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引越し道中

ようやく異世界らしくなってきましたよ!


それではよろしくお願いしますm(_ _)m

 

「まぁ、なんだ、ちょくちょく王城に来る用事もあるだろう。それにそうしないと五月蝿そうだしな、隙を見て来てやってくれ」

「うん、わかった。ありがとう、ダスランさん」

「よせよ、俺は何にもしてねえさ。俺がやったのは、そうだな、お前の尊厳を守ったくらいだな」

「それは忘れてよ! 僕も来るけど、ダスランさんも来てね?」

「あぁ、休みの時にでも邪魔するよ。じゃあな」

「うん、またね」


 そう言って、ダスランさんと手を振って、僕は四日だけ過ごしたお城から出る。


「ユウト様、お手をどうぞ」

「ありがと」


 馬車なんて初めてだよ。

 結構入口って高いんだね。

 メノさんに手を貸して貰って乗り込んで、中の席に座る。


 まだ朝早くだから、ほとんどの人に挨拶出来なかった。

 もちろん、僕にはそんなに知り合いはいないし、僕の事を見知ってる人も多くはないけど、護衛のみんな以外の僕の部屋の周辺を見てくれてた人で、夜中もいてくれただろう人、食堂のマーサさんとティカさん、それに食堂にいたほんの少しの人達だけ。


 お針子の人達にもちゃんと挨拶したかったけど、誰もいなかった。

 テリアさんが昨日してくれたって、言ってくれたけど、こういうのは自分で言うのが一番だと思うから残念だなぁ。


 後、王様達。

 慣れてるんだろうね。王様の激励? の言葉を伝えに来てくれた人に言ってみたら、『領地に帰るという訳でもないし、王都にいるのだから挨拶も必要ない』って言われちゃった。


 寂しいわけじゃない。

 ほんのちょっとしかいなかったし、大事な友達がいたわけでもないし、何も、何も思い入れはない。

 それなのに、なんか、心の中に風が通る隙間があるみたいで。

 やっぱり寂しいのかもしれないと思った。


「ユウト様、馬車が出る」

「……うん」


 リリさんに言われて、のろのろと座り直してやっぱりお城を見る。


「また、来れますから」

「……うん」


 テリアさんに言われて、頭では分かってるんだって言ったら、二人が笑った感じがした。


「なに? 二人して」

「だって、ユウト様にとってはそんなにいい場所じゃないのになぁって思ったらつい」

「ユウト様は情が深い」

「そーゆーんじゃないよー」


 そう、そういうものじゃない。

 でも、何か、ここにはあった。


「出ますよ」


 御者台からメノさんに声をかけられて返事だけする。

 手綱を握るのはアデーロさん。

 それはもう嫌そうに隣に座ったメノさんだけど、仕方ない。


 引越し先のお家をちゃんと知ってるのはメノさんとリリさんだけで、案内する人が必要だったから。

 ペリオンさんは、馬に乗るのはともかく馬車はちょっと不安で、ボラさんは荒っぽい。

 オッソさんは大丈夫だけど、身体がおっきいからいくらメノさんが女の人でも、狭い。

 リリさんはリリさんだから。


 そんなわけで、まだ陽が高くなる前の時間に僕達は馬車で移動している。


 お城の近くだからか、馬車で移動している人が多いけど、徒歩の人もそれなりで、馬に乗ってる人もいる。

 改めて、ここは異世界なんだなと思った。

 そこかしこにいる人達は大体何かしらの武器を持っているみたいで、それが普通なんだと思うと少し怖い。

 銃社会ってわけじゃないけど、自衛する為にはこういった武装をしないといけないんだと、分かったから。


 お城も大きかったけど、その近くも貴族の人達がいるからか結構な敷地のお屋敷が続いて、しばらく、門をくぐったら景色が変わった。


 道幅は馬車が何台か通れるくらいに広いのはそのままだったけど、急に建物が密集しているみたいな印象を受けた。

 元の世界に比べたらそれでも全然なんだけど、今までがたっぷりとしたゆとりを持ってたからか、懐かしさを覚える前にびっくりしちゃった。


「ここが、王都」

「貴族街のすぐ外は大きな建物ばっかりだけど、凄いでしょ? ここが、エランシア一番の街だよ。少し先に噴水広場があってね、そこを右に行くとお貴族様じゃないけど、お金持ちな人達の場所、左が商売とかでお店を構えている場所ね。それで右の奥の道が私達が行くギルド会館通り、お役所仕事とかもあそこら辺に集中してるね。左の奥の道が職人通り。真っ直ぐに行くと、また細かく分かれてるんだけど、平民の人達が集まってるところだよ」

