14話(墜ちる)
「何のこと?」
「……リリスから悪魔の堕ちた場所について連絡を貰った。それはこっちでも照会していたけど、該当する悪魔の数が膨大すぎて手がかりにならないとされていた」
すでに調査済みだったようだ。まあ、最初に調べるようなことだもんね。現実逃避のようにエリクの言葉を咀嚼する。
「……ミケが該当するか、調べたんだ」
「!」
「該当した。違うなら違うと、お前の口から聞きたい。……その、お前はリリスと離れてから荒れてたから」
ミケを見る。否定してくれると信じて。
「……話しかけただけだよ」
ぽつりとミケが告げる。
「あっちが勝手に堕ちたんだ」
「ミケ……」
思わず後ろに立っていたミケの腕を掴む。ミケは私の顔を見つめていて、エリクがミケの襟首を掴んだことで強制的にそちらを見やる。
「……お前を、連行する」
「俺はリリスちゃんと一緒にいたいだけ」
「お前の思考回路は分からない。でもこんな、」
「エリクだって、一眼でもアリーちゃんを見ることが出来るように警備隊になったのに?」
エリクが大きく目を見開くわ警備隊は天界と魔界の間に位置する。魔界の管理が基本で天界に行くことは無いものの、天界の様子を見ることはできる。
「そ、れは……」
ミケの襟首を掴むエリクの手から力が抜けたかと思うと、ひらりと黒いものが舞った。
「え」
エリクの羽が散っていっている。これは、
「堕ちてる!」
咄嗟にエリクに手を伸ばそうとして、手で静止される。そのままエリクの指差す方を見ればミケが飛び立っていた。
「俺は、症状が軽そうだ。これから戻って応援を呼ぶ。……リリス、ミケをなんとかしたかったらお前が先にミケを見つけろ」
「でも」
「多分、ミケに何かできるのはお前だけだ」
そう言ってエリクはふらりと飛んでいった。
それから、どうやってかは分からないが、呆然としたままいつのまにかミケの家にいた。
「どうすればいいんだろう」
堕ちた悪魔は、ミケが原因で、このままだと捕まってしまう。でも、ミケがしたことが本当なら確かに悪いことで。
ぐるぐると考え込んで、ふと机の引き出しが目に入った。ミケの部屋は基本的にベッド以外使われた様子が無い。でも、その引き出しだけは何度か開け閉めされたような形跡があった。
「これ……」
そこには白詰草で編まれた花冠があった。覚えがある。小さかったあの時、ミケに渡したものだ。ミケから貰った花冠は私の部屋に飾ってあるように、ミケも大事にしてくれていた。
「ミケ……」
私はミケのところに行かなくちゃならない。玄関を開けて、その白い羽を大きく広げた。




