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第二話

「ところで転生先の世界ってどんな場所なんだ?」


自分がどんな世界に転生するのか、これは非常に気になるところである。すでに滅んでましたとかどこぞの世紀末な世界だったら洒落にならない。


『そうですね、貴方にもわかりやすく説明すると剣と魔法のファンタジー!でしょうか』


うん、すごいわかりやすい。えらい曖昧だけど。


『百聞は一見に如かず、とも申しますし御自身の目で確認したほうが早いでしょう』


だからなんでお前はそう仕事に熱意がないんだ!何かあってからじゃ遅いから確認したいんだろ!


「ひょっとしてお前ほとんど何も知らないんじゃ?」

『そんなことはありません、私をなんだと思ってるんですか。神様ですよ?』

「あぁ、とんでもない疫病神だ」

『ふふふ・・・ここまで私をコケにしたのは貴方が初めてですよ・・・』

「お褒めに預かり恐悦至極、能力のことといい転生先の情報の掲示といい適当すぎるだろ!嫌がらせかオラァ!」

『多分嫌がらせ』


マジで嫌がらせだった、なんなのこの仕打ちは!最初の謝罪はどうなったんだ、ここまでくるといっそ清清しさすら感じるぞ。俺はもう神なんて信じない。


『さて、冗談はここまでにしておきましょう。実は貴方の転生が予定より早く始まりそうなので時間があまり残されていないんですよ』

「なんでそんな大切なことを早く言わないんだ!」


ここにいられるのって時間制限あったの!?それを最初に言ってくれればもっと有意義に事を進められたのにどうしてこうなった。やっぱ神様の考えること凡人には理解できない。


『伝えるのが遅くなってしまい申し訳ありません、ですが貴方の反応がとても面白かったのでつい・・・本来であれば粛々と転生作業に取り掛かるのですが貴方の場合は特例ということもありましたしね、珍しいんですよ?一部とはいえ前世の記憶を継承したまま転生なんて』

「お前のミスのおかげでなー」

『まぁ、そうだったのですか』

「完璧にお前が加害者だって忘れてるな、何その初めて知ったみたいな反応。皮肉も通じないのか!」


転生まで時間がないってのに結局ほとんど何もわからず収穫はなし。俺はこれからどうなるのか不安しか残らない。もうなるようにしかならないというのか。


『それでは時間も押してますしこれから生まれ変わる貴方の個人設定に移らせていただきますね』

「もう好きにしてくれよ・・・・」


完全に諦めムードの俺。漫画やゲームの転生物ってもっと楽しいものだと思ったんだけどなぁ・・・ワクワク感が皆無ですよ、絶望感しかありゃしねぇ。


『元気だしてください、これから転生後も一緒に行動するんですからそんなんじゃ私が困りますよ』


ん?いまこいつなんて言った?一緒に行動する?ここで別れて転生先には俺一人で放り出されるものだと思ってたが違うのか?


「一緒って・・・どういうことだ?」

『私のミスで貴方の本来の人生を滅茶苦茶にしてしまった事に関して負い目を感じているのですよ。すでに終えてしまった人生をやり直すことはできません。ですからせめて新しい人生では前回よりも充実した素晴らしい毎日を送っていただこうかと。その為に精一杯サポートをさせていただきます』


不覚にも涙が出そうになった。不安しかなかった状態でこんな優しい言葉をかけられたら誰だってこうなるだろう、軽く手で目を拭って心を落ち着かせる。もう何もかも許してやれる気持ちになったきた、いままでの態度がアレだったからもう不信感しかなかったがやはりこいつも一応は神様だったということか。


「ありがとう、いまの言葉でとても救われた気分だ。お前のことを少し誤解していたかもしれない」


黒いもやもやに頭を下げ、感謝の言葉を述べる。もう少しだけ態度を改めてもいいかな、こいつなりにちゃんと考えているようだし。我ながらちょろい奴だと思うが救われたという気持ちは本当だ。


