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6話(いざ人間界へ)


「うわ〜地上だー!!」


 地上に降り立つには空から羽を広げて降りるほかない。仕事のほとんどが天界で完結するリリスは、久方ぶりの地上に浮き足立つ。文字通り浮いているわけだが。


「天使は人間界来ないんだっけ」


「うん! 小さい頃見学したきり〜」


 小さい頃、人間の事を知るといつ名目で連れてこられたきりだ。それもあんまり覚えていないけど、今みたいにたくさんの人間がいた気がする。昔の着物が主流だった時とは違って、多種多様なカラフルな服が物珍しくてリリスはきょろきょろとあたりを見渡す。白スーツばっかり着ているから、少しだけ羨ましかった。


(ああでも。あの子の手をよく引いていた気がする)


 先生に連れられて人間界の見学に来たものの、物珍しさからみんな散り散りになりかけていた。先生がすごい形相で叫んでいた気がする。好奇心旺盛な子供達の波に流されそうなあの子の手を必死に握りしめていたっけ。

 懐かしさに口元を綻ばせる。意識が過去に向いていたところで、


「おっと」


 ミケがリリスの肩を抱き寄せる。リリスがいた所には樹木があった。このまま降りていれば小枝に突っ込んでいただろう。そのまま柔らかく手を握られた。


「危ないよ」


「う、うん」


(一一大きい手だ)


 あの子の手は小っちゃくてもちもちしてて。でも今リリスの手を握るては大きくて、節くれだっている。なんだか胸に違和感を覚えてミケをちらりと見るもミケは人間のいる地上を見つめるばかりだった。





「ふぃ〜、到着〜」


 ミケに手を握られたまま地上に降り立つ。胸の違和感の正体を考えようとしていた頭は、目の前の光景に釘付けになった。


「おお〜!」


 人、人、人。当たり前だが天界では見られない景色だ。きょろきょろとあたりを見回しあれは何か、これは何かとミケに尋ねる。


「じゃああれは一一、」


 いくつか尋ねたところでミケの顔を見ると微かに目を細めて自分を見ているので顔に熱が集まるのを感じた。こほん。


「ごめん、仕事中だね」


「別にいいよ。んじゃ、まずは善悪判断ターゲットの確認から」


 ミケがスーツの懐からタブレットを取り出す。


「今日は一人。多分調査もあるから少なめにしてもらってるのかな。ここに俺に割り当てられた人間の簡単なプロフィールと位置が書いてあって。えーと7才、小学生、男、名前は…」


 ひょこ、とミケが読み上げる画面を覗き込む。一覧から番号をタップするとプロフィールと位置情報が出るらしい。ミケの発言が止まったので見上げると無言でこちらを見ていた。


「ミケ?」


「……うん」


 ミケの目がタブレットに移った。


「ターゲットは小学生なんだ、幼いね」


「幼少期に1回目、集団行動を経て思春期あたりで2回目、亡くなる前に最終判断、それぞれ善悪を見極めるんだよ。幼少期とかはどっちかというと悪に向かないための予防も兼ねてるかな」


「なるほどなあ。じゃあまずこの子のとこに向かうのか」


「そうだね。位置情報的に遠くなさそう。行こっか」


 タブレットをポケットにしまって、ミケ手を差し出してきた。リリスは疑問符を浮かべてミケの顔を見る。


「手、握っていこうよ。リリス……さん、危なかっかしいし」


「言ったな〜!! 人間界珍しくって。っていうか言い辛そうだしリリスでいいよ」


「じゃあ……リリスちゃん」


 手を握るとミケがじっと握った手を見る。


「行こっか」


「ん」


 白と黒の羽をそれぞれ広げて飛び立つ。


「人間界新鮮〜」


 地上を見下ろしながらリリスがつらつらと喋る。ミケの耳がほんのり赤いことに、リリスは地上に夢中で返事がないのにも気づいていなかった。


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