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作者:

真っ白な雪原に、足跡を付けながら彼女は歩く。

ザクッザクッと雪が潰れる音が心地良い。


立ち止まり辺りを見渡せば、それはとても綺麗な空から汚れのない雪原が見て取れる。

呼吸をする度に冷たい空気が喉を通り肺を通り、そしてまた喉から外へ。

少し暖められた息は、冷えた空気に触れて白い煙のようなものを、その目に映し出す。

それを数回繰り返し、また歩を進める。

行く宛はなく、そもそも現在地が何処なのかも分からない。

知ってるのは、自分が何者なのか。それだけ。



歩き続けてどれほどの時間が経ったか。

彼女はふと足を止めた。

視線の先には古い家らしきものがある。

周りには何も無い、木の一本も生えていない。

真っ白な大地の真ん中にあるその家はとても不自然なものに見えた。

しかし、彼女は何の戸惑いもなくそこを目指した。


コンコン、と扉をノックするも返事はない。

怪訝な顔をしながらドアノブを捻ると、意外にも回った。

そのまま注意深く、ゆっくりと扉を開けていく。


僅かな隙間から中を覗き、様子を窺うも誰も居ない。

彼女は周りを確認してから家の中へと入っていく。

部屋の中は質素で、囲炉裏と少し大きめのベッド、それにソファーが一つだけ。

誰かが住んでいた形跡はあるも、住人が何処へ行ったのかまでは分からなかった。


彼女は疲れた体をソファーに預け、深くため息を吐いた。

囲炉裏の火は燃え続け、冷え切った彼女の体を暖める。

暖まった体と安堵から、どっと疲れが出てきた。

彼女は燃える火を見ながら、次第に閉じていく瞼に身を任せて眠りについた。


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