格差社会の厳しさ (side テリア)
テリア視点ですm(_ _)m
ちょっと推敲足りないかもなので後で修正入れるかもしれません。
入れた場合は、次回更新でお知らせします(^^)
子供扱いと言うのは、子供が嫌がるものの筆頭株なんだとは思うけど、これは私達の我儘だから、悪いのは私達。
ユウト様を勇者としてではなく、一人の優しい男の子にしておきたかった。
いつかは勇者になる。
それでも少しでもそれが遠い先のことであって欲しい。
そんな私達の願いは、ユウト様によって酷くあっさりと踏み越えられた。
私達用の服が胸元キッチリしてるのは、良かった。
別に気にしてないけど、男の子はおっぱい好きだもんね。
だからそういうところでユウト様の気を引くのは感心しない。
でも、せっかくなんだから、スカートの丈はもう少し短く可愛い感じにしても良かったんじゃないかなぁ。
私達も女だし、服にも可愛さがあっていいと思ったんだけどなぁ。
別に美脚で悩殺とか考えてないし。
そんなこんなの駆け引きしてる間に気がつけばユウト様のご意思で、落ち着いた服装に収まっていた。
露骨にしようとするからだよ!
もっと私みたいにこっそり攻めないと!
そういうわけで、私達は、ユウト様に隠れてしていたことを咎められて全部白状する事になった。
いや、全部……かなぁ。
まぁ、大体全部?
「話しようって言ったけど、お風呂に入ろうとは言ってないんだけど……」
なんかユウト様はご不満らしいけど、どうしても時間かかっちゃうから、時間短縮しないとね。
「みんなまとめて入れば早い」
「せっかく広いお風呂がありますし、一人で入るのは少し寂しいではないですか」
今日はみんな一緒なわけで、格差社会がここに!
とはいえ、楽しいよね、こういうの。
みんなでもみくちゃになりながら、のぼせないように短めにお風呂を終えて、お泊まり会に突入だね。
「さて、じゃあどこから話そっか」
「わたくし達の立場からでしょうか?」
「……私はハルペロイ家。ユウト様を虜にする様に言われた」
「虜って……えっと、色仕掛け的な?」
首を傾げてるユウト様は、イマイチ納得がいかなそう。
そりゃそうだ、10歳の子供に色仕掛けとか、普通に考えてちょっとおかしい。
リュリュも、私じゃ無理だって言ったと呟いてるけど、北方の血が流れてるリュリュは、透き通るような肌に銀髪も相まって儚くて幻想的な雰囲気がある。
中身は不器用の塊だけどね、見た目ならそんじょそこらの相手には負けない。
「私達はみんなそこらへんは同じだよ。どうやってーとか、やり方は違うけどね」
「テリアさんも?」
「そそ、私も出しゃばらなくてもいいけど、隙を見つけたら滑り込めって言われてるね。でも、私はどちらかと言うとユウト様の弱みを握って言うこと聞かせる方がメインかな」
「わたくしは、弱みを握って骨抜きにするように初めから言われておりました」
「弱みって……」
困った様に笑うユウト様は、やっぱり分かってないみたい。
「例えば、元の場所に戻してあげるから、とか、いいようにこき使われない様に、とか、もちろん、女に溺れさせるのも」
「そうやって、わたくし達に依存させてしまえば、後は思うままに出来ます」
「エランシアに来た時点でユウト様に逃げ場はない」
「だから、ユウト様がどこに、誰に寄りかかるか、その先を掴んでおきたいんだよ、貴族達はね」
悔しそうな、でも、それだけじゃない、男の子から男に顔付きが変わる。
あぁ、アデーロの言う通りだ。
男の子はいつだって騎士になれる。
女はいつだってお姫様になれる。
私達を守りたいと願うユウト様は、それだけで立派な騎士で、そんな騎士に守られたい私達はどうしようもなくお姫様だ。
守ってあげたいのは私達なのに。
「でも、それでなんでみんなが虐められるの?」
「それは、私達が、たとえ失敗しても痛くない程度に思われているからですね」
「使い捨てって事だよ。私が育てられたモディーナ家は孤児を拾って育ててる家でね、ご当主様は世間では立派なお方だって言われてる。けど、少女愛好の結果なんだけどね」
