プロローグ
拙い文ですが呼んで頂けたら幸いです。
~プロローグ~
彼の望みは小さな願い。
完璧で一点の穢れすら知らず、純真なまま永遠の存在であり続ける理想の少女。
それは曇りなく燦然と光り輝く宝石に、どこか似ているかもしれない。
誰だって簡単に想像できたとしても、決して見たことがないだろう存在。街角で見かけることも、美しいと呼ばれる大富豪の娘たちですらも届かない高みにある。
子供のように無垢な心を持ちながらにして、決して大人の穢れを知ることのない両者の中間にいるような少女。
中間であるからこそ意味がある。
少女はどちらに属してもいけない。
もし明確に属してしまえば、その存在は完璧な少女とは言えなくなる。
すでに有象無象の中に埋もれる少女となんら変わりがないのだ。故にその存在は誰もが望む理想であり続けた。
現実に居るはずがないのだから、当然でもある。
しかし居ないのならば、と彼は自らの手で作ることにした。
街で美しいと呼ばれる少女を着飾らせ、化粧を施してみる。が……上手くはいかない。
二度目は少女を変え、着せる洋服も変えてみたのだが上手くはいかなかった。
その後も諦めず何度も、何度もくり返し試みる。
だが、理想には程遠い結果しか出ない。
彼は無きものを想い焦がれることに対して諦めきれず、終着点を見出せずにいた。人間という生き物は手の届かないものにこそ興味を惹かれるからだろう。
いや、彼の場合は想いに留めるということを自らしなかった。かつて居た彼の妹の為にも、止まることはできない。
すぐさま、彼はもう一度思考をする。
考えて、一つの結果に辿り着いた。
現実に居ないのなら最初から〝造れば〟いいと。
ヒトに限りなく近いヒトでは無いモノであるならば、夢に見た理想を具現化できると思えたのだろう。 それは過信ではないし、ましてや絵空事でもなかった。
彼なら出来る。容姿・記憶・性格・心……どこも余すことなく、理想的と言える状態で創りだせる。
少女であれば、最高の出来で用意できるのだ。
すぐに彼は工房へ籠ると、作業に取り掛かった。まるで、何かに憑かれたかの様なその行為は、日常生活にまで致命的な影響を与えるものだった。
睡眠を取ることも食事をすることも極限まで減らし、持てる全ての技術を少女に使うだけ。
自信の全てを投げ捨てるまでに彼の想いは強かった。
そして身体を作り、心を織り、完成させた。
一人の少女を。
薄暗い部屋を照らす光が、椅子に座る彼女へ当たる。
うすい桃色をした髪はランプの光に当たっていると、そのまま溶けてなくなってしまいそうなほど透き通っていて、彼女の希少さを象徴しているかのようだった。
あどけなさを残す少女の顔でありながらも、整った顔立ちに白く透き通るような肌は、触れてはいけないという不思議な雰囲気がしている。
可愛らしい手にある指の一本一本でさえも繊細でいて、そっと触れなければ折れそうなほど。
彼女の服はふわふわした布と細かなレースに引き立てられ、小さな体によく似合っている。
フリルの付いたスカートの裾からは、ふっくらした太ももが覗いていた。その先に見えるのは、少女らしいすらっと伸びた脚で、ぴんと綺麗に揃えられている。
脚には膝上まで伸びた、白い生地のぴったりとしたオーバーニーソックス。模様のない素朴な上部を、リボンがワンポイントに飾っていてとても愛らしい。
くっ、と少女の細い顎を持ち上げると、艶やかできれいな髪がふわりと揺れる。
その瞬間、彼女の髪から漂った甘い香りに彼は酔いしれた。
少女は憂いた瞳を恥ずかしそうにうつむかせ、ほんのりとさくらんぼみたいに赤く色づいた瑞々しい唇をしている。
幼いながらも、どこか艶めかしい表情。
少女の持つ儚げな印象とは対照的に、華奢であっても抱き締めればやわらかそうな肉感のある体。
出るところははっきり自己主張をしており、締まるところはきゅっと無駄がない。
しかし、だからといって体が硬いのでもない。彼女の歳相応な少女らしいやわらかさに、指が沈むのだろう。
少女は衝撃的で強烈な魅力を秘めていて、彼はしばらく言葉を失ってしまった。そして見とれる彼に、 小さな唇は甘い愛を囁きかける。
「ねぇ、おしえてちょうだい……」
部屋の中で、少女の声だけが静かに響く。
ただ声を聞いただけなのに、痺れるような感覚に彼は襲われた。
少女はやさしく顎を掴む彼の手に、指を絡める。上目使いに見上げる姿勢から、彼の耳にそっと口を近づけて囁く。
「くちづけの味、わたしにおしえて――」
部屋いっぱいに満ちた少女の香りと、言葉を失うまでの可愛らしさに、
人形師の彼は理想の少女が何処に在るのかを知る。
ここまでお疲れ様です。よかったらブログの方にもいらしてください。気ままに更新していきます。 ブログ「http://siroitukiyoni.blog100.fc2.com/」