第一夜・少女のアリカ-2-
前回の続きです。
そんな気持ちも、今となっては微塵もないが。
「良かった……」
僕はぎゅっと彼女を抱きしめ、絶対に離さないと言わんばかりに、強く身体を密着させる。
そこでアリカが小さい存在なのだと、改めて思い知らされた。
実際に百五十センチ位しか彼女の背はない。
腕の中にいる少女は作りモノと思えない程やわらかく、感触が体温と共に伝わってきてくる。
より一層、僕は胸の鼓動が激しくなるのを感じた。
少女はたおやかな細身に、赤色を基調とした服を纏っている。
とても細かい作りのデザインだ。
白地のブラウスにコルセットを重ねて腰を絞り、さらに前と後ろをそれぞれ違う色のリボンで飾っていた。
前に付けられたリボンは、小さく結んでメインの洋服がよく見えるように、後ろに付けられたリボンは大きく蝶々結びに背中を飾る。
赤色のスカートは、桃色をしている手の込んだフリルのもう一枚を裏に敷いた二重構造であり、アンダースカートのこのフリルがスカートの細かい所まで作り込まれているのだと強調させる。
いわゆる、ゴシック調の服だ。
フリル付きのスカートの裾からは、すらりとした太ももが覗いている。少
女らしくすらっと伸びた脚は、ぴんと綺麗に揃えられていた。
さらに小さい装飾であしらわれた、純白の膝上まで伸びたオーバーニーソックス。
ぴっちりした厚手の生地で出来た物を穿いているのが、とても愛らしい。
抱きしめたまま桃色の髪に顔を埋めると、甘い香りがしてきた。
彼女の身体の気持ち良さに、意識を持っていかれる。
「苦しい」
腕の中から籠った声が聞こえた。引っ張られるようにして我に帰ると、僕は急いで彼女から離れる。
「あ、ゴメン……」
彼女に言われるまでしばらく離れなかったことに僕は驚いた。
無意識にあのまま抱きしめていたいなんて思い、体が動かなかったのだろうか。
僕の手にはむなしく彼女の体温と、体のやわらかさだけが残っていた。
離れたついでに、横目でアリカの身体をなぞってみた。
彼女の身体は緩やかながらも、果肉の存在を意識させる曲線を描いたラインで、肢体はほっそりとしているのだが「細いだけ」とは言い切れない。
ささやかな二個の膨らみがブラウスを押し上げており、腰は細く括れ、脚の方は上にいくほど厚みを増していく太ももが、強烈に異性の身体という事を僕に意識させる。
女性の理想像を二分するという「グラマラス」と「スレンダー」、その後者をそのまま形にしたような感じだ。
しかし身長の所為か、大人の魅力を体現するにはあと一歩とどかず、少女の状態で踏みとどまっている。
そんな彼女の顔を見ると、憂いた瞳は恥ずかしそうにうつむき、唇はほんのりとさくらんぼみたいに赤く色づいていた。
どこまでも初々しくなめらかそうだ。
白い肌に幼いながらも、どこか艶めかしい表情。
大人の様でいながらも、少女であるという事実が僕に背徳感を覚えさせる。
アリカの華奢であるのに、抱き締めればしっかりと肉感のある体。
出るところはしっかりと自己主張をし、締まるところはきゅっとして無駄がない。
しかしだからといって体が硬いのでもない。
きちんと歳相応の少女らしいやわらかさに、指が沈むのだ。
視線を下に向ければ、短いスカートにオーバーニーソックスを穿くと出来る裾と上端との小さな隙間から、白磁の肌をした太ももが微妙に露出している。
それらが異常なまでの色香を感じさせ、僕は扇情的なこの光景に何も考えられなくなっていた。
「僕は――」
「ん……」
言葉を遮るようにぐっとアリカの柔らかいものが、僕の唇に当てられた。
驚く僕のすぐ目の前に彼女の顔が、閉じられた目蓋と長い睫毛がある。
あまりの突然すぎる行為に、しばらくのあいだ時間が止まった気さえした。