「ロリコンってこと?」
ろりこんってなんだと思ったら、そういう趣味の人をユウト様のとこではそう呼ぶらしい。
「ロリコンですね。それで何人も手を出してるんですけど、元々が次の日には死んでてもおかしくないような環境にいましたから、感謝してる子も多くて、その中で私みたいなのは珍しいんですよね。で、珍しいって事はそーゆー対象になるんですよ。傍目から見れば抜擢されてる様に見えるのも良くないのかな? ご当主様から離れたがらないクセに目をかけられるのは許せないみたいで、醜い女の嫉妬ですね」
「どこでも……そんなもんなんだね」
「ええ、そうですよー」
ユウト様はこういうのに、酷く達観されている。
それはやはりご自身の経験から、学ばれているって事なのかな。
ユウト様は人がいい。
それなのに、驚くほど冷静に素直に人の悪意を受け入れられる。
善意を信じていないわけじゃないけど、簡単に蹂躙されるものだと分かっているんだよね。
「……私は、仕事が出来ないのに、見た目が珍しいから」
リュリュがもそっと言うけど、間違ってないんだけど、間違ってるというか、訂正するのはなんか口惜しい。
「リリさんは、雪の妖精みたいだからだよ」
「そんな事ない」
「あるよー! 肌も白いし、体つきも華奢だし、銀髪だって綺麗だし、なんか儚い感じの見た目してるよ」
「ぅ……そう、かな……」
「うん。二人もそう思うよね?」
「「エエ、モチロンデス」」
ユウト様の絶賛とか、面白くなーい!
私も褒めてもらいたいなぁ。
チラッとメノを見れば貼り付けた笑顔でニコニコしていた。
さっきまでその長い髪を指先でくるんくるんしてたのに、今はピタリと止まってるのが内心を如実に表してるよね。
「後、リリさんはお仕事出来ないんじゃなくて、失敗しない様に確認しながらやってるから人より時間かかるだけだし。靴紐解けないとか、不器用なのはあるけどね」
「ありがとう……」
なーんか、ユウト様ってば、リュリュに甘い気がする。
別に私達二人がどうこうってことはないんだけど。
そういえばリュリュだけじゃないかな。
ユウト様に頭撫でてもらってるの!
髪結いも結局みんなやって貰ったしなぁ。
さて、後はメノだね。
「わたくしは、樹精の血を引いておりまして、精神操作系の適性があるのです」
「ジュセイ……?」
「はい、分かりやすく申しますと、そうですね……樹の妖精みたいなものだとお考え下さい。その種族特性として、人の心に働きかける魔法がとても得意なのです」
「それは、前に寝る時にかけてくれた魔法みたいな?」
「はい。それと……人の頭の中を覗き見ることも出来ます」
「……僕の事も、見たってこと?」
「……はい、申し訳ございません」
ぺこりと頭を下げたメノをユウト様が難しい顔をして見ている。
勝手に、過去を見られて喜ぶ人はいないし、ユウト様もどういったらいいか分からないんだろう。
「ユウト様、ごめんなさい。私達も見ました」
「……え?」
「メノに見せて貰った」
「ユウト様の事をちゃんと知りたかったの。卑怯な事だって分かってたけど、ユウト様の事を守る為に、必要だって、メノにやらせた──」
「──違います。わたくしが自らの意思でやりました。二人はそれを後押ししただけです。ユウト様を信じていい保証が欲しかったのです。人を信じることが出来なかったわたくしの愚かさ故にユウト様の尊厳を踏みにじりました」
「ふぅん……そっか……」
ユウト様は冷めた目付きで、頭を下げ続けるメノを見てから、私達に悪戯っぽく笑ってから指を口に当ててしーってやると、メノに声をかけた。
「メノさんは、僕の事をそうやって知ったんだ?」
「申し訳、ございません。今日の事がなくともいずれお話して謝罪をさせて頂くつもりでした」
「おかしいよね? それじゃ」
「……はい、黙っているべきではありませんでした。ちゃんとご理解頂けるようにしないといけませんでした」
「違うよね? えっと、メノさんの後ろにいるのは誰なの?」
「アーディン家になります」
「そいつらが悪いんじゃん。メノさんにやりたくもない事やらせたんでしょ?」
