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13話(暗雲)


 寝返りを打とうとしたところ動けないことに気づいて意識が浮上する。重たい瞼を開ければ目の前にミケの寝顔があった。体に巻き付いた腕を見て、寝返りを打てなかった原因が分かった。


「いたた……」


 体の位置を変えようとして、腰の妙な違和感に昨晩の出来事を思い出す。火照る頰を枕に押し当てれば、外気に触れていたそこはひんやりとして気持ちいい。


「……」


 ミケの前髪を擽るように指で触れる。汗をかいたのでいつもより寝癖がひどい気がする。


(何というか……)


 振り返ってみれば思っていたよりも痛みは感じなかった。恥ずかしさは多大にあったが、幸福も大いに感じた。ただ、体力の限界はあって、その度にミケの手に触れて止めようとして、失敗した。求められるのは嬉しいのだが何というか、


(焦ってる……?)


 その言葉がしっくりくる気がする。ミケは、一体何を焦っているのだろう。







「ふぁ」


「おはようミケ」


「おはよ」


 暫くして目が覚めたミケは手の甲でするりと俺の頰を撫でる。

 結局、ミケの焦燥については、私たちの種族違いによるものだと結論づけた。よく考えてみれば、この仮のパートナーが終わればいつまた会えるか分からない。上手くいけばすぐにでも導入されるのかもしれないし、長い時間がかかるのかもしれない。まあ、なんとしてでも最短で導入出来るよう手は尽くすのだが。

 ミケの手が服の中に入りかけているのに気づいて掴む。


「仕事の時間だよミケ」


「ちっ」


 顔を洗って歯磨きをして、スーツに着替えようとした。


「そういえば洗ってるんだった……」


「汚しちゃったもんね」


「……」


「いて」


 平然と告げるミケの頭を軽く叩く。仕方なくミケの部屋着を借りる。


「いいのそれで?」


「まあ、人間に見られるわけでもないし」


 パーカーからミケの香りがしてちょっと照れる。中途半端に着替えて上裸だったミケはじっとこちらを見つめているかと思えば私の腕を引っ張りそのまま抱きしめた。


「、ちょっと」


「リリスちゃんばっか平然としててずるい、って思ったけど。ちょっと安心した」


「……当たり前でしょ。もーそわそわして困ってる」


 敢えて明るく言ったつもりだけど、きっと心音が速いのはバレていることだろう。


「あ」


「ん?」


「昨日の電話、なんだった?」


「あー……。面会拒否した悪魔、堕ちた時仕事してた大体の場所だけ教えてくれたって。他の悪魔の分もまとめて教えてくれた」


「お、本当?」


 体を離せば、ミケは残念そうにタブレットを拾う。雑巾みたいな持ち方をするな。


 タブレットの中には地名が記されている。


「結構バラバラだね……。日時と悪魔の担当職場の照合とか出来たりするかな?」


「悪魔の行き先とかは警備隊が記録して把握してるはずだよ。エリクのとこ」


「さっか。じゃ、エリク経由で資料添付して依頼しようか。すごい数になるかもしれないけど」


 エリクに連絡して、今日はミケの仕事もしつつ、と今日の仕事の流れを考えていると、肩にずしりと重さを感じる。


「リリスちゃんは切り替え上手だねー」


 私の肩に後ろから顎を乗せたミケはそう言って唇を尖らせている。操作していた端末をポケットに入れ、振り返ってキスをした。


「ミケと一緒にいるための仕事だからね」


 ミケは眩しいものを見るようにに目を細めている。

 







「これでターゲット1人は完了だね」


「うん」


 悪魔の仕事は根気がいるようで1人終わった頃には夕方だ。しかし、作業の分担という意味では効率が上がってきた。あとは悪魔と天使が組む必要性を人手不足以外に言えたら良いのだが。


「……見つけた!」


 頭上からばさりと音がする。人間界において空から声をかけくるのは同業者のみだ。


「エリク!」


 黒い羽を羽ばたかせた彼がそこに居た。


「なんでここに?」


「……いや」


 地上に降り、ゆっくり歩いてくる彼は私の後ろを見つめている。私の後ろは。


「ミケ。お前が堕ちた悪魔が増えている原因か?」


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