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オレンジは酸っぱいか甘いか

ユウトのお出かけです


よろしくお願いします(^^)

 

「では、ユウト様、いってらっしゃいませ」

「いってきます」

「アデーロさん、ユウト様を頼みますよ」

「お任せ下さい」


 と、いうことで、初の外出だね。

 なんかスキップしちゃいそうだから気をつけないと。


 今日も今日とて門のところで立っているオッソさんにも手を振って歩きで外に出る。


「さて、とりあえず出ましたけど、どちらに行かれますか?」

「んー、なんか露店とか、僕のいたとこだとお祭りでくらいしか見たことないから、どんな感じかなって」

「ふむ、では、とりあえず小西門に行きますか」

「小西門?」

「上流階級の方々が使うところと庶民の使うところが分けられているのですよ。城よりの通りの方にある門が大西門になります」


 あちらですね、と、アデーロさんに持ち上げられて門の方を見ると、この通りのちょっと右になんか明らかに豪華そうな門が見えた。チラッとだけど。


「ありがとー、でも降ろして!」

「ははは、すみません、ここからなら丁度見えるかと思いまして」

「見えたけど、ほら、アデーロさんが変なことするから笑われてるじゃん、もう!」


 近くの門に立ってる人がなんか生暖かい視線をしてるじゃんか。

 挨拶言ったから僕のことも聞いてると思うし、恥ずかしいっ!


 まぁまぁと笑ってるアデーロさんが、門の人に手を挙げると、向こうも手を挙げてくれて、それで何も無かったみたいになった。

 忘れてくれたわけじゃないのがキツい。


「うわー、獣人とかは、結構いるんだね」

「そうですね、って城でも見たことあるでしょう?」

「いや、お城はほら、なんか凄い人が集まってる感じだし、騎士とか戦士とかみたいな人って、獣人強そうだから」

「確かに騎士はともかく戦士には多いですね」

「? なんで騎士はともかくなの?」

「あー、その、獣人は肉体的に恵まれてる事が多いのですが、その代わりに頭が少々弱いものが多いのですよ。それで、騎士は緩いとはいえ作法など必要ですからね、仕方ないところです」


 獣人さんは、アレなんだ。


「でも、コーリーもエニュハもそんな感じしないよね?」

「コーリーは狐人ですからね。例外的に……というと方々に失礼ですが、頭の良い獣人なんですよ。王国軍の参謀役にも一人だけ狐人がいます。後、エニュハは、どうでしょうね、まだ子供ですから伸び代はあると思いますからユウト殿の采配次第かもしれませんよ?」

「変なプレッシャーかけるの止めてよー。とゆーか、僕、全然一緒に居れてないし、避けられたりしてないよね?」

「それは無いでしょう」

「ほんと?」

「感謝されこそすれ、嫌われたりなど、エランシアの常識からみてほぼ有り得ません」


 そうなんだ。

 でも、なーんかエニュハには避けられてる気がするんだよね。

 何もした覚えないんだけど、何かしたかな。


 とか考えながらも、ほぼ初めてのお出かけだから視線があっちこっちに向いて、ちょくちょくアデーロさんに腕を引っ張られたりした。


 看板とかは、文字を読める人がそこまでいないからイラストになってたりしたのは、僕としても分かりやすくていい。

 店名に因んだものが描かれてるけど、例えば宿屋だと、ベッドの絵がないとダメとか、食堂にはフォークがないとダメとか、色々あるみたい。


「あれは、何のお店だと思いますか?」

「あれって、木が描いてあるやつ?」

「はい」


 木が左側全体から上の方にドーンと描かれてて、右下のとこに輪っかが二つ横に繋がった感じの上に乗せるみたいに横線が引かれてる。

 この輪っかの方がお店の種類だと思うんだけど、なんだろう?

 お店自体は凄くこじんまりとしてて、人が入るお店じゃないと思うんだけど……。


 むむ……

 お店に寄った人が、ちょっと話したかと思ったらお金渡してなんか小さいのを受け取ってすぐに離れた。


「えー……ここで商売してるわけじゃないよね、多分」

「そうですね、ここは何かを売る場所ではありませんね」

「ヒント、ヒントちょーだい!」

「んー、あそこで客が受け取ってるのは整理券です」


 整理券、何の……?

 あれ、次のお客さんはさっきの人とは逆の方に歩いていった?


