就寝準備
澄んだ山の空気が体の中へと流れ込んでくる。静かな山の中にひっそりと建てられたテントの中からじめっとした空気が外へと飛び出す。各テントの周りには円形のテーブルそしてそれを囲むようにおかれた丸い椅子。テントの中へと3人の男子フレッシュ組は荷物を置く。テントといってもファミリー用みたいなちゃちいやつではない。もともと立ててある土台の上にテントを張ったようなもので中はびっくりするくらい広い。子供を含めて10人はここで寝ることができそうだ。荷物を置くと僕らは早速就寝準備をする。あまりにもはや過ぎるような気はしたが、キャンプ場ではこれが普通。まず準備をしておかないと、夜の真っ暗なテントでの作業となる。僕らはまだいいとしてもキャンパーさん(キャンプに来てくれる人のこと)にとってはなかなか厳しい。そんなわけで就寝準備をすませ再び涼しい風の吹くテントの外へと逃げるように出る。そこからまよわないようロープが張ってあり、道となっているところを少々早歩き気味で下って行く。ところどころに木の根っこが飛び出していたり、雑草が生えていたりと道は荒れ放題だった。
「どうした宮間。ん、道が荒れてるって?それはまあしゃーねーだろう。このキャンプ場は昨日までは使われていなかったんだし。」
「えっ!そうなのか?」
「うん。まあこのキャンプ場では一番下にある第1キャンプ場から人を埋めていくから、第3に人が来るのは8月の1週目くらいからなんだよな。」
「へえ。でも今日はそのキャンパーさんってのは来ないんだろ。それでワークキャンプをやるって聞いてたんだけど、ワークキャンプってなんなんだよ。」
「さっきみたいに道が荒れてたり、溝の間に隙間があったりするだろ。俺たちはまあいいとしてもキャンパーさんがけがをする可能性が少しでもあったらそれを直す。少しでも気持ちよくこのキャンプ場を使ってもらうためにね。でもそんなことをキャンパーさんが来てからやってたんじゃ遅いだろ。だから人がいないときにやってしまう。それがワークキャンプさ。」
「そのままの意味で『仕事キャンプ』ってことか。」
そんな会話をしているうちに炊飯場へとたどり着く。もう一人の男子は栗山と名乗ったが会話には入ってこようとしなかった。まあ入ってこれないという気持ちはわかるけども。
炊飯場ではすでに女子のグループがイスと机がくっついているもの(だから椅子が引けないんだよなこれが。)にすでに座って待っており、机の上には運動会でしか見ることの無いようなひも付きゼッケンと緑色のマジックが三本のっていた。
「おっきたきた。まあ座って話を聞いてね。」
カステラさんに言われるがままに席に着くと話を始める。
「改めまして、カステラです。今日は皆さんにはワークキャンプ兼研修キャンプに参加してもらってキャンプの大まかな流れを体験してもらいたいと思います。それでまず皆さんにやってもらいたいことはまずキャンプネームを考えてもらうとこからです。キャンプネームっていうのは私みたいな………あだな?みたいなものかな。でもこれにもちゃんと制約みたいなものがあってね、本名をもじったものはダメ。あとキャンパーさんが付けそうなのも駄目ね。たとえばファイヤーとか。あとキャンプネームっていうのは永久欠番なの。だから前にいたカウンセラーさんのキャンプネームも駄目と。あとまあ教育的にこれはまずいだろってのは考えてね。最終的にチェックはするけど。あと1っ回決めたらもう帰ることはできないからじっくり考えてね。」
キャンプネームの説明を終えるとすでに考えていたのか坂井がカステラさんにたずねる。
「『プッシュ』っていうのは大丈夫ですか?」
「…………うん。大丈夫。それでもういいの?」
「はい。ここに来る前から考えていたんで。」
坂井(いやもうプッシュなのだろうか?)に続いて一人の女子がたずねる。
「私は『ロング』がいいと思うんですけど。」
「ロング、ロング……うん大丈夫かな。」
とあっさり決まる。そのあと数分間みんなでうんうん悩んだ結、僕のキャンプネームは『ゴーグル』に栗山君は『メラメラ』。最後の女子は『くるくる』に決まった。
みんなは各々決まった名前をゼッケンへと大きく書き込んでいく。
「キャンプ中はたいていの時このゼッケンをつけてワークをしてもらいます。子供たちに名前を覚えてもらえるようにっていう配慮だから。」
カステラさんにならい僕たちもゼッケンをつける。真っ白なゼッケンが日の光を受けまぶしく輝いていた。こうしてキャンプ場での生活がスタートした。
はい。冷凍レモンです。実はこの作品のキャンプネームの中には僕冷凍レモンが使ってるのも入っています。さあどれでしょう。(笑)答えは次回で。
ちなみにキャンプネームは4文字ほどがベストだそうです。