に引っかかったりはしないと思うけど」
ふむー、偶然を装って露店の方に足を運んでみようか。
一人ならともかくペリオンもいれば誤魔化せそうな。
「ペリオン、私、ちょっと糸が欲しいの」
「姉妹の店にでも行くの?」
「あそこは高いねー。私的に使う用のが欲しいから、高いのは困るというか、安く探したいの」
「つまり、店舗ではなく、露店がいーなぁみたいな」
「そうともいうね。だから、このまま南門の方に行ってはしたないけど、食べ歩きとかどうかな?」
「……良いけど……テリア知ってる? 糸とかそういうのって、東門よりに多いんだよね」
「えーっと、だから掘り出し物探すなら小西門よりを探すのがいいと思うんだけど、どうかな!?」
それくらいは知ってるよ?
でも、それだとユウト様と合流出来ないよねー。
うん。
分かってる。分かってるから。
だからその言いたい事があるならハッキリ言えば?
みたいな目をしないで欲しい。
「私は別にどっちでもいいんだけど、なんでバレバレなのに隠そうとするのかな」
「うぐっ……! いや、ほら、ね? どうしても会いたいみたいなのとは違うし、偶然を求めて、ね?」
「そんな作為的な偶然がありますか」
「ついでだから! ユウト様探すのがメインじゃないから!」
「誰もユウト君だなんて言ってないですけど?」
「乙女心は複雑なの! ペリオンは乙女じゃないから分かんないんだよ!」
「乙女ですよ!?」
「乙女は腹筋割れてないから」
「そこは騎士だから仕方なくない!?」
ぶーぶー文句言ってるペリオンをお供に外門に向かって食べ歩きをする。
兎肉の串、ハーブティーを買って道の脇で雑な食事をしながら露店と食堂をそれとなく見てみる。
ペリオンは私の倍くらい食べてるけど、まだ余裕ありそうでこの後も頼もしい感じ。
「いませんねぇ」
「いないねぇ」
「ユウト君は背が低めだからまだ見落としもありそうだけど、アデーロさんは色んな意味で目立つから、ここにはいないと見ていいと思う」
「だよねー」
ユウト様はどこかに埋もれたら見つからないかもだけど、あの顔だけはいい男がこの露店で埋もれるとは思えない。
近くにいれば女がほっとかないから、声をかけないにしても騒がしくなるハズだからここらへんにはいないんだろう。
まぁ、元々露店にいるかもっていうのはペリオンの予想だから、確実にいるって訳でもない。
他のところに行ってる可能性もあるし、これから来るかもしれない。
「とりあえず、ここから全部見える訳でもないし、ひと通り回るってことでいい?」
「私は別に。あ、おじさん、焼きパン二つ!」
「あいよ。穴二枚ね」
まだ食うか!
これが騎士なのかと戦慄しながら見てると、あげないよ? みたいな顔されたけど、食べないから。
それ以外は何事もなく小西門まで抜けて来たけどやっぱりユウト様は見当たらないし、糸も布もなんか品揃えはパッとしない。
いやまぁ分かってた事だ。
そういう露店は反対側に集まってるんだから無いのは当然とも言える。
仕方なく引き返して馴染みのある露店に顔を出していくつか糸を買った。
「買うには買うんだ?」
「そりゃ、建て前ってだけじゃないし」
「繕いくらいしかしないからなぁ。私もそういうの覚えた方がいいかなぁ」
「最低限が出来るならいいんじゃない? 私のは趣味だから」
「それはまぁ、そうなんだけど……私って剣とか振り回してるからそういうの弱くてさぁ。料理とかも適当だし、ドレスとかもないわけじゃないけどお化粧もそんな上手くないし」
あ、これは、やっちゃったかも?
乙女じゃないとか言ったの気にしてたかな。
「別にね? 男共にチヤホヤされたーいみたいな願望は全くないんだけど、そういう対象に見られないのもなんか女としてダメだと思わない?」
と、少し困った様に言われてペリオンを見てみる。
まぁ、今はオシャレなんかは特にしてない普通の町娘な格好。
今日は普段ひとまとめにしてある栗色の髪を肩まで下ろしていて、これも普通の町娘な格好。
背丈は騎士としては少し低めで華奢だけど、女としては少し高めで所作は明らかに武の嗜みが伺える。
顔は、んー、好みはそれぞれだけど悪くないよね。
なんか困ってそうなそれとなく手助けしたくなる顔。
騎士が手助けされそうな顔でも困りそうだけど。
騎士としては頼りがいがなさそうだけど、女としては庇護欲をくすぐられる感じで好かれそうなんだけど。
多分、ペリオンもそういうのは分かってて、そういう見方してくる男はお呼びじゃないんだろうね。
いやでも、それなら女としては見られてるわけで、さっきの主張と合わないんだけどなぁ。
「うぅん……? 私からすると別にモテない事も無いと思うんだけど、そんなにモテないの?」
「なんかね……女というか、親戚の年下の女の子扱いみたいな?」
あー……
それかー。
可愛がられるだけなんだ。ペリオン自体はしっかりしてるだけに不憫だ。
「じゃあやっぱりユウト様とか頼られていいんじゃない?」
「あれはあれで、お姉さん扱いというか、私を女としては見てないですし」
「そうは言っても、ユウト様も男の子だから、おっぱい見られたりはしてるでしょ?」
「そーなんだけど、それで満足するのは違くない?」
「近くにいるのは私達メイドだけど、私達は最初じゃなくても全然大丈夫だから」
「ナニソレ、どーゆー事?」
