第五話 A murderer and an old man and a boy
僕はなんて、無力なんだろう。
彼――沖川恭助はそう考えていた。
彼は今、一人の少女と行動を共にしている。彼女の名は渚。
名字は彼女自身も覚えておらず、プレイヤーの本名やプロフィールが記されている端末にも、名字は書かれていなかった。
自分から見て、彼女はすごく怯えているように見える。
だがそんな彼女を安心させてあげる程の力は自分にはなく、沖川は取りあえず彼女から極力離れないようにはしてあげている。
彼は昔から、弱いと言われ続けてきた。
黄色のストレートに、虚弱そうな青い目。この外見のせいで、彼は女と間違われることもある。
そんな外見のせいか、力仕事などで役に立ちそうと言われたことはあまり無い。
勿論外見とは全く関係無いが、上手くやれたことも一度もない。
「あの・・・・・・大丈夫ですか・・・・・・? 私のせいですか?」
「いやその・・・・・・君は悪くないよ。こんな状況だ。怖くなっちゃうのも仕方ないよ。僕だって怖いよ」
「じゃあ、一緒ですね」
渚は沖川の背中に抱きついた。
――僕が慰められちゃダメじゃないか。
「あ、う、うん」
でもなんだか、勇気が沸いてきた。
頑張ろう!
「へー。こんな所にカップルとはなァ」
その声と共に、ナイフが顔面に飛んできた。沖川は刺さる前にしゃがみ、それを回避する。
「松田さんッ!」
ボサボサの髪、着崩したスーツ。そして鋭い三白眼。
松田信虎。彼以外には考えられない。
「そうか。後は君を倒せば、このデスゲームは平和的に終わる!」
沖川はナイフを取り出して、松田に向ける。
「今日は何だ? そろいもそろって、ガキが殺人鬼たる俺にナイフを向けやがる。俺は弱くねえ。断じて弱くねえんだよォ!!」
松田が駆け出す。沖川もそれに合わせ、ナイフの切っ先を向け飛び出す。
奴の腕が少しばかり伸びたように見えたが、気のせいだろう。
沖川はその腕を問答無用に蹴り飛ばす。そのまま松田の右腕がまるで踏切のバーの如く上がる。
彼のナイフは腕から離され、宙を舞った。
――もらった!!
「調子に乗るなァ!」
松田の左拳が、弾丸の如く沖川の胸に突き刺さる。
沖川は回転しながらナイフと同じく上空に飛ばされた。
――上空? ということはッ!
空中で体勢を立て直し、沖川は松田のナイフを取る。
そして両手をクロスさせた。
そのまま開く。
「ぐほッ!」
だが。
その叫びを漏らしたのは、松田ではなく、攻撃した沖川だ。
松田の左拳はもう、沖川の腹にめり込んでいた。
そして右手は、沖川の左腕に手刀を浴びせている。
「ぐっ!」
「これで終わりだァ!!」
松田の左拳が一瞬で引っ込み、再び一瞬で突き出された。
沖川はそのまま吹き飛ばされ、地面に叩きつけられたが、意識は保っている。
「さァ、これで終わり――
ぐほあッ!
!?
目の前に現れた人影が、松田を吹き飛ばした。
「若者を虐げる行為、関心せんな」
「てめぇは・・・・・・・魂魄ッ! 魂魄早雲!」
すみません。今回は低クオリティです。
次回は何とか頑張ります。ではまた来年。