「…………え、で、ですが、実行したのは、わたくし、ですし、言われずともしていました。わたくしは人を恐れておりますので、託宣だけでは、ユウト様を信じきれませんでした」
「でも、メノさんに人が怖いって思わせたのは怖がってた人達が悪いし、僕にもそんな力があったら絶対に使っちゃうなぁ」
ぽかんとしたメノの頭を撫でて、慈しむように髪を梳く。
「それに、メノさんの髪の毛が汚れてたって事は、報告、してないんでしょ? それで踏まれたんじゃないの?」
「そ、そうです、が……」
「酷いよね、女の子の頭を踏んづけるなんて」
そういって、ぎゅっと抱きしめられたメノが、押し殺した嗚咽を漏らしながら、ユウト様にしがみついた。
私達も、メノの背中を撫でて、大丈夫だよ、良かったね、っていっていたら、ユウト様から離れたメノが私達を抱き寄せてありがとうございますと、小さく他の誰にも聞こえないように囁いた。
「んー、とりあえず、何となく分かったけど、僕の事は知ってるってことでいいんだよね?」
「少しだけだよ? メノの力も、何でも見れる訳じゃなくて、色々と、使い勝手も悪いから」
「……ぐす、そうですね。まず、相手に接触していないといけませんし、わたくしか相手のどちらかでも心を許していなければほとんど見えません。それに見たいものが見れる訳でもないですし、わたくしは欠陥がありまして、感応性が高過ぎて、周囲にも影響を与えてしまいます。例えば、今ユウト様に何かしらの精神操作をしようとすると、テリアやリュリュにもかかりますね」
つまり尋問などには使えない。
敵に気を許すスパイなどはいないし、敵に気を許さなければいけないメノも普通に考えて無理がある。
発動には接触が必要なのに、発動すれば周囲にも撒き散らされる。
欠陥と言われても仕方ないところだろうね。
「随分と……その、とんがった適性なんだね」
「周囲には自由に扱えると勘違いされていますし、それで避けられておりました」
項垂れて絞り出す様に呟いたメノの頭をユウト様がまたぽんぽんと撫でて笑う。
というか、今夜だけでメノは何回頭を撫でられるつもりなんだろう。
ユウト様に受け入れられて良かったと、素直に思えない私は何だか、酷くみっともない気がしてきた。
「使わない事は出来るんだよね?」
「え、えぇ、それは、はい。一応は魔法ですから」
「うん、分かった。でもそれでおしまいだと納得しないだろうから、メノさんには僕から罰を与えます」
「はい、なんなりと」
「その力を使う事を一人で決めないこと。使う場合は出来る限り僕の許可を取ること。それと、相手にちゃんと説明すること。後はそうだなぁ……この後みんなで寝るけど、僕の隣はダメ」
「た、確かに三人だと一人あぶれますね。分かりました」
なんか最後のが一番効いてそうだけど、これくらいで済んで良かった、よね。
普通に貴族達であれば命を差し出さないと許されない可能性すらあったと思うから。
ユウト様がそんな酷いことしないとは思っていたけど、リュリュと二人でほっとしていると私達にもユウト様から声がかかった。
「テリアさんも、リリさんも、メノさんの共犯だよね?」
「「え」」
「だって黙ってたじゃん。それなのにメノさんだけなんか罰があるのっておかしくない?」
こてんと首を傾げながら言われてそうだよね、と一瞬でも思ったら、その鋭い感覚で納得をしたと思ったユウト様がにこりと笑った。
そして、ユウト様に頭を撫でられながらユウト様に見えない角度でニヤリと笑ったメノはやっぱり悪魔だと思った。
「テリアさんは、僕を着替えさせるのダメね? 期間は今日作ったのの試着が終わるまで」
「そんな!?」
「後、リリさんは、お茶をみんなと同じくらいに淹れられる様に特訓ね。他はともかく僕、お茶が好きになったから。それまでご飯の時の隣はダメ」
「……分かった。頑張る」
「で、僕が気づいてないと思ってガッツポーズしそうなメノさんが一番ゆるいのは二人が不満だろうから、二人が終わるまでメノさんはお風呂もダメ」
「……かしこまりました」
ユウト様は、感情とかを読むのが上手すぎませんかね!?