「いや、ペリオンがユウト様の初めてでもいーよって。これはメイドの総意」
「いやでも、ユウト君10歳だよ?」
「私達はいつでも構わないんだけどねー。それに貴族様だとそーゆーのは普通にあるし、ユウト様は勇者様だから、むしろ早く色を覚えて欲しいくらいだよ」
「それで私?」
「アイリス様とかも年の差あるけど多分満更でもないよ。いっそお膳立てしてもいい」
「アイリス様はそんな軽率な事しないでしょ」
「だから困ってるの。ペリオン助けて」
早く誰でもいいから……いや、誰でもは良くないけど、ユウト様の傍に立ってくれる人がやってくれないものか。
側室なんて贅沢言わないから、愛人枠に入りたいよ。
ユウト様の子供とか授かれたら、可愛いんだろうなぁ。
「助けてって、今助けて欲しいのは私なんだけど」
「ユウト様じゃ嫌?」
「そんなことはないけど、そこまでは考えてないよ」
「じゃあ考えておいてね!」
「私は騎士で護衛なの! 対象をそーゆー目で見たりしませんから」
「ユウト様からお誘いあっても断るの?」
「断るに決まってるでしょ! 後、そもそもユウト君はそーゆー事しないでしょ」
「そこも問題だよ……ユウト様、なんかそこらへん奥手なんだよねー」
「でも、次から次に手を出すユウト君とか、それはもうユウト君じゃないと思う」
「確かに!」
毎日誰かしらとお風呂に入ってるのに未だに偶然を装って触ってきたりもしないし、ちょっと心配になる。
いや、私のが触る価値ないとかじゃない、はず。
メノのも触ってないみたいだし。つまり大きさじゃない。
見蕩れてくれたりはたまにあるから気にならないわけじゃないと思うんだけど、悩ましい所だ。
というか、私達がそれとなく誘惑してるから、いつか間違いが起きてしまうかとかもある。我慢、大事。
順序として、私達から迫るのはダメなのだ。
それをしたら私達が排除されるだろう。
なんでバレるのかは、考えたらダメ!
だから誘惑にならない範囲で頑張るのが私達。
「ところでテリア」
「なーに?」
「ちなみに、ユウト君の好きなタイプってどんななの?」
「……え?」
ユウト様の、好きな、タイプ……?
「え……そういう話とかもしてないの?」
「……ユウト様の好きなタイプ?」
「ユウト君にだって理想の女の子みたいなのはあるんじゃない?」
「……考えた事もなかった……」
「なんでそんな……好きなら、合わせてあげたいみたいに思わないの? 趣味を理解したいとかでもいいけど」
「ユウト様の趣味……ってなんだと思う?」
「私に聞かれても……あ、でも、料理は好きなんでしょう?」
「それは知ってる」
「他には?」
他!?
だって、ユウト様、あんまりそういうの話さないし。
生い立ちがあんなだから、聞けないところもあったけど、そっか。
だから、私達、ユウト様との距離が近くならないのかも。
もしかしたら、そういうのを敏感に感じてて、とか?
「あ、でも、私達の事好きだって言ってた」
「達って、友達感覚の好きじゃない?」
「は、離れるの嫌って!」
「知ってる人ほとんどいないんだからそりゃ嫌でしょう」
「うぅ……そーだけど……ユウト様は、おべっかしないもん」
「でも、ユウト君、感情読むの凄く上手だから」
「おべっかじゃないけど、お返ししてくれてる、みたいな?」
「そう。テリア達が好意みせてくれてるから、感謝してます、ありがとう、的な」
「あーりーそー!」
そうだよ!
ユウト様、最初に会った時以外に甘えてくれた事ないよ!
たまにおねむで隙をみせてくれる事もあるけど、それは私達が無理させたからだし、そう考えると、私達が色々してるのも、ユウト様に許されてるだけな気もしてきた。
髪結いだって、私の我儘に応えてくれただけだし。
そうか、私達、メノの力でユウト様の事勝手に知っちゃったから、聞かなくても分かってる部分が多いけど……
それはズルい事だって、分かってたのに!
ユウト様が折に触れて私達の事知りたがってたのに、忙しいって後回しにしてたのは、どう考えても悪い。
一方的に暴いておいて分かってるからと勝手に話を終わらせた。
時間が取れないからと、逆をさせずに、私達が大人で、ユウト様が子供だと、壁を立てたのは、拒絶と何が違うのだろう。
メノが、ユウト様の事をもっと深く見れなかったのも当然だ。
ユウト様を軽んじてるのに、それに気付かれないわけがない。
そして、私達が、無自覚に、無思慮に、そうしている事を
ユウト様がお許しになっているから、だ。
犬が尻尾を振っていて、犬が嫌いじゃなければ頭を撫でる事に忌避感は持たないだろう。
たとえ、犬が、無遠慮に歩き回ってても。
これじゃ、誘われなくて当然だ。
どっちが大人か分かったもんじゃないね。
やけ食いなんて、なんて、子供なんだろう。
「ペリオン、私は子供、だねぇ」
「何、急に。おっぱいの事?」
「そっちも足りてないけど違うよ!」
「じゃあ、ユウト君が大人なだけでしょ」
「そうだけどー」
もういーや、ユウト様もお休みなんだし、早めに帰って、帰ってきたユウト様とお茶しよう。
お休み組で、ちゃんと向き合おう。
私の事も、些細な事も、もっと、私達には時間が必要なんだ。
挨拶攻勢も一先ず落ち着いたし、大丈夫。
ユウト様にもっと寄り添おう。
とゆーわけで、お出かけはテリア視点に移行しました。
次回はまたお屋敷に戻ってユウト視点でお出かけリザルトの予定です。
では!