『ちょろいですね。それではこちらの画面を操作して設定をしてください』

「うん、知ってた。お前がそういう奴だってうわっ!」


目の前に突如画面が浮かび上がりそこに記入された文字が淡い光を放つ。目でそれを追うと職業・名前・年齢など各種項目があることがわかる、ちょっとワクワクしてきたぞ。どういう設定にしようかな、キャラクタークリエイトする時ってすごい楽しいんだよね。


『あと五分で決めてください。』

「だからなんでそういうの早く言わないの!わざとなのか!俺の新しい人生を充実させる気あんの!?」

『貴方を全力でサポートします』

「ちょっとお前黙れ、いまは一秒でも惜しい」

『しゅん』


しょんぼりアピールなのかそんな台詞を吐いて黙る黒いもやもや、はたから見ると赤黒い何かが無言で蠢いているっていうちょっとした都市伝説のような光景だが今は無視して設定を決めていく。


『そろそろ時間ですが大丈夫ですか?』

「あと外見設定だけだけどやたら設定項目多くないかこれ!」

『ほとんどの人が一番気にするとこですからね、貴方さえよろしければ前世での外見をそのままコピーできますが』

「よし、それ頼む!」


初めてちゃんと役に立ったな。イケメンになって女性にモテたいとかそういう気持ちもちょっとあったけど設定した顔が転生後の世界でも通じるかわからない。こういう感情があるってことは多分前世ではモテなかったんだろうと思うと少し悲しくなった。せめて生まれ変わった先の世界で恋人の一人くらい作りたいな・・・やめよう、なんか泣けてきた。


『すべての設定項目を入力完了。あとは転生を待つだけですね、少しだけ時間もありますし何か質問とかありますか?』

「質問したところで満足のいく答えがくるのか?いままで俺の質問にお前がどう答えたか思い出せ」

『・・・・?何か不都合がありましたか?』

「不都合しかなかっただろ!どんだけ自分に都合のいい記憶捏造してんだ!」

『過去を振り返るのは老人の特権であり我々若人は明日を作るのが義務だと思いません?』


多分良い台詞なんだろうけどこいつが言うと腹立つな、しかしそれなりに負い目も感じて転生後も俺についてきてくれるようだしここはじっと我慢しよう。なんだかんだでノリのいい奴だしな。


「っと、そうだ。一番大事なこと聞き忘れてた!言語能力とかどうなってんだ?生まれ変わったはいいけど言葉が通じないとか無理ゲーだぞ?」

『それに関しては問題ありません。転生先に移動した時点でその世界に適応した言語中枢が貴方の中に作成されますので、文字の読み書きも可能ですよ』


よかった、不安のひとつが解消された。初めてじゃないか?こんなにすんなり質疑応答ができたの。

あぁ、あともうひとつ大事なことを忘れてたな。色々な事がいっぺんに起こりすぎてすっかり忘れていた。黒いもやもやに向けて言うべき言葉を考えていると目の前に光り輝く扉のようなものが現れる。


『準備が整ったようですね。さぁ、新しい人生を始めましょう』

「なぁ、お前の名前教えてくれよ。これから共に行動するのにいつまでもお前とかこいつとかじゃ味気ないだろう?」

『ふふふ、人の名前を尋ねるならまず自分から名乗るのが礼儀では?』

「ははは、その通りだ。俺の名前は―――」


さようなら前世、こんにちは来世。先ほど決めたばかりの新しい名を名乗ることによって俺は完全に生まれ変わる。


「―――グリムだ。君の名前は?」

『私の名前はリリューイス・ミクトランテクートリ、リリィとお呼びください』

「よろしくな、リリィ」

『よろしくお願いしますね、グリムさん』


不安は少し・・・いやかなりあるけど悩んでいても仕方ない、こうなったら腹を括って新しい人生をよりよいものにするためにがんばるとしよう。意を決し扉に向けて歩き出す。


俺の物語はここから始まる!



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