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第二話  Commit boy, a murder

「これで分かっただろ。俺が手を下さずとも、《裏切り者》と呼ばれる奴は何らかの手段で、プレイヤーを殺してしまうんだ。

だから北条朝美。お前が本当にこのデスゲームを終わらせたいのであれば、お前の中の妄想を捨て去るんだな。それが出来ないならば、すぐにでも命を絶つべきだ」

「ダメだよ・・・・・・。殺し合いなんて、そんなの」

 女の声。しかしアサミのものではない。その声から、かなり弱々しそうな印象を受けた。

 その少女の名前は、空から振ってきたあの端末で唯一、フルネームが表示されていない。

 ただ、『(ナギサ)』と書かれているのみ。

「お前も分からないのか? 今、目の前で一人の人間が死んだ。それが分かった上で言え」

 

「俺も斉藤の意見が正しいと思うぜ」

 

 スーツを着崩した髪をボサボサにした青年が呟いて、俺に近づく。

 名前は、松田(マツダ)(ノブ)(トラ)。確か指名手配された凶悪犯だった気がするが。

「ま、松田さん!!」

「悪いな北条朝美。俺は別に斉藤みたいに仕方なくとかじゃなくて、純粋に人殺しがしたいだけだからな。お前の意見は聞かん」

「だからって、人を殺すなんて! そんなの最良の選択とは思えない!」

 チッ、と俺は舌打ちをした。

 やはりこの女は死ぬべきだ。

 俺は剣を下段に構え、アサミ達に近づく。

 アサミは少しずつ後退する。

「皆、逃げて!」

 アサミより少し大人びた声の女性が叫び、アサミや渚達は散り散りになって逃げ出し始める。

 俺はそれを追おうとするが、それは唯一残った一人によって出来なくなった。

 

◇◇◇

 

 北条朝美は必死に駆けていた。

 振り返らずに。

 理由はただ一つ。人を殺さなければこのデスゲームは終わらないと訴える斉藤と、デスゲームという状況を利用して殺人を起こそうとする松田から逃げるため。

 自分の言っていることが綺麗事なのは、自分が一番よく知っていた。

 でも綺麗事だって、それを信じて行動すれば叶うかも知れないということも同時に知っている。

「あまり考えすぎない方がいいわ」

 先程私に逃げるように呼びかけ、今は隣で走る遠山(トオヤマ)(ユメ)()の声。

「え?」

「このデスゲーム、すごく厄介よ。記憶を共有出来ない殺人鬼のAIが埋め込まれた人物を探すのは、本当に難しい。

だからこそ、些細なことに悩んじゃダメよ。

斉藤君達の意見を肯定するわけじゃないけど、まずは皆で脱出する方法じゃなくて、自分だけでも生き残る方法を探すことが先決よ」

「自分だけ生き残るなんて、そんなことはしたくないよ」

「アサミさん?」

「斉藤君だって、本当は人殺しなんてせずにこのゲームを終えたいはず。だから覚悟が決まったら、止めようと思うんだ。彼を」

 遠山は微妙に微笑みながら言う。

「そう。じゃあ戦闘は、貴女に任せるわ」

「遠山さんは?」

「私は、この世界に何か無いか調べる。警察として、やっぱりこの状況で何もしないわけにはいかないわ

私はこの辺で捜査するから、貴女はそのまま逃げていなさい」

「うん。分かったよ」

 アサミが呟く。遠山は足を止めて、そのまま私が去る姿を見ていた。

 

◇◇◇

 

「そこを退け、ダリル・デクスター」

 俺を阻むアメリカ人のプレイヤーに命令する。

「人殺しなどさせん。俺が止める」

 ダリルはサバイバルナイフを右手に握り、俺を止めようとする。

 無駄なことを。すぐに殺してやる。

 俺は片手剣を下段に構えた。

「いいのか? 俺は軍人だぞ。何を考えているのか知らないがただの高校生が、軍人である俺に勝てるわけがない!」

 ダリルが俺に向かって突進する。俺は下段に構えたままその場で動かない。

 ダリルのナイフは弾丸の如く此方に飛んできた。

「ぐほあっ!」

 血を吐くような絶叫。しかしそれは俺の口から放たれたものではない。

 俺が下段から振り上げた剣によって肉体を真っ二つに裂かれた男――ダリルのものだ。

 唐竹で切られた竹のように割れたダリルからの流血は凄まじい量だ。

 殺してから数秒間は、倒せたことにただ安堵し、笑っていたが、すぐに死体に対する拒絶反応が起きた。

 まず震える右手から、白銀の柄を持つ剣が落ちる。

 次にVR世界の筈なのに、胃から何かがこみ上げるような感覚。喉を通り、それはやがて口に到達し、我慢しきれなくなった俺は抑えていた左手をどかしてダリルの死体に向かって下を向く。

 俺は嘔吐した。

 俺は殺人が、これほどグロデスクだとは思っていなかった。

 吐瀉物が血と混ざって変色するが、俺はそれ以上見ていることが出来ず、そのうち意識を失って吐瀉物と血の上に俯せに倒れた。


松野心夜です。浅井三姉妹のバカな日常のネタが思いつかない松野心夜です。

汝は裏切り者なりや? 第二話をお届けします。

しかし今回は表現が少しグロデスクですみません。さすがにやり過ぎました。

僕もこれを書いている時、リアルで吐きそうになりましたが、今回だけにしますので許して下さい。

そろそろ浅井三姉妹のバカな日常を書きたいと思いますので、気長にお待ち下さい!

はあ、12月かー。

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