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過保護な加護

読者の皆様ありがとーございますm(_ _)m


無事に今夜も更新ですよっ!

 

「さ、ユウトさん、次は何をお召し上がりになりますか?」


 あれ、なんでこーなってるんだっけ?

 アイリスさんに抱っこされたままで、首をひねるけど、僕がここにいるのって何でだっけ?


「アイリスお嬢様、こちらをどうぞ」

「あら、ありがとう」

「……で、ペリオンさんはなんでメイドさんに?」

「私はアイリスお嬢様付きの侍女です」


 サッと目を逸らしたペリオンさんだけど、何があったら朝に護衛しにきた騎士が侍女になるんだろう。


 昨日はお忍びで、今朝は騎士で、今は侍女。

 あ! そうかー!

 王族として下々の生活も経験しないとダメ! とかそーゆー感じなのかな?

 民あってこその国、みたいな。

 でも、お姫様だから、あんまり変なとこはダメだから、アイリスさんのところの侍女になった、とかそんな感じかな。

 そうだよね、いくら平民のお仕事を経験してみる、とか言ってもお姫様にそこまで無茶な事はさせられないもんね。


「ペリオンさん、頑張ってね!」

「ユウト様……うぅ……」


 しょんぼりとしたペリオンさんはまたご飯の置いてあるテーブルに向かって歩いていったけど、行く先々でみんなに声を掛けられてて、慕われてるいいお姫様なんだって言うのがわかるね。

 すっごく恥ずかしそうだけど。


「ユ・ウ・ト・さーん、はい、あーん」

「え!? いや、自分で食べられるよ?」

「あーん」

「あ、はい、頂きます……あーむ」

「ふふ、美味しいですか?」

(こくこく)


 で、僕の方がより恥ずかしいんだけど、この状況を脱出する方法を誰か教えて下さい!


 ボラさんに文字通りぶん投げられて、なんか魔法で空中に受け止められるというよく分かんない事になって、下でアイリスさんに受け止められて、そのままこの状況になりました。


 周りは女の人ばっかで、満面の笑みで僕を抱っこするアイリスさんにみんなキャーキャー言ってるし、僕を投げたボラさんは、僕の事なんて忘れたみたいにご飯食べてるし(護衛とは一体……)女の人の輪に突撃出来ないオッソさんは、外から眺めてるだけだし、着いてきたリリさんは満足そうにしてる。


 僕の味方がどこにもいない!


「と、とりあえず離してー」

「暴れたら危ないですわよ」


 ジタバタもがいてみてもギューッと抱きしめられてて身動き取れないけど、とにかく脱出しないと!


「勇者様は照れ屋ですね」「恥ずかしがっちゃって可愛いー」「私の弟に欲しい」「それね」「アイリス様が羨ましいです」「アイリス様になりたい」「勇者様お持ち帰りしたい」「私もあーんしたい」「私はされたい」「「それだ」」


 ど、どーすればいーの!?

 とゆーか、これ僕勇者とかじゃなくてオモチャなんじゃ!?


 ゴンッ!


「いったぁい、なんですか!?」

「アイリス様、なーにユウトさまを独占してんだい」

「り、料理長!」

「ほら、離しておやり! メシくらい好きに食わせてやんな!」

「あっ!?」


 みえないけど、この声は、昨日ご飯運んできてくれた料理長のお姉さんだ。

 と、思ったらヒョイっと身体が掴まれて、すぐに立たせてくれた。

 見た目はそう肝っ玉お母さん!みたいな……えっと、恰幅のいい大人の女性。

 牛の獣人さんだそうで、身体が大きいのは牛の獣人さんの特性なんだとか、牛肉のステーキを切り分けながら教えてくれた。


 ちなみに牛そのものと牛の獣人は全くの別ものなので、牛の獣人さんも普通に牛肉は食べるそうな。

 共食いじゃないんだよ、と笑いながら言ってた。


「マーサさんありがと」

「いーんだよ、アタシの目の黒い内は食堂でメシ食うのを邪魔するヤツは神様だって許しゃしないさ!」


 さぁ、みんなのところに顔出しておいで、と背中を押されたので、アイリスさん達には悪いけど、他の人達のところに行かせてもらった。

 ここの男の人達は、身体が資本な人が多いみたいでみんな筋肉が凄い。アデーロさんとかみたいにスラッとした体型の人もアスリートみたいに洗練された身体付きしてて、これがこの世界の在り方なんだと言うのがわかる。