メノに余分な罰が下ったのはなんかやった! って感じなんだけど、的確に私達が嫌がりそうなところを突いてくる辺りもなんかヤラシイ。
いやまぁ、罰を受けるのは私達なんだし、殴られたりしてるわけじゃないから、甘い罰なんだけど、優しい罰の中で何とも悔い改めさせられる感じだ。
「それと、みんなには罰があるのに、それをさせた人達がふんぞり返ってるのはなんか変だと思わない?」
唐突に、裁きの時間が終わったと思っていた私達に火種が落とされた。
「僕はね? 今も前も力はないけど、今は力を付けてもいいし、それを期待してもらってるし、僕もそうしたいと思ってる。それに僕には神様がいっぱい目をかけてくれてて、つまり、僕には強い味方がいるってことだよね。なら、これから僕は嫌なことは嫌だって言えるようになりたいし、それが出来るだけの力が欲しい」
この火種は、私達が勝手に持ち込んだもので、返却は出来ないし、返却を求められてもいない。
そして、自身の欲ではなく、周囲の誰かの為に、自らに降りかかる火の粉を祓う為に、それが出来るだけの力が欲しいと希うこのお方は、やはり勇者に他ならない。
「だから、みんなにそうさせた後ろにいる人達にも、いつかちゃんと罰を受けてもらうから。僕が大好きなみんなに約束する。それが僕が勇者になるって事だと思うから」
ユウト様の往く先に幸あらん事を願う私達は、それをただお支えして行けばいい。
ユウト様は気づいてないだろうか。
おそらく背中の聖痕から光が漏れていることに。
あれはきっと、神達の歓喜だ。
楽しそうに揺らめく光の舞が淡くユウト様を包む様に広がる。
「ユウト様の決意は私達は元より神様も祝福されてますよ」
「そうかな、そうだといいね」
「そうに決まってる」
「ええ、わたくしもそう思います」
なにせ、光ってる。
「……そろそろ寝ませんか? ユウト様の睡眠時間を取り上げてまで今夜中に終わらせないといけないわけではないですし」
「だねぇ」
「灯り、消す」
「わ、ちょっと待って!」
大丈夫です、問題ありません、と三人で押し切って灯りを落として、ユウト様の広いベッドにみんなで寝転ぶ。
「まだ興奮してるからすぐに寝れないよ……」
「大丈夫ですよー、人肌でぬくまってたらすぐに眠くなります」
「そこまで子供じゃないんだけど……」
「大人でも寝る」
リュリュと二人でユウト様を挟み込んでぬくぬくと幸せな夢の中へゆっくりと沈んでいく。
「…………あの、そこまでそちらでくっつかれると流石のわたくしも寂しいどころではないのですけど」
私の後ろでメノがそれは物悲しそうにポツリと呟いてるけど、今夜の添い寝は許されてないから、仕方ないよね。
うん、ざまぁとまでは思ってないから諦めて大人しく寝るんだ。
「ふぁ……ぁー、ほんとにすぐねむくなってきたぁ」
もぞりとユウト様が動いて、何故かリュリュの方に身体を向けてうつらうつらとしている。
なんでそっちに……。
私の方でもいいんじゃないかなっ?!
半々の確率だけど、私の負けなのかー!
「ん……リリさん、もちょっとくっついていい……?」
「ん」
リュリュがいいよって、ユウト様の背中を抱き寄せて、嬉しそうにした後、ズルい! と目で訴える私に、ユウト様の選んだことだから、おっぱい育ててから出直しな! と目で切り捨てた。
地獄に堕ちてしまえ! と私。
ここは天国。とリュリュ。
「あとー、メノさんはぼくのみてないところでなにかおきててもみてないからわかんないから、ね……おやすみなさい」
「「………………」」
「……では、失礼しますね」
寄ってきたメノが、なにか柔らかいもので私をグイグイと押してくる。
みてないからわかんないけど!
「メノ、ちょ、押しすぎ」
「あら、こうしたら、テリアも幸せでしょう?」
「幸せと、嫉妬が同時なんだけど」
「みてないのにわかるんですか?」
「わかんないね、わかりたくないね」
もういいや、ユウト様を後ろから抱っこして寝る。
背中は知らないし。
おやすみなさい───
時間が欲しいよぅ!
手が足りない!
なるはやとはなんぞやー!
次回はなるべく、はやく、したい、です、やすにしせんせぇ……っ!