私のガンダムグラス
母さん、私が大事にしていたあのグラス。どこに行ってしまったんでしょうね?
ええ、ええ、
サントリーのオレンジジュースをセットで買うと付いて来た、
五個入りの格好いい、ガンダムのグラスですよ。
あれは大切なグラスでした。
玩具など碌に買っては貰えない昔の頃に、しつこくねだって何とか買って貰えた。
あれ、私はずっと「バヤリース」だと思ってたんですが、
実は「エード」ってジュースだったみたいで、
ま、そんな事はいいんですが、
すごくお気に入りで、ささやかな私の宝物でした。
けどその大切なガンダムグラスが、
「ごめんなさいねえ、洗ってたら手が滑って~・・・」なんて、
今日一つ、そしてまた一つと次々に・・・・・。
そのくせ何で、私がいつか買ってきた100円のグラスは
いつまでもピンピンしているんですか!
・・・いえ、
最近になって私も漸くわかりました。
要するに母さん自身が“何だこんな物”って、思っているやつは、
そうやって割るんですよ。
ええ、詰まりそういう事なんですよ。
書き忘れていましたが、森村誠一氏原作『人間の証明』でも
引用された西條八十さんの詩『ぼくの帽子』からの
アレンジとなっております。