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プロローグ
カツン
カツン
カツン
城の薄暗い東館の廊下にリズミカルに響く白色の軍服を着た男の長靴の音。
その男、グレン・ガヤは朝ごはん代わりの好物の林檎をかじりながら、国の第一王子が待つ執務室に向かっていた。
角を曲がったところ、友人であり、部下でもあるレナード・ディオニスが待っていた。
グレンは歩を緩めることなく、友人を通りすぎ、まっすぐ歩き続ける。
「相変わらずの緊張感のなさですね」と追いかけてきたレナードが笑顔のまま皮肉をこぼす。
グレンは鼻で笑うが、何も言わない。
執務室のドアの前で歳にして珍しい真っ白な髪の男が立っていた。グレンはその男の持つ皿に林檎の種をおく。そして男から重い剣を受け取って、腰にぶら下げた。
「手紙は先ほど使いのものに預かりました。」と白髪の男がグレンに言った。
「これで戦場での楽しみが一つ増えた。」とグレンが妖しい笑顔を見せながら、執務室のドアを開いた。






