ぐるぐるぱにっく
この調子で行くと、19年内にはブクマ3桁の偉業(笑)を達成してしまうかもしれません(; ・`д・´)
1日1ブクマくらいのペースで読者様が増えておりますヽ(´▽`)/
つまり毎日感謝!
ありがとーございますm(_ _)m
では、練習を始めましょう。
と言われて、昨日の様にアイリスさんと手を繋ぐ。
「ユウトさん、今、魔力操作は感じられますか?」
「うん……なんか腕の中でさわさわしてる」
「気持ち悪くはありませんか?」
「大丈夫ー」
なんだろ、引き波に足元くすぐられるみたいな感じ?
なんか落ち着かないけど、嫌とかじゃなくて、何となく不安で、何となく離れ難い感じ。
「それが魔力ですよ。まだ不安定なので、しっかりと感じられる様に慣れていきましょうね」
「うん」
「では、ユウトさんの右手から身体を通って左手に、そしてあたくしの身体通ってまた右手に、とゆっくり循環させますから、なるべく頑張って感じてくださいね」
「わかった」
そう返事するや否や、さわさわとした流れが身体の中を流れていくのが感じられる。
ゆっくり、ゆっくりと流れる魔力のざわめきが、僕の中で徐々に突っかからなくなるのが分かる。
小川にあった小石が転がってなくなるみたいに、ゆるやかに迷っていた流れが少しずつまっすぐに淀みなくなっていく。
「流す向きを逆にしますよ」
ゆっくりとした流れがさらさらと綺麗にまとまったと思ったら急に変わった向きにグラリと身体が揺れる。
「……ぁ……あれ? きもち、ワル……」
「では止めましょう。大丈夫ですか?」
すっと、魔力操作が止まって、僕の気持ち悪さも引いていく。
そして、魔力が流れてた時はなんかポカポカしてたのに、止まったら急にそれが無くなってブルリと身体が震える。
椅子に座ってるのに、頭が重くて、なんか、ぐんにゃりする。高熱でも出てるみたいにふらついてしまうのをアイリスさんがそっと抱き留めてくれた。
「少ししたら落ち着くので、ゆっくり呼吸して下さいね」
「う、うん……すー、はー、すー、はー……」
「今のが魔力酔いと言いまして、魔力に慣れない内によく起こる症状です。その気持ち悪くなるのは普通の事ですし、素養のある証拠ですから、良い傾向ですよ」
「……ぅー、こんな気持ち悪いのがいい事なの?」
「ええ、最初は、少しずつ上手く流れるような感覚になりましたでしょう? 魔力の通りがよくなってる事の証なのですけど、慣れないうちは流れを変えるとごちゃごちゃになって気持ち悪くなってしまうのですよ。それもこれも、魔力が多くなければ影響も少なくなるので、気持ち悪いなら魔力が多い証拠です」
魔力が多いと酷いんだ、それで僕はみんなの見立てだととても多いって事だから、すっごい酷いって事だよね。
なんか、適性あるって言うのに魔法を使うのも大変だよ。
まぁ、それでもやらなきゃいけないんだし、慣れたら気持ち悪くならないって言うんだから、早く慣れないとね。
と言うことで、気持ち悪いのが治ったら時計回り、反時計回り……と魔力を流して貰って気持ち悪いのが治る度に交互に切り替えて何度もやって貰う。
「少し慣れてきましたね」
「うん、なんか気持ち悪いのは気持ち悪いけど、我慢出来るくらいになってきたと、思う」
「じゃあ、次はあたくしがやってた事をユウトさんがやってみましょうか」
「いーの?」
「もちろんです。あたくしがやっていたのはユウトさんが魔力の感触を掴む為のお手伝いですから、慣れてきましたら御自身でやりませんと、ね。但し! ユウトさんの魔力は多いので、力を抜いて少しだけ、を意識してやってみて下さいね」
そういって、さぁどうぞ、と言われて、ゆっくり息を吐いて、そーっとそーっと、と繋いだ手を睨みながら魔力を右手から流していく。
「右手から流しながら左手で吸い取りましょうね」
あ、そか。
流してるだけじゃアイリスさんに溜まるだけだもんね。
左手で吸い取る……ってアレ? 右手からも吸い取っちゃってる?
一旦、止めて……
もう一度、右手から出す。
ー大丈夫、ちゃんと出来てる、から、左手で吸い取……ったらまた右手でもやっちゃう。
「ん……んんー? 吸い取る、って表現が分かりにくそうですね、右手で押し出して、左手で引っ張る感じ、とかどうですか?」
押し出して、引っ張る……
押し出してー、引っ張る!
あ、出来た? 大丈夫?