「客の格好もよく見た方がいいかもしれませんね」


 格好……なんか、重装備というか……あ。


「どっか街の外に行く人なんだ。じゃあ、馬車?」

「はい、あれは街の間を行き来する乗り合い馬車の整理券を売っています」


 あぁ、あの輪っかは車輪で、上の板が馬車の乗るとこか。

 わかってみれば簡単だった、悔しい。


 そうこうしてると門の近くてまで着いてて、アデーロさんに少し引っ張られて門の脇辺りを見ると、たくさんの露店があった。


「ぉぉー! これはいつもこんな感じ? 今日は多い方?」

「いつも通りですね」


 ふあー! 凄いなぁ……

 野菜とか果物とか、そういうのが多いのかな。

 運んできた荷車みたいなのをそのまま売り場にしてるみたいな人が多いね。

 僕が出るのが遅かったからか、商品自体はもう少ないみたいだけど、アデーロさんに連れられて少し奥に入ると、お肉とかも売られてたり、鳥とか、生きたそのままで売ってたりするし、ちょっとした雑貨みたいなのを売ってる人もいるんだ。


「せっかくここまで来ましたし、食べ歩き出来る果物でも買ってみたらどうですか?」

「何かオススメはある? あんまり味の濃いのじゃないやつ」

「んー、そうですね……では、あちらのオレンジなんかはどうですか? 水気もありますし、程よい酸味がウリです」

「ちなみに、いくらくらい?」

「交渉次第って感じですね、まぁ物は試しです、ぼったくられてもたかが知れてますし、初めての買い物としては上等じゃないですかね」


 そういってニヤリと笑ったアデーロさんに押されて、オレンジを売ってるおじさんのとこに行く。


「らっしゃい! 何を買ってくれるんだ、坊主」

「えーっと、そこのオレンジが二つ欲しいんだけど、いくら?」

「おぅ、穴銭はあるか?」

「えと……この穴のある銅貨だよね?」


 穴銭とかゆー言い方もあるんだ。

 分かりやすいからいいけど、混乱しないようにしないと。


「1枚で買える?」

「おぅ、いーぞ。なんだ、坊主、その歳で買い物慣れしてねえみたいだな? 露店は初めてか?」

「あはは、やっぱり分かっちゃうよね、うん、だからお手柔らかにして欲しいんだけど」

「よっしゃ、そんじゃ、初めての買いもんな坊主にゃ1個おまけしてやろう。ほれ、持てるか?」

「わ、わわ……ありがとー!」


 銅貨をひょいっとつまみ上げるとあっという間に3つ持たされてニカリと笑ったおじさんに僕も笑ってからアデーロさんのとこに戻った。

 なんか、初めて買い物に来たのが他のお店の人にも分かったのか、微笑ましそうに見られてちょっと恥ずかしい。


「買えたー!」

「見てましたよ。どうでしたか? 初めて買い物した感じは」

「正直に初めてだって言ったらオマケしてくれたよ」

「そうみたいですねー」


 え……なんで、アデーロさん苦笑してるの?

 まさか、僕、ぼったくられた!?


「まぁ、食べてみたら分かりますよ、みなさん非常に協力的で何よりってとこですね」

「???」


 協力的って事は、手加減してくれたって事じゃないの?

 邪魔にならないようにちょっと端に寄って、オレンジの皮を剥いて口にひょいっと入れた。


「〜〜〜〜っ!! すっぱ!!」

「あっはは、やっぱりそんなもんでしょうね」

「えぇ〜!? アデーロさん、分かってたの!?」


 おじさんの方を見たらそりゃーもう豪快に笑ってるし!

 近くの店番してる人はおろかお客さんまで笑ってるし!


「もう……なんで? お手柔らかにって言ったのに……」

「じゃあ、何が悪かったのかを教えてあげましょう」

「むー、オネガイシマス」


 アデーロさんが言うことには、初心者がよくやりがちなミスとして、店主の掴んだものは不味い可能性が高い、とのこと。

 買う時は、一々触れない様なもの以外はちゃんと自分で選ぶのが常識。


 お触り厳禁な時は、ぼったくりの可能性が高まるから要注意なんだって。


 で、僕が初心者って言った上に保護者がいるのは見てたから、お勉強させてくれって意味だと思ってちゃんと洗礼してくれた。

 って事みたい。

 全部、裏目じゃん。

 もー!


「ちなみに、数はおまけされてますね。まぁ、売り物としては客に掴ませるためのものですから、いくら持っていかれても痛くも痒くもないですが」

「じゃあ、ダメじゃんー!」

「そういうものなんですよ、嫌なら目利きを鍛えましょうって事です。でも、あまりしつこいのもそれはそれで嫌われますから、適度に自分の懐が痛くないラインを見極めましょうね」

「むぅー」

「あ、礼儀としてコレはちゃんと食べて下さいね。僕も一つ食べますから」

「えー!?」

「買った食べ物を粗末にすると、今ならもれなくここらへんに顔が売れますよ」


 ははっと笑ったアデーロさんに言われてサッと周りを見てみれば、あっちこっちから視線を感じる!


 教訓、初めての買い物の味はすっごく酸っぱい!


