届きそうで届かない手
更新まったりでしたが、少しずつ上げていきたいですね(希望)
では、よろしくお願いします(^^)
なんでこんなに面会があるんだろうね。
リビングのソファにぐでんとだらしなく座りながら思う。
このお屋敷を快く提供してくれた商会長のプジョリさんは、分かるよ。
お世話になってるんだし。
ご近所さんになった他の人もいーよ。
ご挨拶くらいしないとね。
貴族の人はどこから聞いてくるんだろう?
覚えられないよ。
後、何故か教会からは凄く熱心に更なるお引越しを勧められたけど、ヤダよ。
ダスランさんとか、プジョリさんとか、色んな人が頑張ってくれたのに、すぐに他に行くとか。
お引越し先をありがとう、じゃあ、僕他に行くからじゃあね!
なんて出来ないよ。
ピエレといい、なんか、教会の人は変な人が多いのかな。
気持ち悪いくらい興奮されても、引くよ。
「お疲れ様でした」
「……ぅん」
テリアさんが淹れてくれたお茶を飲んでほっと息をつく。
今日は午前中だけだから、後はボラさんに体動かすのに付き合ってもらおう。
「とりあえずですけど、今日で最後ですから、明日からはしばらくゆっくり出来ますよー」
「明日急にとか、ヤダよ?」
「それはもう。いくら何でもこちらでお断りしますから」
せっかく、料理人のカノンとエニュハがいて一緒に料理とか楽しみにしてたのに、全然そんなのする時間ないし。
いや、あるにはあるけど、疲れたままでやりたくないみたいな。
結局、試用期間とか言ってた半月なんて忙しいままに過ぎてるし、何を試してたんだろうね、ほんと。
「コーリー達は、大丈夫そう?」
色々と畑にしたりなんかの花を植えたりしてたのは知ってるけど、他は全然知らないんだよね。
「そーですねー、ユウト様のいないところで少し話をさせて貰いましたけど、問題ないんじゃないかと思いますよ」
「じゃあ、これからは無礼講な感じでいーよね?」
「後少しですから我慢してくださいね」
「……? もう半月経ったよね?」
「? いえ、二週間までは後……七日、ですね」
ん……?
二週間まで後七日……って、変な表現、だよね。
「今日で15日ですから……って、もしかして、暦の数え方が違うってことですか?」
「教えてー」
まただよ、もう……
色々違うって分かってるけど、こういうので確認してかないとめんどくさいから、必要な時に説明してもらう様にしてるんだけど、ちょっとした違いが多いから困る。
「えーと、まず、一週間ですが、11日です。それで三週間で一ヶ月ですね。それで、十ヶ月と創世週を挟んで一年になります。ここまでで何か分からないところがありますか?」
一週間が11日なんだ。
全然違うじゃない。
「ぜんぜんわかんない」
「えぇと、新たな年になる年替わりが創世週になります。基本的にどこでもお祭りですね。この創世週が、名もなき主神の月とも言えますね。そこから、他の10柱の神の月が順繰りになって一年になりますね。なので、一年は341日になりますね」
分かりましたか?
と、言われて、とりあえず、頷いたけど、慣れるまでは大変そうだなぁ。
「えっとじゃあ、例えば、今日は何の日になるの?」
「今日は、レ月の上木の日、ですね。木の日だけでも基本的に問題ありませんけど。神官様はもっと正確に言う場合もありまして、その場合だと、レメトの月、新週、淘汰の日、になりますね」
「正確な方は覚えられる気がしない……」
「そちらは覚えなくて構いませんよー、普段使いしませんし、神官様でもなければ必要もありませんから」
テリアさんがスラスラと言ったから、覚えないといけないのかと思ってたら大丈夫らしくてほっとした。
覚えること他にもいっぱいあるのに、そんなキッチリ覚えてらんないよ。
「一応、休日扱いの主神の日さえ覚えておけば、木の日などはその内勝手に覚えますから、これから毎日何の日かお伝えするようにしますね」
「休日なんて、僕にはあった覚えがないんだけど」
「この前、オルトレート卿が来られた日ですね」
三日前は確かに、外に出てないね。
ダスランさんが来るって言うから、家にいて、おしゃべりしてお昼も一緒にしてたね。
そっか、いつも外に行ってたけど、あの日だけ外に出てなかったのは休日だったからなんだ。
ダスランさんが来るから家にいたんじゃなくて、休日にダスランさんが遊びに来るから家にいたんだね。
その割に、午後にはアイリスさんも来て勉強してた気もするんだけど……
休日ってなんだっけ?
