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第一話

「あれ?ここ何処?」


気づけば俺は何もない空間に一人佇んでいた。あたりを見回すがただただ白い空間だけがどこまでも続いている。


「そもそも俺はなんでこんな場所に?」


どういった経緯で自分がこんな場所にいるのか思い出そうとしたが・・・何も思い出せない。どうでもいい雑学や基本的な知識はあるようだが自分自身の事はさっぱり何も思い出せないのだ。どういうことだろうか、記憶喪失?まさか自分がそんな物語でしか聞いたことないような状態に陥るなんて夢にも思わなかった。というかこれ夢か?いくらなんでも荒唐無稽すぎるだろう。


『こんにちは』


ん?いま何か・・・挨拶?誰が?慌てて顔を上げて周囲を確認すると・・・黒いもやもやした何かが目の前にいた。


『こんにちは』


俺が聞こえてないと思ったのだろうか、先ほどよりも少し大きめの声で挨拶を繰り返す黒いもやもや。

というか、黒いもやもやと表現したがこれ黒というか赤黒い?どす黒い?ものすごく邪悪な感じがするんですけど。とりあえず様子を伺ってみようと相手の反応を見ることにする。


『言葉が通じないんですか下等生物』

「いきなり暴言吐いたぞこのもやもや!」


そりゃ自分が高等な生物だなんて思っちゃいないがいきなり罵倒されるとは思わなかったよ!?

挨拶されたら挨拶を返すのが礼儀だけどこんな状況で冷静に挨拶を返せるほど俺は鋼の精神持ってないよ!だって矮小な存在だもの俺!あれ?下等生物で合ってますね。


『ちゃんと通じてるじゃないですか。よかった、このまま言葉が通じなかったらどうしようかと。最悪なかったことにして貴方をその矮小な存在ごと消してしまおうかと考えてたところですよ』

「とんでもないことさらっといってるけど俺そこまで悪いことしたかなぁ!?」


知らないとこで大ピンチだったようだがいきなり消すとかこのもやもやは一体なんなのだろうか?

言葉は通じるようだし質問してみようかな・・・?でもまた下手打って消されるようなことになったら流石にまずいよな、そもそも俺本当になんでこんなとこにいるの。誰が状況を説明してくれ!


『紹介が遅れましたが私は神です、そして貴方がここにいる理由ですが現世での貴方の生命活動が不慮の事故により終了した為、その謝罪としてこの場に召喚した次第です』

「ちょっとまって!いますごい事言った!何?もう一度お願いします!」

『私は神です、ゴッド、とても偉いんですよ崇め奉れ虫けら』

「そこじゃねぇよ!不慮の事故ってとこ!あとさりげなく人を馬鹿にすんな!オケラだってアメンボだって一生懸命生きてるんだよ!馬鹿にすんな!」


なんでこの自称神はナチュラルに人を罵倒するんだ。その手の趣味の人なら喜ぶべき状況だろうけど俺にそんな特殊性癖はない。というか不慮の事故?聞いた感じでは俺が死んだのは不測の事態があっての事であり、謝罪をするために呼ばれたという。なるほどわかった、わかりたくないけど。

兎に角何故こんなことになったのかその理由を聞こうじゃないか。


「で、俺はどうして死ななければならなかったんだ?」


俺の知らないところで不慮の事故とはいえ勝手に人生を終了させられたのだから原因を知る権利がある。早いとこ理由を聞きださないと話が進まない気がする。勝手に呼び出されて罵倒され続けるとかどんなプレイだよ。


『え?理由ですか?ちょっと上司にセクハラされて八つ当たりでつい・・・・』

「想像以上にしょうもない理由だった!」

『誠に遺憾である』

「本当に残念だよ・・・あとそれ謝罪になってないからな?」

『ごめんちゃい』

「喧嘩売るか、いますぐ謝罪するかどっちかにしろ」


何かとんでもない事態に巻き込まれての事だと思ってたがこれはひどい、どこの給湯室のOLだよ!あと神様?にも上下関係あるのね、初めて知ったよ。くっそどうでもいい。八つ当たりで俺の人生終了とか俺が一体何をしたんだ!