 僕も勇者なんだから、頑張っていかないといけないね。


 そう思って、普段はどんなトレーニングしてるのかと聞いてみたら、凄い答えばっかりだったんだけど……


「そうですな、まずは朝起きたら走り込みをしまして、軽く汗をかきます。何、特別な装備もなくほんの10キロほどですから。ところで、アイリス様とはいつ親交を持たれたので?」

 とか

「戦闘教練では、真剣も使いますからね、どうしても怪我が多くなるものですが、腕が切り飛ばされる事などそうありませんから心配されるほどではないですよ。それはともかく、ペリオン殿は勇者様に好意を伝えられたのですか?」

 とか

「強化魔法は慣れないうちはどうしても力加減が出来なくなりますからね、つい関節が外れたりしてしまいますが、やっていくと慣れるものですよ。後、リュリュさんに蔑んだ視線を貰うと一日の疲れが癒されますよね」

 とか


 なんでか、女の人の話題も付いてくるのは何でだろうね?

 それとリリさんはそんな冷たい人じゃないし。

 というか、なんで筋肉をアピールしながらじゃないと話せないのかを教えて欲しいです。


 そんな騒がしい会食も一時間ちょっとくらいでお開きになって、みんないつの間にかお仕事に戻っていった。

 今食堂に残ってるのは、オッソさんとリリさんとアイリスさんとペリオンさんの4人で、ボラさんは気がついたら居なくなってた。

 あの人ご飯食べたかっただけなんじゃ。


「さて、では、魔法適性を見に行きましょうか」

「アイリスさんも来てくれるの?」

「はい。と、言いますか、あたくしはユウトさんの魔法の先生になりましたので、見ておかなければなりませんわね」

「そうなんだ! じゃあ、これからはアイリス先生って呼ばないとダメだね」

「お勉強の時だけにして下さいませ。いつも先生では距離を感じてしまいますもの」

「うん、わかった」


 ところで、魔法の適性ってどうやって判断するのだろう。

 やっぱり水晶の玉とかに手をあてて、みたいな感じなのかな。

 そう思ってたんだけど、なんかダスランさんに説明してもらった場所とかからどんどん離れて、なんかの倉庫みたいな場所まで連れてこられた。

 赤いドレス姿のアイリスさんが、倉庫にいるのはなんか場違いの様な気がするけど、ぐるっと後ろを見てみればすっごいパーティだよね。


 勇者、貴族のお嬢様、お姫様で侍女の人、メイド、クマみたいな巨漢。

 子供、女、女、女、男だよ?

 それで目指す場所が倉庫だもんね。


 倉庫に着いた僕達だけど、アイリスさんが色々と指示を出して鑑定用の魔石と、個室の用意をお願いしてた。

 ほどなく、ジャラジャラと音のする袋を二つ持って、窓のない石造りの部屋の中に入っていく。

 僕とリリさんも着いていくけど、ペリオンさんとオッソさんは外で待ってるみたい。


 部屋の中はそんなに広くなくて、なんかの像とその前におっきな壺が部屋の奥にある他は、小さなテーブルと椅子がいくつか、天井はガラス? なのか、それで覆われていて、意外と明るくてほっとした。


「さて、では、早速ですが、始めましょうか」

「うん、それはいいんだけど、何すればいいの?」


 アイリスさんと僕とが椅子に座ると、アイリスさんは持っていた袋の一つを引っくり返して中のものをテーブルに広げた。

 そこには小さな色とりどりの宝石。

 全部で11個かな。


「こちらを一つお持ちになってくださいな」

「どれでもいいの?」

「はい、()()()()()()()