「その調子ですよ、じゃあ、交互にじゃなくて一緒にやってみましょう」
右手で押し出しながら……左手で引っ張る……っ!
そしたら、僕とアイリスさんとでぐるぐる回るように、する。
「ふふ、良いですね、じゃあ、そのまま少し頑張って続けましょうか」
「うん……なんか暖かいね」
しばらくそうやってると、何も抵抗なく魔力循環出来ているのが分かる。
ぐるぐる回すと、僕からアイリスさんに、アイリスさんから僕にって、絵の具を行き来させてるみたいで、二人でやってるのに、とろとろに溶けて一つになってく。
「────ん─!」
繋いだ手がぬるってアイリスさんに這入り込んで、身体じゃなくて、心でもなくて、アイリスさん自身の、そう、これは魂、一番大事で、一番剥き出しで、一番繊細な、これが、アイリスさんだ。
「─ウ──ん─!!」
アイリスさんの誰にも見せたことない、自分でも見たことない、秘密の花園に這入ったら、どれだけの幸せがあるのかって、融けて一つになりたいのに、膜が邪魔だ。
僕はアイリスさんと、もっと融けてポカポカしたいのに。
でも、強くしたらダメなんだよね。
「ぉ───う──ま─!!」「──て─!」
だから、優しく優しく、アイリスさんを包んでる膜を解して、柔らかくして、融かして、溶かして、渡河して、アイリスさんの奥にもっと、僕が、僕の、僕と、大事なところで、一つに、あぁ、こんな、嗚呼、アいリスサんと、ぼクト、アぁ、まぢりaッ手、非凸───
バシンッッ!!
「しっかりしなさい!」
「い、しゅか、さん……?」
顔がくっつきそうなくらい近くに、いきなりイシュカさんの綺麗な顔が、険しい顔で、つらそうなかおで?
「正気に戻りましたか? では、一度、お嬢様のお手を離して頂けますか?」
「え……?」
「手を、開いて下さいませ」
「ぁ、うん……」
イシュカさんに言われて、ギュッと握ってた手を離せば、なんか凄い手汗でぬるぬるしてた。
そうして、なんでこんなベッタベタになったんだろうと、アイリスさんを見ると、顔を真っ赤にして荒く息をつく姿が目に入った。
「アイリスさん!? 大丈夫!?」
「はー……ふぅ……ええ、なんとかですけど……」
「ご、ごめんなさい……なんか夢中になっちゃってた?」
「いえ、こんな事になる可能性もちゃんとありましたから大丈夫ですよ」
「お嬢様、こちらを」
「有難う」
イシュカさんに差し出されたハンカチで、額にビッシリ浮かんだ汗を拭きながら、僕ににっこりと笑いかけてくれる。
魔力循環してて、えっと、ぐるぐる回して、それで、それで、なんか楽しくなってきて、その後がよく思い出せない。
「勇者殿、お手を失礼します」
ぼうっとしてたら、イシュカさんに手を取られて、手汗でぐっしょりしてた僕の手を丁寧に拭われた。
手を拭いて貰ったと、それだけなのに、脇をくすぐられたみたいな感じで、凄く落ち着かない。
「イシュカさぁん、僕も、自分で、やるから」
「……はい、分かりました」
手と顔を拭いて、ホッと息をつく。
なんか、神経が剥き出しになったみたい。
アイリスさんを見てみれば、手ではたはたと顔を扇いで熱を逃がそうとしてるみたい。
僕が見てるのに気付いて、どうしたのって首を傾げてるけど、僕が……分かんないけど、何かやったんだよね。
「アイリスさん、ごめんなさい……」
「……どうして、ユウトさんが謝るのですか?」
「僕が、失敗した所為、だから」
自然と顔が下を向く。
沈黙が、怖い。
アイリスさんは、怒ってなかった、と思うけど、イシュカさんは怒ってたみたいだし、僕が怒られちゃう事したんだって、それで分かるから、僕は魔力操作を失敗、したんだ。
よくよく考えたら分かることだった。
みんなが、平然としてたから、なんかそんなに気にしてなかったけど……
運動場であんなクレーターみたいなのが出来たくらいなんだから、僕の魔力は凄い多いんだって、言われなくたってちゃんと分かってなきゃいけなかったのに、魔法が使えるんだって調子に乗って、魔力循環が楽しいなんて思って、それで失敗したなんて、怒られて当然だよね。
コトリと、隣に椅子が移動してきた。
と、思ったら、アイリスさんに抱き寄せられてて、ヨシヨシと頭を撫でられてた。
「ユウトさんは、すぐに僕が悪いーって思っちゃうんですね」
「だって、失敗したの、僕が、悪いし」
「何にも悪くありません。ユウトさんは頑張ってらっしゃいます」
「でも、僕が、調子乗ったから」
「誰しも成功すれば嬉しいものです。ユウトさんが喜んだ事を褒める事あれ誰が責めるものですか」
そうなのかな?
