上山
8月のはじめ、アブラゼミがなく声に包まれた暑い駅前広場に僕は立っていた。プールバックを持った2,3人子供たちがワイワイとはしゃぎながら大きな荷物を持つ僕の前を横切って行く。塾がある建物へと急いでいる高校生の姿が目に入ってくる。寸分の狂いもなく電車は発着を繰り返している。暑さに負けて額から流れ出してきた汗をタオルで拭い改めて自分の腕時計に目線を落とす。大学の入学祝にもらったまだ新しい時計だ。時計の針は10時過ぎを指していた。喬木が乗らなければいけないのは10時20分のバス。まだ少し時間がありそうだ。そんなことをボーと考えていると不意に後ろから肩をたたかれた。驚いて振り向くとそこには僕と同じように大きな荷物を持った友達がいた。彼はすでに真っ黒に日焼けしており、こちらに向かって笑みを浮かべている。
「久しぶりだな、宮間。たしか中学以来だったけ?」
「なんだ、お前かよ、坂井。」
僕、宮間博樹は友達である坂井隆一と久々の再開を果たした。
事の起こりは今年の春にまでさかのぼる。市内の高校を無事卒業。自宅から通えるそこそこの大学にも合格して、ほっと一息ついたころ中学以来ほとんどメールでしかやり取りをしていなかった坂井から『キャンプカウンセラーってやつを俺はやるんだけどお前もやってみないか?』という電話がかかってきた。正直言ってそのキャンプカウンセラーなるものがわからなかった俺は坂井の指示に従い市のHPで募集要項に目を通す。どうやらキャンプカウンセラーというのは市の臨時職員ということらしい。アルバイトが全面的に禁止されていた高校時代はもちろん、大学に入りバイト先を考えていた俺にとって自給900円は天恵のように思えた。面接、簡単な講習を受けてその後採用通知が来た。そういうわけで僕はカウンセラーになった。
バスが発車して30分もすれば景色が変わってくる。○×市は比較的小さな町で映画館などの商業施設などもあれば大きな川が流れていたり山があったりと自然豊かな面や、歴史的に重要なものも発見されたりと様々な面を持っている。僕がカウンセラーとして働くのが銭ヶ原キャンプ場である。バスのアナウンスを聞きボタンを押す。ピンポーンっという電子音が5名ほどしか乗っていない車内に響く。その乗客全員がおそろいの白いカッターシャツにジーパンという格好をしている。つまりこのバスに乗っているのは全員カウンセラーということになる。駅前では僕と昔話に花を咲かせていた坂井もいつの間にかに先輩カウンセラーの方々と話に夢中になっている。坂井の話によると、高校生の時にカウンセラーとして参加できるボランティアキャンプがあったらしい。その時に先輩方と遺書に仕事をしたらしい。バスが停車するとぞろぞろと動きだし、バスを降りる。下りた瞬間若干和らいだものの暑い空気が顔をなでる。アブラゼミではなく野鳥の声が辺りに響き渡る。人っ子一人いない。道路はというと歩いているとすぐにアスファルトではなく砂利へと変わる。僕はやってきたのだ。かなりの田舎に。
今回の小説では冷凍レモンが知っているカウンセラー像を描いたものでありすべての場合が同じとも限りません。またうんね以上のシステムが違う場合もございます。そのあたりはするーであ願します。
またカウンセラーって知ってるよって方、この小説面白いなって思ってくれた方コメントを頂ければ幸いです。もちろんそれ以外の方からもお待ちしていますよ。