「僕は一つでいいので、オマケ分はどうぞ」

「くぅ……! アデーロさんも一緒に食べよ?」

「それは、ユウト殿の初めての買い物のオマケですから、ユウト殿専用と言っても過言ではありませんよ」


 イイ笑顔しちゃってもう!

 お勉強はさせてもらいました。もう充分だよ。


「僕、身体ちっちゃいし、おなかいっぱいだからアデーロさんに食べて欲しいなー」

「はぁ……仕方ないですね、では」


 渋々といった感じで最後の一個に手をつけたアデーロさん。

 ひょいひょい食べてるけど、酸っぱいの大丈夫なのかな?


「アデーロさん、酸っぱいの平気なの?」

「普通ですかね、このオレンジは甘いですし」

「……え!? なんで!?」

「そりゃ、買ったものが全部酸っぱかったら、もう二度と買ってくれないでしょう? 当たりもちゃんと混ぜないとお店の信用問題になってしまいますからね、当然ですよ」

「1個ちょーだい!」

「はいはい」


 苦笑しながら口を開けた僕の方にひょいっと投げ入れてくれた。

 それでおしまいみたい。


「ほんとだ、あまーい!」


 おじさんは、全部綺麗にハマった僕を見てヒィヒィ言いながら笑ってた。

 さっきはあんなに視線を感じたのに、今度はみんな視線逸らしてるし!

 みんな笑ってるんだー!


「もう! みんな酷いよー!」

「坊主が今後騙されんように全力で協力してやったんだぞ! ワハハハハッ!」


 あーもう!

 そんな事言われたら怒れないじゃんかー。


「露店は僕には早かったかなぁ……」

「何事も経験ですよ。普通に店舗を構えている商店の方がその点は間違いがありませんが、その分割高になります。ハズレを掴むのが嫌ならそういった場所で買い物をしましょう、という事です」

「でも、こっちのが安いって言われるとなんかお店で買うのも負けた気分だなぁ」

「そういうものです。それに店舗で買ってもハズレを掴まされる事もあります。どっちがよりマシか、という話ですね。慣れるまでは何度も痛い目を見るものです」


 エランシア怖い。


「あまりに目に余れば憲兵に突き出されたりもしますから、向こうもそこまで悪どい事はしませんよ。まぁ、先程ので挨拶は終わりましたから、僕という保護者付きでそうそう酷い事にはなりませんし、もう少し見ていきましょう」


 それなら、と、さっきよりも心持ちアデーロさんの近くから離れないようにしながら露店を見ていくと、さっきまでと違って、色んなところから、僕に声が掛かる。


「よう、坊ちゃん、オレンジの口直しにリンゴのジュースなんてどうだい?」

「甘いもんの後は、サッパリしたいだろう? 手も汚れにくいし、キュウリ買ってかんか?」

「少年くらいの歳ならそろそろ女に何かプレゼントもしたくなるだろ? お手頃な値段でこの綺麗な細工もんをどうだい?」


 それをとりあえず冷やかしながら露店の集まってるところを抜けて、反対側に抜けるとひと息つく。


「なんか急にいっぱい声掛けられちゃったね、やっぱり僕が慣れてないからカモにしたいの……?」

「違いますよ」

「ホントに?」

「えぇ。……少し薬が効きすぎましたかね」


 苦笑しながら、アデーロさんが言うには、保護者付きの僕は、普通に良いお客さんなんだけど、下手に声掛けするとどう対応されるか分からないからみんな慎重になってたんだそう。

 そこに、お勉強をしに来てるのが分かって、これなら大丈夫とみんな判断した。

 良い服を着てる僕はお金もあるだろうから、面倒くさい値切りもなさそうで、つまり上客なのだから、気を引きたくて声をかける。


「じゃあ、えっと、僕は歓迎されてるだけ?」

「そういうことです。なので、もう少し何か買ってあげても良いと思いますよ。勿論、必要ないものまで買う必要はありませんが」


 そっか、それなら、せっかくだからみんなのお土産に何か買っていきたいな。

 まだ穴銭しか使ってないから、えーっと50円くらいって事?

 銅貨は使うとして、お土産の事も考えたら銀貨は使っていいのかな?

 まとめて買ったら水晶銀貨が必要になったりするかな。

 って、あっさり金貨の一歩手前まで使おうとしてるし。


「ねえ、みんなのお土産とか、後で買いたいんだけど、銀貨で足りる? 水晶銀貨とかもあるけど、使っちゃっていいのかな? 使いすぎにならない?」

「何も問題ないですよ。言い方は悪いですが、しょせんは露店ですから、そこまで高価なものはないので、好きに使って構いません」

「わかった」



とゆーところで一旦切ります。


可愛がられましたねっ!

ではまた次回更新で!

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