なんか、休日とか全然考える暇なかったけど、あったと思うとなんか凄い損した気分になるなぁ。
「明日はお休みにしてますから、ゆっくりして下さいね」
「というか、みんなも休みとかなかったんじゃない?」
むしろ、みんなに言われるままにあっちへこっちへって連れていかれたけど、その調整してたのはみんななんだし、僕よりみんなの方が疲れてるんじゃないかな。
「私達はお休みとかないからお気になさらず」
「……前にも言ってた気がするけど、ダメだからね」
「普段から手分けしてこまめにゆったりしてるから大丈夫ですよ?」
「休日は、そーゆーのとはちがうの!」
ボラさん達とか護衛してる四人はローテーションで休み貰ってるのに、テリアさん達メイドが貰ってないのはなんか不公平だし、僕が休むのに休みがない人がいるとか、なんか良くないよ。
「テリアさんも明日はお休みにしてね。それで、メノさんとリリさんもその次の日から順番にお休みにしてね」
「いえ、でも……ん、んん?」
「カノンにやってもらえば大丈夫でしょ? 庭の方はまだ時間かかりそうだからコーリーには無理させちゃうけど、エニュハも料理以外の事もやってくれてるよね」
「分かりましたー。じゃあ、お言葉に甘えさせて頂きますねっ」
休みがあって困った顔になるって、ここだと普通なのかな。
でも、ちゃんとした休みがないと疲れが溜まってるの気付かないんじゃないかな。
リフレッシュって大事だよね。
ほら、休日にするって強引にでも決めたらテリアさんだって笑顔になるんだから、嬉しい事だよね。
「……そーいえば、僕って外に出てもいーの? お屋敷にいないとダメ?」
「大丈夫ですよー。ユウト様はまだ不慣れですから、出来ればどなたかに案内して貰った方が良いと思いますけど」
「あ、うん、そーだね。後……お小遣いみたいなのも、欲しい」
「はい、用意しておきますね」
よし、お小遣いだ。
これで、自動的にお金の事を聞けるね!
それにようやくちゃんと外に出れる!
こっちに引越ししてからずーっと毎日の様に外出はしてたけど、全部馬車移動なんだもん。
馬車にも窓はあるから外を見ようと思えば見れたけど、今日は誰々に会います、とか聞きながらじゃちょっと見れなかったんだ。
聞いたのの半分くらいはすでに頭から抜けてるけどね。
そんなこんなでその後は疲れなんか忘れたみたいに気分良く一日を終えることが出来た。
とか、思ってた時がありました。
「ユウト様、わたくし達の休日について少々お話があります」
厳しい顔したメノさん、リリさん、とそっぽ向いたテリアさん。
「? うん、明日から順番にとってね? 取らないのはダメだから」
「その点については多大な温情に感謝が絶えませんが」
「が……?」
「順番は一考の余地がある」
つまり、どういう事だろう。
誰が先にお休みするか、ちゃんと決めたかったって事?
「そんなに疲れてたならちゃんと教えてよー」
「え……」
「テリアさんが最初にお休みなのがヤなんでしょ? そんなに無理する前に教えてよ、僕だって言ってくんないと分かんないよ?」
僕のためってみんなすぐ我慢するんだから。
そういうのやめて欲しいのに……
「そーやって後出しするくらいなら先に言ってね? 我慢しないでって言ったのに、我慢してたんだから、今回はダメだよ。嫌なら次からちゃんと言ってね」
「わかった、次はちゃんとする」
「うん、お願いね。メノさんも」
「う、分かりました」
こういうところですぐに次を考えて切り替え早いのはリリさんだなぁと思う。
メノさんはみんなのこと見てるからか、どうすれば一番丸く収まるかを考えてくれるからある意味一番忙しかったかもしれない。
「メノさん、ごめんね? 次からは僕もちゃんとメノさんに相談してから決めるから」
「いえ、こちらこそユウト様のご厚情に水を差す形になってしまって申し訳ございません」
「じゃあ、お互い気をつけてこーね」
「はい」
「あ、それで、その……お小遣いはどれくらいなのかと、お金の事も詳しく聞きたいんだけど大丈夫?」
あんまりお金ちょーだい!
