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傷がないなら無傷と言ってもいい (side ボラ)

1話2話辺りにありましたユウトの卑下する言動を微修正しました。話の筋は何も変わってません。


ユニークが2000を越えました!

見て下さる方有難うございます(^^)


では、ボラさん視点で今日は宜しく御願いします。

少し下品な感じなのはお許し下さいw

ボラさんなので。

 

 いやービビったビビった!

 ユウトの野郎、やっぱヤバいな。


「ボラ様! 大丈夫ですかっ!?」

「ンなわきゃねぇだろ……あー、いってぇ……」


 クッソ、指向性無しの魔力だけでコレかよ。

 右腕まるっと持ってかれたな、ちくしょう。


「あークソ! 読み違えたっ! おい、お前、ダスランのとこに走れ! ユウトが魔力使える様になった事とこの馬鹿げた結果の後始末を頼んでくれ」

「はい!」

「後、そこのお前! アデーロの奴を叩き起こせ!」

「了解です!」

「よし、ペリオンはこのままユウトの傍で待機と、アデーロが来たら容態の確認。先に目を覚ましたらお前がやれ。それと俺は怪我はしてない。いいな?」

「分かりました。ボラ様は早く治療に行ってください」

「今行くさ。お前らも解散ー! 吹聴すんなよ! 後は……誰か俺の着替え持ってきてくれ」


 各々返事を返しながら散っていくのを目にしてから、俺も歩き出す。

 チラリとユウトの暴れ具合を見て、苦笑しか出ない。


(ここまでだとは思わなかったが、腕一本で良かったな)


 右腕が吹き飛んで歩きにくいのに舌打ちをしながら練兵場の近くにある治療院に足を踏み入れた。


「わりぃんだけど、上級看護官呼んでくれ」

「! わ、分かりました! すぐにお呼びしますので……えっと、一番に入って下さい!」

「頼んだ」


 勝手知ったる馴染みの場所と言えばカッコイイが、要は怪我ばっかしてる未熟を晒しまくった結果なんだから笑えねぇな。

 一番看護室に入ってベッドに腰掛けると、盛大に溜め息が出る。


 抑え込めると踏んでたんだがなぁ。

 甘かった。


「入るわよ」

「おーう」


 無造作に入ってきたのは馴染みの看護官シュラー。

 俺の無茶の尻拭いをよくしてくれる良い奴だ。


「……貴女ね、今度は何やらかしたの」

「ちょっと手違いがな」

「はー……手違いで片腕無くなってたら世話ないんだけど?」

「悪いって、まさか魔力放出だけでこんなんなるとは思わなくてよ」

「勇者様?」

「そうそう。昨日は魔力感知も出来なかったからよ。ちょいと発破かけたらコレだぜ? 堪んねぇよなぁ」


 テキパキと癒符陣の準備をするのを見やって軽口混じりに雑談かましながら、アレは凄かったといってやれば呆れたとばかりに、溜め息をつく。


「いっつも思うんだけど……貴女、痛覚ないの?」

「馬鹿言え、痛てぇに決まってんだろ」

「とてもそうは見えないんだけど」


 冷めた目にニヤリと返してやれば処置無しとかぶりを振って、横になるように指示をくれる。


「じゃあ、治すから、動かないでね」

「はいよ、完璧に頼むぜ」

「あのね……そんな事したら私の魔力ほとんど無くなるんだけど?」

「俺、怪我してねえことになってるから」

「だから、全部治せって?」

「そうそう」


 パッシーン!


「いってぇ! 何しやがるこのアマ!!」

「今日の上級看護官は私だけなのよね? その私の魔力が空っぽだと何かあった時に困るのだけど」

「わーかった! 悪ぃって! だから頼む!」

「全くもう……次やったら治さないからね」


【母なる大海のアフォスの御名を以て 生命の権能たるネジュンの恩寵を賜る 喪われし(かいな)の 血は骨に 骨は血に 芽吹きの枝葉 綻ぶ蕾 (うぶ)花弁 実る種子はフェゼットの千秋 繁茂 永盛 言祝ぎ(ことほぎ) 寿ぎ(ことほぎ) (ことほぐ) 祖は生命の神秘 死せり境を往き交い 今一度 還り給え】


