プロローグ
禁忌の再生と破壊の魔導銃を携え失われた魔導文明を再起動させよ!
【魔導産業時代の黎明】
かつて、空に都市が浮かび、大地は魔力で満ちていたとされる古代魔導文明──
それが千年前の「大断絶」により崩壊して以降、世界は再び地を這い、火を熾し、鉄を鍛える時代へと回帰した。
現在は魔導産業時代と呼ばれ、産業革命と魔導技術が交差する過渡期にある。
都市は蒸気と魔導蒸気=エーテルスチームを噴き上げ、空には未完成の空中艇=スカイ・ヴェッセルの影がちらつく。
それでもなお、魔導技術は未だ一部の貴族や国家機関の専有物であり、製鉄技術の進歩と並走しつつも「魔導 > 製鉄」という力の序列は崩れていない。
世界は各都市国家群によって分立しており、政治形態も千差万別。
帝国主義、民主制、神権政治、商人共和国、軍産複合国家――
それぞれが自国の正義を掲げ、秩序を保つために異なる形の治安機構を持っていた。
平民は未だ馬車を駆り、貴族は魔導馬車=エーテル・キャリッジを乗り回す。
地を翔る列車(魔導鉄道)や空中戦艦は、未だ伝説の技術として限られた地域にしか存在せず、幾多の遺構と、未解明の魔導アーティファクトが、世界の片隅に埋もれている。
かくしてこの時代、古き文明の遺産を掘り起こし、再び歩き出す者たちがいた。
ギルド、冒険者、考古学者、そして── たった一人の流民の青年。
彼の名は、ユーリ・エルステッド。
解析眼という、この世界には存在しない異質なスキルを持ち、
彼は最底辺と蔑まれる解体ギルド【フレイム・オブ・ハンマー】から、千年の謎を再起動させる。
これは、古代魔導文明の亡霊が蠢く世界において、ひとりの異端者が世界構造(ノア=コード)を解体し、再構築していく物語である。