って催促するのもアレだけど、明日すぐにお出かけするし、早めに聞いておきたい。
「ちなみに、確認ですが、何か宝飾品や美術品を買われたりしたい訳ではありませんよね?」
「ないよ。ちょっと散歩してみたいな、くらいだから」
「ほら、わたしの言った通りでしょー」
「それでも確認しておかねばいざとなった時に困るかもしれませんから、聞かずに済ますのは違うでしょう?」
「それはそうだけどー」
美術品とか、なんで初外出で買うかもしれないと思ったのかは分かんないけど、出かける時のお財布にいくら入れておけば余裕かとかはお任せになるから、ね。
何やら得意げにしてるテリアさんだけど、テリアさんは、結構抜けてるとこあるから確認した方がいいと思う。
そんなやりとりを横目に、リリさんがテーブルに並べてくれた硬貨をみると、色々な種類があるのが分かる。
「ミスリル貨は必要ないから省く。金貨も一枚あるけど、まず食べ物とかの露店だと嫌がられるから、注意が必要。でも、何かあった時に必要だから持ってて」
「うん、分かった」
「次に銀貨、100枚で金貨になる。でも、銀貨いっぱいは大変だから、水晶銀貨がある。輪銀貨とか、水銀貨とか、呼び方は色々。こっちは10枚で金貨になる。銀貨10枚分」
普通の銀貨の隣には、真ん中に透明な水晶? がはめ込まれた銀貨があって、少し偉い銀貨だそう。
「水晶銀貨も食べ物のとこだと困るかもだから使うなら銀貨の方がいい、覚えておいて? 次が、銅貨、10枚で銀貨になる。それと、こっちが、車輪銅貨。輪銅貨とか、穴銅貨とか、こっちも呼び方は色々ある。10枚で銅貨になる」
こっちは逆に穴のある方が価値が低いんだ。
「銅貨に水晶は勿体ないからこうなってる、みたい。後、これはそんなに使わないけど、この四角っぽいのがそれぞれ、半金貨と半銀貨、価値も金貨と銀貨の半分。角貨とか言われたりもする」
四角い貨幣とか初めて見た。
珍しいから、僕にはこっちの方が価値があるように感じたけど、半分なんだね。
「それと、一応最後にこれが鉄貨、10枚で車輪銅貨になる。鉄貨だと、ちょっとした果物とかが買える。庶民なら銅貨2枚でもあれば、まずおなかいっぱいご飯が食べられる、ユウト様なら1枚あれば多分大丈夫だと思う」
銅貨2枚でおなかいっぱいのご飯……って事は、銅貨1枚で500円くらいの価値になるのかな?
という事は、銀貨が5千円くらいで、水晶銀貨で5万円?
そりゃ、屋台みたいなとこで5万円ぽいっと渡されてもお釣りに困るか。
でもそうすると、金貨は……50万……?
僕らの服が850枚だったから……億超えるの?
え……服に億!?
全部で4億以上だとして、僕の服だけで億超えるんだ、あはは。
これ以上考えるのは止めよう。
いやでも、僕のとこと物価違うかもしれないし、どこかで一泊するとして、銀貨くらいなら、ズレなさそうなんだけど、聞いてみる……?