「だから、噴水広場は広い」

「だから??」

「あー……ね、どこに行くにも大体ここを通ってから行くのが分かりやすいから、広くしてないとみんな困っちゃうんだよ。もちろん、他の通りから直通でも行けるけどね」

「あ、そーゆー事か」


 確かに見えてきた噴水広場は広い。

 色んな人達があっちへこっちへと移動してたらそれはさぞ雑多な感じになるんだろう。


 そんなところだけど、広場の端の方では少し大きな屋台みたいなものがいくつもあって、すでにお店を開いていたりもする。


「あれはね、街商だよ。王都は広いからね、大商人のお店の出店なんだ。看板背負ってるから、滅多なことではぼったくりもなくていいお店だよ。その代わりに掘り出し物もないけどね。食べ物のお店もそこそこあってね、大道芸とかがあると人集りが出来たりもするんだよ」

「へぇー! 凄いねっ!」

「場所取りは申請がいるから、露店はない」

「露店なんかは、もっと外の方だね。外門の近くだと、どこも露店だらけだから、お野菜とかはそっちかな。後は駆け出しの職人が作品を売ってたりね。そっちだと場所さえ空いてれば誰でも商売していいんだ。まぁ、固定みたいな人もいるから、空いてたって一応は露店開いてもいいかを周りに聞くのがマナーだけどね」


 そっちの方が見てみたいかも。

 お祭り屋台みたいな感じだろうから。

 僕もこれからはお出かけとか出来るだろうから、色んなところに行ってみたいなぁ。


「平民区画の内門よりは少し綺麗なお宿が多いから、ここからだとどこもちゃんとしてるように見えるけど、少し歩くともうゴチャゴチャだから、ユウト様は行ったらダメですよ」

「えー? そういうのも見てみたいっていうか、貴族の人達の行くところとかよりも下町な感じするそっちの方が見てみたいんだけど、ダメなの?」

「スリとかも多いですからね、しばらくはダメです。まぁ、冒険者用のお店はあそこにあるので行かなければいけないんですけどね」

「まだ早い」

「そういう事です」


 ちょっとつまんない。

 ああいうところにいって、ここはガキの来るところじゃねぇ! って笑われたりするのやってみたい。

 いや、見てみたい。

 実際に体験するのはいいや。


「冒険者のとこは僕みたいな子供でも大丈夫なの?」

「大丈夫ですよー。冒険者と言っても最初は雑用ばっかりですから」

「そこで燻ってる様じゃ冒険者にはなれない」

「あれ……なんか、ガラの悪い人が多そうな感じかなって思ってたけど違うのかな」

「冒険者は違う」

「傭兵とかだね、ユウト様が言ってる様な人達は」

「傭兵」

「そ、荒くれ者が多いから、大人子供関係なしにあんまり近づいてもいい事ないよー。まぁ、危険地帯の護衛とかでも引き受けてくれるから、無茶を押し通したい人達なんかにはいいみたい。冒険者の方はそういうのはないからね。もちろん、どっちにでもいい人悪い人がいるのはそうなんだけど」

「冒険者の方が比較的礼儀正しい」


 なんだろう。

 イメージだけだから何とも言い難いんだけど、冒険者って言葉とズレを感じるって言うか、それはどこらへんが冒険者なのかな。


「ふふ、冒険者って言うのはね、遺跡探索するんだよ。傭兵は外のお仕事が縄張りなの。それで、遺跡探索だと、そこに行きたい学者さんとかがいるのが普通だから、礼儀のなってない人達だと困るんだよね。元々は傭兵だったんだけど、そういう事を専門にしてる人達の事をいつしか区別して冒険者っていうの。とはいっても、どっちもお仕事頼む人がいないとダメでしょ?」

