第四話 Lucky girl and murderous demon
「・・・・・・ねぇ、聞こえる?」
ん?
「・・・・・・ねぇ、大丈夫?」
あれ・・・・・・。私は確かに斉藤君に倒されて・・・・・・。
「どうやら気付いたみたいだね」
白い髪に、緑の瞳。それに女性では有り得ない180センチはありそうな長身。
確か彼女は・・・・・・。
「琴柄さん?」
「そう。ボクは琴柄 凪」
「あのさ、私はどうなっていた?」
私の質問に、琴柄は腕を組みながら答える。
「キミなら、斉藤クンに殺されそうになっていたよ。
ボクは偶然通りがかったから、彼と戦ったんだけど、かなりの手練だったよ。
そしたら運が良いことに、彼をこの空のフィールドから落とすことに成功したんだ」
え・・・・・・? じゃあ斉藤君は・・・・・・。
「斉藤クンなら、今頃落ち続けていると思うよ。勿論この世界はここ以外に地面みたいなものはないみたいだし、ゲームが終わるまで永遠に落下し続けるか、またはどこかで死亡したと判断されて毒薬を注射されていると思うよ」
「それって、君、人殺しじゃ・・・・・・!」
「でもねアサミさん、彼みたいに反対する者は当然いるわけだし、確かにキミみたいに全員で生き残ろうという考えは理想的だけど、こんな状況だと必ず何らかの犠牲は付き物なんだよ」
私は何も言い返せなかった。
「所詮彼みたいな絶望は希望の踏み台に相応しく無いからね。だから彼は希望の踏み台として犠牲になってもらったよ。
まあキミの言う通り、これからは犠牲を出さないようにしたいと思うよ。
これからよろしく」
琴柄の差し出した手を握り返す。
「本当に、これから犠牲は出さないでね」
「勿論だよ。ボクは一度した約束は守るさ」
ちょっと心配だが、疑うのは私の趣味じゃない。
いざという時は止めればいいさ。
「それにしても、ボクのアビリティおかしいと思わないかい?」
「え?」
「ボクのアビリティは《幸運》らしいんだけどさ、ホントに運が良かったら、このゲームから抜け出せてもいいと思うんだよねー」
「あはは・・・・・・」
私は思わず苦笑する。
「でもボク、リアルだと結構運が良い方だよ?
宝くじとか二回ぐらい当たったし。
勉強しなくても運で点数取れちゃったし」
「えー」
そんな強運があるなら是非とも私にも欲しいのだが。
「まあでも、こんなゲームに巻き込まれてる時点で、幸運とは言えないけどねぇ」
「そ・・・・・・そうだねぇ」
苦笑いしながら琴柄さんとの会話を楽しむ私。
そこに一人の男が接近しているのも知らずに。
「待ってアサミさん。誰か来てる」
「え?」というよりも早く、ナイフを握る筋肉質な男が飛び込んできた。
私と琴柄はステップして彼の突進を躱す。
「ちっ、おしいな」
琴柄は拳銃を松田に向かって発砲する。私の約束通り、足止め目的で撃ったようだが、連続殺人鬼に当たることはなかった。
「さすがだね松田クン。ボクみたいなクズの発砲とは言え掠りもせず避けるなんて」
「てめーらに敵を褒める暇なんてあんのか? まァいいさ、一分すら掛けずにそこの白髪女を殺る」
松田がナイフの切っ先を琴柄に向ける。琴柄も照準を松田に合わせた。
駆け出したのは松田だった。一瞬にして琴柄との距離を詰め、琴柄の豊富な胸に、その切っ先を突き刺す。
だが。
白い光が琴柄から放たれ、松田は吹き飛ばされた。
「悪いね。ボクのアビリティは、どんな攻撃も防御するんだ。まあ一度使うと一定時間使えないんだけど」
「それ敵に教えちゃダメよ!!」
私は琴柄に叫ぶ。
彼は特にダメージを受けていない様子で軽々と立ち上がり、琴柄にナイフを向けながら飛び出す。
琴柄は三度発砲する。
二発は避けられたが、一発右肩に貫通し、松田は失速した。
右肩を押さえながら転んだ松田に向かって、琴柄は銃口を向ける。
その銃から二発の弾丸が放たれ、一つ目は右の、二つ目の左の脛に命中した。
「女の癖にやるじゃねえか・・・・・・」
琴柄はその質問に対して答えるより早く、どこで拾ったのか分からないロープをスカートのポケットから取り出す。
そして歩けない松田を木に貼り付けてから、グルグルと巻いた。
「これでしばらくは動けないはずだ。ボク達の邪魔をしないでくれよ」
私がそのままにしておく筈がないと察したのか、動くより早く琴柄は私の手を握り、歩き出す。
「君強いね・・・・・・」
琴柄は俯きながら、でも微妙に微笑みながら答える。
「ただの運、偶然だよ」
松野心夜です。気管支炎中の松野心夜です。
最近小説や絵やTwitterやゲーム以外何もやる気しません。
はあ・・・・・・次回をお楽しみに。
というか、主人公死んじゃってるじゃないですかー嫌だー。