 シュラーの詠唱に従って陣に光が奔り、同時に痛む傷跡がくすぐられる様なむず痒さと弾ける激痛、絶頂にも似た快感がごちゃ混ぜになった様な何とも言えない感覚が舐る。


「ぐっ……ぁが、は……っ!」

「はい、終わりー」

「……ぐ、ぁぁ……はー……気持ちわり」

「貴女ほんと、よく失神しないわよね」

「気持ち悪くてそれどころじゃねえよ……」

「気持ち悪いって、普通痛いだけなんだけど」

「いや、痛てぇのと気持ちいいのと同時に来るんだよな、それがごちゃごちゃしてて訳わかんなくなんだよ」


 膜ブチ抜いた時みてえな感じだと言ったら、叩かれた。

 いーじゃんかよ、男共がいるわけじゃねえんだし。


「失礼します、ボラ様の着替えをお預かりしました」

「おぅ、ありがとよ」


 受付にいた子が届けてくれた“同じ服”に着替えて、さてとシュラーを見る。


「で、ついでにユウトの容態診てくれよ」

「嫌よ、私もう疲れたもの」

「まぁそう言うなって、俺が無傷だったって見せてやんなきゃなんねえし、万が一魔力酔いじゃなかったら大変だろ」

「無傷じゃないでしょうに」

「いや、今怪我してねえんだから無傷だろ」

「あのね、私は貴女の所為で魔力枯渇でもうくたくたなの」

「いーのかぁ?」

「……何が?」

「勇者が倒れたってのに、上級看護官が、診断を放棄したって言ってやろうかなぁ」


 イヤらしく笑いながら脅す様にそう嘯けば、顔を引き攣らせて睨みつけてきた。

 このまま戻っても服が綺麗過ぎて聡いユウトに気付かれるかもしんねえからな、まぁ諦めてくれや。


「ほれ、俺が運んでやるから」

「貴女ね……傷が無くなっても血が足りないのは変わらないのくらい知ってるでしょ?」

「だーいじょーぶだっつの。俺はそんなヤワじゃねえから」

「いや、途中でやっぱり無理とか言われて落とされてもヤなんだけど」

「しねえから安心しとけって」


 身構えてても俺にかかればなんの事はねえ、さっと抱き抱えて持ち上げるとそのまま外に歩き出す。

 血が足りねえから、気合い入れてくぜ。


「いや、ちょっと、ほんと、怖いんだけど!」

「暴れっと危ねぇぞー」


 下ろせと喚くシュラーを抑えつけてユウトのとこまで持っていけば、嫌な感じの汗も出て何とか誤魔化せるくらいにはなった。


 流石にちょいとふらつきそうになったが、診断してる間に少し息を整えようと思ってたのに、あんにゃろう、さっさと終わらせやがるから、ブチ切れそうになった。

 あの、さも、無傷だってカッコつけるんでしょう? と言わんばかりのドヤ顔に苛っときたが、俺が文句付けられねえと思って煽りやがったな。


「おら、着いたぞ」

「はい、お疲れ様ー」

「シュラー、てめえ覚えてろよ」

「あー、勇者様に口が滑りそうだわ」

「チッ」


 借り一つだな、めんどくせぇ。

 まぁいい。

 後は報告だけ上げて今日は休ませてもらうか。


「貴女、今日は休みなさいよ?」

「わーってるよ」


 お前は俺の母親かってんだ。

 が、そう思って軽く睨みつけてみれば、シュラーが酷く心配そうに見ていて、バツが悪い。


「あのね、傷口は炭化したみたいになってたからそこまで失血してないと思ってるのかもしれないけど、本当に休んでくれないと困るのよ?」

「ダスランに報告したら寝るからよ、んな心配そうにすんなよ」

「それならいいのだけど」

「んじゃな」


 ひらひらと手を振って看護室を後にして、その足でダスランの執務室へと行く。

 あー、血が足りてねえから気分が悪ぃ。

 肝食いてぇ。


 ダスランの野郎の執務室を蹴り開けてズカズカ入ってやると、頭を抑える野郎がいたが、気にしてられっか。


「ほーこーく」

「お前は……いい加減人並みの礼儀くらい身につけんか」

「貧血で気持ち悪いんだ、大目に見ろよ」

「次やったら減給するからな」


 予約しておけと、隣の机で書類仕事をしてる副官に指示を出しながら、ソファを身振りで示されてドッカと座り込む。


「随分とお疲れだな」

「腕吹き飛ばされてんだぞ、もうちょい労われよ」

「お前の未熟に俺を付き合わせるなよ」

「いや、お前、あの穴見てないだろ?」

「報告は受けているがな」


 一枚の紙を見ながら苦笑を浮かべるダスランは、隊長になってから身体が鈍るとボヤくが、それなら隊長なんかやんなきゃいいじゃねえかと思う。


 が、まぁ、騎士爵上がりだから、色々大変なんだろ。

 どいつもこいつもめんどくせぇ。


「で、報告に来た奴から聞いたところ、10人分は堅いと言われたが、お前から見てどうだ」

「そりゃ結果見ただけだろ? 最低50だな」

「規模からして30くらいかと思ってたんだが、随分な高評価だな」

「だってよぉ、ダスラン、お前それは殺ろうとしてそれなら分かるぜ? でも、ユウトだぞ? 俺を殺ろうなんて考えてねぇよ。ちょっとペリオンの手助けとして俺の邪魔しよう、くらいしか考えてねぇさ」

「ふむ……」


 初めてなんだ。制御なんてあったもんじゃねえし、無駄だらけで終わるだろうから、いくら魔力が高そうでも何とでもなる、そう思ってたんだが、ちょっと魔力で齧られただけで、右腕が持ってかれた。