 水晶玉じゃないんだなぁ。

 いや、いーんだけど、なんかスッキリしないね。

 んー、水晶玉がないなら水晶っぽいのにしようかな。

 透き通ったのが二つあるけど、どっち(-ダイヤ-)にしよう。


「じゃあ、これ!」

「……はい、わかりました。ではこちらを」

「? うん、で、どーするの?」

「ぎゅっと握って下さいませ」

「こう?」


 手のひらに握って力を入れるけど、元々小さい宝石だから、なんかあんまり握ってる感じがしない。

 というか、僕ホントに握ってる? なんか手の中に石ころがある様な気がしないんだけど。


「???」

「手の中の宝石は感じられますか?」

「えっと……なんかあんまり握ってる感じしないよ?」

「では、開いてみましょうか」

「? うん……あれ? あれ??」


 パッと手を開いたら何にもなかった。

 落としたのかと思ってテーブルを見ても10個、テーブルの下も見たけど、そんなこともない。


「ふふ、無くなったならそれが、ユウトさんの適性になりますので大丈夫ですよ」

「え、これ宝石だよね? なくなっていーの??」

「大丈夫ですわ。こちらは宝石は宝石でも、魔力で作り上げたイミテーションなのです。なので、作ろうと思えばすぐに作れるのですよ」

「アイリスさんも作れるの?」

「はい、このくらいのものでしたら……ほら」

「わ、凄い! 手品じゃないんだよね!」

「えぇ、もちろんです」


 ぎゅっと手を握ってパッと開いたら黄色い宝石がコロンと転がり出てきた。

 手品みたいだけど、手品じゃないらしい。

 凄い! この世界は宝石作り放題なんだね。

 でも、手でぎゅっとしたら消えちゃうなんて、それはそれでもったいないというか、価値観変わりそうだね。


「ユウト様、次」

「他のもやるの?」

「全部やる」

「全部やるんだ」

「えぇ、()()()()()()()()()()()()


 全部なら別にどれからでもいいよね。

 じゃあ次は、この白っぽい石みたいなの(-メノウ-っていうの)にしようかな。


「…………(じー)」

「これも消えちゃったね……これで適性分かるの?」

「え、えぇ、分かりますからドンドン行きましょう」

「じゃあ、今度は似たよーなの」


 こっちのは中が薄く透けて見える(それは-オパール-ね)のが綺麗だね。


「…………(じーー)」

「やっぱり……」

「な、なに!?」


「「なんでもない(わ)」」


 ぜっったいになんかあるよね!?

 いいけど! 後で教えて貰えるんだろうし!

 あ、これも消えた。


 でも、このまま分かってる二人の言う通りにするのも、なんかつまんない気がする。


 どーしよう。

 二ついっぺんにやったら怒られちゃうかな(私が許してあげるわ)


「えい」

「……え!?」

「あ、二個のつもりだったのに三個やっちゃった」


 ガタンと音を立てて立ち上がったアイリスさんが目を丸くしてるけど、怒ったとかじゃなくて、驚いてるみたい?


「き、消えましたの?」

「え、うん。消えたらダメだったの?」

「いえ……消えたなら良いのですが……」

「残りが、ハーレイ、フェゼット、オード、デムテア、ネジュンだから……間違ってない」

「ですわね……さすがに鳥肌が立ちますわね」

「ユウト様はほんとに凄い」

「二人だけで分かっててズルいよー」


 後で説明するから先に残りを、って言われてもすっごい気になるんだけど、終わったらちゃんと教えてくれるって言うから、もうさっさと終わらせちゃおう。


「あ、ユウトさん、残りはちゃんと一つずつお願いしますね」

「えー……」

「お願いしますね?」

「……はーい」


 残り全部はダメか。

 仕方ないから一つずつ……ってあれ?消えない?


「消えませんか?」

「え? うん……なんかダメっぽいね……ってあれ?」

「あら?」


 石なんだから消えないのが普通だったよね、とか思いながら手を開いたら、真っ赤な宝石がツヤッツヤになってる。

 なんでツヤツヤに。


「……他のもお願いしますよ?」

「うん」

「ユウト様がんば」


 残りも全部消えないヤツで、ツヤツヤになった。

 消えるのとツヤツヤになるのの二つがあるのかな。

 このべっこう飴みたい(それは-アンバー-)なのも綺麗だよね。

 って、あれ。


「アイリスさん、アメみたいなのやっぱり消えちゃった」

「今ですか!?」

「う、うん。ごめんなさい」

「……リュリュ、聖水を」

「はい」

「ユウトさんは、申し訳ないですが、上着を脱いで下さい」

「え、うん……いいけど、説明は?」

「申し訳ありませんが、後少しだけお待ちを」


 もう! なんなのか早く知りたいんだけど!

 さっきは終わったらって言ったのに。

 脱ぐけど、次は絶対聞くからね!