「……ちなみに、なんだけど……」
「?」
「どこかで、宿屋とかで、一泊したらどのくらい?」
「宿のランクにもよる、けど、安いとこなら銀貨も要らない。でも、凄いところは金貨とかのとこもある。ユウト様がどこかに泊まるなら最低でも水晶銀貨くらいは取るところがいい」
「そっか、うん、ありがと」
「どういたしまして」
服の値段はもう考えない。
「じゃあユウト様、明日はこれ持ってく」
ずいっと押されたお金は、今教えて貰ったのをそのまま。
全種類1枚ずつ。
10歳の僕に100万はないくらいのお金をお小遣いとして渡すリリさんを呆然と見上げると、首を傾げられた。
「?」
「絶対こんなにいらないよね!?」
「足りなくて困ることはある。あっても困らない」
「いやでも、こんなにはいらないよね?」
「ユウト様ー、金貨は持ってて下さい」
「それが一番いらないよね?」
50万のお金とか、怖くて持ち歩けないよ。
「護衛も着くから、大丈夫だと思うけど、何かあった時の保険だから、銀貨程度だと逆に危ないんですよ。金貨があれば、とりあえず大体はそれで満足しますから、ね?」
そうは言うけど、ちょっとお出かけするくらいでこんなに貰ってたらダメだと思うんだけど……。
「もし、金貨を持たれないおつもりなら、お出かけは無しにさせて下さい。何かあってからでは遅いですから」
「ぅ……」
「見せびらかしたりするわけじゃないから大丈夫ですよー」
「金貨持ってると思わせるのも危険」
「ぅー、分かった……」
絶対無くさないようにしよう。
後、水晶銀貨も使わないから、これも金貨と一緒に分けておこう。
「アデーロさんに預けてちゃダメ?」
「アデーロ?」
「明日、アデーロさんに着いてきてもらうから」
「……へ?」
「一人でお出かけは怖いし、わざわざ離れてるとか、護衛のアデーロさんに悪いし一緒に行こうってお願いしたんだ」
「アデーロ、さんに、頼んだの?」
「うん、別に問題ないよね?」
「はい! 問題ありません! アデーロというのが少し腑に落ちませんが、護衛が傍にいても良いならそれで。預けるのも構いません」
「……あれ?」
「ユウト様、明日は楽しんできて」
「うん」
良かった、これで金貨を持ってて落ち着かないってことはなくなったね。
アデーロさんにはちょっと悪いけど、大人だし、金貨持ってても大丈夫だよね。
よーやく、暦の話とか、お金の話とかを出せました!
まぁ、暦は置いといて、お金!
カノンが金貨2枚とか3枚くらいは稼げる!
的な話をしていましたがー
料理人としては何だかんだと応用は出来ずとも、仕事は出来た方なので、高給取りでした。
師事していた方が出るかは不明ですが、要は、普通はそこまで稼げません。
そして、カノンは、それなりに箱入りだったのでそれを知りません(爆)
金銭感覚はユウトの方が近い感じだと思って下さい。
鉄貨で買えるとリリさんが言ってる果物とかのも、商品にならないようなものを投げ売りしているくらいの感覚ですね。
タダはちょっとお互い気まずいから、売買したと形にする為の手付けみたいなものです。
また、一応鉄貨の更に下もあります。
が、これはスラムくらいでしか使い道がない程度の価値になるので、教えていません。
鉄貨でも5円くらいになりますからね(笑)
そんな感じですから鉄貨すらも、大人になるとほぼ使いません。
仕事でもないお手伝いをしているくらいの子供に買い物の勉強させる為に少しの間使われる感じですね。
大人は穴あき銅貨でやり取り出来るように調整していると思って下さい。
1個だと、穴あき銅貨出すには高い!
なら2個なら、3個なら釣り合うか、みたいな感じですね。
種類もそれなりにある硬貨をなるべく増やしたくないのですよ、重いので。
そして、服が億とか意味わかんないお値段なのは、お貴族様の“見栄”がお値段に含まれているからです、それも超多大に。
私が服を作るこの布が安物でいいわけが無い!
と、ブランドに金を積んでいる形です。
なので、例えば商人が同じような服を個人的に作るとしたら費用はとてもお安くなります(笑)
勿論、ブランドを守るためにも、見栄を守るためにも、何処も結構必死ですが……
そこらの水商売も真っ青の原価率です。
お祭り価格ではなく、お貴族価格という事ですね。
なので、流行りが終わると途端にお安くなったりします。
庶民にも手が届くかと言うと違いますが。
以上、ユウトもカノンも知らないお金の話でした。