「どっちも時間がかかる」

「うん、そうだね」

「だから、そういう仕事が無い時は冒険者も傭兵も同じ仕事をしてお金を稼いでるの。それが人喰い穴」

「なんか、言葉からすでになんか嫌な感じなんだけど」

「テリアはユウト様を怖がらせようとしてる。人喰い穴っていうのは、昔の言い方。今は迷宮とかダンジョンとか言われてる」


 僕の方にぐっと身を乗り出して、ボソッと告げたテリアさんの頭にチョップしたリリさんが言ったことに思わず声が漏れる。


「おー……あるんだ、ダンジョン」

「あるんですよ」

「ユウト様のところにはないけど、それも創作?」

「うん。こういう話とかはいっぱいあったから、なんか異世界とダンジョンって一緒みたいな感じもあるんだよね」

「よくわからない」

「聞けば聞くほど変なところと言いますか、そういったものが娯楽としてあるのは豊かな証拠ですかね?」


 揃って首を傾げる二人に苦笑い。


 昔に海の向こうに何があるか? と、船で苦しい旅をした人達がまだ見ぬ世界に夢を持って挑んだ様に、ここではダンジョンに夢を見てる人がいるってことなんだろうと思う。


 そんな事を話してる間に馬車はギルド会館通りに入ってて、気付けばお引越し先のお屋敷に着いてたみたいで、メノさんが声をかけてくれた。


 開けられた門の中にゆっくりと馬車を進ませると、そこには、本当にお屋敷と言っても過言じゃない感じの家がある。


 門からお屋敷の入口までは、そんなに広くないかと思ったけどそんな事は無い。

 僕の感覚も少し麻痺してるみたい。

 学校の校庭の半分くらいのスペースが取られてて、その奥に僕の為に用意されたにしては大仰な二階建てのお屋敷があった。


 こんな建物をポンと用意出来るギルドの人達って凄い。

 けど、よくよく周りを見てみればなるほど、それでもこじんまりとした印象ではあるのかな。


 それに、よく考えてみたら、僕が一人で住むんじゃなくて、メイドのみんなも、護衛のみんなも一緒に住むんだから、それだけでも八人、メノさんからは他にも使用人を呼ばないとダメだって聞いてるから、その人達の場所もって考えたら、大きくないといけないんだろうなぁ。


 いやでも、もっと小さい家だったらそんな余計な事しなくてもいいんじゃ……

 あれか、僕が勇者だから、これでも頑張って小さくしたけどこの大きさなのか。


「ユウト様、お待たせ致しました。こちらが当面のお屋敷となりますが、この様な場所で宜しかったでしょうか?」


 御者台からこちらに不安げに顔を向けたメノさんだけど、充分過ぎるというか、僕には勿体ないというか。


「うん、大丈夫だよ。とゆーか、もっと小さいとこだと思ってたからびっくりしちゃったよ」

「そうですか?」


 停まった馬車からメノさんの手を借りてさっと降りる。


「ユウト様! 扉を開けるのは私達のお仕事ですからね! 今回はいいですけど、次からは私達が開けるまで待ってて下さいね!」

「うん、次からね!」


 待ちきれなくて自分で開けちゃったけど、馬車から飛び降りればいいやって思ってたのに、にこにこ笑顔のメノさんが差し出した手に逆らえなかったよ。


「ユウト様、こちらをどうぞ」


 そう言って渡されたのは、何とも綺麗な装飾付きの大きな鍵。

 その鍵がどこのものかなんて、言われなくても分かる。


「開けていーの?」

「ええ、勿論です。荷物はわたくし達が運んでおきますので、中の確認をお願いしてもよろしいでしょうか?」


 中の確認を、なんて建前に決まってるよね!


 にこにこ笑顔のメノさんに僕も笑顔を返して、大きな鍵をそれに相応しい大きな鍵穴に入れて、重いガチャリとした音をワクワクしながら聞いて、力いっぱい扉を開けた。



一話使って馬車移動とゆー暴挙(爆)


その間にレクチャーですが、30話も使って、この国の名前は2回目の出典です。


エランシア


エランシア王国です。

次回はお屋敷探索スタートです。

これから時間の進みが早くなるかと思われますので、話も進んでくれるはずです(笑)

もう少しスローペースをお許し下さいね(^^)

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