 ユウトを煽る為に周りのヤツらを巻き込んでペリオンを虐めてやったから、それなりに人も居た。

 訓練中のオイタで済ましても良かったんだが、こっちのワガママに付き合わせて巻き添えってのもカッコわりいしな。


 咄嗟に下に叩き付けたらアレだもんな。

 上に掬い上げる余裕がありゃ良かったんだが、ギリギリまで引き付けてやがったからそんなヒマもなかった。

 貴族らしく平民よりも魔力が多くなかったらマジでヤバかった。


「ま、これでビビられたら困んだろ? だから、とりあえず大したことはねえと思わせてやんねえと使いもんになんねえぞ」

「それはそうだが……上の連中が五月蝿そうだな」

「ほっとけよそんなもん」

「一々噛みつかれても面倒だろう?」

「ま、そりゃな」

「仕方あるまい。城の中で癇癪を起こされたらなどと弱腰な事だが、それで煩わしいだけならともかく下手につつかれてユウトがキレる方が怖いのは変わらん」


 ネチネチと嫌味ったらしい老害共と顔を合わせなくて済むならそれの方がいいのは、確かだな。

 ああいうのは、経験しなくて済むならその方がいい。

 だがまぁ


「ユウトには面倒ばっかだな」

「もう少し慣れさせてからにしたかったんだが、仕方あるまい。幸いな事に、教師役にはアイリス様がいらっしゃるしな。権威を笠に着る様な馬鹿共に毒される前に引き離せることを喜ぶとしよう」

「そういうのは面と向かっていってやれよ」

「それで治るなら泥を被るのも構わんがな。動物を躾ける方がきっと楽だろう」

「クク、ちげえねぇ! で、何時にするんだ?」

「幸いにもユウトには荷物がほとんどないからな、メイド達に用意させて、明日にでも引っ越してもらおう」

「他の使用人はどうすんだよ」

「揃うまではお前たちに分担してもらう他あるまい」


 めんどくせぇ……


「言っちゃ悪いが、俺は何も出来ねえぞ?」

「他が手一杯になるからな。魔力も使える様になれば身体能力も飛躍的に伸びるから、感覚を掴むだけでも一苦労だ」

「つまり、体術を仕込んで置けばいいのか?」

「そこまではまだ止めておけ。身体の動かし方を教えてくれればいい」


 へいへいと軽く返事をしておく。

 身体の動かし方を教えるついでに体術を覚えちまってもそれは仕方ねえよなぁ。

 分離出来ねえし。

 仕方ねえ。


 身体の効率的な動かし方を覚えるって事は、自然とそうなるもんだ。


 何にしろ、城でクソ共のツラを見なくて済むようになんのはいい事だ。


 体術を仕込んで、それでちょいと慣れたらちゃんと冒険者の真似事もさせてやれるし、そしたら絶対に人気者だぞ!


 あぁ、その前に血を見ても大丈夫なようにしねえとなぁ。


 兎でも締めて捌かせるか?


 そうしたら刃物の扱いも教えなきゃなんねえな。


 背もちっちぇえし、まずはナイフからか?


 それとも将来を見越して小剣辺りで馴染ませるかな。


 いやまて、別に剣じゃなくてもいいし、槍か? 弓か?


 体術だけじゃ勇者らしくねえしなぁ。


 今更だとも思うが、殴って蹴ってする勇者とか、ちょっと格好がつかないよな。


 そうすっと槍はちょっと微妙だな。


「ボラー?」

「なんだ?」

「やり過ぎる顔してるぞ」

「してねえし」

「とりあえず、今日は休め。血が足りないと考えが狭くなる」

「おう、じゃあ後は頼むな」

「そりゃ俺のセリフだろうに……まぁ、任せておけ」


 んじゃ、動くのもダルいし、執務室の仮眠室で寝させて貰おう。

 つか、腹減ったな。


「まて、お前は何処に行く?」

「そこにベッドあるじゃんかよ、ケチケチすんな」

「お前も一応は女だろうが、ダメだ」

「腹が減ってるし、眠いし、疲れたし、もう動きたくねえ」

「ダメだ」

「なんだよー、ダスランお前まさか寝込み襲うつもりなのか?」

「するかっ!」

「つかマジでダルいから許せよー」

「ダーメだ」

「起きたら飯食うから用意頼むわ」

「うわ、コラ! こんなとこで脱ぐんじゃない!」


 これ以上邪魔されてもめんどくせぇし、パンツ以外脱ぎ捨てて仮眠室に入ってベッドに寝転ぶ。

 あー、もう、ムリ。


「貴様には羞恥心がないのか!」

「女に何言いやがる殺すぞ」

「なら少しは隠せ!」

「うっせえなぁ、よっと」

「は〜……もういい」

「飯は三人前な」

「わかったわかった」


 ヘタレ野郎。


別にダスランさんを誘惑してる訳ではありません。

据え膳だと思ったら食うもんじゃねえの?

とゆー“一般論”からのヘタレ発言です。

肉食っ!


お読み下さった読者の皆様有難うございます(^^)

次もお待たせしないように頑張りまーす


誤字脱字とか、気をつけておりますが見掛けたら教えてくれると嬉しいです

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[気になる点] 右腕は再生したのでしょうか?それとも切断面で固定されたのでしょうか?
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