『だから謝罪してるじゃないですか、気持ちを込めて』

「謝罪って言葉を辞書で調べなおしてこい」


どう考えても謝る態度じゃないよね、神様だからってなんでも許されるわけじゃありません。


「謝罪はもう期待しないから戻してくれよ、神様だっていうならそれくらいはできるんだろう?」


それでこれまでのことはなかったことにしようじゃないか、これぞ大人の対応である。ん?俺っていくつで死んだんだ?そもそも記憶が欠如してるので自分の経歴や家族構成すらわからない。


『あ、すみません。現世の復活は無理ですね。もう貴方の魂は転生待ちの状態で現世での記憶の洗浄はほぼ終わってるんですよ。記憶がないのはそのせいですね』

「何勝手に進めてるの!あと心読むな!記憶がないのもそのせいかよおおおお!」

『さてここからが本題ですが』俺の正しい怒りをスルーすんな。

『まぁまぁ、先ほど申し上げた通り貴方はいま転生待ちの状態です』

「復活は・・・無理なのか」

『無理ですね、いまの貴方に残されたものは現世で貴方が培った知識の一部くらいでしょうか』


知識の一部・・・?聞いている限りでは何か意図あって残したように聞こえるがそれはつまり・・・


「これがお前の謝罪の気持ちということなのか?」

『はい、現世での・・・いえ、もう前世といいましょうか。一部とはいえその知識を残したままで転生というのはかなり優位だと思いませんか?』

「知識だけあってもそれを活かす環境と物資がなければただの妄想で終わるぞ?とてもじゃないが優位と決め付けられないだろう。それに自分でいうのも何だが俺自身そこまで大層な知識を持ち合わせちゃいない」


悲しいことに前世での俺は大成した人物ではなく極めて普通?の人間だったようである。専門的な知識とかないか思い出そうとするがまったく脳内に引っかからない。思い出すのはゲームとか漫画が多いってどういうことなの。あと落語の寿限無とかどこで覚えたんだ俺。


『ですのでその一般的な基準値を満たしているかも怪しい低脳かつ貧弱な貴方の知識でも存分に活かせる素晴らしい能力も差し上げます』

「そこまで自分を卑下してないし!普通だし!」


こいつ隙を見せるとすぐ毒を吐くな。黒いもやもやなのはあれか、毒素か。それはそれとして何か能力がもらえるらしい、こいつは幸先いいな!などと思ったがそもそもこいつのせいで転生するはめになったのだからプラマイ0である。むしろマイナスか?前向きに考えたい。


『それじゃ能力の説明を・・・したいところですが説明をすると長くなるのであとで自分で確認してください』

「いきなり大切な部分丸投げするな駄目神」

『いえ、習うより慣れろって言葉もあるじゃないですか。何事も実践だと思うのですよ』

「ただの職務放棄じゃないですかね、そもそも元はそっちのミスから発生したことだろ責任持てや邪悪の化身みたいな姿しやがって!」

『これは仮の姿でして、本当は超絶美少女で本来の姿で出るとあまりの美しさにそこの下等生物が発狂して放心状態になり話にならなくなる恐れがあるからこの姿なのです。気配りのできる神ですね、感謝していいんですよ?』

「絶対ぇ感謝しねぇえええええ!」


いかん、話がどんどん脱線していく。話を元に戻さなければ!このままでは延々と子供の口喧嘩をし続けることになりそうだ。ともかく能力は自分で確認するとして次は転生先の情報だな、何の調べもなく未開の地に赴くとかそこまでフロンティア精神に溢れてない。そうと決まれば行動を開始しよう。


俺の物語は始まってすらいないのだから!





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