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第六話  Death of a murderer

 松田信虎は驚いていた。

 まさか、あの魂魄早雲と戦うことになるとは思ってもいなかったのだ。

 魂魄早雲。見た感じはただの中年男性だが、彼の力は半端ではない。

 剣道の師範をしながら、警察官をしており、彼が捜査した事件で捕らえられなかった犯人はいない。

 だから松田が加害者である連続殺人事件を捜査しているのが、魂魄でないことを幸運に思ったぐらいだ。

 その魂魄と、ここで松田はここで戦わなくてならない。

 生き残る為に。

「沖川君、君は渚君を連れて逃げるんだ。ここはわしが食い止める」

「分かりました!」

 沖川は渚を背負ってから、そのまま逃走した。

「さて松田信虎容疑者。これで邪魔者はおらん。お前をここで殺す」

 松田が拳を握る。だが魂魄は握らない。

 そして、一斉に駆け出した。

 飛び出しながら、松田は右腕を引き絞る。

 そして魂魄よりも早く、攻撃を当てれば、あとはこちらが優位に立てる。

 その意思を込めた右ストレートを放つが。

 魂魄が、急に速度を落とし、松田の拳が当たるのを回避した。

 そして松田の目にも止まらない速さで魂魄は松田の右拳を左手で掴み、空いた方の右手を握り、松田の腹に叩きつける。

「・・・・・・・ごはっ!」

 殴られた衝撃で口から苦しみの声を漏らしてから、場外に飛び出しそうになるが、松田は右手で空中フィールドの端を掴んでから、復帰した。

 再びダッシュ。

 拳を握り、そのまま魂魄に殴りかかった――。

「甘いわ・・・・・・」

 ように見せかけた。

 松田は本気の半分ぐらいの速さで魂魄に接近してから、すぐに移動経路を変え、近くの木に移動し、それを本気で殴る。

 木は魂魄がいる方向に倒れていき。

 奴の体を下敷きにした。

 否、したと思ったが。

 木は魂魄の体を潰す前に場外へと飛ばされた。

 ――持ち上げて投げたのかッ!?

 魂魄は松田が次どうするべきか考えるより先に動き、松田の腹を掌で突く。

 松田はそのまま木に激突するが、立ち上がる。

 そろそろ、琴柄に撃ち込まれた銃弾の傷、そして先の沖川との戦いなどの要因が重なって体力に限界がきていた。

「わしを倒すには、まだ足りぬぞ」

 だが松田は笑っている。

 まだアビリティを使っていないからだ。

「では、殺してやる」

 その一言だけを呟き、魂魄は松田に接近する。

 松田は思考でアビリティを発動した。

「グングニル発動!!」

 その一言で、松田の右手がまるで槍のように鋭い何かに変形する。

 接近した魂魄も、それに驚いたのか、目を丸くしていた。

 松田は右手をそのまま。

 

 ――魂魄の胸部に突き刺した。

 

「な、んだと」

 魂魄は激しく動揺している。

 まさか自分が死ぬと思っていなかったのだろうか。

 魂魄の体は暫く痙攣していたが、すぐにぴくりとも動かなくなり、松田の右腕が元に戻った時にそのまま俯せに倒れた。

「はは、はは。

あっははははははははははははははははははははははははははははははは!!」

 暫く人を殺す事に飢えていた松田にとって、その瞬間は快楽だった。

 溜めていた笑いが、一気に心から溢れ出す。

 右足で、魂魄の死体を何度も踏んづける。

 だが。

 景色の色が、全て反転した。

 体はぴくりとも動かず、嫌な汗が流れる。

 目の前に、女の黒い影が現れた。

 それは剣のような何かで松田の体を貫いたが、色彩が全て戻った瞬間に、それは消える。

 一瞬の幻か、それとも夢かと思ったが、それでも自分が致命傷を負ったということは、胸を刺すような痛みが教えてくれた。

 血は一滴も流れずに、その場に俯せに倒れる。

 意識が溶けていく。

 そして、血のような赤い色が自分の視界を塗りつぶしてから、フェードアウトし。

 無となった。


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