「ユウト様、少しヒヤッとする、我慢」


 リリさんがハンカチに聖水? をつけて僕の背中を撫でる。

 水で拭かれたからヒヤッとするけど、ちょっと気持ちいい。

 それで二人して僕の背中を見てボソボソ喋ってる。


「ねぇ、僕もなんなのか早く知りたい!」

「お待たせ、上着着て?」


 リリさんに上着をかけてもらって、前に座り直したアイリスさんと改めて向き合うと、ゆっくりと噛み締めるように説明をしてくれた。


「まず、先程の石から説明しますね。あたくし達の世界には主神、名もなき至高の神を筆頭としてそれを支える10の神々がおられます」

「うん。それがさっきの宝石ってことだよね」

「はい。11の石はそれぞれの神に対応していまして、消えた方の神との親和性、つまり相性が良いのです。先程あたくしが作った様に、石は魔力から作られていますので、身体に溶け込んでいくものと思って下さって構いません」


 で、その相性は僕が好きに選んだ順番でいいらしくて、適当に見えても何かしら運命みたいなものに惹かれてしまうらしくて、ほぼ間違いがないそうだ。


 それで、僕の背中には神様に愛されてる証拠の聖痕と言うのがあるみたいで、それをさっき見ていたみたい。

 昨日、リリさんが確認した時は五つだったのだけど、僕がアメみたいなのを消しちゃったからまさかと思ったら一つ増えてたんだって。


「じゃあ、昨日のお風呂って聖水のお風呂だったの?」

「そう、黙っててごめんなさい」

「いいよ、今教えてくれたし、いきなり全部聞いても絶対忘れちゃうし」


 きっとまだ僕に言ってない事もあるんだろうけど、いいや。

 昨日の夜にみんなが僕の事大事にしてくれるって言ってくれたから、言えない事は僕の為に黙っててくれてるんだと、そう思えるから、だから、いい秘密なんだ。


「それでですね、ユウトさんには、今、六つもの聖痕が確認されたのです」

「普通は一個とかなの?」

「いえ、例えば小さな村で一つでも聖痕がある事が分かれば、祝福の子として大切にされるくらいですね。10人も子供がいれば一人か二人くらいはいるでしょう」

「えっと、探さないと見つからないとかじゃなくて、それなりにいっぱいいるってことだよね?」

「はい、一つだけならば、ですが」

「二個以上になると凄く少なくなる」


 神様にはそれぞれ司る(山に関係深い神様なら山の事に関係する祝福をくれるみたいな事)恩恵があって、それだから神様にも好みがあって、複数の神様から聖痕を貰うことは少ないと言われた。


「それが六つもあるの……?」

「昨日までは五個だった」

「と言いますか、今増えたとしか思えませんわね」

「そんな簡単に増えない、よね?」

「増えない」

「……まぁ、そこは今は置いて置きましよう」


 この聖痕は、要は神様が好きな子に印を付けてくれてるって意味で、聖痕があると色々ちょっとした幸運に恵まれやすくなるんだそう。


「えっと、つまり僕は六つもあるから凄く運がいいって事?」

「ザックリ言うとそうなのですが、ユウトさんの聖痕は、神の深い愛を示す秘痕なのです。普通は手の甲の部分であるとか、目に付くところに顕れますし、聖水をかけなくても見えるものなんですよ」

「え……じゃあ、凄く凄く運がいい?」

「運がいいと言う言葉ではおそらく足りませんね。ここまで来ると神々が常に慈しみ護っている……そうですね、どうあっても害悪を退けるくらいの加護があるかもしれません」


 それは過保護過ぎるんじゃないかな。

 というか、そこまでされたら僕が神様みたいじゃないか。

 僕が嫌だと思った事が起きなくなって、僕が思い描いた通りの妄想が現実になる、かもしれないくらいってことだよね。

 そう───


 僕が魔王を倒したいと願ったらそれが叶っちゃう。


 そういうことが有り得てしまう?

 それは銃なんて目じゃないくらい無慈悲で残酷な事だ。


 もしも、アイリスさんが言う程の加護があったとして、もしも、僕が誰かとケンカでもしたらどうなるの?

 後でちゃんと仲直りできる?

 それとも


 それとも───


 考えもしないような“とても不幸な事(殺してあげるね)”が起こってしまうかもしれない?


「ユウト様、大丈夫、大丈夫」

「ユウトさん……」


 リリさんが、後ろから抱き締めてくれて、アイリスさんが、手を握ってくれてる。

 あったかいはずなのに、僕の身体は寒さに震えるみたいにずっとカタカタ震えてた。




────── ───(震えちゃって 可愛い)


あれ?

なんか雲行きが怪しく……


タグにほのぼのを付けてない理由がここらへんにありますが、そんな酷い事にはなりません(予定)


行き過ぎた幸運は毒にもなるのです。

と、アイリス様は仰せです(^^)

次回は聖女様が元気いっぱいでやってきます。

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