失敗したら怒られるのは、当たり前なのに。
そう思ってたら、ほっぺたをムニっと挟まれてアイリスさんの方に無理矢理顔を向かせられた。
「ユウトさん、先生の言う事が信じられませんか?」
「でも……」
「でも、じゃありません! 先生は優秀な生徒がたくさん頑張ろうってしてくれて、よく出来ました! と思っています」
「僕、失敗したよ?」
「あら、失敗も間違いも、してくれなかったら先生がいる意味がありませんよ? どうして失敗してしまったのか、どうしたら上手く出来るのか、それを教えて導くのが先生の役目ですから、どんどん失敗して先生に頼ってくれないと困りますよ」
失敗してもいい、うぅん、失敗しなさい、なんて、初めて言われた。
ポカーンとして、にっこりしてるアイリスさんを見上げてると、アイリスさんが僕のおでこにチュッとキスをして、それからまた抱きしめてくれる。
「たくさん失敗しなさい。先生がいるところでなら、大丈夫ですから。イシュカもいますし。あたくしも今回は初めてだったのでびっくりして、ユウトさんを止めるのを失敗しちゃいましたから、次は頑張らないといけませんね。ユウトさんは失敗した先生を許してくれますか?」
「許す、なんて、そんな、僕こそ」
「許してくれないと、あたくし泣いてしまいます」
「ゆ、許しますっ!」
「はい、じゃあ、先生もユウトさんの失敗を許します。これでおあいこですね」
アイリスさんにギュッっとされると、なんか凄い安心する。
香水なのか分かんないけど、なんかいい匂いに包まれて、僕もアイリスさんに腕を回した。
「コホン、イチャついているところ申し訳ないのですが、そろそろお昼ですから、お勉強はお終いで宜しいでしょうか」
バッとアイリスさんが離れて、顔を真っ赤にしてイシュカさんを睨みつける。
別にイチャついてはいないんだけど、イシュカさんにはそう見えたのかな。
僕とアイリスさんだと、子供と大人なんだけど。
いやでも、10歳にもなってお姉さんにギュッとして貰って頭撫でられるっていうのは、ちょっと恥ずかしい、かも。
「イチャつくとか、貴方の目は節穴ですか、イシュカ」
「でしたらそんなに慌てることもないかと」
「慌ててなどいません。そもそもイシュカが怖い顔してたからユウトさんが必要以上に萎縮してしまったのですからね! 全く、頑固な鬼婆には困ったものです」
「……もう一度、お聞かせ願えますか?」
「耳が遠くなってしまったのですか? ほら、そんな顔をしてるとユウトさんが怯えてしまうではありませんか」
あれ……
今さっきまで、誰も悪くないよみたいな空気だったのに、なんで、こんな、誰が悪いか選手権みたいな感じに。
「ちょっと身体の中をまさぐられたくらいでコロッと転がされて」
「そんなことしてないよね、僕!?」
「表現がいやらしいですよ、欲求不満なのですか? ユウトさんは、そっとあたくしの中に触れて下さっただけですから」
「手を繋いでただけだよね! 僕、変なことしてないよね!?」
「ユウトさんはあたくしの大事なところを傷付けないように優しくして下さいました!」
「甘い誘惑があったら騙されると宣言しているようなものではないですか、はしたない」
「そうやってすぐに色恋に、いえ、この場合は、色欲でしょうか? そう結びつける事しか出来ないとは、普段からそういった事ばかりに意識を割いているからなのではないですか?」
「危機管理意識の問題です」
おおお落ち着いてー!
どーすればいーの!?
アイリスさんは悪くなくて、僕も悪くなくて、イシュカさんだって悪いわけなくて、じゃあ誰が悪いのって、誰も悪くないんだけど、二人はケンカしてるし、やっぱり僕が悪いんだ。
「うぁーん! ごべんなざいー! ぼくがわるいから、ケンカじないでー!!」
「「!?」」
「ち、ちがうんですよ!? あぁ、ユウトさんは悪くありませんから!」
「そ、そうです、勇者殿が悪い訳ありませんから!」
「だっで、うぁーん!!」
おろおろしている二人の前で僕は泣いた。
騒がしくなった室内に何事かと、護衛の二人が駆け込んできたけど、わんわん泣いてる僕と、その前でどうしたものかと慌ててる二人を前に盛大にため息をついた。
次は……分かりますね?
えぇ、そんな感じですから。
全く……ユウト泣かせてるんじゃないよ!
(なお、誰が泣かせたって、それは極論私!(爆))